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第38話 竜を憎む者

 竜殺しの異名を持つ人間、ゲオル。

 彼はただみんなを守るために剣を取り、血を流しながら自分よりも巨大な化け物に立ち向かい続けた。

 そうしてドラゴンを倒し続けると彼は英雄と呼ばれるようになり、民に慕われながら幸せに暮らしていたのだがそれは長くは続かなかった。

 ある日、国王がドラゴンと共存をすると宣言したのだ。当初は不満の声があがったが全面戦争をしてこちらに勝ち目はないと今までの経験で察した民は潔く共存を受け入れた。

 しかし、英雄と呼ばれていた彼の扱いである。共存をするとなると彼がしてきたことは許されることではない。そこで国王が信頼を得るために彼を売った。

 まずは彼の妻と子供を殺し、その後に公開処刑しようと試みたが歴戦の戦士であるゲオルには押し寄せる兵士たちを薙ぎ倒して逃亡されてしまう。

 ニッグたちがそれを知らないのは国王がその情報を隠蔽したからだ。だがその行為で信頼を得ることに成功したので現在ニッグたちが否定派と戦争をしている。

 何故、この戦争に彼が参加しているのかというとどうしても妻子の恨み晴そうとしているからである。

 そんな彼を引き入れたのは否定派リーダーが手を差し伸ばしたから。今の彼の原動力は恨みとその者への忠誠心のみ。

 だから彼は普通の人間にはない力があるのだが、ニッグはいつもの陽気な口調で近づく。

「よお、お前ゲオルだよな。ファフナーとか父ちゃんから聞いたぜ。凄い強いんだろ?」

「共存派のニッグか。頭であるお前が相手とは運が良い。この手で終止符を打てるとは」

「勝つ気満々かよ。俺もその方が話が早くて助かるぜ」

 ゲオルは自慢の剣で攻撃を仕掛ける。武器を持たないニッグはそれを避け、隙を見て殴りかかるが当たらない。炎を放っても華麗に躱されて拮抗した状況が続く。

「やっぱ人型で相手するにはキツイな。ファフナーがあんなに煩く注意する訳だ。けど、俺だって負けないぜ」

「いや、お前は負ける。この場でな」

 大きく振り上げられた剣を見てニッグは即座に横へと転がると剣は地面に突き刺さり、見事に躱したかと思われたが次の瞬間、彼の肩が切れて血が噴出した。

「よ、避けたはずだぞ」

「皮膚に阻まれたか。流石に硬いな。しかし、二度目はないぞ」

「魔法か? それとも……いいや、もう考えるのめんどくせえ!!」

 どんな攻撃だろうが関係ない。

 ニッグはゆっくり瞼を閉じてほんの数秒集中して開く。するとその目は琥珀色へと変わっていた。

 それは既に失われた太古の竜の瞳。

 これによりゲオルは何が起きたかも分からないまま体を引き裂かれた。それは致命傷となり、這い蹲りながらも逃げようとするが出血量が多く途中で力尽きてしまった。

「やっぱまともじゃ勝てなかった。誇ってもいいぜ。お前は強い。ただ産まれる時代が悪かった。それだけの話だ」

 彼は最後まで自分を恨み続けた。

 自分を裏切った国王と国民を、何も守れなかった自分を。

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