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ビーストハンター 第2話 「東京租界に死す」(5)

 ネオ東京の12番街のはずれにある音羽警備の車庫に着いたイェーガーたちは、それぞれビークルを降りた。

 ジョーはまるで荷物でも担ぐように眠っている少女を抱えて、シャルクを連れたシュンやヒジリと階段を上がって行った。

 三人が事務所のドアを開けてシャルクを中に入れると、早速事務員の早川ヒナが出迎えた。

「お帰りなさい」

「おぅ、ただいま…今日は大漁だったぜぃっ!」シュンが自慢気に言った。

「あぁ、みんなご苦労さん」

 別の任務から帰って来ていたツクモが彼らに声を掛けた。


 沙羅は、ツクモをあえて今回のミッションから外した。ツクモは7年前の事件でテロリストに私怨を抱いている。

 人手が多いに越した事はなかったが、私怨からくる万が一のミスを考慮しての事であり、沙羅の判断は正しいものだった。

 その配慮をツクモも充分承知していた…だから彼は一言も恨みがましい事を言わずに他の任務に付いたのだった。


 シュンとヒジリは、いったん三頭のシャルクをケージに入れてから事務所に戻ってきた。

 周りに人の気配を感じて目を覚ました赤毛の少女を、ジョーは下ろして事務所の椅子に座らせた。

 少女は目をこすりながら、自分の周りにいるたくさんの人間を不思議そうに見ていた。

「どうした?ソルジャー…その子は?」ツクモがジョーに尋ねた。

「俺のミスで母親を死なせてしまった」

「みなし児になってしもうたからっちゅうて、ジョーが拾ってきたんや」ヒジリがそう付け足した。

 それまでウズメと話をしていた沙羅が、デスクから立ち上がってウズメと一緒に少女の傍までやって来た。

 二人とも膝を屈めて椅子と同じ高さまで腰を下ろし、興味津々な目で少女を見回した。

「難民の子ね。髪が赤いし…それで名前は何て言うの?」沙羅が尋ねた。

「何も言わないから、多分日本語が喋れないんじゃないかな~?」シュンがそう言った。

「そんな事ないでしょ…ねぇあなた。お名前は?…お・な・ま・え?」

 ウズメが噛み砕くように、ゆっくりとした日本語で少女に尋ねた。

「ウィル」

 じ~っと目の前のウズメを見た少女は、しばらく考えてから初めて口を利いた。

「通じた…ウィルちゃんね」ウズメがうれしそうに言った。

「ウィルって…それ、普通男の名前じゃないかな~?」シュンは怪訝そうな顔をした

「ウィリアムか、ウィルソンか…父親の名前ちゃうやろか?よっぽど父親と何かあったんかな?」ヒジリがそう言った。

「もしかしたら死んだのは本当の母親じゃないかも知れない…泣かなかったしな」ジョーは言った。

「ねぇ、お父さんの名前じゃなくって、あなたのお名前は何て言うの?」沙羅がもう一度少女に尋ねた。

「ウィル」少女の答えは同じだった。


~続く~

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