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第15話 嫌な予感

「それにして驚いた。本当に外見は別人なのに魂は同じというのは妙な感じだ」

 前とは打って変わって茶髪のツインテールが良く似合う普通の少女だ。存在感が薄いと言うと失礼だが前があれなだけにそう思えてしまう。

「それは私も同じです。体に慣れていないから色々と大変なんですよ」

「た、魂の移送は問題なく済んでますので時間が経つにつれ慣れていくと思います。ごめんなさい」

 魂関係はベルの管轄。説明をして何故か謝る。どうやらこいつのこれは世界が変わっても変わらないらしい。

「兎も角、合流出来た事だし早速聖杯を探しに行くとするか。シュエル……じゃなくてアンネは心当たりがあるんだろ」

「少し記憶が混濁してるけど大体は。でもこの少人数で乗り込むのは危険では」

「いえいえ、師匠がいれば国の一つや二つまとめてかかって来ても返り討ちにしてくれますよ」

「否定はしないが今回はあまり目立たない方がいいだろ。聖杯を手に入れるまで邪魔が入らないようにするには」

 この世界の者ではない俺たちが聖杯を手にするのは全力で阻止してくるはず。理想的なのは気付かれない内に手に入る事だが。

「となると私が通ったルートと同じで向かうといいかもしれません」

「いえ、念の為に別のルートの方で行きましょう。アンネさんはそのルートで行ってグラハグの兵士にやられているので周辺にまだいるかもしれませんので」

「というかセリエの本でそこまで行けないの?」

「行けるには行けますが転移した先に敵がいたら目も当てられません。それに途中で情報を集めたいので歩いて行きましょう」

「いや、徒歩では到底間に合わない。馬を何処かで調達をしないと……」

「そう言われても俺たちはこの世界の事を知らないし、お前はこの転生したばかりだ。一度村に戻って馬を借りて来るか?」

 娘の頼みならばあの頑固そうな村長も貸してくれるかもしれないが。

「あの村には馬は見当たらなかったから戻っても無駄。帝都なら売っているけど」

「じゃあ、帝都に行くわよ。アンネが元勇者だと教えてやれば協力してくれるかもしれないし」

「残念だがそれは期待しない方がいいだろ。いくら聖剣があるといっても奴らは転生なんて信じないだろ」

 この俺もこいつらと会うまでは転生なんていう概念は空想上のものだと思っていた。いくら聖剣を持っていても転生の事は信じてくれないだろう。最悪、聖剣を奪ったと勘違いされて処刑されるかもな。

「となると馬を調達してすぐ出発か。久しぶりの異世界なのに観光も出来ないわね」

 十分に楽しんでいる様に見えるが文句を言うリルフィーに誰も止められないかと思えたがそこに奴が現れた。

「観光気分だと困るなあ〜」

「バ、バルドル⁉︎ どうしてここに?」

「渡し忘れた物があってね。ほらこの世界のお金だよ。これがないと馬を買えないでしょ」

 手渡されたのは金貨がパンパンに詰まった皮袋。どうやらこれがこの世界の通貨らしい。

「助かる。それにしてもここにいてもいいのか? この世界の神に勘繰られるのはまずいだろ」

「これだけ広い世界ならすぐにはバレないよ。でも面倒ごとは勘弁だからここで帰るかな」

 本当にこれを渡す為だけに異世界までわざわざ足を運んで来たようだ。責任者というのも大変だな。

「そういえば気になってたんだが、あの嘘をどうやって信じさせたんだ? 何か持っていたようだが」

「転生前にアンネさんが持っていたこの紋章をお借りしました。これは王の命令によって動いている人にだけ与えられる物で様々な援助を受けられるそうです」

「成る程。ならそれで馬を借りる事も出来るのか?」

「村ではこの紋章で私たちが王直属の人間と思わせる事が出来ましたが帝都となると近くに城があるので確認を取られるかもしれません。なので、このお金を有り難く使いましょう」

「セリエ、何で仕切ってんのよ。転生屋の店長としてこのお金は私が管理するわ」

 こうして強引にバルドルが持って来た軍資金を手にリルフィーは移動手段を手に入れる為に馬を探しに走った。

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