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「お待たせしてしまったようで、申し訳ございません。エリュカミラ殿下。」
「いいえ、私たちが早くついてしまったのよ。待ちきれなくって。」
ほどなくして、フレザさんとは別のお仕着せの女性が案内してきたのはひょろりとした中年男性。もとから薄めの色らしい黒髪には、まばらに白が混じって、一見すると灰色。穏やかな物腰はどことなく私のお父様を思わせる。
「それから、リナリア嬢ですね。やっぱり君のお父さんに似ています。アルダネス君はお元気でしょうか。」
「初めまして、ですよね。リナリア=ハースと言います。父をご存知なんですね。今も元気ですよ。」
「失礼、私はライドン=ラトニー。ディリアの歴史にまつわるものを管理する役人の一人です。君のお父さんとは、若い頃同僚でした。組は違いましたが、同じ学校の同期生でもありますね。」
お父様よりも随分年上に見えるけれど、もしかすると、お父様が若く見えるだけかもしれない。
「あら、世間って狭いのね!ライドン氏が、私たちに歴史を教えて下さる方なの。ライドン先生よ。」
「ライドン先生。よろしくお願いします。」
「ええ、よろしくお願いします。」
「とりあえず、今日は本を持ってこなかったみたいですからね、ディリアについて、大まかに確認しましょう。」
~・~・~・~・~・~
現在、南西から北東までをぐるりと高い山脈──竜のすみかと度々称されるそれ──に囲まれ、他の国に接することなく海に面したディリア。木は少なくて、背の低い植物と鉱物に恵まれているため染色が盛んである。布や糸を染めるだけでなく、質の良い絵の具も生み出している。建国から長らく、竜を使った一方的な使者の派遣と、他国との書状のやりとりが続いてきた。近年、他国による『船』──それは海を駆ける箱だという──での来訪が相次ぎ、外来の品の流通がなされはじめている。
このあたりは、私も知っているような一般常識の範囲内のディリア情勢だ。
肯定の相槌を打つ私たちにライドン先生は、小さな子に聞かせるようにゆったりと話す。
「と、いうのは二人もご存知ですね。最近のディリアです。えっと、ですね。そもそも『ディリア』とは、国の名前ではないのです。竜を従える前のディリアの人々は、他に土地があることを知りませんから、閉鎖されたディリアをこの世の全ての陸地だと考えていたわけですね。」
───そうよね、飛ぶこともなかったし、船だって持ってなかったわ。
「ですから、『母なる大地』とか『この世の土地の全て』といった意味を込めた古い言葉で『ディリア』と現在の国土にあたる全域を呼んだのです。初めのうちは、ちいさな集団がそれぞれのリーダーを中心にディリアの覇権を争っていまして。より強いリーダーの集団に吸収される形で大きな集団へと変わっていきました。」
お待たせしました!ごめんなさい。
待って下さいました?ありがとうございます。
ということで、26です。(*゜▽゜*)




