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第十話「竜帝国より招待状、からの武術大会」

大変長らくお待たせいたしました。今回の更新です。


※Caution! もしかすると最長かも知れません…。

<<フィールド:ニブルヘイム地方 現在地:グライデルダムント竜帝国>>


 大陸南方…南極と言っても過言では無い氷の大地にその国は存在する。

グライデルダムント竜帝国。ドラゴンのドラゴンによるドラゴンのための国。

それまでのドラゴンは、古の冒険者ストレンジャーや他のアンスロ族から見れば

「レイドモンスターの一種」としか見られなかった。だが、700年前の異変以降

南極に住んでいたある一体の知性あるドラゴンが「このままではダメだ。

単なる最強種ではなく身も心も洗練された真なる最強種を目指そう! ということで

国造りだ!」と始まったのが竜帝国の起源である。ちなみに建国の父であるドラゴン、

グライド一世はつい最近まで存命で、レベル3000を突破したバケモノである。

その子にして現皇帝のグライド二世もまたレベル2700を越えるバケモノである。

 この国はドラゴンのドラゴンによるドラゴンのための国であるが故に、

当たり前だが国民の九割がドラゴンだ。そして国民全てが老若男女に関わらず

兵役義務がある。その影響なのか郵便配達員ですら武器を携帯している。

そして竜帝国出身のドラゴン戦士はその希少性と戦闘力ゆえに

どこの国でも国賓級の扱いで重宝される。だが帝国から出るドラゴンは非常に少ない。

ちなみに竜帝国では南極故に殆ど作物がない。

故にこの国は自国防軍の傭兵業とそれで得た利益からの金融業と

貿易業で国家の運営が成り立っているのだ。

 実も蓋も無い一言でまとめてしまうと一昔前のスイスのような国なのである。


「あ~~~~~~どこかの大国と戦争してぇ…」

「止めてください陛下。陛下が言うと存外洒落になりません」


 頬杖をつきながら豪奢な衣装を身に纏った紫竜こと、グライデルダムント竜帝国皇帝

グライデルダムント・アベル・グライド二世(日本と同じで名前が後表記)は傍で書籍を

カリカリと書きまとめているモノクルがやたらと似合う竜帝国国防軍参謀長で

大臣も兼任する青竜ことククルカルデンに物騒な話題をあっさり窘められる。


「あ~~~~~~誰かクーデター起こしてくんねぇかな…」

「陛下、割と洒落にならないことを言わないで下さい」

「そう言われてもな~~~~~余の国超平和すぎるんだよなぁ」

「為政者らしからぬ発言は慎んでください陛下。ただでさえ我々は

"冷血そうに見えて実は熱血が多い種族"と多種族より揶揄され続けているのです」

「でもよ~~~~~~~~~あ~~~~~暴れて~~~~~」

「………ッ!」


 ククルカルデンは思わずペンを握りつぶしてしまう。


「心置きなく暴れるには…! おっ!? そうだ!! 

余の国主催で武術大会的なのやればいいじゃん! 賞金は2000TYDくらいでさ!」

「陛下…あなたと言う御方は…」

「んでもって参加費はガッチリ取って、大会見学者には当日までの宿泊費割引とかさ!」

「………ふむ」

「あと各国の王侯貴族連中にも軒並み招待状を出して

余の国の金融業者と接触してもらう…ど~よ?

これなら余は優勝者ならびに大会高成績者相手にバトれるし!

各国の貴族相手に金融関連のビジネス持ちかけられるし! 

おっ?! 何なら余らの竜術スキルの伝承ビジネスなんかもやっちゃう?」

「まあ、細かい修正が必要ではありますが…我が国の諸侯達も呼んで会議するのも

良いかも知れませんね…」


 ククルカルデンは近くに控えていた兵士(当たり前だがこの兵士もドラゴン)に

各諸侯を招集するよう呼びかけた。



<<フィールド:ヴァナヘイム地方 現在地:ルーンテール神帝国・法衣貴族区画>>


 舞台はそこから数日後のサドラス邸に移る。

 先日サドラスが募集した詰まる所の傭兵問題は、その殆どがメドラやララリリル、

疾風怒濤魔女団シュティミュンドロングに鎧機兵の六道式士団ゴットハイテンといったサドラス私兵団の戦闘テストで

軒並み全員不合格という結果に終ったが、募集そのものはサドラスの独断一貫で

そのままなので、相変わらず身の程知らずや腕に覚えのある高レベル冒険者達の

応募が後を絶たない。その件で一番困り果てているのはなし崩しに応対をしている内に

それ関連の受け付け役に据えられたロティとキュクルである。


「アナライズの結果ですが、第一にレベル条件が全然駄目ですねぇ…

申し訳ありませんが不合格です……はい、其方のあなたは

邸宅東棟の中庭で戦闘テストを受けてください…………うう…なんでこんな事に…」

「まあまあロティ殿、これも仕事だと思えば楽じゃないですか。

あ、ようこそ当邸宅へ………はい、傭兵のご応募ですね。

それではギルドカード、或いは身分証明書をご提示ください…

はい、ありがとうございます。それでは失礼ながら貴方様を

『レイド・アナライズ』させていただきますね…はい、ありがとうございます。

それでは貴方様は西棟の中庭で戦闘テストを受けてくださいね…

サドラス殿はサドラス殿で(歩合制ですが)給金もちゃんと出してくれるんですよ?」

「この間のデー…買い物未遂の件以来ロクに外に出歩けなくなってるのにですかぁ?」


 サドラスはゲスでも鬼畜外道では無いのでちゃんと二人には

週休二日を与えているのだが、彼女ら二人は先の件で顔が広く知られてしまっているので

外に出歩けば「頼む俺/僕/私/拙者/儂達を雇ってくれ!」という感じで

自由に外に遊びにいけないのだ。このままでは彼女らのストレスが限界突破し

前回とは違う意味でサドラスのHPが恐ろしく削られる事件に発展しかねない。


「失礼いたします…こちらはルーンテール帝国

サドラス大侯爵様のお屋敷で間違いありませんか?」


 そう言ってだだっ広いエントランスに訪ねてきたのは甲冑を身に纏って

二足歩行をするオーソドックスなカラーリングのド ラ ゴ ン。


「はいはい、傭兵の応募ですね…………ほぇ?」

「はい、ようこそサドラスの邸宅へ…本日は……はわぁ!?」


 絶句するロティとキュクル。応募者の中には巨人系人族の冒険者も来るので

足音程度では動じなかったが、直視先の相手がドラゴンなのは今までで初めてのことだ。


「あの…どうしました?」


 目を瞬かせるドラゴン。


「どどどどどどどどっどどどどどドラドラドラドラドラゴンンンン?!」

「ロティ殿落ち着いて! 言葉を話してるので彼(?)も人族アンスロですよ!?」

「ひぃぃぃぃいやああああああ!? 私を食べても美味しくないですぅぅぅぅ?!」

「さ、サドラス殿!? サドラス殿どこですか?!」


 どうにもロティはサドラスと出会う前にドラゴンに襲われた時のトラウマを

完全に克服はできていなかったようだ。半狂乱で神術+128を詠唱しそうな

ロティを必死に止めるキュクル。


「……どうしたんだ」


 眠そうな顔で屋敷の奥から現れるサドラスの胸に飛び込むロティ。


「うわあああああああ!! ドラゴンがドラゴンでドラゴンにゅやあああああ!!!」

「落ち着け」


 ロティの脳天に物凄く軽いチョップを食らわすサドラス。


「はうぅ!?」


 それでもロティには1000ダメージほど通る。しかしお陰でロティは正気に戻った。

 

「魔物のバイオレットドラゴンとこの竜人ドラグナー族を一緒にするな」

「竜人族…? ……あ、ホントだ……そ、その、申し訳ありませんです」


 ロティは何回も甲冑ドラゴンに平謝りする。


「いえ、構いません。外国ではよくあることですので」

「ほう…ということは貴様は竜帝国出身の竜人族か」

「はい、ご存知の通り、私はグライデルダムント竜帝国で郵便局兵を

勤めさせていただいております」


 そう言うとそのドラゴンは腰に下げている魔法のポーチから名詞を取り出して

サドラスに渡してくる。


「ふむ…名前は…頭上と同じバルウィングと言うのか…で、レベルは673…

流石はドラゴンだな。桁が違う」

「私のレベルまで看破なさるとは…やはり貴方様が

サドラス大侯様で間違いないようですね」

「ああ、色々あって神帝国で大侯爵をやることになったサドラスだ」


 軽く握手を交わすサドラスと竜帝国郵便局兵バルウィング。


「で、竜帝国郵便局兵がわざわざ北西の地まで何の用だ?」

「こちらを」


 バルウィングはサドラスに一通の羊皮紙を渡してくる。


「ふむ…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


グライデルダムント竜帝国・帝家承認特別招待状


ルーンテール神帝国・最大侯爵・サドラス様


 若葉の候を迎え、皆様ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 さて、本日は貴方様を初めとした世界各国の有力諸侯の皆様に

当国家主催で開催いたします武術大会見学、及びご参加をお誘いしたく

この様な形ではありますが、特別招待状を拝送させていただきました。


見学等のご参加の有無はご自由です。尚、この招待状をお持ちになって

我が竜帝国を訪問していただきますと、様様な形で特典がございますので

どうか奮ってご参加いただけますようよろしくお願いいたします。


新暦701年 6月7日 グライデルダムント竜帝国政府

            グライデルダムント竜帝国皇帝グライド二世

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「様々な特典か…」

「入国審査簡略化、滞在費割引及び一部負担…他にも説明しきれないほどの特典を

我が竜帝国はご用意してお待ちしております……ちなみに我が竜帝国は金融業が

盛んです。為替などのビジネス目的だけの訪問でも歓迎しております」

「ほう…まあそれも悪くないが…ギルド連中もポータルBBSで言ってた武術大会…」

「サドラス様ほどのお方でしたら優勝も範囲内では無いでしょうか?」

「ククク………なんて日だ……クフフ…!」


 サドラスの顔が若干邪悪さを帯びてきた。


「あー、これはもうどうしようもないですねぇ…」

「でもロティ殿。遠出できますよ?」

「でも…ドラゴンの国なんですよねぇ…うぅ…」



<<フィールド:ニブルヘイム地方 現在地:グライデルダムント竜帝国・海港>>


 特に大きな問題も無くサドラス一行は入港手続きを済ませてドラゴンだらけの国、

グライデルダムント竜帝国へ足を踏み入れる。前回のようなレイドモンスターとの

大量エンカウントは存外稀なことである。


「こんな事のために自分の大空悪竜ひこうせんかんを使わせないでほしいものだ」

「ふ…だが貴様は子爵、そして俺は大侯爵…後はわかるな?」

「ぐ…縦社会なんて大嫌いなのだ! というか帝王陛下も法王聖下も

渡航をあっさり許可するのは如何なものかと思うのだよ…!」


 静かな怒りを表すKATUMIを尻目に他の面々は


「うお~…右見てもドラゴン…左見てもドラゴン…上見てもドラゴン…

ぬお~すげ~! ドラゴンパラダイス~♪」

「一部?表記もいるのが何気に怖いだろうが…!」

「ドラゴン…ドラゴン…美しいドラゴン…男らしいドラゴン…いいなぁ…」

「あん? おい、スイゲツ…大丈夫か?」

「多すぎてちょっと怖いでス…マスター…」

「こうも沢山ドラゴンがいると圧巻の光景ですね、サドラス殿?」

「ああ、それは良いんだが…」


 サドラスは自分に引っ付いて離れようとしないロティが気にかかる。


「あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族…!」

「ロティ…禁断症状?」

「相当ドラゴンに嫌な思い出があるのかのぅ?」

「聖霊の小娘は我が君と出会うる前に鼻息荒い魔物のドラゴンに

死ぬほど追い掛け回されたそうでありぬれば」

「それは…カルくトラウマになってもフシギじゃないよ…?」


 しかしやはり市街を練り歩いていくと、視線が集中する。主にサドラスにだが。


「………流石に落ち着かんな」

「あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族…」

「ロティ殿…(^_^;)」


 ロティはサドラスの影に隠れたまま呪文を唱え続けている。

やはり高レベルのドラゴンが一般国民なグライデルダムントでも、

彼らから見れば頭上が????表記なサドラスは異様に映るのだろう。


「ドラゴンに訝しがられるってのは新鮮なんだろうがさ…」

「うん、確かに落ち着かないね」

「基本爬虫類だから表情読めねえもんな…」

「ん。大多数が実は怖がっている」

「とはいえ彼方此方のドラゴン達の平均レベル400越えは伊達じゃないのぅ」

「あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族…」

「チッ…一旦ホテルにでもチェックインするか」



<<フィールド:ニブルヘイム地方 現在地:グライデルダムント竜帝国・帝城>>


 チェックインを済ませて(4割引だった)ホテルを後に帝城へ向かうサドラス一行。

街中でもドラゴンだらけだというのに城には巨人も御用達な巨大な甲冑に身を包む

覇気を感じるドラゴン兵士で一杯だった。さすがにロティは気絶してしまったので

サドラスは背負いながらその他一行とともに門番を務めるドラゴン兵士に招待状を見せる


「武術大会の参加登録をしに来たんだが」

「遠路遥々ようこそ竜帝国へ。何名様のエントリーでしょうか?」


 見た目とは裏腹に何だかぽわぽわした声のドラゴン門番。


「そうだな…」

「冗談だろ? 却下!!」

「命が幾つあっても足りないだろうが!」

「七大竜卿将軍(平均レベル1800)も出るらしいから~パスで~」

「自分は…竜術で無様を晒したくないので辞退するのだ」

「わらわは出るぞぅ!!」

「む。私もドラゴンスレイヤー系統の魔法を試してみたい」

「先輩が出るんですから僕も出ますよ」

「身の程は弁えておりますので、遠慮しておきますね」

「準々決勝以降は間違いなくドラゴンと一対一ですから、やめておきまス」

「花の命を短くしとう無しにけり…無念だが遠慮するる」

「あるじ様のオレTueeeeee! が見たいからオウエンにしておくよ」


「と、言うことで、俺ことサドラス、スイゲツ、ハンドレッド、ユスタリシアの計四名だ」

「承りました。それでは此方の予選会場入場整理券をお渡ししますので、

まずは帝城西区画にて予選を突破してきてください。ちなみに会場で

エントリー兼生命保険代として300000YD必要となりますので、

あらかじめご了承ください」


 門番は取り出した四枚のチケットに判子を押してそれぞれに丁寧に手渡ししてきた。

さり気なく大会のパンフレットも渡してくる。


「よし…ジル=ルミル。応援席でロティの介抱を頼むぞ」

「うぃ。あるじ様…行くぞイモウトたち! 一番良いバショをセンリョウするぞ!」

「「「うぃー!」」」

「んじゃー俺らは応援席に行きがてら出店の冷やかしでもしてくっかな」

「おk~冷やかしなどと言いつつスーパードリンクタイムですがね~♪」

「アタシはもうアンタらとの酒は付き合わないからな」

「ビールと枝豆なんて売ってたりしないのだろうな…」

「マスター! 楽勝で優勝ですよネ!」

「我が君の恐しき偉大さを竜帝国民に刻み付ける事はもう分かっておりますれば…!」


 武術大会不参加メンバーはそれぞれ各々の足取りで応援席側へ歩いていく。


「さて…俺はどこの予選会場だ?」


 サドラスは先程門番から受け取ったチケットを開いてみる。

チケットにはΩ‐7と書かれている。


「僕のはΔ‐3ですね」

「私はΘ‐9」

「わらわはφー1じゃのぅ…というか予選会場の数が半端じゃないようじゃのぅ」

「しかも三次予選まであるな…リアルのW杯並の倍率になるぞ」


 サドラスがパンフレットをパラパラと読み進めていくと、どうやら

武術大会参加枠は最大32名(シード無し)までで

全五回戦三十一試合となっているようだ。


「出来れば準々決勝くらいには来たいですね」

「ん。かち合ったらゲツくんでも全力で潰すけど、良い?」

「はは…お手柔らかに頼むよハンドレッド」

「むふぅ…楽しみだのぅ…!」

「では、本戦会場で会おう」


 四人は軽く拳を合わせてそれぞれの予選会場に向かった。



<<フィールド:ニブルヘイム地方 現在地:グライデルダムント竜帝国・武術会場>>


 一体何十万人いるのかわからないコロッセウムは熱狂の渦に包まれていた。

しかも観客の半分以上がドラゴンなので一見さんは色々な意味で驚くこと間違いない。


「モモちゃんよぉ…ペース配分考えなきゃ駄目だぜぇ~?」

「…失敗した」

「いきなり七大竜卿将軍と予選で出会わなければのぅ…!」

「ま~ま~、こんな時は飲んで忘れましょ~♪」

「結局本戦に進めたのはサドラス先輩一人だけ…僕もまだまだ修行レベルが足りないな」

「平均レベル400の猛者が集うところだから予選落ちも仕方ないのですわ和真様」

「いや~串焼きビフテキと竜帝国ビールの組み合わせは格別なのである!」


 そんな観客席の一角で予選落ちの三人はなんだか既に出来上がっている

応援組メンバーたちに慰められていた。ちなみにメドラとララリリルは

ジル=ルミル率いる魔女団たちに混じって超熱烈なサドラス応援歌を熱唱している。


「すごい熱気ですねぇ…うわ…ドラゴンが一杯……………はふぅっ…!」

「ロティ殿…!? そろそろ慣れませんか?! その調子では色々と心配ですよ!?」


……。


…。


「何時の間にあんな垂れ幕を用意してきたんだあいつら…」


 試合会場の周辺で待機していたサドラスは遠くからでも分かる

"いざ全てを蹴散らせ我らが死の魔女皇サドラス"の垂れ幕に苦笑していた。

ちなみにサドラスは予選会では結局片手一本で並み居る強豪を蹴散らしている。

それが後にサドラスが"西より来る紫の暴君"と竜帝国内で謳われる始まりなのだが、

それは別の伝説はなしである。


「紳ッ士淑女に賢ッ竜姫竜の皆ッ様ッ! グライデルダムントへようッこそッ!」


 馬鹿でかい大理石のようなブロックで作られた試合会場に何故かアフロヘアーの

白いドラゴンがマイクに良く似た形の水晶杖を片手に空から降りてくる。


「今ッ回の武ッ術大会は記ッ念すべき第一回ッ! 第一回と言うことでッ!

優勝賞金はッ!! 何と破格の2000TYDッ!! うひょッ小国の国家予算級!!」

「ほう…」


 サドラスの顔が邪悪な笑みに染まっていく。


「如ッ何せんこういうスポーツな武術大会ってのは竜帝国始まって以来の事なので…

実は運営陣は結構ドキドキしてんだけど…ま あ そ れ は と も か く ッ!

十数万人参加の予選から勝ちあがってきた32体のバケモnいや精鋭の皆ッさん!

百ッ万人越えてるかもしれない観客の皆ッさん!! 大ッ変長らくお待たせいたしました!!

それではこれより第一回竜帝国武術大会本戦を始ッめるぜッ!!」


 開会宣言とともに半端じゃない咆哮が上がる。ドラゴンの国なのでその咆哮に

悪い意味で身震いを憶える人族は少なくない。例によってロティは気絶してしまった。


「さて…武器の使用は腕の数に関わらず二つまでだったな…」


 愛用の魔女銃大剣『Hexen Nacht』+1945と黒金の大斧『Skull Braker』+2215で

試合に臨もうと思ったサドラスだったが、パンフレットに書かれていた

「専用装備も装備の一つと見なします」の項目で試合ギリギリまでどの武器一つに絞るか

悩むことになる。


………。


……。


…。


「ロティ殿! サドラス殿が会場に上がってきましたよ!」

「うぅ…ドラゴンいやもうドラゴンやだドラゴンこわい帰りたい…」

「…シュウはドラゴン狩りまくるのが好き…だから、

そういうデートがあったら私の勝ちになる、と見た」

「?!……あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族あれはドラゴンじゃない人族

あれはドラゴンじゃない人族…ふぅ……で、何ガ“勝チ”ナンデスカ?」

「ひゃっはっはっは! あっちでもこっちでも激闘だぜぇ!」

「闇機か聖霊か…佐渡様も罪作りなお方ですわ」

「しゃどらしゅ先輩にょリア獣! 爆発しりょー!」

「や~や~今日のゲツきゅん是が非でもお持ち帰りしたいですね~ゲヒヒィ…♪」

「ではご斉唱したれり! 蹴散らせ全て! 我が君無双!」

「「「ケチらせスベて! ワがキミムソウ!」」」

「今度はコレでス! 超抜無敵! 究極無双のザドゥルオウス!」

「「「チョウバツムテキ! キュウキョクムソウのザドゥルオウス!」」」

「サイゴはこれだよ! あるじ様の強さは世界一ィィィィィ!」

「「「あるじサマのツヨさはセカイイチィィィィィ!」」」

「もげろサドラス…あ、そこのおねーさん…肉系に豆系のおつまみと

ビールのお代わりが欲しいのだ。ビールは無論ピッチャーで頼む」

「やれやれ…ドイツもコイツも下戸だらけじゃのぅ…多寡がビール十杯でこの様とは…」

「………(^_^;)」


 いやむしろ一升瓶数本ラッパ飲みして頬を軽く染めるレベルの

ユスタリシアもどうかと思うのだが…と言いたかったが

試合のほうが気になるキュクルは苦笑だけ返した。


…。


「そッれでは第一回戦第四試合の対戦者お二人の簡単な紹介をさせてもらうぜッ!」


 試合会場に上るサドラスと対戦相手。


「ほッんじゃあ西側の選手から紹介いくぜッ! っていうか竜帝国民は誰でも

知ってるだろうケドッ! 外国からのお客様のためにッ改めて紹介ッ!

七大竜卿将軍の一人で"疾風の戦車竜卿"ことスヨーヴィンドゥルさんだぁ!

スヨーヴィンドゥルさんは竜帝国最ッ速と言っても過言じゃないAGL+スキルで

トリッキーな戦闘スタイルは外国の絵師さん達にも大人気だぜッ!」


―キタぁぁぁぁぁぁぁスヨー様ぁぁぁぁぁぁ!

―ステキー! 抱いてええええええええええ!

―永遠の愛を誓わせてスヨー様ァァァァァァ!

―子供産ませてえええええええええええええ!

―つうか七大竜卿将軍出るのは反則じゃねえの?

―今回七大竜卿全員参加だってよ、初回は出来レースか?

―あの紫の人の幸運もここまでだな…よりによって疾風のスヨーヴィンドゥルだぞ…?

―奇跡よ起これイケドラ粉砕されろ…!


 多分ドラゴンから見ればイケメンなのだろうと思われるが、

サドラス以下人間系の人族から見れば鋭い目が何気に怖いドラゴンにしか見えない

スカイブルーのドラゴン騎士スヨーヴィンドゥル。


「よッしゃあ次は東側の選手紹介いくぜッ! この全身紫ずくめな人間族のお兄さんは

何とルーンテール神帝国で何かと話題らしい新進気鋭の大侯爵なサドラスさんだぁ!

ちなみにこのお兄さんは半月ほど前にアペリウス共産連邦をほぼ一人で壊滅させたと

いう面白いゴシップもお持ちだッ! あのゴーレムの国を一人で壊滅とか、

ドラゴンでも無理ってわかるだけにナイスジョークだねぇッ!

でも頭上の名前がレベル923の私にも????表記だから、

そのジョークも強ち嘘じゃないかもッ?! なにはともあれこの対戦カードは注目だッ!」


 あのアフロドラゴンがそこそこ高レベルなことに存外驚くサドラス。


「……運が悪いのは私の方かも知れないね…」

「む? …どうしてそう思う?」

「あなたの頭上の????表記だよ」

「俺が隠蔽スキルを使っている可能性もあるだろう?」

「あなたの身のこなしを見ていると、そんな小賢しい真似をしているようには見えない

…私とて武人の端くれだ。見くびらないで貰いたい」

「…それは、悪かったな」


 サドラスとスヨーヴィンドゥル(武器は大剣二刀流)が

各々武器を構えると、ほんの数秒後には会場の殆どが静まり返る。

というのもグライデルダムント竜帝国では国民が全員何らかの兵職に就いているのだ。

それゆえにこういった戦闘の気配を敏感に感じ取ってしまう…

まあ一部の酔っ払いたちはその限りではないが。


「双方宜しいようでッ…そんじゃあ第四試合ッ…開始ッ!」


「全力で参るッ!」


 疾風の異名を持つだけあって、

スヨーヴィンドゥルは残像を残してサドラスの目の前から消える。


「ほう…何種類かのスキルを組み合わせているのか」


 そう言ってサドラスは死角から来たはずの二本の斬撃を苦も無く受け止める。

サドラスは試合場に足をめり込ませるが、ダメージは殆ど通っていないようだ。


「…やはり…! サドラス卿よ。申し訳ないが殺す気で行っても構わないだろうか?」

「ああ、それで良い。いやむしろそれが良い」


 一旦距離を取ったスヨーヴィンドルは素早く構えて体を鈍く輝かせたと思うと

太刀術スキルの一つである「居合い連河斬」を寸分の狂いもなくサドラスに放つ。

この攻撃は無数のエネルギー状の刃を使用者の技量に合わせて連続で打ち込む

使い勝手の良い戦闘スキルである。


「ふむ…やはり一撃一撃の威力は軽いな」


 サドラスはサドラスで前半は切り払い受け流していたが、後半は

急所以外の斬撃命中を気にも留めずにスヨーヴィンドルに突進する。


「!?」


 この行動には歴戦の猛者であるスヨーヴィンドゥルも目を瞠り、思わず攻撃の

手をキャンセルして空中高く飛び上がる。


「安易だぞ、ドラゴンの騎士」

「な…! ん、だと…?!」


 スヨーヴィンドルが背後から声を掛けられたと同時に、

彼の胴体にサドラスの鉄拳が叩き込まれる。


「うぐぉ…!?」

「大会規定では相手のHPゲージが5分の1以下、或いは気絶で勝利だったな」


 既にスヨーヴィンドルのHPゲージは3分の1削れているのを確認するサドラス。


「こ、のままでは…終れぬッ!」


 若干吐血しながらもスヨーヴィンドルはサドラスに竜巻ブレス攻撃を食らわせる。

流石に反応し切れなかったサドラスはその攻撃で試合場に全身をめり込ませる。


…。


「をッ?! おいおい超々滅茶苦茶ミラクル楽しそうだな~ククルカルデン?」

「せめて年相応に振舞ってください陛下」


 サドラスとスヨーヴィンドゥルの戦いの様子を特等席から身を乗り出して見ようとする

グライド二世をやんわりと制止するククルカルデン。


「スヨーの奴をあそこまで泥臭くさせるたぁ…あのサドラスとかいう神帝国貴族…

ウホッ…早く闘いてぇ♪」

「気持ち悪いです陛下。臣下たちが若干引いてますよ」

「お前だってあの紫の全力見てみたいだろ?」

「そう思うのは陛下と極一部のド変態戦闘狂だけです」


…。


 めり込ませた体を素早く起こし、体制を立て直すサドラス。


「しかし流石は竜人族。ただのドラゴンと違って、

一度空高く飛び上がったらそう簡単には堕ちないな」

「ぜぇ…はぁ…ブレスをマトモに喰らって尚も…何と言う固さ…!

サドラス卿は本当に人間族なのか?」

「一応最初の種族は人間だったな。今は<存在進化>して神人権現イローアヴァターラだが」


 サドラスの一言に会場の観客席からどよめきが漏れ出す。


「<存在進化>か…なるほど…陛下以外に<存在進化>した者がここにも…!」

「ほう…竜帝陛下も<存在進化>しているのか…ドラゴンの<存在進化>…気になるな」

「ふふふ…少し悔しいよ…もう私に飽き始めているのか…!」

「まさか、貴様のその目を見ていれば、そんな気にはならん。

た だ 、 次 の 事 を 考 え て い る だけだ」

「言って…くれるッ!!」


 スヨーヴィンドゥルの喉が膨らむや否や、試合場一帯に氷結ブレスを撒き散らされる。

対応が遅れたサドラスは下半身が氷漬けになる。


「……凍結予防のエンチャントくらいしておけば良かったな」

「私にとってはそれもまた好機ッ!」


 スヨーヴィンドゥルは武器を構え、体を鈍く光らせながら急降下してくる。

途中で残像分身を見せながらフェイントをかけるのも忘れていない。


「一矢報いる!」


 スヨーヴィンドゥルとサドラスの間の真ん中あたりの中空に

『ドラグナーエリアルレイド』と“ヒノモト”神語で表示され、

スヨーヴィンドゥルの全身が風エネルギーに包まれて巨大な矢のようになり、

サドラス目掛け突っ込んでくる。


「竜術スキルか…!」


 そう言ってサドラスが装備を無間波動刀『爪弾刹那ツマビキセツナ』に切り替え、それを抜いた瞬間。

サドラスはその場から消え、代わりにスヨーヴィンドゥルが地面に叩きつけられた。


「ッ?! …な、にが…?!」


 立ち上がろうとして、そのまま倒れ伏すスヨーヴィンドゥル。

ちなみにHPゲージは五分の一以下に減っていた。


「やはり竜人族…その防御力は素晴らしい。普通ならみね打ちでも本来はほぼ即死だぞ」


 何時の間にか刀を鞘に収めていたサドラス。MCを初め、一部を除いた

観客たちはまだポカンとしている。


「おい、救護担当とかがいるのなら倒れた相手の生死を一応確認しろ」

「え? あ! は、はい!!」


 とりあえず試合場近くにいた出場者ではないと思われる

ドラゴン兵士に声をかけるサドラス。声を掛けられた彼らはハッとして

倒れたスヨーヴィンドゥルに駆け寄る。


「生きてます! 気絶です!」


 セーフのポーズをとる兵士の姿を確認したMCは「しょ、勝者ッ! サドラスッ!」

と叫び、その瞬間様様な意味での歓声が上がる。


―いやあああああああああああああ! スヨー様ぁぁぁぁぁぁぁあ!?

―グギャアアアアアアアス! あの紫ィィィィコロスゥゥゥゥッゥ!!

―ちょ、おちちゅいてスヨー様生きてるって…うわちょ危な…衛兵! 衛兵さーん?!

―うおマジかよすげえ大番狂わせ!?

―でもこれで出来レースじゃなくなったんじゃね?!

―つーか俺七大竜卿将軍が竜人族以外に負けるところ見たの初めてなんだが…!?

―スヨーざまぁw


「担架早く!」


 衛兵に白魔術スキルによる治療を受けながら運ばれていくスヨーヴィンドゥル。

それを「あれ、これやりすぎた?」な表情で見やるサドラス。

近くを通り過ぎようとしたとき、気絶から目を覚ますスヨーヴィンドル。

 

「サドラス大侯爵殿…!」

「大丈夫なのか…スヨーヴィンドゥルとやら?」

「ふ…心配痛み入る…外傷は白魔術で如何とでもなるよ…だが、内部的なダメージは

やはり消えてはくれないんだな…おかげで体がロクに動かない」

「悪いな。クリティカルが多発する竜術スキルは流石に喰らってやれなくて」

「ふふふ…構わないよ…私の全力がああも簡単に返り討ちにされるなど、

命を懸けずに経験できる事は早々ない…そういう意味では感謝しているくらいだ」

「そうか」

「……もし、もしも再戦できる機会があったら…今度は竜帝陛下と同じくらいに

レベルを上げてから挑ませていただきたい」

「気長に待とう。どうせなら創生ジェネシス級のビルドアイテムも使って

弱点消化などの身体強化をするといい」

「ははは…そのセリフで遠い道だと理解したよ…」

「俺は気長に待っている。いずれまた戦おう」


 苦笑しながら運ばれていくスヨーヴィンドゥルを見送るサドラス。

会場から消える手前でスヨーヴィンドゥルに付き添う綺麗なドラゴンを発見もした。


「チッ…やはりヤツはドラゴンのイケメン…トドメ刺しておけばよかったか?」


 ゲスが表面に出始めたサドラスは、ロティたちがいる応援席のほうを見る。

案の定メドラたちが大フィーバーだった。


………。


……。


…。


 その後、結果的にサドラスの対戦相手は全部七大竜卿将軍の勝ち組だったが、

スヨーヴィンドゥルよろしく時に極大魔法、時にBA、時に徒手空拳で

全員ボコボコにして優勝を決める。もう会場は静まり返ったり沸いたりと大忙しだ。


「マッジで半端ねぇことが起こっちまったッ! 記念すべき第一回竜帝国武術大会の

記念すべき初優勝者はまさかまさかの竜人族じゃない人間族の大貴族サドラスさんだ!

こんなの誰が予想した?! というかゴシップがガチ情報ってどんだけぇ?!

まあ何はともあれ竜人族が勝ちましたよ出来レース! 

――じゃないって事が判明しただけでも今大会の収穫と言うことでッ!

サドラスさんには優勝賞金2000TYDの交換プレートを授与だぜッ!」


 主に歓声は人間系の人族の観客席を中心に巻き起こる。

一方竜人族は口では色々言いながらもショックを隠せない者達が存外多かったようだ。


「こちらが交換プレートです。優勝おめでとうございます♪」


 プレートを渡すキャンギャルっぽい女の子は半竜人族だ。

この点を考えても帝国は出来レースにするつもりは無かったのだろうと

サドラスはプレートの額面を邪悪なニヤケ顔で見つめながら考えていた。


「ありがとう。ちなみにこれは何処で現生と交換すれば良いんだ?」

「当グライデルダムント帝国国立中央銀行で後日発行されます

証明書類とともに提出いただければ即時お望みどおりの現金等でお渡し出来ますよ?」

「うむ、ありがとう」


 軽やかに試合場から降りようとするサドラスの手前にグライド二世が

興奮冷めやらぬ様子で特等席からドズゥゥゥンと落ち…いや降りてきた。


「優勝おめでとうッサドラス大侯爵くんッ! さあ、余とやろうじゃないか!!」

「……あぁ?」

「陛下、端折りすぎです。MCにちゃんと説明させてあげてください」


 そう言いながら優雅に翼をはためかせて降りてくるククルカルデン。


「あ~~~もう面倒くせえな~~~おいワーフロン! さっさと火急至急早急

今直ぐ速やかにエキシビジョンの件を言え!」

「えッ? ッあ? え? あッ…ハイぃッ! っと…会場の皆ッさん!

実はまだ大会は終ってませんッ! エキシビジョンマッチがありまーす!」


 その声で何人か帰りそうになっていた観客たちは慌てて元の席に戻った。

後あのアフロドラゴンの名前がワーフロンだということに

今さら気付いて存外驚くサドラスがいたが、放置しておこう。


「えー…本来は優勝者は七大竜卿将軍全員との七対一というハイパーハンデマッチで

優勝賞金倍々チャンスか我らが竜帝グライド二世陛下とのグランドマッチの

どちらかを選んでいただくのですが…サドラスさんが七大竜卿将軍の半数を

何気に戦闘不能にしている件とさっきから竜帝陛下の猛烈なガン飛ばしに俺の

SAN値が持ちそうに無いので、超小休止挟んで即時サドラス大侯爵VSグライド二世陛下の

グランドマッチを行いたいと思いますのでッ…まだ帰れないよなッ!?」


―竜帝陛下ー! 七大竜卿の雪辱を晴らしてくださいー!

―そこの紫ー! 陛下は七大竜卿全員よりも強いんだからなー!

―俺らのプライドをズタズタにしておいてタダで帰れると思うなよー!

―りゅーてーへーかー! まけないでー!

―竜人族最強神話を舐めんじゃねーぞ人間族ー?!


 急にアウェー感に包まれるコロッセウム。


「…少しだけ帰りたくなったな」

「ガッハッハ! 気にすんな! 臣民達あいつらは悪乗りしてるだけだ!

本気なら全員サドラス大侯に武器持って向かってきてる!」

「否定できないのが我が種族の誇れるようで誇れない部分です。同じ種族なら

笑い話で済みますが…異種族相手では国際問題に成りかねない事を陛下以下

竜帝国民の殆どが理解していないのです…」

「大変そうだな…」

「数日前も愛用のペンを20023本ほど握りつぶしましたよ」


…。


 サドラスに完全回復薬エリクシル服用という超小休止の後、

建築などの生産系スキルで整備+強化された試合場に並び立つサドラスとグライド二世。


「予期せぬアクシデントに備えて、グランドマッチの審判は私、ククルカルデンが

勤めさせていただきます」

「かぁー…ククール(ククルカルデン愛称)め…

余とレベルが大差ないアピールをしよってからに…」

「そうなのか?」

「うむ。まあそなたならば驚かねえだろうから言っておくが、余のレベルは2780で

ククールのヤツはレベル2721なんだよ」

「なるほど、確かに大差が無いな」

「(小声)……ちなみにそなたのレベルってどんくらいなの?」

「今はまだ6527だ」

「へぇー6527……6527ぁ!? オイオイそんなブラフは汚いぞ?」

「ブラフでは無いんだが……今はパーティ登録できんから、戦って証明するか」

「んー…まぁ、戦ってみればわかるな。うんうん」


「……そろそろ試合準備は宜しいでしょうか?」


 ククルカルデンを間に挟むようにサドラスとグライド二世が立つ。

七大竜卿将軍たちと相対したときはドラゴンと人間の体格差を

あまり気にしなかったのだが、グライド二世と対峙した時は久しぶりにサドラスも

若干の戦慄を覚えた。


「余は感謝している。そなたのような強い者と相見えることができたことを」

「それは光栄だな竜帝陛下」

「ガッハッハ! 無き先帝こと余の父グライド一世はさぞ

草場の陰あのよで悔しがっているに違いない!」

「陛下の親父殿も相当な戦い好きのようだな…というか、グライド一世の名前を

一回聞いておきたいんだが」

「おう? ミドルネーム以外はほぼ同じだぞ?」

「だからミドルネームを教えてくれと」

「ガッハッハ! カインだよ。即位前は智竜カインとか格好つけていたらしいぞ!」

「…そうか…やはり…」


 サドラスは少しだけ目を閉じた。まぶたの裏には

泣きじゃくりながら怒涛のブレス攻撃をぶちかましてくる小さなドラゴンの子が映る。


「ちなみに陛下は<存在進化>で何に進化したんだ?」

「よくぞ聞いてくれた! 論より証拠。まずは余の姿をよく見ておけ!」


 両脇を固め、深呼吸をして気合の入った咆哮を上げるグライド二世。

その咆哮でコロッセウム全体が揺れたのには会場内の殆どの者達に軽い恐慌を与えた。

やがてグライド二世の身体が淡く輝いたかと思えば、ゆっくりと光に包まれて

小さくなっていく。そして光が消えたとき、グライド二世の姿は紫色のドラゴンから

紫髪紫眼の有角有翼人に変わっていた。


聖天帝竜人アークィンペルドレイクン…<存在進化EX>だ!」

「サイズは俺とほぼ同じ人間大になったな」

「うむ! HPやVITが竜のときより落ちるんだが、その分を補って余りある

STRとAGLを手に入れたけどな! 強すぎて七大竜卿連中では相手にならねえ!

余は自分の全力が如何なるものか知りたくて仕方が無くてな!

そういうわけだサドラス大侯爵! 余と戦え!」

「言われるまでも無い…!」


 気付けばサドラスは闘気充填Vを発動していた。どうも最近感情が昂ると勝手に

発動してしまうようだ。それを感じ取ったのかどうかは不明だが、

グライド二世はニヤリと笑みを浮かべ、鉈のような大剣を構える。

サドラスもそれに合わせて今度は愛用の黒金の大斧『Skull Braker』+2215を構えた。


「双方…宜しいようで…それでは第一回竜帝国武術大会…グランドフィナーレマッチ…

試 合 開 始ッ!!!」


「先手必勝ッ!! 焼け落ちろぉッ!!」


 グライド二世は魔法剣スキル「ブレイズキャリバーⅩ」から繰り出される火炎剣で

一閃の如き斬撃を叩き込んでくる。サドラスは斧で受け止めたのだが、

纏わりつく火炎が火炎耐性を持つはずのサドラスに

少ないが確実にダメージを与えてくる。


「! …属性耐性突破か!」

「ご名答! 余は火炎耐性突破+115まで会得している!!

ドラゴンなのに火炎が弱えぇとか情けない様を晒す訳にはいかねえからな!!」


 一瞬離れたかと思うと今度は剣を持っていないほうの手に複数の属性が

込められたエネルギー弾を直にぶつけようとしてくるグライド二世。


「竜帝…存外賢しいな!」

「悪く思うなサドラス! 弱点を暴いて攻めるのも戦略だろう?

余は親父からイヤと言うほど叩き込まれたぞ?!」


 剣と魔拳に加えて口からブレス攻撃も忘れないグライド二世の猛攻に、

ガードを崩していないはずのサドラスのHPゲージがほんの少しずつだが、

確実に減少を始めていた…それと同時にサドラスの体に懐かしい痛覚がやってくる。


「ククク…とんだ無礼を働いて悪かったなグライド二世竜帝陛下」

「あん? どうしたサドラス大侯? まさか根を上げるとか言――」


 グライド二世は妙な怖気を感じて咄嗟に顔を逸らす。

気付けば頬が薄いがパックリ割れて血が滲んでいた。


「そ ん な わ け な い だ ろ う ?」


 一見さんが見たら間違いなく「どう見ても狂人ですありがとうございました」的な

恐ろしい笑顔を浮かべるサドラス。


「ぬぅ…ッ!?」


 思わず距離を取ってしまうグライド二世。注視するとサドラスの周りには

得体の知れない薄い霧状の物体が立ち込めていた。恐らく何らかのエンチャントが

自動で発動している。


「やはり防御無視は喰らいたくないな…俺のVIT強化の時間を無にさせる攻撃だ…!」


 サドラスは最早無詠唱と言っても過言では無い神術+951を発動させる。

これには静観していたククルカルデンが思わずグライド二世に声をかけてしまうほどだ。


「陛下! 全力で防御を!!」


 そう叫んだ後ククルカルデンは素早く防御結界を何十にも重ねて展開した。


「!?」

「賢しいが、遅い…!」


 サドラスは神術スキル「コキュートス・トロメア」を発動させる。

試合場全体に綺麗な雪が降ってきたかと思えばその雪が落ちたところから猛烈な

勢いで瞬間凍結が始まる。


「うおおおおおおおッ!?」


 避けようにも下手に動けば帰って体にその雪が付き、グライド二世は体の殆どが

氷漬けになる。普通ならばこの時点で死ぬが、グライド二世は己の体を発火させて

その難を素早く逃れる。気付けば試合場がアイススケートリンクと化していた。


「ククール…!? 大丈夫か?!」

「結界一枚残りましたので大丈夫です」

「…あまりダメージが通らないところを見れば、竜帝陛下は弱点消化したのか…?」


 凄く(邪悪だが)嬉しそうな顔をしたサドラスが聞いてくる。


「肝を潰したわ…! だが…やはりそなたは過分でも不足無しだな!」


 言い終える前にグライド二世は体を鈍く輝かせて魔法剣スキル「スパイラルナイフ」を

サドラスに連発する。ちなみにナイフと言っているが波動属性のエネルギー刃だ。

 しかしサドラスは急所こそ切り払うなり防御するなりするが、それ以外は直撃しようが

お構い無しにグライド二世との距離を詰めてくる。


「全く以って立ちの悪い…! そなたを見ているとアンデッドが可愛いく思えんぞ?!」

「そうだな…アレは不死の名すら冒涜する死に損ないジャンクどもだ…!」


 言い終えたサドラスの身体が鈍く光る。


…。


「?! オイあれスイゲツのハンドレッドホリゾンタルじゃね!?」

「え…?! でも中空に神語表示されてないですよ?!」

「…んむ…あれは多分『サウザンドホリゾンタル』だな…剣士系の上級職全てを

極めないと会得できない裏スキルなのだ」

「んなもん実装してたのかよ運営~?!」

「サドラスみたいな奴じゃなきゃ絶対に気付かないだろうが…!」

「シュウ…やっぱりかっこいい」

「ぬぇ? …いやあの顔はちょっとわらわ的に無いと思うぞぇ…?」

「す、すごい…竜帝陛下さんの表情に余裕が消えましたよぉ…?」

「サドラス殿の本気…見れてしまうかもしれませんね…」

「ああ…! 我が君…!」

「マスター…私だけのマスター…701年生き続けて良かった!」

魔女皇グランソーサー…これがワタシのあるじ様…」


…。


 サドラスの亜光速級の連続水平斬りに成す術なく防御を余儀無くされるグライド二世。


「ぐ…ぬ…く…ぐ…ぬおぉお!?」

「気を抜くなよ竜帝?! 気を抜けば俺はきっと貴様ノ首ヲ刎ネテシマウ…!

そんな結末を俺は望まんぞ…!」


 ふざけたことを言う男だと思いながらもグライド二世は、

人生で初めてかもしれない悪戦苦闘に一つの結論を見出した。


「…あの時の言葉…ブラフではないのだな…!」

「つまらない嘘は嫌いだ」

「余の全力は…ここまでだったようだ…チクショウ捌き切れねぇ!」

「……そうらしいな」


 ふとサドラスの表情が真顔に戻ったと思った矢先。グライド二世の顔面に

サドラスの手が張り付き、間髪いれず地面にめり込むほど叩きつけられるグライド二世。

それだけでグライド二世のHPゲージが五分の一以下に減少した。


「それまでッ!! 勝負ありです!!」



<<フィールド:ニブルヘイム地方 現在地:グライデルダムント竜帝国・帝城>>


 謁見の間にて頭に包帯を巻いたまま玉座に座るグライド二世。ちなみに姿は

元のドラゴンに戻っている。その横ではククルカルデンが白魔術を施している。


「やー負けた負けた! あれは余もマジで死んだと思っちゃったくらいだ」

「洒落にすらなってません陛下。自重してください」


 その手前で何故か正座しているサドラス。後ろの一行は普通に立っているが。


「……熱くなりすぎた。申し訳ない」

「いいからいいから! おかげ様で長生きできそうだ! ガッハッハ!」


 グランドマッチ終了後、竜帝国民は恐慌状態に陥ったが、サドラスが無理やり

グライド二世の口に上位エリクシル「霊泉のエリクシル」をぶち込んで復活させたため

恐慌状態は起き上がったグライド二世の鶴の一声でどうにか納まった。

一応スポーツ武術大会とはいえ下手すりゃ外交問題に発展しかねないことを

やらかしたので、サドラスは神帝国貴族としてケジメをつけるべく、即土下座待機。


「いやそこまでのレベルで謝るなって! 余だって結局そなたをガチで殺す気で

頑張った結果、こうなったんだからさ? 手打ち手打ち!」


 戦いの時以外のグライド二世のノリの軽さにも

色々戸惑いを隠せないサドラス一行。


「断腸の思いで賞金交換プレートを返還するのも止むなしと思ったんだが…」

「いやそれはグランドマッチと別件だからマジで気にしなくていーから。

それよりもだサドラス大侯。余はそなたが気に入った!

聞けばスヨーヴィンドゥルの奴とも再戦の約束をしたそうじゃねえか!?

是非とも余とも約束してくれね?」

「それは構わないが…」

「大丈夫だって! 今度はレベル5000くらいになってから挑むって!

余もそこまでバカじゃねえって!」

「………気付いているうえでバカな事をしているなんて真正のバゴフッ!?」


 ククルカルデンの呟きに反応するや否や彼の腹にエルボーをぶち込むグライド二世。


「と、言うことで、余との再戦+時々手合わせの約束の証として、

我が竜帝国が700年間貯めに貯めた宝物庫から何かくれてやろう!」


 そう言ってグライド二世は玉座の隠しスイッチを押した。

すると玉座が後ろにずれて、地下への入口が現れる。



<<フィールド:ニブルヘイム地方 現在地:竜帝国・帝城地下宝物庫>>


 グライド二世に案内されるがままに後をついて行くサドラス一行が、

微妙にもったいぶりながら開けられた門を潜った先には、

黄金の平原が広がっていた。


「うおっまぶし…!」(注:厳蔵)

「ひょえ~!? あたり一面1TYD金貨だらけ~!!」

「余が思うに総額は多分ヨタ単位で7桁くらい行くだろうな」

「ぴぃッ!? メガヨタっ?!」(注:ロティ)

「当分1TYD金貨見るのが嫌になりそうですよ先輩…」

「全部を諭吉さんに変換したら…札束で溺れ死ぬだろうが!?」

「黄金の平原か…私の趣味では無しにけり」

「うっかり飛び込んだりしたら吸盤に一杯金貨がくっついてきて鬱陶しそうでス」

「神帝国の予算何十年分なのだ…!? うわもうやだ竜帝国ズルい!」

「RMTで捌いたら…シュウと一生安泰ネトゲニート生活が…」

「モモちゃん…ヨダレ出てるよ…」

「むぅぅ…皇国は1TYD金貨の鋳造技術くらいしか

張り合えるものが無さそうじゃの…」

「ドラゴンは光モノが好きなのはホントだったんだよ…!?」

「一番気になるのはそんな金貨の平原に無造作に放置されている魔法道具の数々だ…!

ん? おい!? あれは俺が召喚できる魔神機と同系統のライドバイクじゃないか?!

…っ!? 何だと…? 創世級の防具や素材…ビルドアイテムが…

何、て、雑に置いて…」


 サドラスは色々とショックを受けているようだった。


「と、言うわけで…さあサドラス大侯! 何でも好きなのを適当に持って行け!」

「陛下、流石に大盤振る舞いしすぎです。ここにあるモノは何だかんだで

国宝級、世界遺産級のモノしか無いのですよ?」

「え? そーなの? む…すまんサドラス大侯。今回は一つだけだ」

「…そ、そうか…いや…良いんだ…」


 心ここにあらずっぽいサドラスはふらふらと魔法道具を手にとって見ていく。

他の面子はそんなサドラスをRECしたり心配そうに声を掛けたり寄り添ったりする。


………。


……。


…。


 未だにふらふらとあっちを見たりこっちを見たりなサドラスだったが、

ふと金貨の山の裏に回りこんだとき、

他の魔法道具とは異彩を放つ意匠の宝剣を見つける。


「これは…?」


 サドラスがその宝剣を握ったその瞬間。


<うわ最悪! 男に握られたよチクショウ!!>


 と旧式の文字式チャット画面がPCメンバー全員に表示される。


「「「「「?!」」」」」


 当然この世界に来てから旧式のゲームシステム画面なんぞは

お目にかかった事は無かったので全員がそれぞれ驚くのも無理は無い。


「何だ!? 誰だ?! どこに居る!!」

<何処もクソもあるか! うわ! 力いっぱい握るな気色悪い!!>

「?! ま、さか…そんなはずは無いのだ…!」

「なあサドラスさんよ…」

「こいつぁ~究極レアっぽいぜ~♪」

「先輩!」

「佐渡!」

「シュウよ!」

「シュウ」

<クソが! しかも女子率高めなパーティかよ! 爆発しろ!>

「………」


 サドラスは握り締めた宝剣のど真ん中にある宝石部分を思い切りデコピンする。


<ぬが!? 超痛え?! おいこらヤメロそこ俺の神核コアいてててて!?!?>


 現実なのだと確認するべく何度も何度もデコピンするサドラス。


<やめろっつってんだろうがぁ!!>


 宝剣は発光して衝撃波を発生させる。しかし威力が弱いのか、それともメンバーが

皆強いからなのか、仰け反りはすれども吹き飛びはしなかった。

無論サドラスも握り締めたまま宝剣を離す等の愚は犯していない。


「お前…知的魔聖剣インテルソードか…!?」

<んだコラ!? 文句あっか?! ってかマジ離せクソが…!

っていうかお前俺は100000以上のSTRが無きゃ装備できねえ筈だぞ!?>

「その点は心配するな…最近200000を越えた」

<なん…だと…?>


「あれ…? ちょ…どうしてサドラスさんはさっきから剣に語りかけてるんですか?」

「ロティ殿…! 今、私達は凄い光景を見ているんですよ!?」

「ふぇ? あ、そういえばハンドレッドさんやスイゲツさんとかも

顔の前に何かの画面が表示されている…?」

「そうですよロティ殿! あれは“旧き神の機構の窓”…

オールドシステムウィンドウですよ!」

「それ、小さいコロにワタシも聞いたことあるよ…!」

「天地聖魔大戦は愚か…魔導文明時代より遥か昔の神代の時代より来たれり…」

「私がマスターに作ってもらったときにも何回か見たことありまス…!」


<……あ? 外の世界じゃそんなに時間経ってたん?>

「ああ、お前の体感なら下手をすれば数千年単位だろうな」

<危ねぇ…周りが金じゃなかったらオレ錆びて死んでるってことかよ…>

「…名前を聞きたいんだが…」

<………しょうがねえな……>


 喋る宝剣はPCメンバー達に再び古いシステムウィンドウを展開した。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

FullName:革新皇帝剣イノセント

WeaponLV:3289

Attribut:完全無属性

SwdClass:知的聖魔剣・究極アルティマ

<NextPage>

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「………すげえええええええええ!! レベル四桁のインテリジェンスウェポンだ!」

「本当にあったんだ…! 究極級!」

「攻略組の連中は本物の変態集団だろうが!? これは嘘つき呼ばわり撤回するわ!」

「しかも物欲センサー引っかかったら絶対お目にかかれないと噂の完全無属性~!!

敵の物理属性耐性もクソもねぇ~!!」

「わらわにはようわからんが…相当なお宝なのかぇ?」

「ガチお宝。RMTで足元価格で百万単位さんけたでも売れる…!」

「部長…本当に実装していたのだな…なればこそデスゲーム時代に欲しかったのだ…!」


 PCメンバーはちょっとしたお祭り状態だが、人族メンバーは何が何やら…。


<……ん? おい…サドラス…で良いんだよなお前?>

「何だ革新皇帝剣イノセント?」

<しょうがねえからオレの事はイノスって呼んでいいや…それよりもだサドラス!

お前にぴったりくっついているその黒塗りの美刃さんは誰だ!?>

「…あぁ?」


 今現在引っ付いている女子はいないし、まず黒塗りって表現が何か

引っ掛かりを覚えたサドラス。


<お前の腰だバカ野朗! 他に誰が居るってんだ!!>

「まさか…俺の専用装備『爪弾刹那』のことを指しているのか…?」

<爪弾刹那…! 良~い名前だぁ!! ねぇねぇお嬢さん!!

オレと一緒に刃合わせ――>


 革新皇帝剣イノセントことイノスがチャラ男口調でさり気なくサドラスの腕を

操りながら彼の愛刀爪弾刹那に近寄ろうとしたその時、何処からとも無く

見覚えのある刀が現れ、イノスに思い切りぶつかってきた。


<うを!? 何だ貴様!!>

「ま…瞬起弾指マタタキダンシ…! そんな馬鹿な…お前は…いや…

お前も知的魔聖剣だったのか…!?」


 イノスに思い切りぶつかって尚も追撃を続けるのはサドラスの所有する

大烈風妖刀『瞬起弾指』+3854…性能では爪弾刹那に劣るがデメリットが無いため

低レベル時代に入手して以降時折強化を重ね続けた古株の武器だ。


<あぁ?! 姉さんだとぉ!? テメー良い度胸じゃねえか!

この革新皇帝剣イノセント様に逆らうなんぞ一万年早いことを証明いててててて!?

マジかよコイツ強い!?>

「無理も無い。瞬起弾指のレベルは3854でお前より上だ」

<えっ?! うわ…最悪…刹那ちゃんまでそんな毒吐かなくても…>

「イノス…お前爪弾刹那と話せるのか?」

<何を当たり前体操してんだよ? 同じ刀剣だぜ? つーかむしろもっと話したいよ!

お近づきになりたいよ! そして刃合わせし痛ててててててて!?>


 再び瞬起弾指にガツンガツンとどつかれるイノス。


「…(良い意味で)何て日だ…おい竜帝陛下!」

「ん? 終ったのか?」

イノスこれくれ」

「おk。良いよ」

「ちょ!? 陛下即答ですか!?」

「いや、余はまだ100000STR越えてないし…折角決まったんだから

今後のためにも快くくれてやるのが王者ってもんじゃねーの?」

「感謝する! 竜帝陛下!」


 サドラスは久しぶりに感謝の念を込めた最敬礼をした。


第11話に続く

勢いは頼もしくも恐ろしい…。

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