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私があの特別な竜を見てから、オーウェルはなんだか素っ気なくなった。私と一緒に花をつんだり、庭で隠れたりしなくなった。
「毎月1度は顔を見せなさい。」それはお母様が結婚する時、おじい様が約束させたことだとか。だから毎月私達は母の実家に向かう。お父様はついてきたり来なかったり。
私は仕方なく、屋敷の中で静かに過ごすようになった。私には二つ年下の弟が、それから従妹にあたる三つ年下のオーウェルの妹がいたけれど、アルスもアディリアも私の遊び相手になるような年ではなかった。なにより、お母様が私の外遊びに連れ回すにはまだ早いと許してくれなかった。「始めるのはどれだけ早くったっていい」そう言ってよく刺繍を教えてくれたのはおばあ様。あのころの私には、針を布の向こう側に通してしまうのは、ひどく力の要る作業だった。そんなつまらない時期が数年つづいて。
私は自然と外遊びへの興味をなくしてしまった。
あれはいつからだったか、私が父と母に手を引かれてラソット家の屋敷の門を潜ると、オーウェルは決まって私の父がラソット家の大人たちと交わすように、──私の父はいつも母の実家では照れたように笑っていた──はにかみながら形式ばった挨拶をするのだ。私はそれを、オーウェルが急に私を置いて大人になってしまったような気がして寂しく思った。
そうして、寂しくなって母のドレスの影に隠れていると、オーウェルは──自分だって私と大して変わらないくらい子どもなのに──子供扱いして、わざとらしく、それこそ小さな子供とごっこ遊びをするみたいに私の手をとって、「ちいさなレディ」とか言ってみせる。オーウェルはいつのまにそんな振る舞いを覚えたんだろう。