一章:1
今日もただまぶしいだけの太陽が照りつけていた
この町グレイスラムは王都などの都市や町に比べて建物が非常に少ない
そのため容赦なく太陽が照りつけてくる
その数少ない建物の中に一人の男…俺がいた
俺は窓というには小さすぎる隙間から漏れるかすかな光に照らされながら天井を見上げていた
「…熱い」
この家は石造りのため熱がこもりやすい
しかも窓もあってないようなものなので換気もできない
いわば最悪の住居と言ってもいいがこの町では家に住めるだけまだましなのだ
けどそれも今日までであることに俺は絶望していた
「…今日からどうしよう…こんな熱い中野宿とか無理だろ絶対…」
その時コンコンと乾いた音が鳴った
俺はその音が聞こえてもその場から動かずに天井を見つめていた
「…俺はいない、いないんだ」
ノックの主を俺は知っている、だから開けたくない開かないでくれ
だが願い届かず無情にも扉は開かれた
もちろん鍵なんてものは存在しない、そんなものがあるのは管理の行き届いた保護地域だけだ
その開かれた扉の先には立派ひげが生えた細身の男が立っていた
「あー、やっぱりいたね君…セト君だっけ。居留守とか使っても無駄だってわかってるでしょ?」
彼はこの家の管理者だ
どの町の家にも管理者というものが存在し管理者は文字通り物件の管理を担当している
もちろん家を維持する資金、家賃の回収もしている
「で、昨日も言ったけど、家賃今払えないなら速攻でていってほしいんだよね、もう何か月払ってないか自分でも分かっているでしょ?」
「もうちょっと待ってくれませんか、来月にはまとめて必ず…」
「あーもういいから、今出ていってもらったら今までの家賃はチャラにするって言ってるでしょ?どうせ来月も同じこと言われるのわかってるんだから」
「…わかりました」
俺はどうあがいてももうここに残ることはできない
仕方なく少ない荷物と親父の形見である二本の小剣を持ち、この最悪物件を後にすることにした
俺はこの町、グレイスラムを歩きながら出ていくとき管理者に言われたヒトことを思い出していた
「君もまだ若いんだからちゃんとした仕事探したほうがいいよ?まあこの街じゃまともな仕事なんてないけどさ」
俺だってこんな生活をいつまでも続けたくなんかない
けど、こんな素性のわからないクソガキを雇ってくれる所なんてなかった
…この町なら俺でも働ける仕事があると思っていたが全くない
この町、グレイスラムは通称貧困街と言われている
王都からかなり離れているこの町は王都の管理が行き届いておらず、治安もよくはない
しかも周りが人ならざる者「ディガイズ」の巣窟である無秩序地帯に囲まれているためこの町に住む者はおろか技術者や商人もちかよらないため設備も行き届いていない
貧困街と言われるのもうなずけてしまう
…ただ俺は貧困街の一番最低家賃の家を追い出されてしまったためもう行くところが本当になかった
「…もうあれしかないか」
俺は町の掲示板の前まで来ていた
そこで俺が見ていたのはディガイズの討伐依頼書
つまりは賞金稼ぎだ
人ならざる者「ディガイズ」は化物として恐れられ人々に危害を加えるものがほとんどだ
そのため王都はこういう風に賞金を懸けている
討伐した証さえ持っていけば誰でも賞金がもらえる為腕の立つ者にとってはとてもいい仕事と言える
だが俺は亡くなった父親に教えてもらっていた程度なので腕に自信はない
が、もう俺に選んでいる暇はなかった
「…やるしかないな」
俺は勢いよくその依頼書を剥がしポケットに押し込んだ
そして、俺は行くことにした
ディガイズの巣窟である無秩序地帯へと