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第67話 謁見

「この国の王か。あまり興味はないが、形式的に顔を出さなくてはいけないか」

 今回はメディアの知り合いである軍師として動いている。それも何処にも属さない孤高の存在として。

 しかし、大きな戦いを見ず知らずの来訪者に任せるというのは流石にできないということだろう。

 だがこうなるまで魔女に頼りきっている国の王などたかが知れている。

「そんなに嫌そうなしないでくれ。僕たちにとっては大事な大事な雇い主なんだからさ」

「俺はそいつ雇われているわけではないから会いに行く理由が見当たらんが」

 しかしメディアの紹介でこうして指揮権を得ているのだからその彼女の誘いを断るわけにはいかない。

「まあ時間もあることだから少しくらい我慢してくれ。いざという時に邪魔をされたら困るからね」

「その心配は無用だろ。わざわざ自分の首を絞めるようなことをして何になる」

「貴族という生き物は見栄を張らないと生きていけない悲しい生き物でね、時には自分の首を締めることだって厭わないんだよ」

 心当たりはある。

 あの時は何故あいつがあんな行動を取ったか理解できなかった。いや、今になっても理解はできない。

 どんな理由があろうと自分の首を絞めるなど愚かな行いだ。

「ではそうならないよう話をつけようか。それで王様は何処にいる」

 王宮まで来ては良いものの門の前にすら騎士の姿はいない。メディアは御構い無しにズカズカと進んで行き玉座の後ろにあるボタンを押すと玉座が動き出し、隠し部屋へと続く階段が現れた。

「この奥だと聞いているよ」

 等間隔で松明が置かれてあるその階段をゆっくりと下りる。

「俺たちは最前線に出して自分は安全な所にいるとは随分と臆病な王様だな」

「王様の前でそれは言わないでね。あの方は侮辱されると凄く怒るからさ」

 むしろ侮辱されて怒らない奴なんていないだろ……いや、逆に喜ぶ奴もいたな。あいつは特殊な部類だろうが。

「分かっている。それにしてもまさかこんな隠し部屋を用意していたとはな」

「ここは結構前からあったみたいだよ。王様も何かと大変なんだね」

 最下層に着くとそこには大きな門と屈強な騎士が待っていた。

「メディア殿ですね。どうぞ、国王陛下がお待ちです」

 顔パスでその門を潜るとそこには上にあったものよりも一回り小さな玉座があり、そこには煌びやかな装飾品を身に纏った男が座っていた。

「漆黒の魔女、メディア。実際に会うのはこれで二回目だな」

「はい国王陛下。お元気そうで何よりです。今回は私の知人である軍師をご紹介をと思いましてこうして謁見させていただきました」

「ああ、聞き及んでいる。こちらも近況報告をこの耳で聞きたかったところだ」

 そこでメディアは近況と作戦について事細かに話した。

「成る程、漆黒の魔女からの紹介だ。しかし、こちらから一つ要望がある。ネクロマンサーを捕縛してほしい」

「お言葉ですがネクロマンサーを生かしておくのは危険です。捕縛はお勧めしません」

 とルインは忠告をする。

 はぐれのネクロマンサーでも転生屋で処理をしたい。この世界に残していたら管理も大変だし、何をしでかすか分かったものではない。

「だがネクロマンサーは人を不老不死にする可能性を孕んでいると聞く。ならば是が非でも我々の手元に置いておきたいのだ」

「残念ながらネクロマンサーがしているのは死体で人形遊びをしているようなもの。不老不死は単なる噂でしかありません」

 例えが悪いがこの王様には諦めてもらわなくては困る。

「噂……か。まあ、流石にこの状況では不死身などというありもしないものにも縋りたくなるのだ」

「心中お察しします。ですがここはお任せを。この国に仇なす連中を瞬く間に排除してみせましょう」

 不死身などというありもしないはずの存在が。


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