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第50話 魔女の来訪

 今朝は騒音で目覚めた。

 騒音の中心はあの客が案内されていた場所だ。

 何事かと慌ててそちらへ行くと既にそこには全員が揃っていた。

「何があった?」

「分からないわ。この中で何かあったのは確かだけど誰が入るか決めようとしてたんだけど……丁度いいわ、あんたが行きなさい。これは店長命令よ!」

 命令ならば仕方がない。

 そっと扉を開けるとそこには珍客の代わりに見知らぬ女性が不敵な笑みを浮かべて仁王立ちしていた。

 黒いとんがり帽子を被っており、そこからは相対的な色の髪が覗かしていて二つに束ねられたそれは奇妙な匂いが漂わせている。

「誰だ? ここにいた少年を何処へやった」

「ニヒヒ、良くぞ聞いてくれた。最凶にして最悪、錬成の魔女ロニ様だ。少年については知らない!」

 知らない?

 では彼女が来ていた時には既に姿を消していたという事か。この様子だと嘘をついているようにも見えない。というか嘘をつく必要性もないか。

「おい、リルフィー。安全は確認した。入っても問題はないぞ」

 ここに来た理由は分からないが少なくとも俺たちに危害を加えてくる事はないだろう。

「魔女……ですか」

 珍しく怪訝そうな顔を浮かべるベル。

「そうかベルは魔界出身だから魔女を見た事があるのか」

 魔女は嫌われ者だ。

 それは悪魔が跋扈する魔界でも変わらない。魔女は悪魔同様に自由気ままに生きる化け物で周りに厄災を振りまく事に関しては悪魔の上をいっている。

「さて、では説明を願おうか。このロニ様に分かるように」

 この胸騒ぎがする笑みは悪魔が魔女を苦手としている理由の一つでもある。

 だが苦手意識があるのは何もベルだけではない。この俺も魔女という奴は苦手だ。

 というのも何度も出会い、その度に問題に巻き込まれ酷い目に遭ったもので二度とそんな事は経験したくはない。

 しかし、この転生屋に来たのなら迎え入れなくてはなるまい。それに入り口らしきものは天井にあったがそれはもう閉じてしまっている。

 それに事情を聞かなくてはいけない。彼女がここに来た理由を。

 の前に部屋を変えてここが何処なのかを説明をリルフィーがするとロニと名乗る魔女は目を爛々と輝かせた。

「ふむふむ、転生屋か。まさかそんなものが実在するとはこのロニ様も驚きを隠せないよ」

 普通の人間なら今回の客のように戸惑うはずだ。

 それなのにこの反応ではこちらが戸惑ってしまう。

「その言い方だと故意でこちらに来たという訳ではないのですね」

「ないのですよ。このロニ様の辞書に計画の二文字はないから。やりたい事をやりたい時にやる。それがロニ様のモットーだから」

 話を聞く限り目的はあくまで転生屋ではないようだが、それなら一体何をしにここへ転移して来たのだろうか?

 転移は魔法の力を持ってしても膨大な労力と時間が必要となる。彼女のモットーが本当ならきちんと理由はあるはずだが。

「じゃあ、ここに来たのは偶然……」

 何故かホッとするベル。

 被害は自分にこないと決めつけているからだろうが残念ながら魔女は例えるなら暴れ牛だ。

 見境がなく、周りにいる人間を巻き込む。

「では聞いてもいいですか。貴方の目的を」

 いきなり核心を突く質問をぶつけるセリエ。どうやらロニのペースにさせまいとの質問らしいが結局、次の一言で完全にペースは彼女に持っていかれてしまう。

「それはそこにいる吸血鬼くん。彼の血を頂戴しに来たのだ」

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