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第56話 協力者

 仏頂面のロニは茶髪の女性を連れて戻ってきた。

「本当に不本意だが紹介しよう。こいつが協力者のアルチナだ」

 ロニとは相対的に穏やかな笑顔を浮かべるその魔女はゆっくりとお辞儀をした。

「はじめまして皆さん。どうやらロニが大変ご迷惑をかけたようで」

 ロニのせいからか、魔女は変な奴しかいないと思っていたがどうやらまともな魔女もいるようだ。

「全くその通りよ。こんな騒動にならなかったら今頃仕事は終わってたはずなのに」

「本当にごめんなさいね。でもロニに悪気はないと思うので許してやってください」

「随分と肩入れするのだな。ロニとは一体どんな関係なんだ?」

「ロニとの関係……ですか。一言で言ってしまうと私はただの育ての親ですよ。ロニが子供の頃、行く当てがなくて路頭に迷っていたところを私が家族として迎え入れたの」

 それにしては若く見えるが魔女は全員そうなのだろうか?

 だとしたら世の女性たちはさぞ羨ましがるだろうな。まあ、ここにいる連中はそうは思ってないようだが。

「ふ〜ん。それで今回は私たちに協力してくれるらしいけど本当に大丈夫なの? 魔女にも立場とかあるでしょ」

「私の心配ならお気になさらず。子供の失態を処理するのが親の務めですから」

「このロニ様を無視して勝手に決めるな。それに失態とは心外だ。今回のはちょっとした事故に過ぎん。もう少しカエルの油の質が良かったらーー」

「はいはい。お話は後でゆっくり聞きますから今はこの方たちの問題を解決するのが先決でしょ」

 その正論に流石のロニも反論はできず、完全にアルチナのペースとなっていた。

「では具体的にどうなっているのか教えていただけますか? どうにもロニの話では要領がつかめないので」

 時間は惜しいが彼女の協力は何かと必要となってくるだろうと、ルインは今までの出来事を端的に話した。

「成る程、では残り一人の仲間を救出して魔法が使えるようになったという殿方を連れ戻さなくてはいけないんですね」

「須藤 隼人という男だ。どうやらこの世界では魔法でそれなりの地位にいるそうだが何か知らないか?」

「残念ながら私はあまり表舞台には出ない魔女ですので最近の情報には疎くて……。ですが殿方が魔法が使えるなんて前代未聞ですね」

「この世界では女性しか魔法が使えないのか?」

 魔法のある世界は何度か訪れた事があるが、それに制限があるというのは稀に見るケースだ。

「はい。と言っても女性だから誰でも使える訳ではなく、才能のある者だけに限られてきますけど」

 そうなると魔女の世界といっても驚くほどいるなんて事はなさそうだ。それにこの『カヴン』とやらではあまり人を見かけなかった。

 少し疑問に思っていたが選ばれた者の中から優秀な者だけとその関係者しか招待されないのなら納得だ。

「まず優先すべきは残りのお仲間さんですね。私が言うのもなんですが魔女は何をするか分かりませんので」

「それもそうだな。しかし、何か考えはあるのか? 他の魔女は侵入者である俺たちを許しはしないだろ」

 魔女でなくとも異世界から来た者は警戒をするだろう。ベルが捕らえられていたのが良い証拠だ。

「任せてください。いきなり戦闘になることなんてありませんので」

 その言葉を信じてアズリエがいるであろう建物へと歩みを進めた。

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