表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡い緑の煌めく鱗  作者: 糸許 灯祈
竜のいる国
28/31

28





「オーウェル!」


食堂に向かう廊下を行く人の中に、金髪の従兄殿はすぐ目に付いた。


「やぁ、リナリア。」


素直にお祝いの言葉をかけようと心に決めてからなかなか会うことがなかったオーウェル。今日も、飾りのない簡易型の軍服を着用している。騎士見習いの彼は全体に黄色っぽい──そこはもちろんディリア、一色使いでは終わらない──服。青いのが正式な騎士であるのはこの一週間の生活で知ったことだ。私はまだお目にかかったことがないけれど、竜騎士は緑でまとめられているらしい。ちなみに、我が家へ派遣されたコーエンさんの所属する伝令部隊の軍服は、茶色が印象的だった。


「あのね、おめでとう!」


「ん?」


───竜騎士になることよ!


『内定』という言葉を思い出して、オーウェルに近づきながら声を落とす。


「竜騎士に、なるんでしょう。」


「あぁ。」


「私、このあいだ、おめでとうっていわなかったでしょう?だから・・・。」


「ん、ありがと。リナリア。」


オーウェルが屈託のない笑顔を見せる。


───なんだ。やっぱりオーウェルはオーウェルじゃない。


それはいつかの、一緒に花を摘んで草原を走り回ったちいさな従兄に重なった。急にそっけなくなって、わざとらしい笑みを見せるようになった彼がずっと気に入らなかった。もしかしたら、私はすねていただけなのかもしれない。


「オーウェル?」


低い声が、問いかけるようにオーウェルを呼んだ。少し先に背の高い男の人が立っていて、振り返ってこちらを見ている。


「あ、ごめん!従妹がいたからさ。」


どうやら、オーウェルには連れがいたようだ。その男の人も黄色の軍服。お父様と同じくらいかそれより少し高いくらいの身長──私のお父様は世間でもそこそこ高いのだ──、無造作に跳ねる黒い短髪。彼が私たちの方へ向かって歩いて───目が合う。


───緑。


ぞわっと、寒気がする。目の覚めるような思い。心臓がきゅっとする。


淡い緑。そうとしか言えないその色は、私が長年追い求めてきたあの鱗の色。オーウェルやアルスの深い、森の重なる木々の葉の色合いとは違う。もっと清々しい、若い、草原くさはらに寝転んだ時日に透けるあの──


ぼんやりしてしまっている私の視界に、何かを耳打ちするオーウェルの姿が映る。


淡い緑の持ち主は、真面目な顔をしてうなづいて、私の右手をとる。


───え、何!


固まった私をよそに、まじまじと私の手を持ち上げ、眺め、彼の顔を近づけて──今では貴族の間でも廃れてしまった、男性から女性に送る最も礼儀正しい挨拶をした。


つまり、手の甲にキスをした。


「え。」


───お父様!まさかと思いましたが、本当に初対面でする人がいましたよ!!


さっきまでの感動は霧散むさん。体は急激に冷えていく。が、しかし。心臓は相変わらず早くなっているし、なにより顔が熱くなって行くのがわかる。赤面しているに違いない。


───あぁぁぁぁ。


私はびっくりしすぎて動けないし、相手は何故か動かない。


と、オーウェルが片手で覆った口元から笑い声を漏らし始めた。


「オーウェル?」


『何が面白いのか』と精一杯の抗議を込めて言ってやる。


「サーク。もういいよ、顔上げて。リナリア困ってるから。」


やっと口を話した彼はなにやら満足気に見える。表情には出ていないけどなんとなくそう感じた。


「僕の従妹、リナリアだよ。今、第二王女殿下の学友やってるんだってさ。」


「よろしく、リナリア嬢。」


「はい・・・。」


「ほら、いつまでびっくりしてるの?リナリア。こっちは、学校からずっと一緒のサーク。」


「それから」といいながら、私の方へ顔を寄せる。


「サークも、竜騎士になるんだよ。」


「えっと、おめでとうございます。」


まだ衝撃が残っている私は、何気なくぬくもりの残る手の甲を見た。




やっと何かが動き出す28話!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ