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第三話「新参者と海の魔女。ついでにカフェオレ侍」

とりあえず良いホテルで一泊した後

嘗ての仲間を探すべく、サドラス一行は歩みを進めていく。


※お気に入り登録してくれた皆様お待たせしました。

ちょっと長くなってしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。

※Caution! 長いかもしれません。ご注意ください。


―とある砦にて―


「嗚呼…ここにも居らぬるは…私の死の皇」

死の妖精バンシーめ…唯の死の宣告者が…なんでこんなに強いんだ…」


 我が身を抱いて黄昏たそがれている異様に長髪な女の周りは

様様な身なりの冒険者達で死屍累々としていた。


「私は皇が欲しい…私さえも畏れさするる死の皇が…」


 女は甲高い叫び声を上げる。

 その甲高い叫び声を聞いた生き残りの冒険者達は

もがき苦しんだ後、次々と全身から血を噴いて倒れていく。


「嗚呼…私の死の皇…何処いずこへ向かえば出逢えまする…?」


 女は物言わぬ骸の山となった砦から去っていく。



<<フィールド:ミズガルズ平原 現在地:シルドラント王国>>


 ツヴェルからの話を聞くだけ聞いたサドラス一行は、嘗ての拠点がある

「魔海」こと「赤緑青エールケーベー海」に向かうべく、港へ向かっていた。


「ロティ。一つ確かめたいことがある」

「何ですか?」

「お前、よく聖級ゲストルームに泊まろうと思ったな?」

「いやそれサドラスさんが言うなって話ですよね」


 そういう意味で聞いたわけではなかったサドラス。というのも

いくら聖級ゲストルームがクソだだっ広いとはいえ、妙齢の男女が

同じ部屋でしかも男はその女より圧倒的に強い…そんな情況にも拘らず


「サドラスさーん! 先にお風呂入っちゃっても良いですかー?」とか


「このサイズで一人用とか間違ってますよね。もう一台のベッドシーツ

崩しちゃうの勿体ないので"はんぶんこ"しましょうよ」だの


「こ、このお酒全部タダなんですか…! じゃ、じゃあ、い、良いですよね…

…うぅぅ…やっぱり怖いんでサドラスさんも共犯者になってもらいますよ!

と、言うことでこのドンなんとかロゼから空けていきましょう!」やらは、

正直どうかと思うのだ。サドラスとて一応男なのである。


 …仮にサドラスが酒の勢いと獣欲に負けていたらどうするつもりだったのか。

 

「…そうだったな」

「サドラスさんはちょっと金銭感覚見直すべきですよ」


 もし、また同じことが起きるなら…

『次はハニートラップに嵌められた気分で思う存分楽しんでヤろう…』

と考えるゲス野朗が密かにサドラスの中で誕生していたが、それはまた別の話。


 ―ところで聞いたか? 例の新興教団…―

  ―あーザドゥルオウス教団? とか言ったっけ?―

   ―まあぶっちゃけ冒険者集団だけどよ…あいつら最近「魔海」の

     本拠地とやらに集まってるらしいぞ?―

    ―集まって何するんだか知らんが、神聖教会連中に喧嘩売るのだけは

      割とガチでやめてほしいよな―

 

「…クッフッフ…面白いことになりそうじゃないか」

「? 急にどうしたんですかサドラスさん?」


 しかしサドラスの胸中にはゲス野朗が霞むほどの戦闘狂がいたので

ハニトラ云々の話は当分無さそうだ。



<<フィールド:ミズガルズ平原 現在地:シルドラント王国・国際海港>>


 港に着いたサドラスとロティを待っていたのは

「王立戦略魔術師団(戦魔団)」達による通行止めだった。


「なるほど強行突破か」

「何考えてるんですか! あの…すみません…私達船に乗りたいんですが…」

「申し訳ありません…今現在港には立ち入りを許可できません」


 当然ながら戦魔団の通行止めの前には他にも数多くの冒険者や商人、

果てはどこぞの貴族一行の付き人などが詰め寄っている。


「やはり強行突破か」

「だから何でですか! ってニヤニヤしてる…!?

もしかしてわざとですか!! っく…! もう引っかかりませんからね!」

「チッ」

「もう…!」


「そこのお二方…かなりの実力者とお見受けします」


「「?」」


 戦魔団の人垣を割って現れたのは、これまたロティより小さな背の魔術師。


「あの…どちら様で?」

「これは失礼しました…私、王立戦略魔術師団所属の戦略魔術師タクティカルメイジ

キュクル・グリンブルスティ・アドミニストと申します」

「えっ!? アドミニスト!? あのアドミニストですか?!」

「ロティ。何の話だ」

「ちょ、サドラスさんのほうがむしろ知ってるんじゃないんですか?」

「その単語でピンと来るのはあの外道魔術師リコ・アドミニストしか思いつかん」

「それ! その人! 外道かはともかく伝説の魔術師ですよ!!」

「………まあ、確かに私は彼女の子孫ではありますが」

「ええええええええええええええ!?」

「ほう」


 サドラスは運営が作り出した特殊NPC軍団「アドミニストレータ騎士団」との激闘を

思い出す。

 ちょっとPKプレイヤーキルで調子に乗っている連中をモノの試しにPKKプレイヤーキラーキル

していたところをPK集団の一味と勘違いされ、捕縛されそうになったことがあった。

 その時に一番自分にBAを連発してきやがったのがあの乳無し…

もといリコ・アドミニストだったのである。もしも運営側から仲裁が無かったら

あの洗濯板に引導を渡してやれたものを…!


「あのー…サドラスさん?」

「んぬっはッ? ………何だ。どうしたロティ?」

「キュクルさんからお話があるそうですよ?」

「話だと?」


 改めてサドラスたちにお辞儀をするキュクル。


「不躾を承知でご協力をお願いしたいのです」

「よし、そのクエスト受けよう」

「ちょ?! 即答ですか?!」

「…一応最初から話させていただきますと、現在我が国際海溝に発着している

航行可能な船舶は全て正体不明の武装集団テロリストに軒並み占拠されています。

交渉も殆ど停滞し、最後の手段として強攻作戦を行おうにも

我が国の公爵閣下が人質にされており、膠着状態が続いているのです」

「どことなくテンプレだな…で、他に人質は?」

「妥協の結果で公爵閣下以外は解放されました…

しかし公爵様解放の要求は呑めません」

「流石に公爵諸共テロリストを吹き飛ばすわけにはいかんか…」

「さ、サドラスさん…(´△`;)」

「ロティ殿もさることながら、サドラス殿の身のこなし…

何より私の『ハイ・アナライズ』を以ってしても

貴方様の名前を頭上に見ることが出来ません…相当な隠密スキルの使い手と見ました…

改めて不躾を承知で、公爵閣下救出作戦にご協力をお願いしたいのです」

「"改めて"よし、そのクエスト受けよう」

「その"改めて"要らないと思いますっ!」

「ありがとうございます…!」

「で、その公爵閣下の特徴を頼む」

「えっ…? あ、では先にお話しておきますね…公爵様の見た目は…」


 キュクルの話を聞きながら戦魔団の本陣まで進んでいくサドラスとロティ。


………。


……。


…。


「こいつで間違いないな?」

「ほひぃ?! 何じゃ何じゃあ?! まろをどうする気じゃあ?!」

「早っ!? 幾らなんでもサドラスさん早すぎませんかっ?!」


 話を聞くや否や隠密から戻ってきたサドラスが目隠しされて縛られたままの

公爵閣下をものの五分で連れてきた事に呆然とするキュクルたち戦魔団。


「な、何と…! 此処までの腕前とは…!」

「流石にタルの中に詰められていたのには俺も驚いた」

「え、この体型で良くタルに入りましたねぇ…あわわ! すみませんすみません!

違うんです違うんです! 決して不敬のつもりで言った訳じゃありません!!」


 さて、後は戦魔団の強攻作戦遂行でものんびり見てようかと考えたサドラスの元へ


「キュクル連隊長! テロリスト連中が自棄ヤケを起こしました!

連中は持ち込んだ魔導兵器を所構わず乱射しようとしている模様です!」

「何ですって!?」

「ひぇぇ! 何かとんでもない展開にぃ!?」

「………チッ」



<<フィールド:ミズガルズ平原 現在地:シルドラント王国・国際海港着船部>>


 テロリストに占拠された船舶十数隻から夥しい数の魔法陣が現れる。

「俺らが本気だってことを見せてやんぜ! 景気良くやってやんよぉ!!」

 テロリストのリーダーと思わしき男が叫ぶ。


「くそっ…! このままでは…!」

「くっ…せめて、最低限数の民間人だけでも非難を…!」


 必死に防御魔方陣を展開する戦魔団と、それを眺めるサドラスとロティ。

「………チッ」

「ど、どどどどどどどうしましょうサドラスさん!?

あんなに沢山の戦略級攻撃魔法展開とか…! 一体全体どうすれば…!」

「おい、キュクル」


 右往左往しているキュクルを呼び止めるサドラス。


「!? 何ですかこんな情況で!」

「俺が連中諸共船を吹き飛ばそう。船代はちゃんと弁償する」

「え?」


 何時の間にかテロリストの船舶正面に立ったサドラスは

BAで【極大魔法】を発動した。



―キュクル視点―


 私は目の前の光景が信じられなかった。頭上より少し高い位置に

神々の言語で「バニシングスプライト」と表示されるや否や、

つい先程まで圧巻と思える数の戦略級攻撃魔法陣を展開させつつあった

テロリスト達が乗る船舶に魔法陣の数など鼻で笑えるほどの数多の雷が降り注いだ。


「ぎょええええええ!?」

「何じゃこりア"ッ――?!」

「うわあああお母ちゃ―!!」


 テロリストだと分かってはいるのだが、その断末魔がしばらく耳から消えなさそうだ。

 だが、そんな圧倒的な力を事も無げに振るうサドラス殿の姿は、とても…


「神々、しい…」

「え? あのキュクル…さん?」

「ハッ…!? な、何か?」


 危ない危ない…悪い癖が出てしまった…。

 このクセは治さないといけないのに…しかし、あれは…私の知る限りでは

 天地聖魔大戦以降失われたとされる高レベルスキルでのみ得られるという

【極大魔法】なのは間違いない…サドラス殿は一体何者なのだ…?

嗚呼どうしよう…! 聞きたい! 知りたい! このままではモヤモヤする…!



<<フィールド:ミズガルズ平原 現在地:シルドラント王国・王城・謁見の間>>


 船舶全てを吹き飛ばしてしまったとは言え、サドラスが公爵閣下の命を救い

ひいては城下町の人々を救った事は事実なので、その件についてサドラス達は

シルドラント国王とのコネクションを得ることが出来た。


「ちなみに大臣。俺が吹き飛ばしてしまった船舶の被害総額を聞いておきたい」

「は? いやいや、サドラス殿…その件については国王陛下が

"数多くの人命を救った者に対して恩賞を上回る罰則はあってはならない…

ということでその件については不問とす…"と仰ったばかりではないですか」

「念のため聞いておこうと思っただけだ。あのやり方はスマートじゃなかったからな

俺自身のケジメというのもある…いや、本音を言えば

何となくこの場で払えそうな気がしたせいなんだが」


 シルドラント国王は高笑いしていた。


「大臣よ。金額だけでも申してやらんか」

「はぁ…陛下がそう仰るのでしたら……

サドラス殿が凄まじい魔法で吹き飛ばした船舶は輸送艦七隻、私掠船十一隻…

軍艦は規模や大小にバラつきがありますが、五隻ありまして…

積載していた武器、魔法具、食料、交易品その他諸々を

計算したところ…総額1エクサ38T59GYDとなりますね」

「ひえええええええ!? エクサ単位ぃぃい?!」

「ほほぅ…! これはまた随分と派手に行ったものよ」


 いくら平和のためとはいえ、金額を言われるとその場は騒然とするが、


「ん? 普通に払えるぞ?」


「「「「「「「「?!」」」」」」」」


 今度は違う意味で場が騒然とした。


「またまたご冗談をサドラス殿…仮に純白金貨で用意したとして10039枚ですぞ?

我が国庫の国家予算18分の1の金額を早々簡単に払えるなど…と…ぉお?!」


 サドラスはアイテムストレージからジャンジャンバリバリ純白金貨を出していく。


「一応10039枚出したが…流石に数えるのが大変そうだな?」

「ええ…はい…そうです、な…」


 実はシルドラント国王陛下も腰を抜かしそうになっていたが、

それに気付いていたのはサドラスだけだった。



<<フィールド:ミズガルズ平原 現在地:シルドラント王国海港・魔導鉄甲船>>


 サドラスがポンと船代を払ったことが幸いしたのか、

王家所有の魔導鉄甲船を「賃貸」ではなく「譲渡」されるという結果になった。


「ようやく『魔海』へ向かえるな」

「でも素直に喜んでいいのかどうか…」

「そういえばロティ」

「はい? 何ですか?」

「お前はシルドラントに実家があるんじゃないのか?」

「あぁ……………でも、もう良いです。帰る理由が無くなりましたし」

「そうか」


 それ以上は敢えて何も聞かないことにしたサドラス。


「では、いざ『魔海』へ!」

「じゃあ面舵一杯で出発進行でs――」


「お 待 ち く だ さ い !  サ ド ラ ス 殿 !」


 港を出発しようとした鉄甲船に向かって走ってくる一人の戦魔団員…

というかキュクルである。


「む? 何か用でもあるのか?」

「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」


 ゆっくり深呼吸して呼吸を整えたキュクルは


「王 国 で の 全 て の 生 活 を 捨 て ま し た の で

ど う か 私 を 貴 方 様 の 御 一 行 の 末 席 に

お 加 え く だ さ い !  お 願 い し ま す !」


 と土下座してきた。


「…あぁ?」

「ほぇ? ってキュクルさん? 今王国での生活を捨てたとか…」


「あ い や 待 た れ た し !」


 今度はサドラスの背後から声が聞こえたので振り向くと、

そこには何処からともなく現れた異様に髪の長い女が


「先程の艦隊蹂躙御見逸れいたしまする! 貴方様こそ仕えるべき死の皇!

我、ついぞ見つけたり! いざや、いざや、我を皇の下僕に!」


 と土下座の上位とも言われる土下寝(正式名称:五体倒置)をしてきた。


「誰だお前は」

「にぇッ! っていうか寝そべってるっ?」

「………………………………………………………………見せ場取られた…(T^T)」

「キュクルさん大丈夫ですから! ちゃんと忘れてませんから!」


 異様に髪の長い女は一回サドラスをチラ見してから、今度は正座に座りなおして


「まず突然参りましたご無礼をお許し賜りたく存じ上げまする。手前はララリリル…

死屍の地を流浪して齢150に満たぬ若輩の死の妖精バンシーで御座いまする。

つきましては単刀直入に申し上げますれば…手前を死の皇陛下の下僕いや奴隷に

させて頂きたく願いまする…!」


 ララリリルは床に頭をこすり付けてさらに何かを語ろうとしたが


「よし、じゃあ『パーティ登録』するか、二人とも」

「ちょ、サドラスさん? キュクルさんはともかくこのポッと出初対面の人にも…?」


 ララリリルとキュクルの目の前に「パーティ登録申請を受けますか?」

というウィンドウが表示される。


「こ、これは…『冒険者の契約』…!」

「おおお…我が死の皇…無論、無論快諾させて頂きまする…!

永久とこしえにお仕えさせて頂きまする…!」


 反応もそれぞれに二人は「YES」をタッチする。


「神々の言語ですね…"…の…を…しました"…? くっ…象形文字が読めない…!」

「キュクル、お前仮名文字は読めるんだな」

「ええ、まあ…神語は宮廷魔術師の嗜みですから…これでも"あるふぁべっと"神語や

"きりりつぁ"、"えるにか"神語なども読めますよ?」

「ほう。それは有り難いな。流石にキリル文字やギリシャ語は少し不得手だからな」


 実はこの世界ではサドラス達の母国語は全て"○○"神語として

認識されている。そのため彼らの文化水準にそぐわない名詞や造語発音が

発言されたり表記されても、人族には基本的に理解できない。

 まぁそれはさておきサドラスはキュクルとララリリルを注視し、

二人のステータスを確認する。


―<ディティール・ステータス 1/3>―

フルネーム:キュクル・グリンブルスティ・アドミニスト

年齢:13

性別:女

種族:人間/妖鬼

職業:戦略魔術師

段位【最大Lv】:87

生命【最大HP】:4092

魔動力【最大MP】:8298

闘気【最大SP】:774

BURST ATTACK【BA】:0%

基礎攻撃力【STR】:671

基礎耐久力【VIT】:618

基礎精神力【MAG】:896

基礎抵抗力【RES】:823

基礎敏捷性【AGL】:752

総合運【LUC】:482

ダメージ修正【ALT】:566

属性耐性:火15 水18 土35 

異常耐性:毒20 痺10 眠10

所持金:658937YD

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「ふむ…そうか術士系の割りにVITが高いのは半妖鬼ハーフゴブリン故か」

「お恥ずかしい限りです…太祖リコの素養はあまり受け継がなかったものでして…」


―<ディティール・ステータス 3/3>―

取得スキル

黒魔術Ⅵ

精霊術Ⅵ

神術Ⅵ

吸魔攻撃Ⅲ

詠唱短縮Ⅵ

MP強化+Ⅵ

MAG強化+Ⅵ

RES強化+Ⅵ

水属性の極意Ⅱ

風属性の極意Ⅵ

闇属性の極意Ⅴ

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「しかし元宮廷魔術師というのは伊達じゃないようだな、黒魔や精霊術は普通としても

神術をⅥまで会得するのは並大抵の事じゃないぞ」

「恐縮です」


―<ディティール・ステータス 1/3>―

フルネーム:ララリリル

年齢:147

性別:女

種族:死の妖精変異種

職業:死妖術師

段位【最大Lv】:320(限界突破)

生命【最大HP】:21789(限界突破)

魔動力【最大MP】:19459(限界突破)

闘気【最大SP】:10072(限界突破)

BURST ATTACK【BA】:50%

基礎攻撃力【STR】:2671(限界突破)

基礎耐久力【VIT】:1218(限界突破)

基礎精神力【MAG】:3996(限界突破)

基礎抵抗力【RES】:2823(限界突破)

基礎敏捷性【AGL】:1752(限界突破)

総合運【LUC】:1382(限界突破)

ダメージ修正【ALT】:2343(限界突破)

属性耐性:水80 土99 雷50 光45 闇75

異常耐性:毒100 眠10 混10 痺100 石100 死100

所持金:0YD

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「流石はバンシー…死を司るだけの事はある…が、

人語を流暢に話せる点が妙だと思ったら、お前…変異種イリーガルか。納得だ」

「全ては我が君に使える運命だったのだと思っておりまする」


―<ディティール・ステータス 3/3>―

取得スキル

徒手空拳Ⅶ

剣術Ⅳ

長柄術Ⅵ

黒魔術Ⅷ

精霊術Ⅹ

召喚術Ⅴ

錬金術Ⅴ

吸血Ⅶ

詠唱短縮Ⅹ

MP強化+15

RES強化+20

闇属性の極意Ⅸ

バンシーハウリングⅥ

対人戦闘家マンハンター

不死斬滅者Ⅶ

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「遊撃もできるのか…む。俺が取得し忘れたマンハンターを持っているのか」

「冒険者を名乗る愚か者どもに死を与えているうちに会得しまする」

「なるほど、PKが条件の一つということか…ふむ」


 とりあえずキュクルを乗船させて一息ついた後。


「ロティ」

「どうしました? って、これ…」


 ロティの目の前にもパーティ登録の選択画面が現れる。


「何時までも一時的パーティのままと言うのもどうかと思ったからな」

「さっきまで忘れていた事を誤魔化しましたね? …ま、いいですけどね♪」


 こうしてサドラスには三人のパーティメンバーが加入することになった。



<<フィールド:赤緑青海 現在地:洗礼の海域>>


 魔導鉄甲船は荒波をものともせずに微速前進を続ける。


「ちょ!? サドラスさん!

なんか変なウニョウニョしたのが甲板に登って来ましたよ?!」


 ロティの言葉に素早く『ハイ・アナライズ』を発動させるキュクル。


「これは『船喰いグリードスライム』…! しかもレベル150?!」


 ちなみにこの世界におけるスライムはSFホラー初期の設定に忠実な

超強敵としてのスライムが一般的である。

 故にどこぞの国民的RPGに出てくる最弱マスコットと同列に見るのは厳禁だ。


「お前達にはキツイ相手かも知れんな、ここは俺とララリリルでやるから

お前らは防御に徹していろ…というわけだララリリル、早速お手並み拝見だ」

「お任せを、見事蹴散らして見せまする! そこな小娘共! 死にたくなければ

今すぐに耳を塞ぎますろう!」

「え? それはどういう…」

「ロティ殿! バンシーは即死の叫びを使えるのですよ!」

「ひぇ!? サドラスさんも早く耳を塞がないと…!」

「俺は多分大丈夫だろう」

「え?!」


 ロティとキュクルが耳を塞いだのを確認したララリリルは

何と形容すべきか分からないほどの高音の叫び声を上げる。

すると此方ににじり寄ってきたスライムたちがもがき苦しみながら殆どが

そのまま溶けて死んでいく。無事に耐え切った数体はそのままサドラスに倒され

船喰いスライムの群れはものの数分で全滅した。


「二人とも、終ったぞ」

「うへぇ…! すごい攻撃ですね…」

「すさまじい死の叫び…コレが敵の攻撃なら本当に大参事ですよ」

「我が死の皇よ…如何でしょうか?」

「流石だな、ララリリル。バンシーの名は伊達じゃ無さそうだ」

「身に余る光栄で御座いまする…!」


 サドラスに跪くララリリル、何だかそのまま靴を舐めそうになったので

サドラスはデコピンしてやめさせた。


「うぐふ!? ……ぬふぅ…これはこれでご褒美でございまする…」


 額を愛おしそうにさするララリリルを安易にどつくのはやめようとサドラスは思った。



<<フィールド:赤緑青海 現在地:魔の海域>>


 波が穏やかな海域に入ったので、少し食事休憩がてら交流でも深めるかと提案するサドラス。


「嗚呼…! 我が君…そのようなお気遣いよりも私をどうぞ椅子代わりに…!」


 四つんばいで「いざや! いざや!」と尋常ではない期待の目で見つめてくるので、

あまり乗り気はしなかったがララリリルの背中に座るサドラス。


「んほぉ…! 何と心地よい重み…はぁはぁ…」

「………」


 こういった恍惚な表情アへがおは人によって萎えたり返って興奮したりするものだが

どうやらサドラスは前者らしい。安心した…?


「あの…このお茶はどこに置けば…?」

「ああ、それはテーブルの真ん中で良いんじゃないですか?」

「最近ロティのスルー力に磨きが掛かってきたな、俺は少し寂しいぞ」


 各々持ち寄ったサンドイッチやお茶菓子などを広げると

男女比率が一応1:3なので姦しくはなる。


「はむはむ…座られながら餌付けの如き食風景…クセになりますれば…」


 正直ララリリルの豹変具合の尋常無さにさしものサドラスも顔が引きつる。

だが、餌付けの如きスタイルは一切崩す気などさらさら無い風なサドラスも

相当Sでゲスな野朗である。


 あと何気にララリリルに食事を与えている手をペロペロされているサドラスを

教えるべきか悩むキュクルを微笑んで静止するロティの構図にニヤニヤするのは

正直主人公としてどうなのかと思う。


 ちなみにペロペロに度が過ぎたと感じた場合サドラスは

ララリリルの顔を鷲掴みするのだが、その際に恍惚とした表情をするララリリルの件は

これ本当に描写していいものかと小一時間悩まされる。


「それにしてもこの海域は静かですねぇ…まあ海なんて数えるくらいしか出たこと無い

私が言うなって話なんですけど」

「風も殆ど吹きませんね…帆船なら止まっててもおかしくないくらいですよ」

「………」

「我が君…?」


 サドラスはMAP画面を注視する。何事かと両脇からロティやキュクルも覗き込む。

凄く良い匂いがしてきたがサドラスは敢えて深呼吸するのみ。


「『エネミーサーチ』」


 サドラスがそう唱えるとサドラスのMAP画面に夥しい数のエネミーシンボルが出る。


「ちょ…! なんですかこの赤点!」

「もしやとは思いますがサドラス殿…」

「ああ、中央の点が俺で近くの点がお前等なら…赤点は全部、敵だ」


 サドラスの言葉が終るより少し早く鉄甲船に吸盤つきの触手がベタベタと纏わり着く。


「ッ!? 『ハイ・アナライズ』! …嘘?! このモンスターは…!」

「あんまり聞きたくないですけどそのモンスターは?!」

「【デビルクラーケン】…レベルは170。

まあ海の【バイオレットドラゴン】みたいな連中だ」

「「!?」」


 何気に【バイオレットドラゴン】にはトラウマがあるロティは絶句。

 キュクルに関しては自分の倍近いレベルの敵の大群に絶句。


「我が君。奴らには私のハウリング攻撃の効果は薄いと思われるでありまする。

連中には耳らしき部分が見当たりませぬゆえ」

「見当たらないだけで耳はあるが、連中には死の概念がないからな。

即死攻撃がそもそも通じないだろう」


 流石に二人は冷静だ。ただし未だに座る人サドラスその椅子ララリリルのままだが。



―ララリリル視点―


 小娘どもは狼狽を隠せぬようだ。まあ無理も無い事。私とて滅多にえぬ珍敵よ。

しかしながら我が死の皇は何と頼もしいことか…! 気配だけでも

海中に百近くのイカどもが居るにも拘らず、まるで何処吹く風…。

 ? 我が君、もう私の背中に飽きまするか…?


「仕方ない…今回は俺が一人でやるか」

「えええ?! ちょ、サドラスさん! ここ海のど真ん中――」

「な…! サドラス殿、海面を…!?」


 小娘どもの声に私も起き上がりて我が君の方を見やれば、


「おお…! 我が君は『滞空術』も使えまするのですか?!」


 我が君はそこがまるで地面かのように海上をスタスタと歩いておられる…!

 するとあのイカどもは我が君のほうが脅威と判断したのか、恐れ多くも我が君に

その食指を伸ばさんとは…なんと愚かな。


「そういえばあの時から今日まで技を使っていなかったな」


 少し離れた海上でそう呟いた我が君の身体が鈍色に輝く…すると我が君は

目にも留まらぬ速度で伸びてくる触手を海中の本体ごと

更に素早い光速の如き横薙ぎで次々と切り捨ててゆく…!


「す、すごい…」

「サドラスさんの技ですか…初めて見ました」

「え?! ロティ殿も初見ですか?」

「まあ、サドラスさんって大概普通に斬ったり叩いたり撃ったり面倒だからって

魔法で蹴散らしちゃったりしてて、全然技を見たこと無かったんですよ」

「い、今の今まで技要らずで…?」

「あ、パーティ登録してるわけですからキュクルさんも

もうサドラスさんの詳細ステータス見れますよ?」

「本当ですか…?!」


 恐れ多い真似をせんとする小娘に釘でも刺したりぬろうかと思ったが…

ちょっと私も我が君の玉体ステータスを…


―<ディティール・ステータス 1/3>―

フルネーム:サドラス

年齢:21

性別:男

種族:神人権現イローアヴァターラ<存在進化EX>

職業:魔神機殲士マギアンスレイター聖魔拳大帝アーマットカエサル復讐鬼大公タキシムデューク

段位【最大Lv】:6527 (限界突破OD)

生命【最大HP】:87923400 (限界突破OD)

魔動力【最大MP】:4654917 (限界突破UL)

闘気【最大SP】:72336245 (限界突破OD)

BURST ATTACKゲージ:9904%

基礎攻撃力【STR】:192785 (限界突破EX)

基礎耐久力【VIT】:82580 (限界突破S) 

基礎精神力【MAG】:134520 (限界突破EX)

基礎抵抗力【RES】:73275 (限界突破S)

基礎敏捷性【AGL】:537899 (限界突破UL)

総合運  【LUC】:7234  (限界突破)

ダメージ修正【ALT】:44851 (限界突破S)

属性耐性:火50 水33 風99 土25 雷70 光80 闇80 波動40 万能20

異常耐性:毒100 眠20 混100 痺100 凍33 石100 死100

所持金:862145322150994095425869YD

<<次のページ>>


「にゃにゃッ!?」(注:キュクル)

「ぬほぉぉう?!」(注:ララリリル)

「あー、何か懐かしい光景ですねぇ…」


 おほぉおぉ……! ………ハッ!? イカンイカン! 気を張ったと待つるのだ私!

流石は我が君…なんとゾクゾクするステータス…! ああ…踏まれたい!

首を、身体を、思い切り締め付けられたしぃいぃぃいぃ!


「終ったぞ」

「お疲れ様です」


 む…言葉とともに手ぬぐいを渡そうとは…ロティとかいったあの小娘…

ぐぬぬ…! ならば私は全身を使って我が君の汗を拭き取って…!



<<フィールド:赤緑青海 現在地:洗礼の海域>>


 【悲報】残念ながら触手モンスターが出てきても一部男子諸君垂涎の展開は我等が

デストロイヤー・サドラスの手によって却下されたようです【正に外道】


 船に戻ってきたら何故か抱きつこうとしてきたララリリルに

景気良く河津掛かわづかけ(良い子も悪い子も真似しないでね)を極めるサドラス。


「そぉい!」

「ごふぁ?! あ…これは痛い…だけ…! …がくっ」

「色々とお疲れ様です」


 普通にスルーしてサドラスにハンドタオルを渡すロティ。

 ちなみにキュクルはと言うと、


「あ…頭が熱い…!」

「おや? キュクルさん何か角生えて来ましたね」

「にゃッ!? え? 何で!? どうして?!」

「妖鬼の小娘。己のステータスを確認してみぬるべし」

「復活が早いな。ララリリル」


 自分の身体の変化…恐らく<存在進化>の恩恵なのだろうが…しかしこう…

何と言うか…そんな少女が成長に戸惑う様子って言うのはこう…!


 自分でも分かるくらいに頬が上がってきたので、手ぬぐいで顔を拭く振りをしながら

己の顔面を無駄無駄無駄と引っ叩くサドラス。


―<ディティール・ステータス 1/3>―

フルネーム:キュクル・グリンブルスティ・アドミニスト

年齢:13

性別:女

種族:革新血イノベイター半人戦鬼ハーフオーガス<存在進化>

職業:戦略魔術師

段位【最大Lv】:227

生命【最大HP】:16692(限界突破)

魔動力【最大MP】:24090(限界突破)

闘気【最大SP】:2874

BURST ATTACK【BA】:0%

基礎攻撃力【STR】:6257(限界突破)

基礎耐久力【VIT】:6274(限界突破)

基礎精神力【MAG】:3066(限界突破)

基礎抵抗力【RES】:3903(限界突破)

基礎敏捷性【AGL】:2124(限界突破)

総合運【LUC】:1182(限界突破)

ダメージ修正【ALT】:8406(限界突破)

属性耐性:火40 水40 風40 土40 雷40 光25 闇25 波動05 万能01

異常耐性:毒25 眠25 混15 痺25 凍25 石80 死70

所持金:618237YD

<<次のページ>>


「にゃああああああああッ!?(◎△◎)」

「まあ、アレだけの高レベルモンスター倒したわけですしねぇ

パーティ登録のおこぼれって言っても馬鹿に出来ないんですよね…

あれ? なんか背中がムズムズしますねぇ…ちょっと私も確認…」

「む…私はレベル差が有り過ぎゆる故に殆ど経験となりえぬるか」


―<ディティール・ステータス 1/3>―

フルネーム:ロティ・ベルクーリ

年齢:20

性別:女

種族:超混血ハイブリッド半人天空聖霊デミホーリースピリット<存在進化S>

職業:薬剤士

段位【最大Lv】:256(限界突破)

生命【最大HP】:16181(限界突破)

魔動力【最大MP】:29030(限界突破)

闘気【最大SP】:10021(限界突破)

BURST ATTACK【BA】:0%

基礎攻撃力【STR】:4102(限界突破)

基礎耐久力【VIT】:2697(限界突破)

基礎精神力【MAG】:11622(限界突破S)

基礎抵抗力【RES】:12704(限界突破S)

基礎敏捷性【AGL】:3805(限界突破)

総合運【LUC】:3041(限界突破)

ダメージ修正【ALT】:3766(限界突破)

属性耐性:火33 水25 風50 土80 雷50 光70 闇20 波動10 万能05

異常耐性:毒50 眠25 混70 痺70 凍10 石80 死70

所持金:2078YD

<<次のページ>>


「おっふゥ?! ってうわぁ!? 背中の羽が五対でしかも色彩豊かにぃッ!?」

「ほう。お前もついに限界突破Specialの領域に来たのか。やはり連続レベルアップは

更なる存在進化と限界突破の重要なファクターみたいだな…」


 色々な成長からの劇的な変化に困惑の色を隠せないロティやキュクルを見ながら

しみじみと考え事をはじめるサドラスだった。



<<フィールド:赤緑青海 現在地:魔女の海域>>


 魔女の海域…? 拠点のある海域名は『海魔の寝床』だったはずだが…?

などと考えながらもMAPの座標などを目視して確認するサドラス。


「ここは確かウワサで聞く"ザドゥルオウス教団"の本拠地があると聞いておりますが…」

「本当にサドラスさんのアジトがあるんですか?」

「…我が死の皇の居城…その全容や如何に…ああ、見てみたい…しかし今の私は

我が君の椅子………だがこれはこれで捨てがたし快感が迸りぬるは…!」


 人間椅子に堕ちたバンシーが一体混ざったサドラス一行と言う光景は

この際無視していただきたい。つーか普通に座るサドラスは是非自重していただきたい。


「今さらなんですが"ザドゥルオウス教団"って何ですか?」

「私も詳しくは掴めなかったので、あまり詳しくはありませんが…」


 キュクルはその教団を説明する際に、注釈として天地聖魔大戦デスゲーム時代の

300を越える高レベルの冒険者はアンスロ族から超人エトランゼと呼ばれ、さらにその超人を

上回る力を持ちながら大戦に積極的に参加しなかった高レベル冒険者のことを

廃人マグナウスと呼ばれていたことを話す。


 問題のザドゥルオウス教団の神体と言われる暴虐廃人ティラニスマグナウスザドゥルオウス自体が

大戦末期に現れた伝説中の伝説とされる廃人で、

他の廃人達の追随さえも許さないほどの実力を持つと言われている。

 あくまで伝承の中での目撃情報だが、ザドゥルオウスは他の廃人集団でも手を焼く

怪物たちの集団をたった一人で殺戮し、あまつさえその遺骸を切り刻んで

その一部を持ち去るという恐ろしい行為に及んでいたそうである。


 本題に戻ると、ザドゥルオウス教団に所属する者達はそのザドゥルオウスを

「浄化の主」「終末の権現」「大いなる破壊と再生の現人神」と崇めるカルト教団。

 と言ってもテロ行為などを行うことは滅多に無く(いや待て)

 どちらかと言うと主に多数戦闘級レイドモンスター等を狩りまくってその死骸の一部そざい

集めまくることが第一目的な半狂信的冒険者集団である。

 とはいえ他の神々をクソ呼ばわりするし当然『神聖教会連盟:神教連』相手にも喧嘩も売るので

結局は唯のロクデナシ冒険者くずれ集団には変わりない。とのことである。


「『神聖教会連盟』と言うのが初耳なんだが?」

「サドラス殿。その件は長くなりますが宜しいですか?」

「…手短に頼む」


 手短にと言ったのに長かったので要約するとGrTrAd世界の創造主かいはつしゃ

その創造物である「アドミニストレータ騎士団」「神々の化身マネジアズ」などを

神や聖人と崇めるそれぞれの教会が「折角だから団結しようぜ」と結成したのが

話に出てきた『神聖教会連盟』である。何気に殆ど失われたとされる高レベルスキルを

何点も保有しているので対立すること事態がバカのすることらしい。


「そうか…教団連中は筋肉バカの集まりと考えていいのか…ふふ、ふふふ…」

「うわ…サドラスさん始まった…」

「ああああ! 我が君の畏るべき貌が見とうござりまするぅ!」


 ニヤつくサドラスに顔面を鷲掴みされるララリリルという構図を直視していては

自分の中の何かが壊れそうな気がしたキュクルは、

限界範囲まで『ハイ・アナライズ』を発動させて周辺の警戒に集中することにした。


「サドラス殿! ハイドラ系船舶の反応が前方に多数出ました!」

「ほう」

「え…ということはつまり…」

「筋肉バカ集団の集まりたる教団本拠地とやらがもう傍にあると言うことだ小娘」


 ちなみにハイドラ系船舶と言うのは方法は色々あるがテイムして従わせた

海竜ハイドラ系モンスターを動力として動く船の総称である。

ちなみに相当なYDやレアアイテムを費用とするが、その分高性能な

海龍シーサーペント系潜水艦というものも存在する。



<<フィールド:赤緑青海 現在地:絶海の孤島・ザドゥルオウス教団本部前>>


 地名情報にも影響が出るほどなのかとつい感心してしまうサドラス。


「ここがどういった場所なのか知った上か否は知らんが…いい度胸だ!」

「非教団員がここを知って生きて帰れると思うなよ!?」

「ヒヒヒ…ひ、人型素材も、わ、悪くないんだな」

「リア充冒険者爆発しろ」


 しかしながら上陸したサドラス一行はものの数分で数百人の教団員に取り囲まれる。


「幾ら一人頭レベル140程度だとしても…この数はまずいですよサドラス殿!」

「流石に洒落になりませんよサドラスさん!」

「ふふ…私のハウリング攻撃に耐えらるる人族などそうそう居らぬるわ!」

「頼りにしているぞララリリル」


 ロティとキュクルは若干青ざめているが、やはりサドラスとララリリルは平静だ。

っていうか人間椅子とその主って構図はここでやるべきではないと思うのだが。


「調子に乗っているなこの四人組!」

「非教団員の鉄の掟"異性連れは万死に値する"を平然と破るなど言語道断!

絶対に生きて帰れると思うなよ!?」

「ぐへへ…ま、抹殺して、や、やるんだな…そ、そしてその娘達を、も、もらうんだな」

「リア充冒険者爆発しろ」


 もうどいつもこいつも殺気全開120%。ちなみに20%は下種な下心込みです。


「嫌ぁぁぁぁッ! 何かこの人たちの視線すごく嫌ですよぉ!」

「気持ち悪い…鼻息も妙に荒いし…サドラス殿…結界を張らせてください」

「ふん…下卑た目だな…お前等如きに見られても嫌悪感と嫌悪感と嫌悪感しか湧かぬわ

…大事なことなので三回ほど申しまする、我が君…」

「やれやれ…」


 サドラスは片手に愛用の巨大銃剣…正式名称、魔女銃大剣『Hexen Nacht』+1945を持ち

もう片方に以前ドラゴンハントに使った紫電改40㎜機関銃+2550を装備した。


「とにかくお前らは防御を固めて置け…ここは俺がやる…と見せかけて」


 サドラスは魔法を詠唱する。詠唱強化の恩恵で殆ど無詠唱だったが。


「コキュートス・カイーナ」


 辺り一帯が一瞬暗くなったかと思いきや、その一帯全てが凍りついた。

 無論教団メンバー達は皆動けなくなる。


「ぐぁ! な、何だこれは…!」

「う、動けない…げっ!? ジワジワとHPが減っていく」

「か、回復なんだな! ど、どうにかそれは出来るんだな!」

「畜生リア充があああ!! 爆弾しか無ぇぞクソがあああああ!!!」


 ワヤワヤしている教団連中を尻目に


「さて、じゃあ行こうか」

「うわ…サドラスさん酷い」

「防御を固めさせたのはこういうことだったのですか」

「ああ我が君…何故に皆氷漬けにしてしまわぬので御座いまするか?」


 と和やかに会話を弾ませつつ先に進んでいくサドラス一行。


「まあ、精々回復手段が尽きる前に凍結解除されることを祈ってやろう…

ついでに冥福もな」

「なるほど、流石我が死の皇…ククク…足掻け豚ども!」


「「「畜生めぇえええええぇえぇ!」」」

「ぶひぃぃぃぃ!」


 教団員(主に男)の怨嗟の声(一部変なのが混ざっていたが無視する)に、

ニヤケ顔が止まらないサドラスの歩調は自然と軽くなる。



<<フィールド:赤緑青海 現在地:ザドゥルオウス教団本部>>


 どうやら外に殆どの主だった教団員が出ていたようで、内部には

魔法職を中心とした精鋭と思わしき連中数名が待機しているだけのようだったので


「一応殺さないようにな。アドミニストレータ騎士団も運営も居ないが

むやみやたらとPKをして何らかのカースペナルティが付いても笑えんからな」

「え…我が君…私は既に数多くの冒険者を葬っておりまするが…」

「お前はモンスターだろう一応」

「ぐふぅ…!? あ、でもコレも何か良いで御座いまする…」


 ちょっと面倒くさいと思ったのでサドラスはララリリルを当て身して気絶させた後

荷物扱いとしてアイテムストレージに突っ込めそうで結局突っ込めなかったので

盛大に溜息を吐いてから仕方なく背負うことにした。



<<フィールド:赤緑青海 現在地:ザドゥルオウス教団本部・深部>>


 道中出てくる教団員は確かにレベルが高いのだが、ロティたち三人娘の

平均レベルを上回る者はいなかったので、結局彼女らの経験はスキルのみで終った。


「気がついたら黒魔とかがⅥでキュクルさんに追いついちゃいました」

「Ⅶレベル以上はサドラス殿から伝承スクロールを頂くなりしなければいけませんね」

「恐れ多いことを抜かすな小娘ども…我等が死の皇がそんな簡単に…」

「ん? そうか、じゃあ今度伝承できそうなものを伝承させてやろう」

「お~! サドラスさん太っ腹ですねぇ」

「くく…ついに…ついにレベルⅦ以上の術式が私のモノに…くく…くくく…」

「……鬼の小娘の闇を見つけたり」

「ふ…賑やかだな」


 なんだか彼らに倒される教団員が哀れに思えてきてしまうのは気のせいだろうか。


………。


……。


…。


 結局大した仕掛けに遭遇することも無く、

最深部と思わしき場所まで足を踏み入れるサドラス一行。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか」


 サドラス達が歩を進めていくと、

そこには紫色の人型を祀る祭壇のようなものが鎮座していた。


「…似ている」

「というかサドラスさんソックリですねぇ」

「微妙にディティールが異なっていますが、誰がどう見てもサドラス殿です」

「おお…! この美しさは正しく我が君のご神体…!

だ が 偶 像 な ど 認 め ぬ !

こ の よ う な 不 敬 物 は 破 壊 す る !」


 そうえたララリリルは徒手空拳の技『ソニックナックル』で

サドラスに酷似した神像らしきものを粉々に粉砕する。


「 何 と 言 う こ と を し て く れ や が っ た で す か 

貴 様 ら ァ ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! !」


 と叫び声が聞こえたかと思うと、何時の間にかサドラスたちの膝下くらいまでが

水に沈む。


「む」

「うひゃあ!? まだ飛行術会得して無いのにぃ!」

「く…動きが少し鈍りますよこれは…」

「私は浮ける故にこの程度何の障害にもなりえぬる」


 水面が大きく波打ったかと思えば


「皆 殺 し に し て や り ま す よ

ゴ ラ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! !」


 との叫び声とともに上半身は美しい女性、下半身は魚介類、

腹部からは3列に並んだ歯を持つ6つの犬の前半身が生えている姿という

世にも恐ろしい姿をした怪物『海魔スキュラ』が現れたのである。


「むう?」

「!?」

「は、は『ハイ・アナライズ』……?! そんな?! 解析できない!!」

「な…何と…【???】…この私ですら名前が見えぬ?!」


「よぉぉおくもサドラ…ザドゥルオウス様の御神像御本尊をぉをぉをヲヲヲヲ!!!

絶 対 に 許 さ ん ぞ ム シ ケ ラ ど も ! !

ジワジワと嬲り殺しにすると見せかけて思い切り食い殺してやるゥウ!!!」


 名称不明のスキュラの六つの犬が裂けそうな勢いで大口を開けて咆哮する。


「ひいいいいい?! 何かやばそうです…! 

魔法を思い切り撃たなきゃ危ないヤツですよねこのモンスター?!

『サンダーボルト』を撃てるだけ撃っちゃっていいですね!? というか撃ちます!」

「間違いなくこれは超大多数戦闘級スーパーレイドモンスターじゃないですか!

皆さん! 雷耐性を準備してください! 雷系の神術Ⅵで勝負をかけます!」

「あいわかった鬼の小娘! 私は雷の剣術で貴様を支援する!」

「おい待…いや、いいか」


 サドラスが止める間も無くロティは雷系黒魔術『サンダーボルト』、

キュクルは雷系神術『降御雷フルミカズチ』、ララリリルは『雷光殲滅刃』を

名称不明のスキュラに叩き込む。それもMP・SP残量を気にせずに。


「?! 小癪ゥ!!」


 しかしその攻撃を喰らってもスキュラは多少のノックバックを受けるだけで

HPゲージは二割削れた程度である。


「ひぇぇええ?! 全力でこれだけですか?!」

「しまった…MPを回復する時間が…!」

「く…こんなヤツに私は畏れぬ!」


 今までの敵は本気など出さなくても一蹴できただけあって

本気出したつもりでも碌に効果のない相手であったためか、

ロティ、キュクル、ララリリルは各々で狼狽してしまっている。


「やれやれ…」


 サドラスは三人娘達の前に立つ。


「サドラスさん!」

「ほっ…」

「おお! 我が死の皇!」


 サドラスはスキュラの正面に立つ。


「フシュルルルルルルルルルルルゴアアアアアアアアアアアア!」


 どうやらスキュラもスキュラで完全に頭に血が上ってしまっているようだ。


「【???】か…まあ、それだけ成長したということで褒めてやっても良いだろう」

「ギュルルルルルルルルッルルヲヲッヲヲオッヲヲヲヲヲッヲッヲヲヲヲヲ!!」


 口と言う口を開けてサドラスに襲い掛かるスキュラ。


「サドラスさん?!」

「早くカウンターなり回避を!」

「我が君?! 何をなさるつもりですか!?」


 溜息を吐きながらサドラスは


「何してんだお前は」


 とスキュラの本体であろう人間の女の上半身部分の眉間に軽く(?)チョップする。

半端ない勢いで地面にめり込むスキュラ。HPゲージは四分の一以下まで赤く染まる。


「やっぱりサドラスさんって空恐ろしいですねぇ」

「一撃必殺…ゴクリ」

「ふははははははははは! 流石は我が君! さあ、早くトドメをお刺しに!!」


「その必要は無い…というかやりすぎてしまった」


 サドラスがそういい終える前にスキュラはポムン♪ と可愛らしく音を立てて

下半身が蛸足と言う点以外では可憐な少女にしか見えない姿に変わる。


「う…ぐ…ひぎャ!?」


 スキュラの少女が変な声を出したのはサドラスが首根っこを掴んで立たせた為だ。


「…あぅ…痛いでス…」

「お前を見ていると本当に701年も経ったのか甚だ疑問に思えるよ」

「ふェ…?」

「久しぶりだな…メドラ。元気そうと言うか…何と言うか…」


「「「「え?!」」」」


 三人娘とサドラスにメドラと呼ばれたスキュラの少女(?)は各々目を瞠る。


「まさか…ましゃか…ご主人さマスター!?」

「何で中途半端に言い直したのかはあえて突っ込まんことにする」

「ふえ…ふうぇ…うえぇえぇんマァァアァスゥウウゥウゥタァアァアァアァアアァ!

お゛がえ゛り゛な゛ざびいいいええええええエエエエエエエエエエエエンン!!」


 とサドラスの胸にダイブするスキュラ少女(?)ことメドラ。


「見た目は殆ど変わらないが前より甘えん坊に成り果ててしまったか…

確かにどえらいことだな」

「多分どえらいことってのはソレじゃないと思います」


 サドラスの感想に電光石火で突っ込みをぶち込んだロティ。



<<フィールド:赤緑青海 現在地:ザドゥルオウス教団本部・ザドゥルオウスの間>>


 上を見てもサドラスのポスター。右を見てもサドラスの全身画。

左を見てもサドラスのフィギュアの山、山、丘、山。

多分突っ込んだら負けだと思われるサドラス一色ヤンデレテイストな部屋で

メドラよりお茶を振舞われているサドラス一行。


「なるほど…俺が使っていいと許可した預金7200ゼタYDで教団を…」

「サラッととんでもない財産保有を暴露しましたねサドラスさん!?」

「このお茶も…今は失われた製法で作られた超職人のお茶ですね…」

「ここは…天国なのだろう…だが、私は偶像を認めるわけにはいかぬ…ぐぬぬ」


 さすがにここではララリリルもサドラス用人間椅子には成り果てなかったようだ。

安心した。


「教団名にマスターの真名を使うのはどうしても遠慮がありましテ…」

「本音は?」

「愚民の分際で我がマスターの名を気安く呼ぶなどおこがましいと思いましテ…!」

「うむ。その気持ちは痛いほど良く分かるるぞメドラ先輩」


 ちなみにそんな談笑をする彼らの周りには跪いて祈りを捧げる夥しい数の教団員が

いるわけなのだが…ララリリルやロティはともかくキュクルまでもが

「その方向には誰もいない…」とスルーを決め込んでいる。


「っつうかよ! 俺まで無視する事は無ぇんじゃね?!」


 そう叫んだのは「C†B†E」のメインメンバーの一人であるフランス侍【厳蔵】


「何だ、まだ居たのか」

「いやいやいや! こんな簀巻きにされて如何しろってんだよ?!」

「そういえばこの人誰ですかサドラスさん?」

「見たところかなりの高レベルですが…?」

「うむ、初見では【??】であったが故に私も驚いたで御座いまする」

「とりあえず変身して軽く捻って捕らえたのでス」

「だから! 何でとりあえずなんだよ!? 俺アンタに何か悪いことしたか!?」

「…何処からとも無く現れただけならまだしも、私とマスターの

BEST2ショットブロマイドにゲ☆をぶちまけやがった事を

忘れたとは言わせませんヨ?」

「いや、あれは不可抗力なんだよ…俺だって好きで☆ロしたわけじゃねえし…」



 サドラス以外(メドラを除く)メンバーが厳蔵の名前を目視できる理由は

例によってサドラスが「とりあえずパーティ…ではなく同盟登録(※)をしておくか」

(※同盟登録とは異なるパーティ加入メンバー同士で結ぶ特殊パーティ登録の事である)

ということが理由である。


「まあそりゃあ俺だって世界を救った男のギルメンだしよ高レベルってのも―

「そんなことよりマスター? 私が701年と二週間と三日に11時間23分

寂しい思いをしている間に両手に余る花とは何事ですか!?」

「両手に花か…なるほどそれは気づかなかった」

「ちょ、サドラスさん///」

「いや、ああの、別に私とサドラス殿はそういうゴニョゴニョ…/////」

「もう俺を無視かよ…傷つくわぁ…そしてリア…いやこの場合ヴァチャ充か…?

あー…俺もヴァチャ充でいいからしてえなぁ…」


 厳蔵は空を見上げてみるが残念。ドヤ顔のサドラスのポスターが見えるだけだ。


第四話に続く

疲れた、そして長い。

自分で決めた基準を逸脱。

やれやれですね。

とはいえ楽しんでいただけたらこれ幸いです。

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