第44話 力と技
作戦は決行され、まず最初に激突したのはロスとラドン。
「おいおい、まさか相手が女とは拍子抜けだぜ。もうちと骨のある奴が相手かも思ったがそっちはそんなに兵士が少ねえのか?」
「見た目で判断するとは愚かですね。力だけでは勝てない事を証明してみせましょう」
「ふん、これでもそんな強がりが言えるか?」
出したのは四本腕。
合計で六本となった腕でロスへ攻撃を続ける。
それは人型になったせいで威力は衰えているがそれでも洞窟内を震わせる程のものでロスは避ける事に専念した。
「どうしたどうした! 口だけで避けるだけか。大した事ねえな」
決着を早々につけるべく、ラドンは渾身の一撃を叩きつけようとするとロスはそれを手のひらで受け流してその攻撃の威力を本人へと返した。
「がっは! クソが……小賢しいまねを」
腹部へ自分の攻撃を受けてしまったラドンだが、彼の鱗は堅牢で一撃だけでは膝をつかせられずに終わった。
「これは相手の力があればあるほど威力を発揮する能力。特に貴方みたいなのには効果的」
炎などに対しては発揮出来ないので相手によっては全く意味をなさない能力である。
ラドンの相手を彼女が務める事になったのは単に相性が良いというのではなく、この能力では戦えるのは彼しかいないからだ。
「知るか!」
怖じける事なく、ラドンは攻撃を続ける。それが返されるものだと分かっていても。
「自滅する気? 私は止めはしないけど」
六本の腕から放たれる連続攻撃をことごとく跳ね返すロス。
それによりダメージを蓄積させるロス。しかし、ラドンの攻撃は一向に衰える気配はまるでない。
「一体何を考えているの」
彼女は自身が有利だというのにどうしても心の中に潜む不安は拭えないでいた。
「これで最後だぁぁ!」
大きく振りかぶりその拳を放とうとする瞬間、ラドンは左足で地面を踏みつけ破片を散らばらせる。
彼の狙いはこれだった。
考えなしにかと思われた特攻はこの為の布石。
足元に注意を払っていなかったロスはその破片が目に入ってしまい完全に視界が遮られてしまう。
彼女の能力は手のひらでないと効果が発揮しない。目を閉じた状態では先程までのように精密に防げず、その一撃を受けてしまう。
それが彼の思惑。
ただ一撃に賭けた単純明快な作戦。いや、作戦と呼ぶにはあまりにも杜撰なものだがそれ故にロスの隙をついた。
が、ロスの方が一枚上手だった。
というのも彼女は攻撃が何処に来るのかを気配だけで察知して見事、手のひらで受け止めたのだ。
全てを込めた一撃をが自分に返って来たラドンの鱗は粉々に打ち砕かれ、遂に地面に倒れこんだ。
「訂正する気はないわ。私は自分を信じて勝った。貴方の心無い勝負では私には拳を当てられなかったのですから」
他の者を手助けする為にすぐに行動を起こしたかったがラドンの率いる兵士は臆する事なく、一矢報いようと突撃して来た。
忍ばしていた兵士を呼び出してロスはそれを応戦する事にした。




