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第13話 勇者の転生

 決行日。

 何故かリルフィーだけが元気が良く、転生屋にいる皆を一室に集めて意気揚々と宣言した。

「さあ、始めるわよ」

 宣言したがそれはルインを盾にして無防備な女性に短剣を突きつけてである。傍から見ると何とも妙な光景だが盾となっているルインは「成る程」と納得してしまった。

「聖剣はあくまで一本だ。なら一度不死身の俺に攻撃をさせて一瞬の隙を突いてフラガラッハを突き刺すという事か。単純だが効果的かもしれんな」

「けどちゃんと防いでよ。あんたは死ねたら本望だろうけど私には店長として生きていく義務があるんだから」

「無論だ。聖剣相手とは何度か戦闘経験がある。お前には傷一つつかさずに終わらせる事を約束しよう」

「じゃあ、行くわよ」

 そこには椅子に座っている少女と吸血鬼を盾とした少女が向かい合っているという異様な光景が広がっているが、否が応でも緊張が走る。

 唾を飲み込み、意を決して前へと進むと聖剣がルインの首元目掛けてシュエルの腹部から出現した。

 盾であるルインは目で追えていたがあえて受ける。また血で床が濡れるかに思えたがそれは途中で氷のように固まり、それが一瞬だが聖剣の動きを封じる事に成功する。

 それを見逃さず前に出たリルフィーが決め手であるフラガラッハを胸に突き刺した。

「お、終わった〜」

 とりあえず一難は去った。

 その場に座り込みリルフィーを横に他は転生の作業に入る。邪魔にならないようにとルインはそっとリルフィーを廊下に連れ出す。

「まさかこうも上手く行くとは思わなかったぞ。流石、店長というところか」

「正直もうあんなの二度とごめんよ。まるで戦ってるみたいじゃない」

「戦いは嫌いか?」

「当たり前よ。どんな理由があろうともそんなので解決しようなんて野蛮な考えよ」

「ほう、では彼女は間違っていたと。恩人と世界の為に一人で戦っていた彼女が」

 争いは確かに醜く残酷なものだ。

 しかし、それで救われている者がいるというのも事実。それがなくては生きていけない者がいるというのは事実。

 それを否定するというのはその者たちを否定するのに等しい。

「別に問題じゃないんだから正解とか間違いとかないわよ。ただ争いは争いしか生まないから……」

「ふむ、だが力は必要だ。悪に抗う力は。それがなくてはただ一方的にやられるだけだ」

「分かってる。だから私は私のやり方で世界を変えてやるの。いつかあんたにも私の計画を教えてあげるわ」

「楽しみにしていよう。しかし、転生は面倒だな。わざわざここに呼び出し、要望を聞き、お前がフラガラッハで刺さないと成立しないとは」

 ここに来るまではもっと便利なものだと思っていたが蓋を開けて見るとまさかこれほど面倒なものだとは。

「転生ってそんな簡単なものじゃないのよ。魂をそのままに別の世界の別の肉体に移し替えなくちゃいけないから事前準備をちゃんとしないと失敗して大変な事になるの」

「失敗? 転生が失敗するとどうなる」

「そこはバルドルから直接聞きなさいよ。私もあいつから聞いたから」

「ではまた今度聞くとしよう。それで転生はいつ頃終わる? 急がないと聖杯を取られるぞ」

 バルドルには証拠を確保しろと言われている。いくら証言があっても確証がなくては裁けないのだろう。

「心配しなくてもここには優秀な店員ばかりだからすぐに終わるわ。それよりも自分の心配する事ね」

「自分の? ああ、この血の事か。これは吸血鬼の能力だ。聖剣のせいではない」

 血を自在に操る能力。形、硬さは想像すればその通りになる。あの時は動きを封じる為に使ったがこれは万能で一番使っている能力と言えよう。

「ほんとに化け物ね、あんたは。頼もしい限りだけど」

 こうして二人は他愛のない話をしながらシュエルの転生を待つ事にした。

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