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第30話 人生相談へ

 資料室へ入るとそこにはベルが隅っこで本を読んでいた。

「あ、ルイン……さん。何かお探しですか?」

「お前に用があってな」

 そっと頭を撫でてやろうとするが王冠から虫が出て来て、それに阻まれてしまう。

「気安く触ろうとするじゃねえ。油断も隙もねえなこの吸血鬼!」

 相変わらず、耳が痛くなるほどの大声だ。一体、その小さな体でどうやって出しているのやら。

「ビュートか。今はお前に用はないぞ」

「そっちにはなくてもこっちにはあるんだよ。最近、ベルにちょっかい出しやがって。やっぱりロリコンじゃねえか‼︎」

「違うと言っているだろ。俺にそんな気はない。ただ単にベルはつい助けたくなるような奴だからな」

 悪魔だというのに本当に不思議だ。普通は人を騙し、欺くものだというのに。

「だからってベタベタしすぎなんだよ。当たり前のように頭を撫でやがって」

「嫌だったか?」

「い、いえ……ルインさんの手は温かくてそのむしろ嬉しい……です」

 俯きつつ答えるベル。

 これにはホッと胸をなでおろす。

「だそうだ。本人は嫌がっていないみたいだし、お前にとやかく言われる筋合いは無い」

 嫌がっていないなら別に問題はない。

 この感じからすると遠慮をしている訳でとないしーー。

「それはそれだ。俺は一応、使い魔だからずっといんだよ。それなのにいつもイチャイチャしやがって」

「イ、イチャイチャなんてしてないよ」

 必死に否定するベルだが、そこまで必死だと逆に怪しく思われるが。

「自意識過剰だろ。そんなに嫌ならその王冠の中で大人しくしていればいいだけの話だ」

 王冠の中がどんな風になっているのかは知らないが、そこなら邪魔者は入らない。入れない。

「ああん⁉︎ 何で俺が遠慮しなくちゃあいけないんだよ。こちとら好きでこいつの使い魔やってんじゃねえ。本当は魔界でブイブイ言わすつもりだったのによ」

「そ、そうだよね。私の使い魔なんて嫌だよね」

 唐突に落ち込むのでビュートの怒りは別の方へと流れる。

「だああーーーーー! そうは言ってねえだろうが。むしろ俺は主がテメエで良かったと思うぜ。大抵の連中は使い魔を酷使しやがるからな」

 妙に詳しい。前に他の悪魔の使い魔をしていたのだろうか?

 俺には関係のない事だが。

「身内話は今度俺がいない時にしてくれ。俺はベルに用があるって言っているだろ」

「短気な奴め。そんなに空気が読めねえといつかここの連中に嫌われるぞ」

 常に怒っている蝿に言われたくはないが、ここで言い返しても意味はない。ここは流すとしよう。

「別に好かれようなど思っていない。それよりもう出てくるなよ。お前がいると調子が狂う」

「いいや、それは無理だね。俺はベルの代弁者だ。こいつがこんな感じのままなら出てくるぜ」

「もういい。それよりベル、少し協力してくれるか?」

 時間を持て余しているとはいえ、ビュートと無駄話をする気にはなれない。そろそろ本題に入ろう。

「協力……ですか? 一体何を」

「人生相談のさ」


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