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第八話「嗚呼…哀れなる鎧機兵南下進攻軍」

勢いで更新しました。

※Caution! 後半での場面の切り替わりが激しいです!

 展開の混乱にご注意ください!


<<フィールド:ヨルムンガンド列島 現在地:アロフネス皇国・謁見の間>>


 謁見の間とその周辺は土足厳禁とのことなので、サドラス達は履物を脱いで

しかも武器を預かるとのことだそうなので全員武器を預けようとしたのだが…


「こ、これで…全部…ですか…?!」

「ああ、おかげ様で完全なる丸腰だ」


 そう言ったサドラスがご丁寧に素直に出した武器は


・魔女銃大剣『Hexen Nacht』+1945(全長350㎝、剣部分約2m)

・紫電改40㎜機関銃+2550(全長約230cm)

・黒金の大斧『Skull Braker』+2215(全長約3m、刃部分約1.5m)

・機甲竜槍ナーガラージャ+1352(全長約5m、槍頭部分約1m)

・魔剣ヴァルナルダー+1658(全長約180cm、刃渡り140cm)

・聖剣カルマーグニ+1587(全長約190cm、刃渡り150cm)

・星断巨塔十拳刀剣ヴィシュナバリ+153(全長約16m、刃渡り約14m)

・連射式グレネードランチャー『ジョマンス』+1724(全長約260cm)

・魔改造アリサカライフル『七天圧倒』+987(全長約140cm)

・殺戮拳銃ヴァリアントSfzx+658

・次元斬破鎌ルリエニエル+785(全長約3m、鎌部分約180cm)

・魔王処刑剣アルシエル+1210(全長約4m、刃渡り約3m)

・大烈風妖刀『瞬起弾指マタタキダンシ』+3854

・波動手裏剣×6286

・擬似ブラックホール爆弾×2356

・禁断兵器33式『H-bomb warhead』×93(平均的な水☆弾頭と同じ)

・禁断兵器55式『準惑星破壊弾』×48(平均的な核☆頭の倍)

・禁断兵器77式『惑星爆散光』×27(〃四倍)

・禁断兵器99式『恒星瞬滅』×16(〃六倍)


 というラインナップである。


「もう突っ込まねえと思ってたが最後の三種類は

ウチの故郷フランスにも無いと思うレベルのI☆BM弾頭だなオイ?!」

「各武器、手裏剣、爆弾を扱える人間に宛がう…世界侵略でもする?」

「何かありえないほど大きな剣もありますねぇ…!?」

「武器と言う武器は全て最低でも+三桁強化…?! 先輩、正気ですか!?」

「弾頭云々を抜きにしてもさ~これ全部もう戦略兵器じゃね~?」

「この魔剣と聖剣…アタシの二刀流装備に…是非とも欲しいですわ佐渡様」

「どれもこれも…凄すぎて(装備条件を満たせなくて)装備できませんね…」

「おぉ…我が死の皇の"幾億死の宝具"…これで攻撃されては一溜りも無し…」

「あれ? マスター杖が無いですヨ? 魔法どうし…あ、魔法発動媒体も完備でス…!」

「なるほど…コレだけの装備があればディープワンズ神殿陥落も当たり前なのだな…」

「むぅぅ…わらわの国の宝物庫の武具を遥かに凌駕する業物ばかり…!」

爪弾刹那ツマビキセツナは専用装備…つまり身体の一部だから外せんのだが…?」

「は、はいぃッ?! …外せなくて、良いです…ッ!」


 別に睨んだわけではないが、皇国防人シャマライにもの凄く畏まられるのが

ちょっと気に食わないサドラスだった。 


……。


…。


「遅いな…」

「陛下も多忙な…というか仕事熱心すぎるのだよ。自分も良く待たされたものだ」

「戦って強くて、ご公務も熱心…そんな皇がアタシらの国にも欲しいかも」

「贅沢だよアリカ。代々の総理が強い国づくり頑張ってるんだからそれで我慢しようよ」

「でも、流石にヒマ…シュウ。ちょっと人気の無いところで身体でも動かす?」

「どういう結論でそうなった?! だからいい加減に離れろと言うのに!」

「運動…鍛錬か?! ならばわらわも混ぜるのじゃ!」


 実はさっきからハンドレッドがサドラスから離れてくれない。

そして百が抱きつきを強めると女性陣の一部から恐るべき殺気が放たれるのだ。

 ちなみに百に対抗するようにユスタリシアが抱きつくと余計に酷くなる。

サドラスは先程疾風怒濤の連打をぶち込まれた後頭部を軽く押さえた。

 ダメージはもう回復しているはずなのに何故だか痛いような気がしたからだ。


「うむ…待たせてすまない……ん?」


 皇陛下の御成り云々の挨拶を言いたがった皇国防人のやる気を削ぐかのごとく

玉座には何時の間にか格好良すぎるお爺様が座っていた。

 この男こそがアロフネス国皇「高天或船皇たかあめありふねこう」にして――


「?! お前…! まさか天地創皇インビテーシオの息子で…」

「元・爆裂皇女にして先代爆光陽皇ヘブニルミネートの弟、静嵐月皇リードムーンだ!

と、私にそんなセリフを吐かせるお主は…サドラス…いや今は

暴虐廃人ティラニスマグナウスザドゥルオウス』とでも言うべきなのかい?」

「やめろ…あれは地味に黒歴史なんだ」

「KATUMI殿から噂は聞いていたが…

701年前から全く変わらぬその姿を見れば納得したねい…」

「あの時は腐ったお姉さんにも需要がある鬼畜クエスター銀髪ショタっ子だったが…」

「まあ701年も経てばね…長寿種でもスーパーグレーになってしまうものでね…

その様子だとツヴェルにも似たようなことを言ってそうだねい…?

というかユウを見て何も思わなかったのかい?」

「確かにユスタリシア姫の感じがあの爆裂姫ヘブニルミネートに

似ていると何故気付かなかった俺…!」

「姉上はもっと武闘派だったからね…」

「そうか…ユスタリシア姫はあの爆裂皇女の…」

「実の娘では無いね、今は私の義理の娘…というかユウは古の冒険者ストレンジャーの子だよ」

「何だと?」

「え?! だとすれば自分ら以上のタイムラグ転移者なのだろうか?!」

「ん? そうじゃよ? 十年位前にここでお父様の養女になったぞぃ?

ちなみに本名は至島 悠いたりしまゆうじゃ! 今さら別にどっちでも良いぞぇ!」

「亡くなる寸前まで姉上に色々教え込まれたせいですっかり口調まで似てしまったが…

まあこれはこれで一足早く孫娘が見れたような気がするのでアリかと思ってねい…」

「亡くなる…? 待てヘブニルミネートは人間族だったはずでは…?」

「あの姉上だぞ? <存在進化>してないわけ無いだろう?」

「だが…逝ってしまったのか」

「ほぼ一年中常在戦場なんて無茶なことをすれば

いかに<存在進化>したところで長生きなんぞ出来ぬからねい…笑いながら眠ったよ」


 先程からサドラスとリードムーンしか会話してないのは当然といえば当然だ。

 ちなみに百は何時の間にかサドラスにもたれかかってスヤスヤ寝ていた。


「ギルマスとも旧知かと思いきや…皇国の皇様とも知り合いだなんて…

サドラスさんがますますわからないですよぉ…」

「ただの廃人とは何かが違うってのは見てりゃ分かるが…

こんな繋がりになるなんてな…リードムーン皇子の鬼畜クエストなんて

好きでやり込むヤツはサドラスだけだろうからなぁ…」

「そうか…あのお爺さんが鬼畜外道クエスターのリードムーン皇子だったのか…」

「良いね~! 格好いいお爺様良いね~! 醸してきたわぁ~!」

「落ち着けよ脳内発酵巨乳。仮にも皇様の御前だろうが」

「何でしょうか…私、もしかして凄い伝説の当事者になってるんじゃ…?」

「何を今さら…我が君の伝説は私との迎合から既に始まっておったと言うに」

「厳密には私をこの世に生み出してから既に始まって現在進行形でス!」


「まぁ、何だ、謁見とか言っているが、長話になりそうだから

適当に寛いでいると良いかもしれんねい…あ、君。

ゆっくりで良いから適当に茶と菓子でも用意してくれないかい」

「御意!」


 ゆっくりとリードムーンが言ったのにお茶とお菓子の用意を

するべくダッシュで厨房へ行く皇国防人。


「さて、待っている間にいくらかKATUMI殿の用件も済まそうかねい」

「おお! それは有り難いのだ」

「まあアペリウスの動きが少し調子乗ってんじゃねいの貴様っていう段階に

移りつつあるのは私も重々承知だ」

「連中の新兵器『鎧機兵アルマパラトセリ』の実態もイマイチ良く分かってないのだが…

そのことについては陛下は如何思うのだ?」

「そうだね…実際向こうに送った忍者たちも全然帰ってこないし…

とはいえ連中も私たちが色々探っていることを知っているだろうから…

月並みだが近々大攻勢に移ってくるんじゃねいかって思ってるねい」

「やはり陛下もそう考えているのだな…」

「まあよく分からんから西方と東方の大国同士、もうちいっとキチンとした

同盟関係を結びたいってのは、私も賛成だねい。

そうすれば無理にユスタリシアをサドラスのヨメにせんでも良いだろうしねい」

「それだ! 何故ユスタリシア姫が俺の―

「サドラス! わわらのことは本名のユウと呼ぶのじゃ!

そしてわらわにも汝の本名を教えぬか!! 早く呼び慣れたいのじゃ!!!」

…ちっ…ユウが俺の嫁になるなんて話になったんだ?」

「うむうむ! それでこそわらわの未来の旦那様!!」

「……む。そんな予定は無い。シュウは私と明るい家族計画をする…予定!」

「ふふん。まだ婚約すらしておらんお主なんぞわらわの敵ではないぞぇ♪」

「む…! シュウはもう私の身体に夢中」

「なってないなってない! をいやめろ当ってる当ってる!」

「当ててん、の…!」

「ええうぎ?!(噛んだ)…離れろといふに!!」

「ぐぬぬ…サドラスの本名が分かったのに勝った気がせぬぞ…!

さあシュウよ! わらわの身体の虜になってしまえ!」

「うを!? うわ何をするやめ?!」

「サドラスをRECなう」(注:厳蔵)

「タイトル:我等がサドラスさんが珍しく戸惑う~♪ そにょ2~♪」

「あ、そのタイトル僕も使って良いですか? 

…でもやっぱり"さん"じゃなくて"先輩"のほうが良いかな…?」

「お前等ポータブルカメラをしまえっての…仮にも皇様の御前だろうが」

「身の程を弁え続けていたら自分の望むものが得られなさそうですね…」

「我が君! 惑わされてはなりませぬ!」

「マスター! 御気を確かに! 中身が年上で合法な私が良いじゃないですカ?!」

「………」


 ロティの張り付いた笑顔が怖い。サドラスはそれが一番気になって仕方なかった。


…。


 和気藹々(わきあいあい)と話しを続けているうちにリードムーンが注文したお茶やお菓子が

サドラス達の前に並べられていく。


「いやいや…用件を聞いていただいたうえにおもてなしをしていただけるとは…

陛下には感謝の言葉しか出てこなくて申し訳ないのだ」

「何、此方にも同盟の旨味があるのだから気にする事は無いねい」

「というか俺の事を気にしてくれないか」


 サドラスの周りにはユスタリシアと五人の女子メンバーが纏わりついている。


「キュー子…お前もか…!」

「ごめんなさいモモちゃん…! 譲れないものは私にもあるから…!」

「ぐぬぬ…らいばるが多いだとぅ…?!」

「やらせぬぞ神人の小娘…! 我が君は私の上に乗る(座る)回数が多い!」

「ちょっと<存在進化>してるからって調子乗るんじゃねえでス!」

「モテモテですね。サドラスサン…?」

「…(超混血ハイブリッド半人天空聖霊デミホーリースピリットになってから色々と強くなったなロティ…)…!」


 お茶を啜りながら笑いあうリードムーンとKATUMI。


「しかしあのサドラスがこうも形無しで居るとは…長生きして良かったねい」

「いやはやゲーム時代を知っている自分としても新鮮すぎて思わず

『C†B†E』連中みたいについRECしたくなったのだよ」

「…ちなみにだKATUMI殿。そのRECとやらで録画した映像はアイテム化

できるのかねい…?」

「大丈夫だ、問題ない…一番良いのを渡す」


 ニヤリと笑って握手をするリードムーンとKATUMI。

ちなみに話に上がった「C†B†E」RECメンバーは各々自分好みの角度から

サドラスが女子に群がられている様をニヨニヨしながら撮影している。


「おのれ…後で覚えておけよ貴様ら…!」

「はっはっは…うむ。良い映像もこの辺りで良かろうかねい…

サドラスよ。お主の待望の婚約解消の条件を言おうか?」

「今直ぐ言え! 言わなければ俺は皇国を滅ぼすことも辞さんぞ!!」

「はっはっは…! それは敵わんねい…何、簡単だ。私と息子たちと共に

アペリウス南下進攻軍隊を撃退して欲しいのだねい」


 軽い口調だが、言葉そのものには異様な重みを感じさせるリードムーン。

 サドラス以外はその雰囲気を敏感に感じ取ってしまい、皆それぞれ静かになる。


「チッ…ショタっ子の頃から相変わらず気に入らんプレッシャーだな」

「はっはっは…流石廃人の中の廃人マグナスインマグナス…私の恐怖系スキルでも平然としているねい

で、返答や如何に?」

「……まあいい、八つ当たりの相手も出来たから良しとしよう」



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦前>>


 アペリウス…建国歴は120年と短い。北東の旧魔族領から流れてきた弱小魔族と

様様な理由で流浪の身となった人族が北の厳しい環境と強大魔族の生き残りから

身を寄せ合って生きるうちに混血が進んで建国に至ったのだそうだ。

 それゆえにアペリウス人は自分たちの始祖となった民族以外の他民族に排他的だ。

おまけに魔力の素養が機甲人に匹敵するので、今では強大魔族たちをも使役するほどの

魔術師の国となった。

 そんなアペリウスが、自国領内にある山岳地帯で、古代遺跡を発掘したことから

最近の活発化が始まった。

 彼らの領内からは「鎧機アルマパラト」と呼ばれる内部に人が乗り込んで動かすことの出来る

いわばロボットのような物体が続々と発見されたのだ。しかもそれは天地聖魔大戦以前の

魔導文明マギテック時代の遺産ときたものだから、魔法に造詣の深いアペリウス人は

喜び勇んで「鎧機」の研究を進め、ついに軍事兵器「鎧機兵アルマパラトセリ」を完成させる。

 最初の頃は旧魔族領に新しい開拓地を作るために使用していたのだが、

その強大な力…厳密に言えばレベル百クラスのモンスターや冒険者が十数体束になって

初めて「鎧機兵」一機に太刀打ちできることを知ってからは、彼らが虐げられてきた

建国以前からの恨みと憎しみに火がつき、やがてアペリウス人によるアペリウス人の

全土統一の野望にまで発展するのである。

 無用な謀殺合戦を避けるべく、アペリウスは社会主義体制をとり、最高権力を持つのは

『百傑委員会』なる百人で構成されている。だが、むしろ下手な社会主義を摂らない方が

無用な謀殺合戦と腐敗を減らせることに気付かないのはどこの世界でも共通なようだが。

 上層部の腐敗はともかく、中層以下の者達は皆「鎧機兵」の力に酔っている。

いや、酔わざるを得ない。何しろマトモな敗退を経験していないのだ。


「見たか? あのワイバーンの死に様w」

「マジで笑ったなw 翼が無いなら足で立てば良いじゃないってなw」

「wwwお前最低www足も破壊したじゃんwww」


 笑いながら何かを虐待できるようになってしまったらもう終わりである。

切り替えが上手に出来る人間は早々現れるものじゃない。

 そしてやり込み等の努力によって力を得たものと違い、急に強大な力を得た者は

えてして傲岸不遜な存在に成り果てる…。


「にしても皇国wの連中あっさり引きやがったなwww」

「クッソワロタwwwまあ手足千切れて死ぬ仲間見たら逃げるわwww」

「けどよ。皇国の皇と皇族はマジで化けモンだよな」

「一対一だと中身ごと真っ二つとかザラだったし…」

「大丈夫だろ。こっちには鎧機兵十六師団に魔導戦車十二連隊が残ってんだ

最悪全戦力投入で俺らTUEEEEEEタイムっしょw」

「うわwww言っちゃったwww」

「ウォッカうめぇwww」

「白酒うめぇwww」

「酒といえば皇国の"或船酒"ってのが超美味くてウォッカより酔わないとか」

「マジで? じゃあ皇国制圧したら"或船酒"片手にアロフネス美人ちゃんとハッスる?」

「いいねw酒が美味くなるwww」

「ウォッカうめぇwww」

「白酒うめぇwww」

「或船酒飲みてぇwww」


「………酒が絡むとまるで駄目だなこいつら…」


 国境砦を制圧した南下進攻軍の将軍は頭を押さえて薄めたウォッカを呷った。

悲しくも北方、酒を飲んで温まっておかないと碌に動けなくなるのだ。



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス北方領地・海岸>>


 流石に空から行くのは撃ち落してくれと言っているようなものなので、

海岸に『大空悪竜フィルマメントブーズンドラッへ』を停泊させて上陸したサドラス一行。

 ちなみに皇国側は魔導鉄甲艦の小艦隊で後に続いて来た。


「敵は何処から何処までを占領しているんだ?」


 右手に魔女銃大剣『Hexen Nacht』+1945、左手に紫電改40㎜機関銃+2550を装備し、

何時に無くる気満々なサドラス。

 やる気がありすぎて『闘気充填(自動SP回復)』が発動しているほどだ。


「此処から約320Km先の国境砦一帯だねい」

「ふむ…この眼でサドラス卿の実力が見れるのか…年甲斐なくワクワクしてしまうぞ」

「んー、そうだねー…600年間地味に退屈だったもんねー?」

「え、皇太子と皇子も長命種なのかよ?」

「別に不思議なことでは無いだろう。ユスタリシア…ユウが特別だっただけだろう?」

「一応ボクら古人アルトマだけどさー、天地聖魔大戦の前後は知らないよー?

何せまだ生まれてないからねー」


 サドラスは首をポキポキと鳴らす。


「さて…少し全力で走るか」

「ん? 待てサドラスまだ私たちの準備――」


 リードムーンが声を掛ける前にサドラスの姿は残像を残して消えた。


「いかにサドラスが高レベルの廃人とは言え…相手は十万以上いるのだがねい…」

「陛下。ひょっとすると心配無いかも知れないのだよ」

「随分と彼を高く買っているようだがねい…鎧機兵は1500レベルの私でさえ

単騎で相手をするには危険な集団なのだがねい…?」


 心配そうなリードムーンに対してロティが答える。


「きっと大丈夫です。実際サドラスさんはスーパーレイドモンスター相手に

"ちょっと一狩り"してくるって平気で言える人ですから」

「それ本気で言っているのかねい…?」

「本気だと思うぜ皇帝さんよ。ロティちゃんはこの世界の住人では

一番サドラスと一緒に旅してたわけだからな」

「ふむ。とはいえ他国の人間一人に任せていては皇国の名折れだ、

さあ行くぞカグツト、タケミカ、ユスタリシア! 身の程を知らぬ

アペリウスに皇国防人シャマライ魂を見せ付けてやろうではないかねい!」

「「「応ッ!!」」」


「……私は、きっと素敵な時代に生まれてきたんですね」

「キュー子。何してるの? もうみんな行ったよ?」

「え?! 酷ッ!? 普通に置いて行かれた!!?」



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦前>>


 鎧機兵による南下進攻軍隊が、異変を察知したのは

調子に乗ってまだワイバーンを弄っている連中が蜂の巣にされてからだ。


「な、何が起きたんだ?!」

「おい何で鎧機がああも簡単に穴だらけになってんだよ!?」

「畜生酔いが醒めちまった!!」


 そう声を掛け合うアペリウスの軍人達は未だに遠くから何らかの攻撃で

仲間達が次々と穴だらけになっていく様を狼狽しながら対応に追われていた。


「将軍! 敵襲らしいのですが!? 依然敵影が確認できません!!」

「ああ畜生! 人が酒を呷った時に限ってッ!!」



<<>フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦近郊>


 砦からおよそ30kmほど離れた地点から、サドラスは左手に装備した

紫電改40㎜機関銃+2550で鎧機兵を弾幕蹂躙していた。


「貴様らが余計なことをしなければ俺は楽しく皇国観光を出来たというのに!!

どうしてくれる!! どうしてくれる!! 如何してくれるッ!?!?」


 冷静になってみれば八つ当たりで多くの命が失われている気がするのだが…

そんな綺麗事ばかりでは世の中はまかり通らない。

殴るときは殴らねば此方が殴り殺されるのだ。



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦前>>


 依然として謎の遠距離攻撃に晒され続けるアペリウス南下進攻軍。

どうにか防御結界やバリケードなどで対応をするも焼け石に水といったレベルだ。


「こんな馬鹿なことがあって堪るか! 我々はアペリウス精鋭部隊なのだぞ!?」

「将軍! 防御結界陣の構成に間に合いました!!」

「よくやった! 終ったら貴様にはウォッカを浴びるほど飲ませてやる!」


 流石に魔術に秀でたアペリウス人も馬鹿ではない。防御結界陣で自分たちの

陣地をすっぽりと覆い隠した。


「敵の正体は依然として不明だが、弾幕攻撃の方向から

おおよその位置は検討している! 攻撃が止み次第反撃するぞ!

我らアペリウスに牙を剥くことの愚かさを骨身に染みさせてやろう!!」

「「「ダーッ!」」」



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦近郊>>


 サドラスの紫電改40㎜機関銃+2550は攻撃力と射程距離、連射速度に

強化値を極振りしているため、射撃術を+100以上に強化せずに扱うと

フレンドリィファイアによる大惨事を引き起こす。


「…チッ」


 仮にその弱点を補えるほどの射撃術スキルを持っていても、

強化するところには特殊性の項目があり、例によってそこは殆ど

強化していないため、その結果、過剰発熱オーバーヒートして暫く使えなくなる。


「まあいい、前座はこれまでだ…!」


 サドラスはアイテムストレージから星断巨塔十拳刀剣ヴィシュナバリ+153を取り出し、

装備を素早く切り替える。周りに敵がいなくても素早く装備を切り替えるのは

MMORPG近接戦闘狂プレイヤーならではのクセだ。


「基本的には大きすぎて邪魔だが、逆レイドバトルには大いに役立つ…ククク…

…覚悟しろよ鉄人ロボット兵団…!!」


 サドラスは星断巨塔十拳刀剣ヴィシュナバリ+153を握り締め、

残像を残しながらアペリウス南下進攻軍に占拠されている皇国国境砦に走っていく。



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦前>>


 幾ら残像を残すほど素早かろうとも、近付けばアペリウスの索敵魔法に

引っかからないわけも無く、


「将軍! 敵影と思わしき物体が此方に……も、物凄い速度で接近してきます!?」

「!! …その数は?!」

「い、一体です!! しかも3クラスの体格です!」

「唯の人型サイズでなんでそんな速度が出るんだよ!?」


 禅問答を繰り広げているアペリウス南下進攻軍の将軍たちの少し前方から

異様な鈍い音と何かが弾き飛ばされる音、爆発と粉塵が巻き起こった。


「?! 早すぎる!!」

「将軍! わ、我が鎧機兵部隊が入れ子人形の如く叩き割られていきます!?」

「何だと!?」


 というのも彼らのほんの数百メートル手前に全長16mはある馬鹿でかい両手剣を

思い切り振り回して鎧機兵を蹴散らしながら突き進んでくるサドラスの姿が見えるのだ。


「さあどうした!? 一々驚いていないで反撃して来い!! 無抵抗なヤツを

殺しても何の面白みも無いぞ?!」


 一応鎧機兵たちも装備武装や戦闘スキルでサドラスにダメージは与えているのだが、

如何せんサドラスのHPとVITが高すぎて碌にダメージを与えたことになっていない。


「ヒィィ!? 何で死なねえんだよぉ?!」

「撃て撃て撃て撃て撃てぇッ!! 集中砲火だ!! げッ!? 避けられてる?!」


「詰まらんぞ貴様らァ!! 此処だ! 俺の頭や心臓!

急所くらい正確に狙って来ぉぉぉぉい! クリティカルヒットすれば俺とて死ぬぞ!!」


 サドラスの脳天目掛けて鎧機兵のこれまた馬鹿でかい剣が振り下ろされるのだが、


「だからといってノーガードで受けてやるほど俺は優しくはッ!! 無いッ!!」


 素手で白刃取りしたかと思いきやSTR10万越えの脅威的な握力で

馬鹿でかい剣の刀身を握り潰すや否や、装備を黒金の大斧『Skull Braker』+2215に換え

剣を破壊されて呆けている鎧機兵を容赦なく叩き壊し斬る。

 距離のある鎧機兵に対しては再び換装した愛用の魔女銃大剣『Hexen Nacht』+1945で

時に射撃、時に剣部分で刺し貫き、時に刺した挙句のゼロ距離射撃と

 距離などお構い無しに周辺の目に付いた鎧機兵を片っ端から乗り手諸共

無惨に薙ぎ倒していく。


「背中ががら空きじゃー!!」


 鎧機兵の一体がサドラスの背中を魔法で強化した大剣で斬りつける…が、


「ほう、やるじゃないか…3万ダメージ…なるほど俺でなければ並の冒険者は即死だな」

「ニェット!? 何で死なないんだよ?!」


 斬られたはずのサドラスはニヤリと笑って自分の背中を斬りつけた鎧機兵を


「それだけの力がありながら貴様は技の一つも使えんのか?」

「はぁ!? お前は何を言ってんだよ?! ッ糞…コレでも喰らえ!!」


 今度は魔導機関銃でサドラスを撃ちまくるのだが、


「芸がない」


 急所以外はそのまま攻撃を受けながら、ゆっくりと

連射撃を続ける鎧機兵に近付いていくサドラス。

ちなみに周りにいる鎧機兵達はフレンドリィファイアを防ぐ為もあるが

何よりも生身に見える人間が鎧機兵の攻撃を殆どモロに受けながら

ジワジワとゾンビの如く近付いてくるという異様な光景に

理解が出来ずに動けないでいる。


「うわああああああ!! こっち来んなぁぁぁぁぁあ!!」

「…ッチ…貴様はもう駄目か」


 サドラスは事も無げに銃剣で射撃を続ける鎧機兵を刺し貫いてからの

ゼロ距離連続射撃で葬った。


「ば…バケモノがぁぁぁぁぁぁ!!!」


 周りにいた鎧機兵は最早フレンドリィファイヤもお構い無しにサドラスに向けて

無我夢中で集中砲火を浴びせる。


……。


…。


「何だアレは…!? アレは本当にアンスロか?! レイド級の古人アルトマじゃないのか!?」

「分かりません! 『レイド・アナライズ』を以ってしても

依然として頭上の名前が【????】表示のままです!!」

「!? 冗談だろう?! あれはレベル差が2000近くあっても分かるヤツだぞ?」


 簡単な話だ。サドラスとアペリウス南下進攻軍とのレベル差は2000どころか

6000以上の差があるのだ。しかしソレを理解するためには

アペリウス軍人達は己の中の常識を棄て去らなければいけない。


…。


「ふむ…ようやく四百万ダメージか…とはいえ調子に乗りすぎたな」


 サドラスは腰に差してある専用装備【無間波動刀『爪弾刹那』+6527】に

手を掛ける。


「たまには使ってやらないと、臍を曲げるかも知れんしな」


 別にインテリジェンスウェポンの類ではないのだが、擬人化文化を持つ日本人なら

誰もが一度は愛用する物品に話しかけたり、気を遣ってしまう事があるはずだ。


「………くぞ」


 サドラスは愛刀:爪弾刹那を抜き放つ。

すると、サドラスが見える景色が一変する。何もかもがミリ単位でスローモーションに

見えるのだ。無論、サドラスはその中で普通に行動できる。

 すなわちこれは爪弾刹那の特殊能力なのだ。GrTrAdにおける専用装備は

持ち主と共に強くなることが多々ある。そしてある一定のレベルに達すると

隠された特殊能力がボーナスブレイクと共に開放されることがある。

爪弾刹那の場合は…剣を抜いている間SPが秒間100ポイントずつ消費される代わりに

持ち主のSTRとAGLにその三倍値が加算されるという

敵にとって鬼畜外道な能力がある。

 無論そこそこの冒険者にとってはデメリットのほうが大きいので扱いに困るのだが

そこは廃人プレイヤーのサドラスである。彼ならば爪弾刹那の性能を余すことなく

存分に振るえるのだ。


「やはり全てが何時も以上に遅く見える…」


 AGLが三倍値加算されているが故に、素早く動けすぎるがために、

サドラスの視界に移る全てがミリ単位のスローモーションで動く世界となる。


「一…二…三…四…五…」


 サドラスは歩きながらすれ違い様に鎧機兵を次々と斬って行く。


「十三…十四…十五…十六…」


 斬りながら段々と歩行速度を上げていくサドラス。


「二十三…二十四…二十五…」


 やがて走りながら目に付く鎧機兵を片っ端から斬るサドラス。


「四十八…四十九…五十…五十一…」


 そしてこのスロー世界でさえ残像が見えるほどに加速しながら

およそ視界に移った全ての鎧機兵を斬りまくっていくサドラス。


「564…566、7、8、9…」


 SP表示の残量を気にするサドラスだったが、それよりも自分自身の脳が

超加速の世界に付いてこれなくなっていることが問題だった。


「1997、8、9…2000…2001…ッ!? 限界か…!!」


 軽く眩暈を覚えたので、サドラスはまだ立っている鎧機兵たちから

念のため距離をとって爪弾刹那を鞘に収める。すると世界が元通りの速度になる。

だがそれ即ち――


―消え…あ? これ…俺の――?

―え、何で俺マップタツゥ――?!

―は…?

―なんだ一体何がぇッ――?!

―どうなって…――ゴフッ!?


 ―次々と綺麗に各々様々な部分から切断されて倒れていくアペリウスの鎧機兵たちの

地獄絵図の始まりを意味する。前半に斬られた半数は自分が死んだことにも

気付いていないのかもしれない、それは幸運かもしれない。

 だが、後半に斬られた彼らは間違いなく不幸だ。


「……ば、馬鹿な…!? 南下進攻軍がものの数分で壊滅…?!

俺はウォッカでも飲み過ぎたのか…?!」


 幸か不幸か、南下進攻軍の将軍はサドラスに斬られていなかった。


「お前が将軍か」

「!?」


 気付けばサドラスが将軍の正面に立っていた。

手に握られた装備は機甲竜槍ナーガラージャ+1352になっている。



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦近郊>>


 リードムーンらがそこに辿り着いた時点で、既に鎧機兵団が壊滅していることが

斥候からの報告とスカウト系スキルなどの遠望で目視確認された。


「何と…!」

「これが、サドラス卿の本気か…!」

「うお…マジか…!?」

「凄い…!」

「ちょっと、グロテスク?」

「命がけの戦いですから、多少仕方の無い部分があると思います」


 念のため陣地を広げていると、斥候から再び連絡を受けるリードムーン。


「どうやら、陣地を広げる意味は無かったようだねい」

「え?」

「それはまさか…つまり…」

「サドラス卿が全てやりおった…と、いうことだな」



<<フィールド:ヘルヘイム地方 現在地:アロフネス国境砦前>>


 地べたに胡坐をかいて座るサドラスは珍しく煙草を吸っていた。

 ちなみにサドラスの前には南下進攻軍の将軍が鎧機兵から降りて

サドラスに勧められるがままに煙草を吹かしていた。


「……で、1・生き残りを連れて退却する、2・此処で死ぬ。

どちらにするのか決めたのか?」

「ごふぉっ!? あ、えーと…」

「ぐずぐずしていると皇国防人の本隊が来るぞ。連中は俺ほど甘くないだろうな」


 こっちの部隊を軒並み壊滅させたヤツのセリフじゃねえ…!

 南下進攻軍の将軍は喉元まで出かかったそのセリフを煙にして吐き出した。


「どうせ…退却しても、俺の責任問題で碌な目に会わない…

ということで、3・皇国の捕虜になる…ってのは、駄目か?」


 サドラスは葉っぱの部分が殆ど燃え尽きた煙草を握りつぶして消す。

 その様子に南下進攻軍の将軍は一々肝を潰さなければならなかった。


「賢明過ぎてつまらんな。玉砕覚悟の特攻とかをしても俺は構わんぞ?」

「冗談じゃねえっす。明らかに無駄死にのオチしか無いじゃないっすか」

「チッ…」


 何て悪魔だこいつは…! 南下進攻軍の将軍はきっとそんな事を思ったに違いない。


………。


……。


…。


「うむ…では投降して来た彼らは此方で捕虜として預かり、

然る後に裁判で処分を決めようかねい…」

「弁護者が大変そうなのだな…」

「まさか超法規的措置なんてやるわけにもいかんだろう…」

「そーだねー…サドラス卿がアペリウスの軍隊を軒並み壊滅させてるから

そんな事をしたら最低な国って風評被害にしかならないよー」


 ちなみにサドラスは別に大した怪我を負っていないにも関わらず、

ユスタリシアを初めとした女子数人に群がられている。


「大丈夫かのぅ旦那様や?」

「調子に乗るなユウ。俺はお前との婚約は約束どおり破棄したのだぞ」

「ちっ…つまらんのぅ」

「ふ、シュウは最初からお前などアウトオブ眼中」

「にゃにおー!!」

「やる気…?」

「やめろ、それ以上抱きつくな」

「何はともあれ、無事で良かったですサドラスさん」

「ふん。我が死の皇があの程度の連中に遅れをとるなどありえぬ!」

「人間椅子状態のララリリル殿が言っても全く格好良くありませんね」

「マスター? 肩とか凝ってませんカ?」


 流石に録画はしないのか、残りのメンバーもサドラスに近付いてくる。


「いや、マジで驚くって…あの『鎧機兵』よ…

ステータス評価がレベル換算で500以上だぜ? よくもまああんな恐ろしい

ロボットを二千体以上破壊できたもんだ」

「凄すぎますよ先輩……僕もそんな先輩の領域に辿り着いてみたいですよ!」

「ダメダメゲツきゅん。ゲツきゅんはあんな脱いだら超ムキムキな人になっちゃ駄目~」

「ムキムキいいじゃん。アタシはそんなゲツきゅ…スイゲツを見てみたいよ」

「主にサドラス×スイゲツとか~」

「そうそう…んで時々下克上…って何言わせてんだゴルァ!?」


 怒りに任せてしえりゃんに斬りかかるアリカ。


「にゃっはっはっは~当らぬ~当らぬぞ~当らなければ如何と言うことは無いぞ~」

「くぬやろ! くぬやろ! くぬやろ! 何で当んねえんだよぉ!? この弾幕厨め!」


 アリカの連続攻撃をヒョイヒョイかわすしえりゃんを遠巻きから苦笑して見ていた

サドラスに、リードムーンたちが近付いてくる。


「正直此処まで度肝を抜かれる展開とは思わなんだが…まあ、これで約束どおり

ユスタリシアとお主の婚約は正式に破棄と言うことで」

「正式に婚約した覚えも無いが、まあ良いだろう」

「むぅ…シュウよ。本当にわらわと婚約したくないのか?」

「俺にはまだまだやりたいことがある(未知なるダンジョン完全踏破とか)のでな」

「シュウ。行き急ぐ必要は無い。子作りがしたいなら私が居る」

「何故そうなる!」

「む、やはり乗ってこなかった」

「なら言うな!」

「はっはっは…まあサドラスほどの者なら引く手数多だろう。ユウよ

今回は時期が悪かったということで一旦諦めろ」

「ぐむむ…お父様がそこまで言うなら仕方ない…一 旦 、 諦 め よ う」


 つまりチャンスがあればもう一回求婚してくるだと…? 冗談じゃない!

サドラスはそう思うと同時に「当分アロフネス皇国には立ち寄らねぇ!」と心に決める。


「さて、陣地の撤去が済み次第我々も帰ろうとするかねい…あ、そうだったそうだった。

KATUMI殿…ちょっとこれからお主と話したいことがあるんだが…」

「え? 何の話なのだ?」


 リードムーンはKATUMIを誘いながらその場を立ち去っていく。


「兄上。それじゃーボクらも陣地の撤去でも手伝ってこよーかー?」

「ふむ。兵たちにいらぬ緊張を与える気もするが…まあ暴れそこなった分

良いかも知れんな…ユウ。汝も早めに来いよ」


 皇子たちも各々ゆっくりとその場から離れていく。


「ふぅ…後は現実世界の帰還方法の情報を貰ったらこの皇国ともおさらばだ」

「じゃあその時は一旦アジトに帰ります? サドラスさん?」

「そうだな…何日か何もせずボケーっとしていたい気がする」

「お? じゃあ折角だから酒でも持ち込んでまた騒ぐか?」

「…斬るぞ貴様」

「ハッハッハ! 冗談だ冗談! 俺らは俺らでKATUMIのコネでも使って

今度こそ帝国ホテルにでも拠点を構えるぜ」

「そうだね。結局泊まり損なったんだからソレも良いね」

「うひょ~ホテルの高い酒飲み放題~」

「分量を弁えろよ…後もうアンタの酒には付き合わないからな」

「シュウ…」


 またサドラスに抱きつく百。


「………チッ」


 しかし何も言わず抱きつかれるがままのサドラス。


「…落ち着いたら、押しかけても良い?」

「……それは駄目ですよハンドレッドさん?」

「む……う…」

「うん。やめておいたほうが良いよモモちゃん…ロティ殿は

何だかんだで物理攻撃が三番目に強くなったから」

「うむ…気がついたら私のSTRが抜かれていたのには驚きを隠せぬるわ」

「仕方ない。一 旦 諦 め る」

「永遠に諦めてくれても良いんですよ?」

「それは無い」

「………」


 張り付いた笑顔と無表情の視線が交錯して火花が散る。

 サドラスはその光景に額を押さえたのだが、

不意に顔を何者かの両手で抱えられたかと思った矢先


「?! んむっぷ?!」


 サドラスはユスタリシアに唇を唇で塞がれていた。

ズッキュウウウウウウンとか効果音があったら間違いなく似合うほどの光景だった。


「な!?」(注:ロティ)

「に!?」(注:キュクル)

「…にゅ!?」(注:百)

「にエェエエエ?!」(注:メドラ)

「のぉぉぉぉおぉぉぉお!?」(注:ララリリル)

「ちょ!? 先輩に何かとんでもない事がまた発生してるんですけど!?」

「やべオイ、ポータブルカメラ何処だ!? ちくしょう!

何でこんな時に青い猫型ロボットみたいな情況になるんだよ!?」

「ふ…しえりゃんに死角は無い~…REC」

「そういうトコにだけは、アタシはアンタらに驚嘆するわ」


 ちなみにユスタリシアはフレンチキス…

別名ディープキスをサドラスにブチかましている。

 何気に息ができなかったのでサドラスはユスタリシアを突き飛ばす。


「ぷっは!? 貴様!? 今俺に何をした!!?」

「いやいや、人のファーストキスを奪っておいてその態度はどうかと思うぞぇ?」

「奪われたのは俺の方だッ!! というか何のつもりだ!!」

「何って、求婚じゃ」

「は? オイ待てさっき一旦諦めると―」

「うむ。一旦諦めて、再び来たぞぇ」

「待て! タイムラグが余りにも短すぎるだろう!?」

「わらわは間違った事は言ってないだろう?」

「そういう問題じゃない!!」


 唇をゴシゴシ拭うサドラスの服の裾を百がクイクイと引っ張る。


「何だこんな時に!?」

「妙案があるから耳を」

「…あぁ?」


 とりあえず百と同じ高さに目線を合わせようとしたサドラスは


「!? んぐ?!」


 今度は百にキスされる。流石にディープされそうになるのだけは防いだサドラス。


「とりあえず、初期上書き完了。(ドヤァ)」

「き、貴様…! ――ハッ?!」


 久しぶりに感じた殺気の方向を見ると


「ネェ、サドラスサン? 一度ナラズ二度マデモ、何ヲシタカ言ッテクレマセンカ?」

「サドラス殿! 逃げてください! ロティ殿は神術+97の詠唱を完了しています!」


 どうやらサドラスが思っていた以上にロティは強く成長していたらしい。


「待てロティ。これは事故だ、余りにも不幸な事故に俺は巻き込まれた!

おい俺の話を聞け…?! 馬鹿な!? 

ロティお前何時の間に万能属性防御無視の【極大魔法】を使えるようにな―」


「歯ァ…食い縛ってくださいッ!!」

「うをををををををををををををををあああああああああああああああッ?!」


 食い―の時点でその場から逃げるサドラスに強烈な神術がぶち込まれたのは

今さら言ってもしょうがないネッ☆


第九話に続く

勢いでまたも自らの規定をオーバーしました。

反省はしていますん(笑)

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