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第53話 魔女の世界へ

 セリエの調査の結果、事態が想像していたよりも悪化している事が判明した。

 というのもロニの転移魔法に巻き込まれて入れ替わっていただけならセリエの本の能力を使ってこちらへ連れ戻すだけで問題は解決したのだがそうはならない。

「能力に目覚めただと?」

「はい。何らかの影響で須藤 隼人さんは特殊な能力が使えるようになっていた様です。あちらでは魔法と認識されているようですが」

 しかし、彼はロニとは別の世界から連れて来られていて彼の世界には魔法は空想上のもので使える者はいないらしい。

「それで須藤 隼人は今何を」

「私たちが調査をしていた数日間に能力を用いて他の魔女に認められ、それなりの地位を与えられたようです」

「どうやらこちらへ戻ってくる気はなそうだな」

 力を持った者はそれに溺れる。持っていなかった者なら尚更だ。

「じゃあ、迎えに行ってやるまでよ。それにしてもバルドルはこの事を知らないのかしら」

「バルドル様は出張中だそうです。何かと不測の事態があったのでその報告などで帰りは遅くなると仰っていましたが」

「そういえばそうだったわね」

「なあ、探し人は見つかったんだからもういいよな」

「いや、こうなってしまった以上最後まで協力してもらおう。彼をここに連れ戻すまでは」

 生きていたのは朗報だがこれが故意に行われたのかどうかはまだ判明していないのでどちらかを見極める為にもここで彼女を逃す訳にはいかない。

「このロニ様をこれ以上働かせるとは良い度胸をしていると、普段は魔法で一蹴する場面だけど今回は状況が状況なだけに協力をしてあげよう」

「では早速行きましょうか」

 セリエが本を開き、転移しようとするがそれはロニが止めた。

「おっと、その必要はない。この天才ロニ様が帰り道を用意していない訳がないのだから」

 その一言で部屋の天井に穴が開いた。

 ただの穴ではない。空間の穴だ。

 その穴からは見覚えのない光景が広がっている。

「ではでは転生屋の皆様を魔女の世界へとご案内しよう」

 穴はその場にいた者たちを吸い込んで異世界へと誘った。



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