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ビーストハンター 第2話 「東京租界に死す」(6)

「だめだ~…全然通じないわ」沙羅はお手上げという顔をした。

「本人がウィルだって言うんだから、それでいいじゃないか」

 ジョーは名前なんかより、少女のこれからの事が気になって仕方がなかった。

「グゥ~ッ!」と目が覚めてから少し元気のなかった少女のお腹が鳴った。

「何も食ってないんじゃないのか?」その音を聞いたツクモが言った。

「そうだな。あれからだいぶん経つからな…何か食う物ないか?」ジョーは女性たちに聞いた。

「おせんべいならあるわよ」ヒナがそう答えた。

「あぁ、それでいい…すまんが食わしてやってくれ」

 ヒナは、自分のデスクの引き出しから煎餅の袋を持ってきた。

「はい、どうぞ。ウィルちゃん」

「バリ!バリ!バリッ!」少女はヒナが差し出した煎餅を鷲づかみにすると、もの凄い勢いで食べ始めた。

「すごいっ!まるで野獣みたいじゃん」それを見たシュンが笑いながら言った。

「はいな…この子の方がよっぽど本物のビーストらしゅうおますな~」ヒジリも笑った。

「そんな事言ってやったら可哀そうじゃない」沙羅が口の悪い二人をたしなめた。

 少女は一枚食べ終わると『もっとくれ』と言うように手を差し出した。

 ヒナが袋の中から取りだして与えると、またむさぼるように煎餅を喰い散らかした。

 三、四枚食べ終わるとようやく落ち着いたと見えて、椅子からはみ出た足をブラブラさせて遊びだした。

「よっぽどお腹が空いてたのね~…それでこの子どうするの?」沙羅はジョーに尋ねた。

「やっぱり、孤児院で預かってもらった方がいいんじゃないか?」ツクモが言った。

「ダメだ!孤児院はっ」ジョーが叫ぶように否定した。

「そっかぁ…ジョーは孤児院でイヤな思いをしたもんね」沙羅が言った。

「ねぇ、ウィルちゃん。お姉さんとこの子供になる?」ウズメが少女にそう聞いた。

 言葉は分からなくとも雰囲気で感じたのだろうか?少女はうつむいて何かを考えてるようだった。

 それから急に顔を上げてジョーを指差して言った。

「ダディ」

「ありゃりゃ…ソルジャーの事を父親だと思ってるみたいやで」ヒジリが驚いたように言った。

「あ~ぁ…振られちゃった」ウズメが笑いながら肩をすぼめた。

「やっぱ、拾ってきたソルジャーが面倒見るしかないかな?」シュンが言った。

「こんな小さい子の面倒見れんのかぁ?…ソルジャー」ツクモが心配そうに尋ねた

「まぁ、何とかするしかないさ…俺も親父に拾われて育てられたんだから」ジョーは大きくため息を付いた。

「どんな生活をしてたのかしら?ひどく汚れてるわね…可哀そうに」沙羅が少女の汚れた服に触りながら言った。


~続く~

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