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頑張ります、よろしくお願いします。m(_ _)m
リナリアによる回想編。
しばらく会話文のない固めの文章が続きますが、根気良くお付き合い頂けると嬉しいです。
───淡い緑の煌めく鱗。
昼過ぎの暖かい陽射しを反射して輝く、透明感のある緑だった。若い芝の瑞々しい緑色とはまた少し違って、薄めの、なんというかとにかく、綺麗な色の竜だったのだ。
今でもその瞬間だけは脳裏に鮮明に蘇る。大型犬と変わらない位の太さの体躯で、小さな爪の見える筋張った、鶏の足を太くしたみたいな手足が四本。トカゲみたいな顔。小さな角が二本。全身も乾いた土地に暮らす種類の──おじい様の部屋で見た事のある置物だった──トカゲに似て皮膚の表面が細かく鱗のように隆起しているのがわかる。体の大きさに不釣り合いなくらい、小さなコウモリみたいな翼と、逆に大きくて長すぎる立派な尾。背筋と尾の先までは1列、他の所より大きな角のない鱗─その部分だけはキラキラと光を反射していた─が並んでいた。
───それは、まんまるの、ぱっちりした、鱗と同じ色の目で私をみるのだ。
長い首を、立ち尽くす私の方へとぐうっと寄せて、じっとこちらを伺う。地へ伏せる様に折り曲げられた四肢。首を傾げながらのぞき込む、白い所のない瞳。中途半端に広げられた翼。
───もし私が手を伸ばしていたなら、きっとその硬そうな頬に触れることが叶っただろうに。
竜の様子から感じられるのは私への怯えでもなければ、威嚇でもなかった。竜は大型犬のような──あの頃私にとって大型犬は大きな生き物の代表だった──大きさではあるけれど、犬のように獣臭くはなかった。鳴き声を出すでもない。息遣いも聞こえない。長い尾は力なく地に垂れている。ただ、瞬きだけは、私と竜が対峙した短い時間の間にもずいぶんと繰り返していて。柔らかい土にくい込んだ足の爪と、尾を引きずったらしい倒れた草の跡だけが、私にこの竜は生きているのだと実感させるもの。