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淡い緑の煌めく鱗  作者: 糸許 灯祈
竜のいる国
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お父様、お母様に送ります。


王城に着いてすぐの手紙にも書いたように、何一つ不自由はありません。前回、エリュカミラ殿下の学友として一年程ここに残る旨を記しましたが、二人にも書状の形で伝わっていたようで良かったです。ケルネさんは、やはり使者の方に驚いたことでしょう。


王城でオーウェルに会いました。元気そうです。竜騎士になる日も近いようです。


家に、アルスからの手紙はあったでしょうか。そろそろシャツを新調する頃ですね。前に使った濃い赤はアルスにはあまり似合わなかったと思います。


それから、私がオルコットさんに頼んで植えてもらったトレアの実はみんなで食べてください。と、わざわざ書かなくてもそうすることだと思います。パイを作る時期には、一度家に戻ろうかな。


私は元気です。カネリさんヤミナさんにもよろしくお願いします。


リナリア=ハース


~・~・~・~・~・~


家にいる両親に宛てた二度目の手紙を折って、用意してもらった品のある白い封筒に収める。暖炉の要らないこの時期、わざわざ火をもらうのも気が引けるので、蝋を使う代わりに細いリボンをかけて置くことにした。


一週間と少し続いた春の雨もすっかり痕を消してしまって、からりと晴れた春の終わりごろ。私が王城に滞在し始めてひと月が経とうとしていた。あいかわらず時間の大半をあてがわれた部屋で過ごし、気が向けばガラス張りのあの場所──リュカのお気に入りの場所だ──でぼんやり竜の影を待ちながら本を読んだり、外を散歩したりする。ライドン先生の授業は三回ほど受けたが、その中のお話のどれもが私の好奇心をくすぐった。主にディリアの10柱と王家の婚姻について。どこの誰の娘は何代目の王の何番目の王子を婿にもらって、その子は緑の目で、どうのこうの。いちいち覚えられる訳では無いが、教本に載っていた簡単な家系図と照らし合わせ、ちょっとした逸話を添えて語られる彼らの結びつきはとても面白い。


──それにしても。


ディリアの10柱と王家はなんとも縁の深い親戚である。姻族、血族を問わず複雑に交差していて、最近では全く貴族とは関わりのない農家の娘やら商家の息子やらが迎えられている例も少なくないが、やはり建国から数百年、狭いディリアの中での貴族たちはすこしばかり互いに依存しすぎたのかもしれない。


ロギューの家名を持つ王家は絶対である。だからこそ保たれてきた安寧がある一方で、私たちは変化に欠けている。


実態を、多くの民に晒すことはなくても確かにこの国に存在して、時折空に姿を見せ、他国との関係を取り持つ架け橋となる竜に私たちは慢心していたのだ。


海の向こうの国々から『船』なるもので、人が渡ってきたと聞くまで、多くのディリアの民が海を知ってはいても、その向こう側に思いを馳せることはなかった。


───国の外に興味を持つことすらなかった。


それが、別段悪いことのようには思えないけれど、この国を少しずつ知るうちに、なんだか、言いようのない不安な気持ちが──


「こんにちは、オーウェルの従妹さん。」


家に当てた手紙を持って、城内を歩く私に声がかけられた。




お待たせしております。ごめんなさい。

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