第七話「懐古呼ぶ皇国×戦莫迦姫=荒ぶる神のパワハラ」
結局三日ぶりの更新です…
<<フィールド:ヴァナヘイム地方 現在地:ルーンテール神帝国・帝国空軍港>>
先日の一件からサドラス達はKATUMIの権威に大いに与って
帝国で楽しい情報収集+観光を何日か満喫した。
「見よ! これが新たな伝説を作り出すであろう帝国の成果なのだ!」
ルーンテール神帝国が世界最強の国家と位置づけられる理由の一つとして、
この世界における中世ヨーロッパベースの文化水準を大きく上回る軍備にある。
「うぉぉぉぉぉ!? 金属製の飛行船…つーか飛行戦艦じゃねーのかコレ?!
オイオイ雰囲気もクソもねえな!」
「これは自分が設計して作らせたものだからな、オーバーテクノロジーなのは
当たり前体操なのだよ。ちなみに一機230ZYD掛かった…
帝国の国家予算の三分の一…正直、帝王陛下や法王聖下さえも
完成から実用化までは凄まじく訝しい顔で自分を見てきたのだよ…」
「まあ為政者として…というか常識から考えても仕方ないことだと思いますよ」
「ふむ…金だけなら俺とメドラの予算で約1Y5000ZYDあるな…
だとすれば…ふむ、65機で約一中艦隊…ほほう…」
他人からはどう見ても邪悪な笑顔を浮かべるサドラス。
しかもサドラス専用人間椅子なララリリルが居るせいで邪悪さに拍車が掛かる。
「おいサドラス! 手前は何を空恐ろしいことをサラッと言うのだ!」
「冗談だ。折角溜めに溜めたYDをソコまでアッサリとは使わんよ」
「ソコまでじゃなければ、使う気ってことですかサドラス殿?!」
「マスターのスケールをお前達のスケールで当てはめるなど愚かの極みでス」
「シュウ。散財は良くない。マイホームと"しっぽり明るい家族計画"が先」
「ハンドレッド…! 君は"しっぽり"の意味を分かってて使ってるのかい?!」
「……まあ結果としてこの『大 空 悪 竜』が、
実用化に至ったことで、コレの小型量産艦による帝国空挺大隊が作れたのだ。
今では陛下も聖下も自分に兄弟が如き信頼感を寄せてくれている!」
何だか今にも鼻が伸びそうな勢いのKATUMIと
それに興じる男子+α一同に対して、
「男ってこういうの拘るよね~」
「沈んでしまえばみんな鉄クズだろうが」
「まあまあ…男の人は幾つになっても少年の心が消えないものらしいですよ?」
存外冷ややかな反応の女性たちであった。
<<フィールド:大雲海 現在地:ミズガルズ平原・高高度上空>>
推定で200キロほどの速度を出して飛ぶ飛行戦艦『大空悪竜』
甲板には各々景色を臨むサドラス一行。ちなみに甲板には歪曲結界が張られており、
強風は殆ど吹かず、吹いたとしても扇風機・強レベルである。
「何も無ええええええ!! だがそこが良いいいいいいい!!」
「いやっほ~~~雲の絨毯~~~超乗りてぇwww無理だけどなwww」
「当たり前だろうが…」
「雲の絨毯かぁ…僕も滞空術が使えればそんな雰囲気も楽しめたのかな…」
「ふむ、西にもう月が見えるな」
「わぁ…半月ですねぇ…」
「下弦…? 上弦…? どっち…?」
「再来週には新月でス…私の魔力が弱まる時期ですヨ…」
「沈まぬのか…? 本当に沈まぬのか…? 金属の塊でありけるのだろう…?
何故空に魔力なしで平然と浮けるるのか…?」
「帝国の"物理科学"なる力…非常に興味深いですね…」
ちなみにKATUMIは操舵室である。自分で設計して自分で操縦する…
それは男の病気の一つなので仕方が無い。
なによりどうして彼らが大空を駆けているのか…一旦時間を少し戻さなければならない
<<フィールド:ヴァナヘイム地方 現在地:ルーンテール神帝国・冒険者ギルド>>
<冒険者ギルド・帝国支部>は騒然としていた。
何故なら其処には今や天の御使いと名高いKATUMIや、そんなKATUMIに
ワンパンをブチかましてお咎めなしなサドラスとその一行が来ているのだから。
理由を知らない一般人にとって頭上の名前が?表記なのは普通の事だが、
ギルドに屯している人族の冒険者達にとってはある種の恐怖である。
「足繁く通っているにも拘らず、成果ゼロ…コレが投資なら俺は切れるぞ」
「まあ仕方ないのだ。そもそも彼らにとっても異世界など与太話なのだからな」
「神々の世界を知る世代も一部の古人に限定されてしまいますからねぇ…」
「むしろ、スカウト系冒険者達は、良くやっている。むしろ褒めてあげないと駄目」
「あのぅ…ちょっと良いスかね…?」
おずおずとサドラス達に話しかけてくる和風装備が目立つ冒険者チーム。
「何者だ」
サドラスは別に睨んだわけではなかったが、彼らは少し怯む。
「うをッ?! いや…別世界とかそういった話なら心当たりがあるんスよ…」
「kwsk…いや、詳しく」
<<フィールド:大雲海 現在地:ミズガルズ平原・高高度上空>>
和風装備の目立つ冒険者チーム…彼らは極東のヨルムンガント列島にある大国
『アロフネス皇国』の遠征帰りらしいのだが、そんな彼らから
「そんな感じの話は眉唾っぽいけど皇国でそれなりにあった」との情報を得たことにより
サドラス一行は『アロフネス皇国』へと向かうことになったのである。
ちなみにKATUMIは「メイド達を放置したくないのだ!」等と抜かしたので、
今度は死なない程度にフルボッコして殆ど強制的にパーティに再加入させる。
「そ~いえば飛行船なんてアールヴヘイム突入以来乗ってなかったね~」
「確かに。あの時はこうやってのんびり雲海を眺める余裕なんて無かったよ」
「………突入作戦で結構な数がやられちまったよな……カリオスもそうだった」
「ムッシュ。もう、過ぎたこと…気にしては…駄目」
「何より散っていったあいつ等のお陰でアタシらは電界皇を倒せたんだ。
しんみりしてたら連中にそれこそ申し訳ないだろうが」
「………」
「マスター? 如何なさいましたカ?」
「…もしかして、700年前の大戦の話ですか?」
「…ああ、撃墜されていく飛行艦隊を俺もこの目で見た。
ゴミのように撃墜されるというのは、見ていて半端なく胸糞が悪いものだ」
「……よくよく考えてみれば、サドラス殿の旧知のあの方々も700年前の大戦を
潜り抜けてきたのですものね」
「奴らの言の重さが分かる…あれは悲しみを背負った戦士の言なり」
<しんみりしてるところ悪いのだが、快適な空の旅は終わりみたいだぞ?>
KATUMIのダイレクトメールに各々MAPを確認するPCメンバー。
「? 如何したんですかサドラスさん?」
「象形文字が読めませんが、あまり宜しい内容では無いみたいですね」
異世界メンバーは基本フレンドリストの概念すら知らないので、
突然のPCメンバー達の行動に怪訝な表情を浮かべる。当然KATUMIのメッセージは
現実世界の文字言語なので、PCメンバー達の後ろなどから覗き見たとしても
古代の記事や冒険者講座を勉強していたキュクル以外は仮名文字さえ読めない。
「敵だ。それも中々に厄介な」
「え…!?」
「なるほど…あの向こうから来る奴らの事ですネ」
「こんな雲海で出くわす者共といえば…」
「考えてみたら空でもモンスターは出ますものね…」
PCメンバー達はMAPの表示圏外から現れる赤点で、異世界メンバー達は
素の視力やスカウト系スキルで確認したのは…
「大海暴風鷲じゃねえか! …っておいおい王級!」
「デカい、そして多い…」
「名前が見えるのがせめてもの救いだろうがな…」
「赤点でざっと五十でございや~す」
「レベルは…平均300だね…」
「さ、300!? スイゲツさん冗談ですよね?」
「ああ…これは流石に駄目かもしれません」
「むむ…海のときは海面を凍らせるなり出来たが…空中か…これは厳しいな」
「3桁の皆さんは難儀なご様子ですネ」
「メドラ。流石に時と場所を弁えろ。戦艦が撃墜されては俺達も洒落では済まん」
「自動艦砲射撃をONにしてきたぞ!」
ぜーはー言いながら甲板にやってきたKATUMI。
「運営、今回も仕事した」
「付け焼刃っぽいかもしれんが、あの鳥どもの牽制になるだけ儲けモンだな」
「空中戦は前衛職最大の敵だよなぁ…アタシも遠距離攻撃系の武器や習熟
上げとけば良かったわ…」
「最初から中衛職なしえりゃんには死角は無かった~」
「射撃戦に徹することになりそうだね…」
「ん? お前達は誰も滞空術は持っていないのか?」
「モモちゃんはともかく、習熟にアホみたいに時間掛かる廃人御用達の飛行系スキルを
ホイホイと覚えるのはお前さんだけだっつうの!」
「と言う事はモモは使えるのか?」
「ん、+100まで取得した。百だけに」
「ほう、三桁とはやるではないか…ちなみに俺は+512だ」
「流石はシュウ。次元の違いを感じる。私も負けられない…」
「おいそこのピュアブリード廃人コンビ! 通じ合ってる暇があるなら
そのスキルを乱戦に生かせないかどうか案でも練ったら如何なのだ!?」
叫びながらKATUMIは味方全体に全能力上昇魔法XXをかける。
「だ、そうだ。どうするモモ?」
「陽動はシュウ。私はシュウに寄ってきた敵に神術XXXの極大魔法をぶつける。
ダメージは一体につき十万単位行くか行かないか」
「よし。その程度ならば遠慮せず百二、三十発撃て」
「了解。でも連発は五回が限度」
「そうか、ならば五連で頼む。怯んだところを俺が切り刻んでいく」
「撃ち漏らしは私にお任せくださいマスター!」
「ああ、メドラも頼む。念のため広範囲回復魔法Ⅶ~Ⅹの使用頻度は高めでな」
「いざとなったら私が我が君の盾になりますぞ!」
「それは構わんが、大海暴風鷲はお前の弱点属性の火炎スキル攻撃も多用するぞ?」
「えっ…?」
「私の神術も、たくさん喰らうけど大丈夫?」
「ええっ…?!」
「しかしまあお前の心意気、ありがたく受け取ろう。と言うわけで」
サドラスはララリリルを片手で抱え込む。
「えええッ!? ちょ?! 我が君!? 私は"いざとなったら"と仰いましたが…!」
「まあそう言うな。丁度盾が欲しかったんだ」
「嫌ああああ!? ご無体ぃぃいぃぃい?!」
「シュウ。自動回復魔法XXⅡくらいを付与しておけば良い?」
「死なれても面倒だ、景気良くXXXをかけてやれ。完全魔法薬は五十本ほど渡しておく」
「ん、ありがと」
「あの二人、本当に二度目の共闘なのだろうか?」
「それに関しては僕も驚いてますよ」
「まあ何つうか、アレが廃人同士のやりとりなんだろうよ」
「サラッと無差別ダメージが当たり前な神術をブチかますとか、狂気の沙汰だろうが…」
「ま~攻略組ギルドでもあの二人みたいなやり取りは殆ど無いと思うけどね~
ってかもう長年連れ添った夫婦みたいだね~♪」
「………むぅぅ…」
「? どうしたのですかロティ殿?」
「…別ニィ……ナンデモナイデスヨォ…?」
「!? …は、はい…失礼しました」
<<フィールド:大雲海 現在地:ヨルムンガンド列島近海・高高度上空>>
何体もの大海暴風鷲の死骸を背景に
首をポキポキ鳴らしながら軽くストレッチをするサドラス。
「流石に百対以上の敵との戦闘は疲れたな」
「三桁レベルとはいえ、集団で攻撃されると中々に小賢しかったですネ」
「眠い…MP使いすぎの弊害…?」
「うう…あんまりです我が君…抱きかかえられる以外に何の得も無しにけり…」
その隣で大きな欠伸をするメドラに、サドラスにもたれかかって眠そうな百。
サドラスの足元には蹲って今にも泣きそうなララリリル。
ちなみに他のメンバーも基本的に誰一人として立っていない。
「ショックだわ…あの四桁のバケモノ二人はともかくモモちゃんもそっち側かよ…」
「ひぃ…肩が上がらないです…」
「…VITを上げておくべきだったかな…」
「…なるほど…VITさえ鍛えればあの領域に行けるのですね…」
「精神力の問題だと思いま~す…」
「機甲人はやり込むとあの領域に行けるとは聞いていたケド…
いざ目の当たりにすると結構心的にキツイわ…」
「本来は自分達の情況こそが正常で、あの三人が異常なのだ!」
MAPを最大化し、周辺の土地情報を見るサドラスと百。
「ふむ…この速度ならあと数時間でアロフネス皇国の領空圏だな」
「ん、運営。皇国には連絡如何するの?」
「いきなり飛行船で行けばあの皇国の志士どもの事ですから、
問答無用で魔導大砲を撃ってきますネ」
「その辺は心配するな…帝国の調印つきの手紙を少し前に送ってあるのだ」
「ん、運営仕事した」
サドラスは大海暴風鷲の死骸の前に立つ。
「さて、と…」
「オイ、サドラスさんよ…お前さん、まさか」
「ん? 勿論剥ぎ取るんだが?」
「…撃ち落したのは仕方ねぇケドよ…ここにあるのだけでも数十体あるんだぞ…?
しかも王級一体のデカさも軽く象三体分はあるってのに…」
「心臓から取れる魔石などの良い素材だけ厳選すればさほど時間は掛からん」
「ん、手伝う?」
「構わないが、ゲーム時代と違って生々しい部分が多いぞ?」
「大丈夫。人間っぽくなければ、内蔵でろでろ大量出血すぷらった~でも、
グロテスクなド腐れアンデッドでも平気」
「やめろぉ~! 疲れて動けないんだぞこっちは~…!」
「目を瞑っておけば良いだろうが…」
「多分あの二人の会話で想像力を刺激されるだろうから耳も塞いだほうがいいかもね」
「あの…さっきも言ったんですが…肩が上がらないって…」
皇国に到着するまで碌に身体の動かないメンバーは
サドラスによる「素材剥ぎ取り」と言う名の
モンスター解体ショー見物地獄に付き合わされることになった…。
<<フィールド:ヨルムンガンド列島 現在地:アロフネス皇国・国際海港>>
空港は無いので、海港に停泊する飛行戦艦『大空悪竜』
ちなみに物珍しさがあるのか、アロフネス皇国民を含めた冒険者達の野次馬が
飛行戦艦を遠巻きから眺めている。
「ふぅ…良質な魔石、高品質な魔石、幻想級の魔石、
魔導文明級に英雄級、覇者級も…大漁大漁♪」
「シュウ。こんなに貰って良かったの?」
両手から零れ落ちそうな魔石をニヤケ顔が已まないサドラスに見せる百。
「両手が血塗れになるのも厭わずに手伝ってくれたのだ…それは当然の報酬だ。
海に落としても仕方が無いからアイテムストレージにしまっておけ」
「ん、わかった」
魔石をアイテムストレージにしまいこんだ後にサドラスにくっつく百。
「………ああ、人が多いからか」
「ん」
「……………………………………本当にそれだけでしょうかねぇ…?」
「ロティ殿…? あの、眉間に皺が…」
「ソ レ ガ ド ウ カ シ マ シ タ カ ァ…?」
「!?!?!? ……わ、私は何も見ておりません…!」
「ぐぬぬ…あの三角帽子の小娘…負けませんヨ…!」
「私などがあのようなことをすれば如何なる理由であろうとも
関節技をかけられるというのに…
いや、むしろ極められたいからそうしてるわけだが…ぐむむ…」
「…チッ…リア充爆発しろ…!」
「ハンドレッド…やっぱり君は…」
「ゲツきゅんにはお姉さんがいるじゃないの~♪」
「むぐぁ!? 息が…?!」
「…チッ…巨乳女爆発しろ…!」
「何なのだこの情況は…」
実は野次馬の興味の何割かはサドラス一行に向いていたりする。
「失礼仕る…KATUMIとその愉快な仲間達御一行でございますか?」
割れた人垣の中から、洋風の甲冑に身を包んだサムライのような格好の騎士…
アロフネス皇国の主力の一つ「皇国防人」達数人がサドラス一行の前に立つ。
「KATUMI…弁明は後で聞こう」
「うわしまった皇国防人の生真面目さを甘く見てんゴパッ!?」
サドラスの綺麗な左ストレートがKATUMIの顔面にめり込んだ。
「運営、見栄っ張りは身を滅ぼす」
「だからお前さんは昼寝権現なんだよ…」
<<フィールド:ヨルムンガンド列島 現在地:アロフネス皇国・皇城貴賓室>>
靴を脱いであがる高床式の畳部屋に懐古心をくすぐられるPCメンバーと
日本風の正座に馴れず足が痺れている異世界メンバー達。
「このお茶…これは、良い物だ…!」
「麦茶のほうが、良かった」
「うあ…足が…足が…」
「Zenn(禅)だぜ…!」
「このお茶…お砂糖が入ってない…! 苦いよぅ…」
「ふ…この程度…我が君の椅子状態の時に比べれば…!」
「その割りには小刻みに震えてますネ…まあ、私も人の事言えませんガ…」
「懐かしいな…おばあちゃん…元気かな」
「アタシも何だか伯父さん思い出したよ…」
「寂しい~? お姉さんが二人まとめて慰めてあげようか~?」
「そんな年ではないのだが…和風に触れているとどうにも年寄り臭くなるのだ…」
サドラスは貴賓室の内装をじっくり眺める…
そこには文字こそ細かな差異があるが達筆な文字の掛け軸や水墨画だったり、
業物と思われる刀、槍、弓矢、日本風甲冑などが飾られている。
「失礼致します」
貴賓室の襖風の引き戸を開けて、一人の着物風の格好の皇国防人が入ってくる。
「高天或船皇陛下のお時間が出来たのだろうか?」
「いえ、陛下はどうしても先に済ませなければならないご公務が有るとの事ですので…」
「相変わらず忙しいのであるな…皇陛下は」
「…まるで旧知の仲のような言い草だな」
「ん? 言ってなかったか? 自分は半年くらい前から皇陛下と
文通友達なのだぞ? さもなくば友好国とはいえ仮想敵国とも言える
帝国と皇国間であんな手紙を出せるわけ無いだろう?」
「色々突っ込みてぇんだが…それは置いといて…半年前ってのはどういうことだよ?」
「え? KATUMIさんは一月前からこの世界に来たんじゃないんですか…?」
「一月前だと…? 俺や厳蔵は二週間ほど前だが…?」
「ふむ…どうやら自分達がこの世界に来たタイミングが各々ズレているようだな」
その言葉をキッカケにPCメンバー達は
それぞれこの世界に来た時間のズレから生じる情報量の差を埋め合わせることにした。
「新興国アペリウス…旧魔属領にそんな国も興っていたのか」
「そういえば資金稼ぎのクエスト中にそんな国の連中に横槍を入れられましたね」
「まあアタシらの敵じゃなかったけどさ」
「ん、銃火器攻撃さえどうにかすれば所詮はLv80程度の雑魚」
「弓使いな私にはちょ~っとキツかったけどね~」
「まあ流石に竜帝国グライデルダムントにまでは挑発して来ていないのだが、
自分の世話になっている西方ルーンテールやこの東方アロフネスに
『鎧機兵』なる魔導兵器による軍隊の食指を伸ばしているのだ。
そんなわけで折角だからアロフネス皇国とルーンテール神帝国でもう少し
強固な同盟関係を作れればと思って連絡の手紙にもちょいと色をつけたのだ」
「何だか怖そうですね…アペリウスって国は」
「天地聖魔大戦のロストスキルではなく魔導文明のロストテクノロジーですか…」
「あの…ご歓談中誠に申し訳ないのですが…」
サドラス一行の会話を申し訳無さそうに遮る皇国防人。
「おお、こちらこそ申し訳ない。で、陛下への謁見で無ければ何用なのだ?」
「聞けばKATUMI様の御一行は皆かなりの高レベルとのことで…その…
我が国の皇太子様以下皇族様がたが…その……………是非時間までお手合わせをと」
「はぶしっ!?」
「うわ?! 飛沫が!?」
ゆっくりお茶を飲もうかと一口含んだ矢先に噴出すKATUMI。
「ほう。中々に武闘派だな、この国の皇族は」
「サドラスやメドラちゃんなら大して驚かんのかもしれんのだが…
皇室の面々は平均レベル1300の怪物集団でもあるのだ」
「ひぇ!?」
「馬鹿ナ…?!」
「ぬほぅ!?」
「なん…です、と…?!」
「あはは~言うに事欠いて『面々』だぜ~? 一人一人が四桁とか~…死ぬわボケ…!」
「しえりゃん。久しぶりにキレた」
「高レベルの安売りしすぎだろうが!?」
「アドミニストレータ騎士団クラスか…笑えないね…」
「マジかよ…皇帝の皇子様方ってのはそんなに腕が立つのか?」
気を取り直すようにお茶を啜るKATUMI。
「腕に立つどころではないのである。皇太子どころか皇陛下自ら前線に立つのだ。
故に皇太子殿はレベル1535。皇陛下の場合はレベル1574あるのだよ」
サドラス以外の面々は開いた口が塞がらない。
「ほう…よし、折角だからトーナメント形式で何試合か戦るのも良いな」
「んなモンお前さん一人でやれ!! 俺らは如何考えても死亡フラグだっつうの!」
「サドラス先輩一人は流石にあんまりですよ…と言うことで僕もやります」
「ん、シュウとゲツくんが出るなら私も」
「お~ゲツきゅんモモちゃんカッコイイ~!
…よし、ゲツきゅんが勝ったらお姉さんから一晩熱い夜をプレゼ―」
「言わせねえよ!? つうか貴賓として招かれてることを弁えるべきだろうが?!」
「皇族は私の苦手な属性だけでなく波動・万能属性魔法に防御貫通の技を数多く
使いこなすと聞きますので…流石に辞退しまス」
「メドラに同じく。私も死ぬのだけはご勘弁願いたりける」
「同じく私も相手になれませんので…」
「サドラスさん! 応援は任せてください!! 何ならこっそり強化魔法かけますよ!」
やいのやいのと騒いだ後で、結局サドラス、百、スイゲツの三人が
アロフネス皇国レベル四桁皇族相手に「御前試合」を行うことになった。
<<フィールド:ヨルムンガンド列島 現在地:アロフネス皇国・皇城中庭>>
先鋒:
アロフネス皇太子カグツト(レベル1535) ○
『C†B†E』リーダー・スイゲツ(レベル728) ×
レベル差を感じさせないスイゲツの素早さを生かした撹乱戦法で皇太子のHPを
勝利規定である三分の一以下のギリギリ手前まで押せたのだが、
最終的には体力差によるスタミナ切れでスイゲツは一蹴される。
「うむ、余に生身で此処まで傷を与えるとは…将来が楽しみな姫君よ」
「……Wでショックだ…」
中堅:
アロフネス皇子タケミカ(レベル1324) ○
『C†B†E』大魔砲士・百(レベル399) ×
やはり無茶があると思われたのだが、勝負が決まるその瞬間まで百は
皇子の接近を許さない疾風怒濤の連続極大魔法攻撃で会場を沸かせた。
「やー…これはー…参ったねぇ…負けるかと思ってたよー?」
「………いつもそういう感じを装うの?」
「えー? 何の話ー…? もう終ったんだから休みなよー?」
そして御前試合予選の最後…
大将:
アロフネス皇女ユスタリシア(レベル1398)
VS
『暴虐廃人』サドラス(レベル????(6537))
面倒ごとになっても困るとKATUMIに釘を刺されたサドラスは
仕方なく忍術スキル「素性穏形+527」を使用して試合に臨むこととなった。
「むふふ…先の二戦で嫌でも期待が高まるのぅ…!
しかも聞くところによればお主が一行の最強戦力だと聞いておるぞ?」
18歳と聞いたのだが、そうは見えない童顔の姫ユスタリシアは、
これまた身の丈の倍はある大戦槍を肩ならしに振り回す。
「らしいな。基本的に一撃決着式の特訓でしか手合わせしたことが無いから
ハッキリと断言は出来ないが」
サドラスもまた、身体より大きい【黒金の大斧『SkullBraker』+2215】を
肩ならしに振り回してユスタリシアに答える。
ちなみに御前試合では基本的にお互いの装備武器を合わせる規定が言い渡されている。
―サドラスさんって斧が得意武器なんですね…
―先輩は戦斧<銃剣<刀系<剣系らしいですよ
―剣のほうが、格好いいのに…
―サドラス殿曰く「敵の装備ごと叩き壊し斬るのが醍醐味」だそうです…
―しかし前回前々回ともに尋常じゃない戦いだったわ…
―良い子は真似すんなよ~?
―誰に向かって言いけるのだ弓使いの娘よ?
―単なるおふざけに真面目に反応するなでス
―年甲斐も無くwktkなのだ…!
―俺より年下のクセに年甲斐も無いとか言うなっつうの!
にしても…斧装備の理由えぐいわ…サドラスお前さんマジえぐいわ…
「では、そろそろ始めようかのぅ…?」
「うむ」
「わらわは最初から本気で行っても良いかぇ?」
「構わんぞ、クリティカルヒットさえしなければ如何と言うことは無いだろうからな」
軽く会話した後、二人の間になんとも言えない緊張感が立ち込める…
「そ、それでは……………試合、開始ッッッッッ!!!!!!」
二人の雰囲気に気圧されそうになった審判役の皇国防人が雰囲気に呑まれぬよう
誰よりも気合の入った号令をする。
「いざ、参る!」
「………ッ!」
ユスタリシアはステップを踏んだかと思うとサドラスを槍の間合いに捉える距離まで
一瞬で距離を詰めてきた。
サドラスが思うに、これは忍術スキルの一つ「流転走」だろう。
「……!」
真っ先に急所全てを目掛けて飛んでくる槍先を次々と斧で受け流すサドラス。
「おおお?! 凄いのぅ! 兄上ですら軽く手傷を負うのに全て捌ききるのか!!」
実際こんな捌きテクはサドラスのように剣術、太刀術、長柄術を
正気の沙汰とは思えないほどやり込んで鍛え上げた連中でなければ不可能である。
「ふむ、槍ゆえに一撃一撃の重さも中々だな…」
残像が出るほどの動きにも拘らずサドラスはのんびり呟く。
そんな光景を他のメンバー達は呆然と見つめる。
―おいおいおいおい…?! サドラスお前さん…PVP特訓の時も
パネェパネェと思ってたが、マジで半端無ェな!
―ん、残像のせいで遅く動いてるように見える。
―こ、これがAGL530000の世界…僕が目指す三倍速の世界か…!
―すげ~なサドラスさん~流石廃人~
―あのレベルは他の廃人でも無理だろうが…
―ロティ殿。これは神話の再現でしょうか?!
―私に聞かれても困りますよぅ!?
―我が君は、無敵でス!
―ハモりすぎてステレオゲーム化してるのだが?!
「やりおるの! では…この技は如何に!?」
「む?!」
ユスタリシアは槍を大車輪が如く振り回し、巨大竜巻を発生させる。
どうやらこれは長柄術スキルの一つ「竜風槍」のようだ。
流石のサドラスも竜巻そのものを捌ききるには骨が折れる。
と、言うかソレも捌けるのかよ…?!
「何と!? 竜巻さえも捌いてしまうか?! げに恐ろしく面白い!!」
当たり前だが見物メンバーも皇太子以外はみんな呆けた顔になっている。
ちなみに試合場には皇国防人の術士が何十人も集まって結界を掛け続けているので
大惨事には至らない…ただし術士のMP回復が間に合わなくなるまでの話だが。
「………これなら一撃決着にしたほうが良かったかも知れんな」
「それではつまらぬ! 相手の実力も分からんではないか!!」
「姫様よ。手の内はみだりに明かしては碌な事にならない。
今もアペリウスとやらを相手に前線に出ているのならば尚の事だ」
「小賢しい対策如きで敗れる武など武に非ず!」
「正論かも知れん…だが…!」
一見ぬるりとした動きでユスタリシアから距離をとったサドラスは
斧を真横に構える。するとサドラスの全身が鈍色に輝く。
「?! 拙いぞユスタリシア!! 防御しろッ!!」
「えッ?!」
「遅い」
皇太子が叫び、ユスタリシアが構えきる前に、
サドラスは長柄術スキルの一つ「ディストラクトルネード」を発動する。
その場の全員が気付いた時には試合場がドス黒い竜巻に包まれていた。
おまけに結界が何箇所も傷つき、術士達はてんやわんやの大騒ぎだ。
…。
試合場のドス黒い竜巻が消えた時、防御の構えをしたユスタリシアと、
その首に斧を寸止めしているサドラスが現れた。
ちなみにユスタリシスのHPは殆ど減っておらずサドラスはほぼ無傷だ。
「…」
「…」
顔に玉のような汗を浮かべるユスタリシアと微かにも不敵に微笑むサドラス。
「………え?」
「防人よ、もう勝負あった…この勝負、サドラス卿の勝ちだ」
「……え? あ…! しょ、勝負あり! 勝者! サドラス様!!」
<<フィールド:ヨルムンガンド列島 現在地:アロフネス皇国・皇城貴賓室>>
例の畳部屋で三色というか三味な団子をお茶請けに、茶を啜るサドラス。
「うむ、この団子も中々…」
「こっちは心臓が止まるかと思ったのだが…!? サドラス!
お前には"面倒ごとになっても困るから実力を隠せ"と釘を刺したのだが?!
これで皇国と帝国の同盟関係にヒビが入ったらどうしてくれる!?」
「その時はその時で俺一人に責任でも押し付けろ。俺はソレで一向に構わん」
「ちょ…サドラスさん…(´Д`;)」
「待て待て…お前さんその発言は流石にイカレすぎてるわ(‐ω‐;;)」
「先輩の試合はホントに息を呑みましたよ…」
「アタシも修行が足りないって実感させられたわ」
「まさに神話の聖魔超人同士の激闘が如くでしたよ! サドラス殿!!└(o゜∀゜o)┘」
「我が君に、倒せぬものなし!」
「凄すぎんだろ~サドラスさん~」
「マスターこそ天上天下唯一無双ですかラ♪」
まだまだ言いたりなさそうなKATUMIの行動は、突如開け放たれた引き戸に
半ば強制的にキャンセルされる。
「と、言うわけでサドラス氏! お主はわらわのムコになってもらうぞ!!」
決めポーズとともに何かとんでもない事を口走るユスタリシア。
その言葉のクリティカルヒットに緑色の液体を鼻からも噴出すサドラス。
「え え え え え え え え え え え ッ !?(○□○)」(注:ロティ)
「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ん゛!? 滅却されたいか小娘ェエエエ!!!」(注:メドラ)
「あ、このお団子美味しいですねスイゲツ殿」
「え!? ちょ!? 良いのかい?!」
「13年しか生きておりませんが、身の程は弁えておりますゆえ…」
「あ、なるほど…ってそういう問題じゃないんじゃ…?!」
「超展開来ちゃっタァァァァァァァァァ?!( ; ロ)゜ ゜」(注:厳蔵)
「落ち着けよ、アンタ侍だろ…この世界での職業上は」
「逆にアリカちゃんは落ち着きすぎじゃね~?」
「∑(゜台゜lll」(注:KATUMI)
「あ~、やっぱりユウは結果から言っちゃったよ~」
のっそりとユスタリシアの後ろから現れるその兄皇子タケミカ。
「タケミカ皇子?! こ、これは一体どういうことなのだ!?」
最早外聞もヘッタクレも無いKATUMIはタケミカに詰め寄る。
「う~ん…その事を説明しようかと思ったんだけどねー…」
―おいモモ…なぜ俺から離れんのだ…!
―シュウ…。お嫁さんはもっと年下のほうがオススメ。
―むむむぅ!? 何ともう許婚がおったのかぁ!? 正室はわらわだぞぅ?!
―違う誤解だ…をいヤメロ、モモ!俺に将来性豊かなおっぱ…ゲフンゲフン!
…何ヲ柔ラカイモノを押し付けてんだをい!! というか離れろッ!!!
―機甲人の小娘ェ…! 何を本妻アピールしてんだゴルァ!?
―レアシーンRECしますた~♪
―あ、俺もRECで。
―じゃ、じゃあ僕もRECしておこうかな
―おのれぇ…後で覚えておけ貴様らァ…!
―サドラスサン…
チ ョ ッ ト オ ハ ナ シ シ マ セ ン カ…?
―待てロティ冷静になエ゛ン゛ッ――?!
サドラスはロティの疾風怒濤連続ロッド連打で床にどんどん頭をめり込ませていく。
「いつやるのー? 無理でしょー?」
「そのようで…」
第八話に続く
また規定を上回ってしまった…。
が、そのお陰なのか次回こそはすぐ更新できるかもしれません。




