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ビーストハンター 第2話 「東京租界に死す」(8)

「なっ、何だよ?この子は…いったいどうなってんだ?」

 見ると薄汚れていたウィルは、お人形さんのようなフリル付きの服を着て足には可愛い靴を履いていた。

 おまけにボサボサだった頭はヘアーリボンで飾られ、赤毛の髪は綺麗にカットされてカールまで掛けられていた。

「おぃおぃ、まるでお姫様じゃぁないか?誰もここまでしてくれって頼んだ覚えはないぞ」

「まぁまぁ、いいじゃない。衣装以外は私たちのおごりだから…ね、ウィルちゃん」沙羅は平然と言った。

 少女は、うれしそうにしてこっくりとうなずいた。

 他の女性たちも、ウィルをお嬢様風に仕立て上げた事に満足しているのかみんなニコニコしていた。

 呆気に取られているジョーに、沙羅は大きな紙袋をグイッ!と押し付けながら言った

「はい、これウィルちゃんの寝巻と下着…あ、それから子供用のベッドを注文しといたから…明日には届くわ」

「はぁ?」

「だって汗臭いのと一緒に寝かせられないでしょ」

「いゃ、そうじゃなくって…代金は?」

「来月のお給料から引いとくわ…何か文句でもあって?」

「まいったな~」ジョーはタジタジになってしまった。

「な…子供の面倒を見るって大変だと言っただろ」ツクモまでが面白がっていた。

 何の事はない…みんなはジョーの困り果てた様子をからかって楽しんでいるのだった。


 こうして、ジョーとウィルのおかしくも涙ぐましくもある、ささやかな珍生活が始まった。

 日中は沙羅やヒナがウィルの遊び相手をしてくれた。けれども、夜となるとそうも行かない。

 風呂に入れるとそこいら中シャボン玉だらけにするし、ジョーにシャワーを掛けては遊んでいる。

 裸で部屋の中を走り回るかと思えば、つまづいて転んでは泣き出してしまう始末だった。

「疲れた~」仕事を終えたジョーは、部屋でゆっくり休む事もできなくなった。

 ジョーは海外の各地を達摩玄と一緒に渡り歩いたせいもあってか、男にしては料理はうまい方だった。

 だが、しょせんは男の料理…子供の口には合わないだろうと沙羅やウズメが気遣って、頻繁に手料理を作って持ってきた。

 一方、せっかく沙羅が注文した子供用のベッドは、意外な事にすぐに役に立たなくなってしまった。

 夜中になると決まってウィルは自分のベッドを抜け出して、ジョーの汗臭いベッドにもぐり込んで一緒に寝ていたからだ。

 その上さらに、ジョーにとっては頭の痛い出来事が持ち上がった。

 事務所の横にあるシャルクのケージには、イェーガーたちが使役する猟犬が繋がれている。

 ウィルは頻繁にボルテに会いに行っていたが、いつの間に覚えたのか勝手にケージを開けてボルテを外に出すようになった。

 困り果てたジョーは、ウズメがルージュを部屋の中で飼うように、ボルテを自分の部屋に入れてウィルと遊ばせる事にした。

 あれこれとあったが、仕事柄殺伐としていた「音羽警備」はウィルがきた事によって雰囲気が明るくなったのは事実だった。


~続く~

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