一章:5
「ん…」
意識が覚醒し目を開けると何の変哲もない木でつくられた天井が見えていた
ここはどこだったか…そうだ、確か吸血鬼に血を舐めさせたと思ったら噛みつかれたんだったか
腕から流れる血では足りなかったのだろうか。それで吸血行為?を行ったのかもしれない
吸血をされた後なにが起こったか全然覚えていない、俺は倒れたのか?
ということはここは吸血の住処だろう
なんにせよよく生きていたものだ…
「…痛くないな」
噛まれたであろう首筋には二つの点のような跡が残っていたが痛みは全くなかった
体調はむしろ絶好調に近くあんなことをされた後とは全く思えないほどだ
とりあえず俺は起き上がり周囲の状況を確認することにした
「起きたかくそ野郎」
「うおっ!」
起き上がったら目の前にはコウモリがいた
コウモリはいらいらしたようにばっさばっさと羽を鳴らしてる
「なんだ?付き添っていてくれたのか」
「メリスに頼まれたから仕方なくな」
「…一応礼を言っておくよ、コウモリ」
「人間に礼なんて言われたくねぇよ、あとコウモリじゃなくてサタナキアだ」
「サタナキア…?ディガイズの分類名か」
「いや、俺の名前だ。あとサタナでいいぞ、どうせお前とは長い付き合いになるんだ…さて吾輩はメリスを呼んでくる、余計なことはしようとするなよ?」
「あぁ…」
そういうとサタナは空いていた窓から外へと出ていった
扉が開けられないからだろうとは思うが…それよりも気になることがあった
サタナの言う長い付き合いとはどういうことなのだろう
もしかしたら俺の血が気に入ったから捕まえておく…とかか?
そうであれば俺もただでエサになるつもりはないがな
「…そうだ、落ち着いている場合じゃない」
俺はあの子を助けに来たわけではない、殺しに来たんだ。大金を得て今の生活から抜け出すために
いつでも戦えるように剣を持ち歩くようにしよう
ここは敵のアジトだ、気を抜いたら死ぬ
…そうだ、あの子は人間じゃない、ディガイズだ。あの子に罪はないが人間の敵であることは変わりない
俺はそう心で誓い剣を取ろうと立ち上がったその時ドアが思いっきり開いた
「気が付いたの!?」
「あ、ああ…」
「よかったぁ…」
彼女は俺の元気な姿を見るとほっと胸を撫で下ろした
心配していてくれたのだろうか…ディガイズが人間の心配をするなんてことは聞いたことはないがこれは罠なのだろうか
そしてそのまま彼女は俺に近寄ってき、俺の首の跡を確認すると心配そうな目でこちらを見つめた
「…ごめんね、無意識とはいえこんなことしちゃって」
「なぜ謝る」
「当然だよ!」
「あのなぁ…無意識なんだろう、それならあんたが謝る必要ないし、そもそも俺があんたの忠告も聞かずに勝手に助けようとしてこうなったんだから、俺の自業自得だっての」
「それでも私が謝りたいから謝るの!ごめんなさい!」
「強引な奴だな…」
でもこの調子なら殺されることはなさそうだ…
けど、この子は本当にディガイズかと疑うほど人間にやさしい子だな
いや、俺を油断させる罠かもしれない
「…それに、その…えっと…」
「…なんだ?」
「私が謝るのは噛んじゃったこともなんだけど…その…」
「ん?」
「なんだお前にしてははっきりしねぇな、さっさと言っちまえよ」
と、開いたままになっていたドアからサタナが入ってきた
「なんだ?全く話が見えないんだが」
「お前、起きてから変わったことないか?」
「特には…しいていうなら体の調子がいつもよりいいってぐらいか?」
「なるほど、そりゃそうだろうな」
「だからどういうことだ?」
彼女の方はこっちの目を全く見ようとしないし、サタナは俺があわてている姿を見て楽しんでいるように見えた
しかししつこくサタナに問い詰めるとめんどくさそうに羽を鳴らして彼女をせかした
「えー…でも、なんというか恥ずかしいんだけど…」
「お前がやったことだろうが、さっさと言ってしまえ!」
「うー…」
彼女は観念したようにこちらを向き静かに話してくれた
「…落ち着いて聞いてね」
「ああ」
「その、噛んじゃった時にあなたのことを私の…」
そのあとの言葉が出てこないのかそのまま黙ってしまった
が、少しすると覚悟が決まったように彼女は口を開いた
「眷属にしちゃった…みたいなの…」
「…ん?」
「知識のねぇくそ人間だなおい、いいか眷属ってのは…」
「わー!わー!言わないでサタナァー!」
「うるせえ!つまり眷属ってのは吸血鬼のパートナーだよ」
「…えっとつまりどういうことだ?」
「お前はメリスのモノになったんだよ」
「…はい?」
「サタナァー!言い方考えてよ!!!!」
「言い方も何もストレートに言ってやっただけだろうが!」
俺はセト、ただの貧乏人のダメ人間です
そんな俺はなんとここ周辺で恐れられているディガイズ吸血鬼の
眷属になってしまったようです
…うっそだぁ