表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

第五話「遥々外海越えてルーンテール神帝国」

結局日を跨ぎました…。

何はともあれ、どうか楽しんでいってください。

<<フィールド:外海 現在地:世界大海洋・西方海域>>


 サドラス一行を乗せた魔導鉄甲船は、大西洋海龍オキシデンタルサーペントの群れに囲まれていた…。


「ねえキュクルさん…」

「流石に『ハイ・アナライズ』の必要性はありません…ですが一体一体のレベルが…」

「最低でも215か…単体であれば雑魚にしかなりえぬが…」

「駄目だろアレは…MAPの赤点軽く見積もっても三十体だぜ…?」


 冷や汗だらだらなロティたち。厳蔵の目は半分死んでる。


「さあ、早く倒せ。さもなくば俺達の船が沈む」

全能力上昇魔法オールライザッパーⅩと広範囲回復魔法ヒールフィールドⅦを掛け続けてあげますから、

たまにはマスターの力に頼らず何とかしてみなさイ」


 涙目な四人の近くでテーブル出してワイン片手にくつろぐサドラスとメドラ。


「俺の方に向かってきた海龍は潰すが、お前達の方に来た海龍には

一 切 、 手 を 出 さ ん(キリッ」


 悪魔か…いや悪魔だったこいつら…そんな感じの事を思いながら、

四人は色々とヤケッぱちな雄叫びを上げ、迫り来る海龍相手に逆レイドバトルを挑む…。


………。


……。


…。


 甲板には放心状態で仰向けに倒れるロティ、キュクル、ララリリル、厳蔵の四人。

傍には何か椅子とテーブルを出して優雅にサンドイッチ食ってるサドラスと

その隣で無邪気につついて遊びながらプリンを食べるメドラ。


「アレだけの海龍を撃破して…レベルが3しか上がってないですねぇ…」


 自分のステータス画面を見て大きく溜息をつくロティ。


「やはりレベル差があまり無いことが理由なんでしょうね…」

「私はその境地はもう過ぎた…だが、得るものが無い苦労など…要らぬ…っ!」

「っつうか何で単品でもレイド級なモンスターの大群と普通にエンカウントしてんだよ

頭おかしいだろ運営ェ…あー、クソ…ここもうGrTrAdじゃなかったわ…」


 厳蔵は自分のアイテムストレージから葉巻を取り出して火を点ける。


「ああ、アレもレイド級だったのか…素材を剥いでおけば良かったな」

「サドラス…お前さんあんだけ所持金あんのにまだ稼ぎ足りねえのかよ…」

「金は無いと困るモノ、多くても困らないモノ、だ」

「あれ? …マスター、私レベル1つ上がってましタ!」

 

―<ディティール・ステータス 1/3>―

フルネーム:メドラ

年齢:714

性別:女

種族:海魔スキュラ・帝級<存在進化UL>

職業:闇海魔女傑ネレイドマギッサ死霊術師ネクロマンサー

段位【最大Lv】:1210 (限界突破S)

生命【最大HP】:2923400 (限界突破UL)

魔動力【最大MP】:14654917 (限界突破OD)

闘気【最大SP】:1336245 (限界突破EX)

BURST ATTACKゲージ:300%

基礎攻撃力【STR】:52785 (限界突破S)

基礎耐久力【VIT】:82580 (限界突破EX) 

基礎精神力【MAG】:104520 (限界突破EX)

基礎抵抗力【RES】:153299 (限界突破EX)

基礎敏捷性【AGL】:43278 (限界突破S)

総合運  【LUC】:1076  (限界突破)

ダメージ修正【ALT】:14851 (限界突破S)

属性耐性:火20 水99 風25 土99 雷50 光65 闇78 波動20 万能05

異常耐性:毒100 眠100 混30 痺100 凍10 石100 死100

所持金:700066352164824095425869YD

<<次のページ>>


「良かったなメドラ。ここまでくるとレベルアップは骨が折れるからな」

「はイ!」

「何度見てもふざけたステータスだぜ…だがアレが四桁レベルの世界なんだな…」


―<ディティール・ステータス 1/3>―

フルネーム:厳蔵

年齢:29

性別:男

種族:人間族

職業:必殺用心棒ハイネスガード枢軸大将軍アクシズインペレーター

段位【最大Lv】:428(限界突破)

生命【最大HP】:63418(限界突破)

魔動力【最大MP】:17030(限界突破)

闘気【最大SP】:27651(限界突破)

BURST ATTACK【BA】:168%

基礎攻撃力【STR】:25387(限界突破S)

基礎耐久力【VIT】:30217(限界突破S)

基礎精神力【MAG】:2622(限界突破)

基礎抵抗力【RES】:7723(限界突破)

基礎敏捷性【AGL】:10805(限界突破S)

総合運【LUC】:1198(限界突破)

ダメージ修正【ALT】:9986(限界突破)

属性耐性:火90 水25 風15 土10 雷30 光15 闇30 波動02 万能01

異常耐性:毒99 眠99 混99 痺99 凍99 石99 死99

所持金1895468YD

<<次のページ>>


「俺が張り合えるのは精々異常耐性くらいか…?」

「浪人…貴様のステータスも十分異常なりけり…」

「当たり前だろ、俺は一応社会人課金プレイヤーなんだからよ」

「社会人…課金…古の時代の超人エトランゼ定番の二大口上と聞いてはいましたが…

厳蔵殿もやはり超人なのですね…! 流石高レベルスキルホルダー…!」

「何かくすぐってぇな…だが、サドラス…お前さんのレベルはもうチートレベルだろ」


「チートじゃねえ! 努力ヤリコミだ!」


 サドラスの嘗て無い威圧にその場の全員が硬直する。


「お…おう…何か、すまんかった」

「……ハッ?! …いや、こちらこそすまん…ちょっと昔、違法改造者チーター

呼ばわりされたことがまだ尾を引いているようだ………

………連中は一人残らずジェノサイドしてやったのに……」

「チーター? チーターって何ですか?」

「私には分からぬが…我が君がこれほどに激昂なさるのだ…

きっと相当に高次元レベルで口汚い卑罵語に違いなし」

「でもマスター? マスターはどうやって嘗てのアドミニストレータ騎士団をも

遥かに超えるレベルを得たのですカ?」

「考えてみればメドラ殿のレベルも尋常では無いですが、サドラス殿のレベルは

正直言って前代未聞にも程があります…古の超人エトランゼですら平均レベル300以上…

あの、今さら聞くのもおかしいのですが…サドラス殿は何者なのですか?」


 キュクルの質問にサドラスは顎に手を当てて考えこむ。


「…俺のような連中は当時から"ハイジン"と呼ばれてたが」

「ハイジン?」

「聞きなれない言葉ですね…あれ…でも何かどこかで…」

「あん? 何かロティちゃん達にはキチンと翻訳? いや認識されてねえっぽいぞ?

…よっしゃ、ここは字で著してみるか」


 厳蔵は自分のアイテムストレージから半紙と筆を出して『廃人』と書いてみせる。


「!? …そうか! ハイジンとは廃人マグナウスの事だったのですね!

それならばサドラス殿がそれほどの高レベルだというのも頷けます!」

「言われてみればそうですねぇ…」

「古の時代に旧魔族領を蹂躙したといわれる冒険者達も廃人が筆頭だったと

私の族長も言っていたな…流石は我が君…!」

「いやいや待て待て…そもそもその廃人ですら平均レベル800以上だが、

四桁レベルなんてふざけた連中に会った事ねえぞ俺。

あのKATUMIですら"レベル985の自分を越えるユーザープレイヤーは知らん"

って言ってたのによ…」

「マスターをそこらの未熟者どもと一緒にするなでス。

話を戻すのですが、マスターはどうやって

あの忌々しいアドミニストレータ騎士団を凌駕するレベルを得たのですカ?」


 サドラスはアイテムストレージから人数分の椅子、ティーセット一式を

取り出して広げる。


「ちょっと長い話になるが、良いか?」

「是非お願いいたします」

「あ、お茶は私が淹れますね」

「我が君、お、お隣に座っても宜しいでありけるか?」

「俺抹茶カフェあったら欲しいんだけど」


 先程のグロッキー状態は何だったのかと思えるほどに、やいのやいのと

各々着席するロティたち。

 遠巻きに一匹生き残っていた海龍が「え、何なのこいつら…?!」と

言わんばかりの表情で見つめている。


「俺の昔話を聞いて突っ込めるのが厳蔵しか居ないのが物悲しいが」

「そりゃあ悪うござんしたねーw」


 ロティに淹れてもらった抹茶カフェを美味そうに啜る厳蔵。


「お前らからすれば701年以上前の大昔になる…

当時俺はこの世界の高難易度ダンジョンと言うダンジョンを制覇するのが

三日の睡眠を抜きにしても欠かせない趣味だった」

「オイオイのっけから廃人成分全開かよw

まーネトゲのために有給休暇取った俺も人の事言えねえけどww」

「み、三日間も寝ずにダンジョン進攻…?!」

「流石我が君! 24時間なんて楽勝で戦えるのでありまするか!」

「えぇぇぇー……………ひゃああ?! こぼしちゃいました!! 布巾布巾ッ!」


 話を続けながらサドラスはロティに布巾を渡す。


「総階層769F:冥王の地ユッグゴトフ、全916F:海底幾何学神殿ル・リェー、

全919F:超新星宮フォーマロウ、全4030F:混沌魔空間アザーティ、

全8646F:火闇宮カイゼルンヘイム、全65535F:ヌオグラム・ゾーン…

他にも数多く踏破してはきたが――

「オイ待てコラ攻略組ギルドですら完全踏破してねえダンジョンが混じってルヴェッ!?」


 話を続けながらサドラスは厳蔵をデコピンで弾き倒す。


「――その中でも俺の胸を熱くさせてくれたのが創世の神々かいはつしゃ

造った『攻略できるものなら攻略してみろ』としか言いようの無い深さのダンジョン…

全1024038Fの『天元至高時空間アルフメルトアルト』…

あそこでのダンジョン生活は筆舌に尽くしがたい感動を俺に与えてくれた…」


 「んなぁっ?!」と叫んで起き上がった厳蔵。


「ちょ、おま…! 廃人だらけの攻略組ギルドですら

10500階層付近で諦めたダンジョンじゃねーか!? つーかあそこって

百万越えの階層だったのかよ…!? やっぱGrTrAdの運営頭おかしいわ!

そしてサドラス! お前さんはお前さんでデスゲーム時代にソコ潜ってた時点で

運営を遥かに凌駕するレベルでっつーか最早狂気の沙汰だかんな!?」

「ちなみに俺がデスゲーム化したのに気付いたのはそこを一回踏破した時だ」

「いや余計性質が悪ぃよ?!」


 厳蔵以外の四人娘達は会話の内容を必死に理解しようとしていた。


「古のダンジョンをソコまで潜れる人はいません…サドラス殿…凄すぎる」

「お、お茶の味がわからなくなりそうです…」

「並み居る強敵たちを見下して蹂躙する我が君…ぬふぅ…♪」

「どうしよう…マスターとの距離が遠くなっていく…

でも話が二割程度しか分からなイィィィィィ!」


 喉が渇いたのかサドラスはお茶をお代わりする。


「『天元至高時空間』が流石にイカれた仕様をしていると思ったのは、

俺が500001Fに来たときのことだ。そこに現れるモンスターが

今まで戦ってきたモンスターと遜色ない戦闘力にも拘らず

軒 並 み レ ベ ル 一 桁 という鬼畜設定だ」

「ぶっ!? 本気でイカれた仕様だなオイ?! 経験値も一桁しか得られねえよ?!」

「最初は俺も運営にテロしてやろうかと思ったのだが、

ど う せ 一 千 万 の 敵 を 倒 せ ば 

レ ベ ル 上 が る か ら ま あ い い や とも思ったので

そのまま継続して潜ることにした。

 一応モンスターが食料アイテムに変換可能な素材を

低 確 率 だ が ドロップしたから

運営もそこまで腐っちゃいないなとも思えたしな」

「待て待て待て! 十分運営腐ってる腐ってる! …そうか、

だからお前さんはLUC値まであんなに強化してたのか!

っていうかアレの強化アイテム創世級ジェネシスだぞ!?」

「超低確率だがステータス強化アイテムもドロップするからな。お陰で初めての五徹だ」

「死ぬ!? 五日も寝ないのは流石に死ぬって! 俺も三徹したことあるけどよ…

三徹の反動はほぼ丸一日寝込むぞ?! 実際三徹明けの深夜三時で寝て起きて

"何だ、まだ朝九時か"と思ってカーテン開けたら真っ暗で実は翌日の夜九時でした…

ってレベルなんだぞ!?」

「ああ、その時は深夜二時に寝落ちして二日後の夕方五時に起きたな」

「いやお前良く襲われなかったな?!」

「召喚術でサモンしたモンスターのレベルも

俺と大して変わらないレベルだったからだろ」

「なるほど…それは納得…つうかお前さん召喚術もマスターしてやがったのか」

「爪弾刹那並のバランスブレイカーなので滅多に使わないがな」

「…俺はお前さんと同盟契約できたことを幸運だと思ったほうが良いんだな…

6000レベル越えのバケモノ軍団なんかと戦いたくねえよ…」

「バケモノ軍団といえばこの世界に来る直前に転移回廊ヴィフレストで一狩りした

レベル4000越えモンスター軍団を思い出したな…アレはドレもコレも

PKに特化したいやらしい攻撃をしてきたんだよな…」

「【電界皇】の地団駄の原因はお前さんのお陰かよ!? そこはmerci!

だが言うに事欠いてレベル四千越えモンスター軍団を"一狩り"ってのは

どう考えても文法がおかしいだろ!」

「まあ遊びすぎてHPを一千万ほど削られたからな」

「それ遊びのレベルじゃねえよ?!」


 サドラスはお茶菓子を何個か摘まむ。


「話を戻すが、『天元至高時空間』のモンスター相手に経験値を稼ぎ続けるところに

限界を感じ始めるようになった1019038Fから変化が起こった…

何と此処から1F降りるたびにモンスターの平均レベルが1ずつ上がったのだ」

「いやその前によく心が折れずに百万階層突破したな!?」

「楽しくてしょうがなかったよ…最下層のモンスターの最大レベルが6535で

打ち止めと判明するまではな…結局俺がレベル6000を越えたところから

本格的にレベルが上がりにくくなったからな…それでも今まで上げるには上げたが」

「それでも諦めないお前さんの意志の強さには恐れ入るわ」


 厳蔵はサドラスに敬礼。サドラスもそれに合わせて敬礼。


「と、まあ俺の高レベルの由縁はこんなところだな」

「サドラスさんの一意専心には私も恐れ入りました」

「凄すぎて言葉に出来ません…」

「はぁはぁ…我が君の苦行凄すぎまする…はぁはぁ…」

「マスターが…また遠くに行っちゃウ…?」


 全員何も言わずお茶で一息。


「さて、俺が長話をしている間に魔物達も準備を整えて来てくれたらしい」

「ふぇ?」

「えっ?」

「ぬぅ?」

「ン?」

「ああん? ……げっ!?」


 サドラス一行を乗せた魔導鉄甲船は、再び大西洋海龍の群れに囲まれていた…。


「ほう、今度は色違いの変異種に亜種、公級、王級…おお帝級もいるな…

流石に皇級はいないのか…つまらんな」

「つまんなくねえよ?! 決してつまんなくねえからな!?」

「あはは…私の命運もここまでですかねぇ…?」

「しかも平均レベルが上がってる…?!」

「ぐふぅ…またも全く気持ち良くなれぬ展開…! おのれハウリングさえ効けば…!」

「懲りない蛇さんたちですね、マスター?」

「仕方ないな…変異種系は俺がどうにかするから、"みんながんばれ"」

「頑張れませんよ!?」

「頑張れとか本気ですか!?」

「頑張れるかボケぇ!!」

「お任せください我が君…!

(わざと無様な姿を晒してお仕置きもといご褒美を貰うのも有かも知れぬ…!)」

「了解です、マスター♪」


 逆レイドバトル二回戦の開始音もまた気合の入った雄叫びだった。



<<フィールド:ヴァナヘイム地方 現在地:ルーンテール神帝国国際海港>>


 ルーンテール神帝国。嘗てはルーンテール神聖国と言う名の中規模宗教国家だったが

701年前の大異変で超人たちの遺産とも言える「ロストスキル」を大量に保有し、

何処よりもいち早く団結して大国になった経緯がある国である。

 純粋な戦力も世界で一、二を争う規模であり、正面から戦いを挑む国が存在しない

世界最強の国とも名高い国だ。故にここで一山当てようと考える冒険者と商人は

後を絶たず…隣国は軒並み事実上の属国扱いでも誰も文句を言わない。

 またこの国には法王と帝王の二人の王が存在し、帝王が主に政治と軍事を担当し

法王が神事法事を担う。ちなみに法王も帝王も同じ血族だが、最終的な選定は

実力主義の神官たちによる投票だ。


「ひゃあ…人が一杯いますねぇ…」

「こいつぁスゲエな、人種の坩堝だ」

「シルドラント王国は人族と妖精族が中心ですからね…

あ、戦鬼族もいる…やっぱりみんな背、大きいな」

「くくく…だがここに居る者共は全て…」

「いずれマスターの元に支配される宿命なのです…キヒヒ…」

「そんな面倒な事はやらん」

「ふぐぅ!?」

「はうぅ!?」


 サドラスは溜息を吐きながらララリリルとメドラにデコピンを喰らわせる。


「しかしよ…ここまで来るのにクッソ疲れたわ…」

「そうですねぇ…心が折れそうでしたよ…」

「結局レベルも碌に上がりませんでしたし…本当に骨折り損です」

「まあ、全く気持ち良くなれなかった事については私も同意する」

「マスター? チェックインは何処にしますか?」

「そうだな………よし、慰安代わりに『帝国ホテル』にでも泊まるか」

「お? 太っ腹だな? 全員スイートか?」

「可能なら聖級にするつもりだが?」

「ぶほっ?! オイオイマジかよ?!」

「あー、聖級…良いですねぇ♪ 美味しいお酒が全部タダでしたもんね」

「ロティ殿…泊まった経験があるのですか?!」

「ま、まさか…貴様…」

「マスターと二人きりで…?!」

「え? はい、そうですけど?」

「「な、何ぬわぁんどぅぁってぇええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」


 ララリリルとメドラは般若の如き形相で叫んだ。


「…サドラス爆発しろ」


 吐き捨てるように呟く厳蔵。


「え? え? え? 何かおかしいんですか?」

「………ハァ」


 サドラスは眉間を押さえた。



<<フィールド:ヴァナヘイム地方 現在地:ルーンテール神帝国・帝国ホテル>>


 面倒な一悶着があったが「お前らが想像する展開だったら此処に居ないだろ」と

サドラスが一蹴して解決した(?)ので、表面上は(?)元通りである。


「一泊したいんだが」

「申し訳ありません…只今当ホテルの部屋は満室でございまして…」

「ええー!? でも聖級なら空いていますよね?」

「聖級をご存知なのですか…ですが申し訳ございません…只今聖級にはやんごとなき方が

ご宿泊なさっているのでやはりお客様のご要望にはお応えできません…」

「エコノミーも駄目なのか」

「申し訳ございません…そちらもやんごとなき方のご宿泊で予約が殺到いたしまして…

現在キャンセル待ち多数です」

「うへぇ…エコノミーですら駄目なのかよ…そのやんごとなき方パネェな」


 ―ケチ臭いわね! どうせ使わない部屋を貸しきってるバカ貴族がいるんでしょ?!

そいつらにアタシが話をつけてやる!―

  ―あ、あの、お客様…―

   ―アリカ…止しなよ…ハンドレッドも諦めるって言ってるし―

    ―いやーでもさあモモちゃんの事考えるなら粘るのもお姉さんアリだと思う―


「ああん? ………!? …す、スイゲツ!! お前もか!!

お前もリア充なのか畜生があああああああああああああああああ!!」


 急に叫んだ厳蔵の方を向くと、サドラス一行の隣には

「C†B†E」残りのメインメンバー、スイゲツ、アリカ、ハンドレッド、しえりゃんが

バッチリ四人揃っていた。


「え? え? 厳蔵さん!? 厳蔵さん!! 良かった…! 無事だったんですね!」

「あ? あ、フランス侍…無事だったんだ…良かったじゃん」

「スイゲツはともかく存外素っ気無えなアリカちゃんよ!?」


「ムッシュ…生きてた…良かった」

「モモちゃんも無事で何よりだ!」


「およよ? お~何か久しぶりに会ったらオッサン賑やかだね~」

「しえちゃん…頼むからオッサン呼ばわりは止めてくれ…地味に傷つくんだ」


 項垂れる厳蔵。その肩に手を置くサドラス。


「何はともあれアッサリ見つかって良かったな(アルカイックスマイル)」

「素直に喜べねぇ…!」



<<フィールド:ヴァナヘイム地方 現在地:ルーンテール神帝国・酒場>>


 <ドリンクホール・ヴァッティヴィッティヴェッティ>


 何か引っかかる看板だなとサドラスは思ったが。


「それでは再会をぉ…祝しましてぇ…またこの世界は16歳から大人と言うことでぇ…

大人が集まったらやる事は一ぉぉぉつ! 飲み会じゃあああああああ!! 乾っ杯!!」

「乾杯」(サドラス)

「乾杯!」(スイゲツ)

「良かったですね! 乾杯!」(ロティ)

「…乾杯」(百)

「いえ~い♪ かんぱ~い♪」(しえりゃん)

「はいはい乾杯乾杯っと」(アリカ)

「え、と…乾杯」(キュクル)

「ふん…乾杯」(ララリリル)

「乾杯でス」(メドラ)


 やたらテンションが高い厳蔵の音頭で各々乾杯する。


「おらぁスイゲツ! 男なら一気飲みしろやあああ!!」

「うぐっぷ!? ちょ!? 何するんですか厳蔵さん!!」

「リア充など潰れてしまえばいいんだあああああああああああ!!」

「え、ちょ意味がわからなゴボォ?!」

「さぁさぁアっちゃん~♪ 大人の女同士で改めて乾杯~♪」

「アンタまだ19だろうが…」

「ここではもう私もアっちゃんも大人になるんですぅ~♪

…って言うか…黙 っ て 私 の 酒 を 飲 め や こ の レ ン 廃 が☆」

「な…!? 何でアンタそれ知ってんの…!?」

「しえりゃんは何でも知ってるんだよ~副長だけに~♪

って事で シ ャ ン パ ン 一 本 ラ ッ パ で や ろ う か☆

無 論 辛 口 で な ☆ ち な み に 拒 否 権 は 無 い☆」

「うぐ…もし、断ったら…?」

「その時はね~? キミが端末に保存してある"アタシのゲツきゅん"フォルダ…

中 身 を 余 す こ と な く メ ン バ ー 全 員 に 晒 す ぞ☆」

「ちきしょう! 飲めばいいんだろうが飲めば! せぇい!!」


 スイゲツとアリカはそれぞれ方法は異なれど無理やり飲まされている。

 ちなみにメドラとララリリルはどういう経緯なのか飲み比べを始めていた。


「ふっ、若いな…」

「サドラスさんジジ臭いですよ? っていうか私と一個しか違わないじゃないですか」

「何を言っておるベルクーリの嬢ちゃん…ワシ、実質722歳のじいじですぞ?」

「うわ、もしかしてツヴェルさんの真似ですか? 超似て無いです」


 ちなみにこの世界でも未成年のキュクルと百はミックスジュースっぽい飲み物片手に

おつまみ等の一品料理をもぐもぐと食べている。


「初対面の方々はともかく…厳蔵さんはお酒が入るといつも以上に高揚してますね

というかサドラス殿は顔すら赤くなっていませんが…

もしかしてサドラス殿は飲んでいないのですか?」

「厳蔵のテンションの件は…ヤツもヤツなりに遠慮はしていたってことだろう…

ちなみに俺は顔に出ないだけらしい。これでも酔っているんだぞ?」

「全くそう見えない分色々と性質が悪い気がしますよサドラスさん」


 と言うロティだが彼女は彼女で既にワイン一本を空けても頬がほんのり染まる程度だ。


「………」


 百は黙々と食事をしている。


「そういえばお前は人見知りだったな、厳蔵から詳細も聞いているぞ」

「………ん、久しぶり…というかまだ二回目」

「ああ、確かにまだ二度目だな…そう言えばお前と同じ機甲人メタノイド族は見なかったな…?」

「……元々から、機甲人…希少種族…あと生身が、最弱だから…プレイヤーも、少ない」

「考えてみれば機甲人族は俺達のような廃人プレイヤー向けすぎる種族だからな」

「でも、鍛えぬけば…」

「間違いなく凶悪に最強な種族だ…ちなみにお前は何処まで投資してたんだ?」

「七桁」

「ふ、やるな…流石はピュアブリード廃人」

「生まれた時から、PC触ってる…伊達じゃない」


 サドラスと百はお互いニヤッと笑って通じ合う。少し不気味である。


「…お二人も知り合いだったんですね」

「ロティ、目が据わってるぞ」

「サドラス殿…こんな年端も行かない幼女を…」

「キュクル…百はこう見えてお前の一つ年上だぞ」

「我が君は守備範囲が広すぎまする」

「ララリリル、俺の守備範囲にお前レベルの人外はいない」

「うごふっ?! あ、でも…これはちょっと良いかも…」

「マスター…? やっぱり年下が…良いのですカ?」

「メドラ、お前は大分酔いが回ってるな。向こうに重なったジョッキやタルの数々は

お前らが全部空けたんだろう? 店員が訝しげに俺らを見ているんだが」


 不意にサドラスの肩に手を回してくる厳蔵ら「C†B†E」酔っ払い集団。


「楽しんでますかぁこのサド野朗?!」

「黙れ、地味に臭いぞ厳蔵」

「僕わ男の子にゃってにゃんど言ったらわかるんにゃー! この名前か!?

スイゲツって言う男でも女でも使える名前が悪いにょかー?!

僕の本名は水月和真みなづきかずま! 正真正銘の男にゃのにゃーにゃー!」

「おい止めろスイゲツ。お前のその顔とその声でのそのセリフは変な需要を生むんだ」

「や~や~佐渡終さわたりしゅう氏~飲んでますか~?」

「しえりゃん。何故俺の本名を知っている…いやお互い自己紹介してたな、

そうだろう長谷部詩恵美はせべしえみ

「あれ~? そ~だったっけ~? どうなのベルトランのオッサン~?」

「知るかぁ!! 俺が知るかぁ!! 後俺オッサンじゃねえ!!!

厳蔵ことベルトラン・ワーデュシュラン様じゃボケェ!

…んでそこの石塚亞梨花いしづかありかちゃんは何で黙ってんだ~!?」

「………お酒って、お静かにお飲みするものだと思うんですの」

「誰だ貴様…! 貴様本当にアリカなのか…?」

「はい、アリカこと石塚亞梨花ですの佐渡さま」

「これはマズイな…未成年を除けば素面しらふに近いのが俺しかいないようだ」


 とりあえず百とキュクルには自分から少し離れるよう目で合図(なぜか通じた)し、

絡まれ役を一手に引き受けることにしたサドラス。


「ったくよぉ! KATUMIの昼寝権現ばかやろうは何処で何してやがんだ

帰る手がかりサッサと寄越せ似非ドイツ人が~!」

「そ~だそ~だ~カッつん仕事しろ~!」

「克己様も眠れぬ夜をお過ごししているのかもしれませんよ。

もう少し心配しておあげになるべきではございませんか?」

「ちくしょー! どいつもこいつも僕のこと女の子と勘違いしにゃがってー!」

「ゲツきゅんは男の娘枠だからしょ~がないよ~♪」

「そんな枠は要らんのですにょー!」

「それは駄目です和真様、和真様は奇跡の美少年なのです。

それを否定してはいけませんよ?」

「嫌にゃー! 僕は男らしくにゃるんにゃー!!」

「お前にゃ無理だスイゲツっ! いっそもう物理的に女の子になりゃ良いんだよ!」

「ふざけんにゃー!!」

「………無駄に暑苦鬱陶しくなってきたな」


 サドラスは気付け薬のつもりで酒を呷る。

 ちなみにさっきまで一緒に絡んできていたロティ、ララリリル、メドラは

何時の間にかテーブルに突っ伏してスヤスヤと夢の世界に旅立っていた。


「あー、空が綺麗だにゃー…」

「月夜に黄昏るゲツきゅん~我々にとってはサービスカットです~でゅふふ~♪」

「本当にお美しいですのスイゲツ様…無論今宵の月も美しいですけどね」

「あ~マジでこの世界のお月様は綺麗だなぁ~」


 軽く舌打ちをしつつサドラスも月を見上げる………………と、そこに

何となく眠そうな顔をしたブランド物の銀縁メガネな金髪碧眼の半竜人青年の

立体映像ホログラムらしきものが映る。


「……全帝国民の皆さん、こんばんわ…皆さんが噂する天の御使いこと…

KATUMIです…本日は皆さんに―

「ぶぅぅぅぅぅぅぅ!?」(厳蔵)

「ぶふぅーっ!?」(スイゲツ)

「ぷーーーーーーーーッ!?」(アリカ)

「ぷどぅは!?」(しえりゃん)


 月が映える夜空に盛大なアルコール飲料の毒霧が吹く。

 そして毒霧はサドラスの顔面に盛大に降り注ぐ…。


「………おのぉぉぉれぇぇぇ…!」

「さ、サドラス殿!? その刀は抜いてはいけない刀なのでは無かったのですか?!」

「シュウ、落ち着く。シュウまで酒に呑まれては、駄目」


 キュクルと百がサドラスの顔を拭いて宥めてくれなければ

きっと凄惨な事件が起こっていたかもしれない…。


第六話に続く

次回更新も未定なのは…自分の執筆能力の至らなさです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ