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第76話 悪魔は欲望のままに

 悪魔にも人間的感情はあったようでハゼンは愛とやらで得もないのに協力をしてくれるようになった。

 だが唐突な愛の告白もラブではなくライクの方だと勘違いされて玉砕に終わり、結局は振り出しに戻る。

 廃棄も魔王になるというのも最善の策ではない。しかし、咄嗟に最善の策が思いつくはずもなくその場は解散となった。

 いざとなれば魔王の座だとか家のことだとか全部忘れて逃げてしまえばいい。だがそれはベルの決意を裏切るような行為だ。できればベル自身で解決してもらいたいが……。

 どうにかならないものかと頭を悩ませていると突然城全体が揺れた。地震ではなく、遠くの方から何かが爆発して起きたものだ。

 それも事故ではない。城の周囲には悪魔と思われる気配が飛び交っていて、そいつらが攻撃したのだろう。

「失礼します。現在、攻撃を受けています。危険ですのでこちらに避難を。ベル様は先に避難されていますので」

 随分と早い対応にこの執事が手引きしたのではと疑ってしまうが、ベルがいるというのならついて行かざるを得ない。

「攻撃を受けていると言ったが相手は魔王の座を狙っている悪魔か?」

「はい。力のある者こそが魔王になるといつのは太古から不変の真理ですので、こうして他の魔王候補を襲うのは当たり前です」

 そう、魔界では裏切りは息をするかのごとく行われる。残虐で非道、それが悪魔という存在。何とも悲しい生き物だ。

「あの三人が応戦しているようだがお前は手助けに行かないのか」

「かえって足手まといになるだけですので。それに私の最優先すべきことはベル様の幸せですからこうして部外者の貴方を避難させているんです」

 いくつもの隠し扉を通り、下へ下へと進んで行くとそこには巨大な魔法陣が刻まれている。

 驚くことにその上には鎖で拘束されているベルの姿があった。

「ベル! 貴様、これは一体どういうつもりだ」

「ここは王冠の継承儀式を執り行う場です。普通ならばここでベル様は真に王冠を手に入れ、魔王となられるはずでした」

「継承儀式? そんなものが何故に地下にある。それにどうしてこんな所にベルを捕縛している」

「言ったでしょう。ベル様が王冠の真の力を発揮をなされば万事解決するという結論に至ったのでこうしてベル様の幸せのために動いているのですよ」

「本人が嫌がっているのにか? そんなのただの自己満足だ。さっさとベルを解放しろ」

「部外者の貴方にとやかく言われる義理はありませんよ。邪魔が入らないうちに済ませてしまいましょうか。貴方はそこでベル様が覚醒するのを見ていてください。妙なことをしたら私何をするか分かりませんので」

 彼女が死んだら元も子もないが、この男ならやりかねない。理屈では想像がつかないほど愛は悪魔をも盲目にさせる。

 魔法陣が煌めき、ベルの被る王冠がそれに呼応する。まるでその時の待っていたかのように。

「さあ、蠅の王の降臨だ」

 光が消えるとそこには黒い悪魔がいた。

 それも蠅の姿をした悪魔。人ほどの大きさのせいで恐ろしさは語るまでもなく、その蠅の悪魔が発する魔力は肌が痺れるくらい強力なものでベルの姿は消えていた。

 しかし、俺はその蠅の王と呼ばれる悪魔に見覚えがあった。

「あれはビュート……いや、ベルなのか?」

「ベルゼビュート様です。あのお方は王冠に封印されし歴代最強の悪魔。それを取り込んだ新しいベル様のお姿。今は完全な状態ではないようですが、それも時間の問題。魔界どころか全世界を手中を収めるのも夢ではありません」

「取り込んだだと⁉︎ しかし、そんなことをしたらベルはどうなる」

 見るに耐えない。

 あれでは悪魔というよりも怪物ではないか。

「そこまでは知りません。悪魔は欲望のままに生きるだけですので」

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