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true end  作者: 笹野優衣花
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失われた国


 緑と宙の国−−−ディモス国。


 この国には魔法があり、王国は五大魔法を中心に栄えていた。火・水・土・風・雷−−−この魔法を五大魔法と呼び、王城には五元祖と呼ばれる魔導士たちがいた。彼らはその属性において国一番の魔導士であり、それぞれが自身の魔法を生かして国政に反映させていた。


 しかし、この国の平和も崩れる。


 今から丁度五十年ほど前。突如として現れた時の歪により、国の平和は乱された。時の歪は影気しょうきを共に引き連れ、歪が生じた場所では影気しょうきが蔓延した。しかも、時の歪はその時近くにいたすべてのものを呑み込んでいく。故に歪によって人々が攫われていく被害が国内で勃発したのだ。


 歪は孤児の増加や人口減少の元となった。


 それだけではない。影気しょうきは闇を生み出し、魔物を誕生させた。国内で魔物に襲われたという報告が相次ぎ、国は混乱に陥った。


 五十年前。時の五元祖たちは考えた。せめて、これ以上被害が大きくならぬうちに、王城だけでも安全の場所へ移ろうと。


 そして、彼らは自身の魔力を注ぎ込み、王城を宙へと移動させた。王族だけでも危険から回避されれば、国として機能できる。ディモス国は最悪の事態から免れた。



 しかし、これがいけなかった。


 国民は王から見放されたと思い込み、反発心を抱くものが増えた。一向に消えない影気しょうきに、行方不明になる人々。王も空の上から国政を行ったが、肝心の影気しょうきを消す方法を見いだせず、国は年々荒れていった。


 時の歪はその後、十五年ごとに発生した。その度に、影気しょうきが各地で蔓延していった。新たに魔物を生み出し、人々は安らぎを失った。



 そして、さらに不思議なことに、新たな病が発生した。−−−それが、『心の結晶化』である。


 今から十五年前。とある村でこの病は発症した。

 息苦しさに倒れ、そのまま胸元に赤い結晶型の印が出来る。その印から蔦のように赤い痣が伸びていき、全身へと巡っていく。全身まで巡り終えると、胸元から結晶が浮き上がるのだ。


 しかし、結晶が浮かんだと同時に、その人は心を失う。瞳から情の色が失われ、完全に意識を失くすのだ。身体から遊離した結晶はそのまま宙へと飛んでいき、空へと消える。そして、後に残された身体は、まるで塵のように粉々になって空気に溶けるのだ。


 この世のあらゆる薬でも、この病は治せなかった。国に僅かしかいないヒーラーに頼んだが、彼らの魔法でも打つ手は無かった。


 この病の恐ろしいところは、何の前触れもないということと、治す手段がないということ。故に、他国の者はこの国を恐れ、寄りつこうとはしなかった。


 

 かつての美しさを誇っていたディモス国は、ほんの五十年の間にその姿を変えたのである。 




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