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第47話 残された竜

 保険として各自に分身を忍ばせておいたが無駄な心配だったようで皆、務めは果たしてくれたようだ。

 となると次は俺か。

 面倒なのはあちら側にリルフィーがいる事。

「これはどういう事か説明してくれる。どうしてあんたがここにいるのよルイン!」

 案の定、彼女は疑問を吐き出した。

「別に裏切った訳ではない。しかし、そう思われても仕方のない事をしているのは重々承知している」

「だったらどうして?」

「理由か。それはそこにいる問題の根源を殺す為さ」

 今回の客であり、この軍の大将であるニッグ。

 こいつの中にあの終焉に導く竜という大層な名前の奴がいる。ニッグには悪いが殺さずにそいつだけを抹消出来るような能力を持ってはいない。知り合いの吸血鬼にならそれを可能にする能力を持っていたのだが。

「何の真似だ。俺を止められるとでも思っているのか」

「あんたがどうしてそんなに思い詰めてるかは知らないけどお客様を第一に考えて」

「考えたさ。しかし、それでは誰も幸せにならんのだ」

 何も考えなしでダハーカの案に乗った訳ではない。それ以外に選択肢がなかったからこそこうしてニッグの前に立ち塞がっている。

「じゃあ、もっと私を頼る事ね。あんたは自分でどうにかしようとするからダメなのよ。大体の事情はベルから聞いたわ」

「そうかベルが……」

 ニッグを殺した後、彼の体から離れた終焉に導く竜の魂をどうするかという問題だがそれは俺が有している能力よりも専門の能力を有している者に任せた方が良いだろうと思い一度あちら側に戻ってベルに頼んでいた。

  理由が理由なので巻き込まない為にもリルフィーには内密にと言っておいたのだが、まさかそこから情報が漏れてしまうとは計算外だ。

「言っとくけど私が無理やり吐かせたとかじゃないからね。ベルから言ってきたね。けどあの子を責めないでよ。あんたの為に私に言ったんだろうから」

「分かっている。それでお前はどうするつもりだ」

「どうするも何も当初の予定通りに彼を転生させるのよ。この剣でね」

 取り出したのは一度俺を貫いたフラガラッハ。彼女の自慢であり、転生屋の象徴でもある。

「転生か。しかし、一つの体に二つの魂がある場合はどうなるのだ?」

「それが私がこれをここまで持って来た理由。これだと両方とも転生出来るようになってるの」

「ほほう、となると……ふん俺の苦労が台無しだな。だが本人から了承は得たのか?」

「それなら大丈夫だぜ。元々俺がワガママ言ったのが悪いんだしよ。それにこいつは俺で終わらせたいんだ」

 好き好んで自分の体に別に魂を入れる奴はいない。ニッグとしては自分の手で終止符を打ちたかったと言うがそれも今は叶わない。 

 何せ転生屋がいるのだから。

「では決まりだな。しかし、いつもはあそこで行なっていたがここでも転生は可能なのか?」

「可能です。転生に必要なのは対象と特定のアイテムだけですので」

 と答えてくれたのは本を大事そうに抱えている冷徹な目をした女性だ。

「既に来ていたのだなセリエ。それも他の皆も」

 フラガラッハがこちらにあるのならそれを誰かが持って来たと考えるのが妥当で世界の行き来が出来る本を持つ彼女と他の二人がいるというのは不思議ではない。

「す、すいません。すいません」

「師匠! お手伝いに来ましたよ」

 これで転生屋のメンバーは勢揃いした訳だ。

 となるとやる事は一つ。

「それじゃあ始めるわよ」

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