第九章 10 酒と涙と男と女(お風呂編)
一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。
それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。
「――う~ん、むにゃむにゃ……いやそれがさ、大地……意外とアメリアスよりキューメリーの方がおっぱいおっきかっ――はっ! こ、ここは?」
ふと気付くと、浴槽の淵に項垂れて座り込んでいる俺。
見渡すと、さっきまでのギスギスした雰囲気はどこへやら……またもやツングースカさんとレベトニーケさんは湯船で酒を酌み交わして……うっ! セフィーアも酒を一緒に飲んでるぞ!
それに、レフトニアさんも一緒に仲良く飲んでいる……こいつは何の冗談だ? いや、冗談でもいい、俺的にはすばらしい展開だぞ!
おっと、喜んでばかりはいられない!
アダルトチームに対して、こっちのヤングチームは、姫を囲んでなにやら喧々諤々とした口論がなされている!
こいつは姫の一大事か?
「あー! タイチのお兄ちゃん気がついた見たいー!」
「ぬぇっぷ! あ、ああ……アルテミアか。びっくりした」
ふと見ると、チーベルを頭にちょこんと乗せたアルテミアが、俺の事を笑顔で見ている。
一応つんつるてんコンビで俺を「介抱」していてくれたんだな。
「うん、でももう一人いるよ!」
と、アルテミアが指差した方を見ると――げげっ! なんだこりゃ! タオルが……タオルが宙に浮いているじゃないか!
「……気がついたか」
との声に、その人の事を思い出す。――ライトニウスさんだ!
「あ、あはは……タオルが浮いていたのでびっくりしましたよ」
「……一応、たしなみだ」
見えないんだから、別にいいじゃないかな? と思ったけれど――
「これが無いと……気付かれんのだ」
「あ、なるほど……でも、どっちが前か後ろかわかりません――うぐぇ!」
「ゴツンッ!」と、何かが俺の頭に降ってきた。あいてて、多分ライトニウスさんのげんこつなんだろうけど。
「そ、それより介抱してくださってたんですね? ありがとうございました」
「……別に」
と、そっけなく答え、宙に浮いたタオルが、ゆらゆらとツングースカさん達の輪の中に入っていった。
そうだ、いけない! それよりも姫がピンチだった。
アメリアスのヤツ、姫様の血を狙ってんじゃねぇのか……って、あれ?
「うっそぉ! ロキシア達のスイーツってそんなに手ごろな値段なの? しかも、それって超有名店のヤツじゃん!」
「はい。スイーツの名店コンソドルアは、ワダンダールが発祥の地。しかもそれに類した甘党御用達の店が、多数軒を連ねています。国政として、その手のスイーツ専門店を奨励するため、補助金を出しているのですよ……ですから、我が国のスイーツはお値段が手ごろで、しかも味は格別です」
「いいなぁ~! 私、ロキシアのフリして買いに行こうかな?」
「アメリアスの場合、ぜったいにケーキ買わずにロキシアの血のほうへ目が向いちゃうって!」
「うっさい、あんただって人の事言えない――あ、キューメリーは男苦手なんだっけね」
「う、うっさい! 今慣れるための特訓してるところよ!」
「まぁまぁ。本当にご所望なら、私が買ってきますよ?」
「えっ? 本当! ありがとーベルーア!」
「あ、じゃああたしはマドレーヌ・フィナンシェと、レアチーズケーキと、イチゴのタルトね!」
「ちょっとぉ! ベルーアは私ん家の客人なんだから、勝手に使わないでくれる!?」
「いいじゃん別にぃ……ね、ベルーア?」
「はい、いいですよ?」
「それでは、私がおごってあげよう。先ほど閣下より、たんまりと報奨金を頂いたのだ」
「「うわぁ~! ギュミリーズ太っ腹ぁ~!」」
「そうだ、闇換金商に両替してもらわなくちゃいけない……それも頼めるかな? ベルーア殿」
「はい、結構ですよ?」
なんだか、俺の知っている同年代の女子の会話が繰り広げられている……ちょっとほっとするよ。
「みんなギスギスしてたから、あたしがね『ロキシアのスイーツってどんなの?』って会話をふったのー。そしたらみんな、がぜん話題に食いついてきちゃたんだよ?」
恐るべき童女! こいつ、幼いくせになかなかの切れ者だ。
つか、この中で一番しっかりさんじゃねぇのか?
「どうやらこのあと、スイーツパーティーが行われるみたいだな」
「やったぁ! あたしもリクエストしてこよっと!」
満面の笑みのアルテミアとチーベルが、ぱたぱたとスイーツ女子の輪の中に駆け入る。
一人ぽつんと残された俺は、小さなため息を零して、ふと呟いた。
「なんだ、心配要らなかったんだな……」
ツングースカさん達アダルト側は、あの時のツングースカさんとセフィーアの激闘の話をアテに一杯やってるし、アメリアスらヤング側はスイーツ脳全開で甘いモンやファッションの話に花を咲かせている様子だ。
俺が気を使う事なんて、何もなかったんだな…………つか、男一人でさびしいな。
「まぁいいや。とりあえず風呂から出るか……」
と、出入り口に向かおうとした、そのとき――
「くおらタイチぃ~! どこに行くんだぁ?」
ツングースカさんの、なんだか呂律が若干おかしいですよ? 的な声が、俺を呼び止めた。
脳内に危険警報が鳴り響くも、既に遅し!
師団長閣下と目が合った上に、この目でしっかりと「手招き」を見てしまったんだからさぁ大変!
「早くこぉ~い! あと三秒! さぁん、にぃ、――」
「は、はいただいま!」
まるで不良と使いっぱのような光景! そしてこの後に待ち構える、俺への仕打ちは当然――
「そう言えばきっさまぁ、まだ私の杯を受けていなかったなぁ? ホレ、ぐっといけぐっと!」
と、言いつつ差し出される、大き目のワイングラス。
そこになみなみと注がれている、赤紫の液体!
一口飲んだ記憶が甦り、ついオエップとリバースしそうになる俺!
「あ、あの……しかしですね……俺、酒が飲めなくて――」
「なぁにぃッ! きっさまぁ、私の酒が飲めないとぬかすか!」
出たよ、酔っ払いの常套句が……だ、誰か助けてくれそうな人は……セ、セフィーア! 恩を着せるわけじゃないけれど、ここはひとつ、助けて――
「彼女の杯がすんだら、次は私ですわよ?」
「その次はお姉さんのよ~」
「おい、タイチ! 我輩の酌も受けろよ?」
なんだか順番待ちができるほどの人気ぶり! いやいや、そんな人気いらないッスよ!
「ええい、こうなりゃヤケだ! ツングースカさん……い、いただきます!」
「おお、流石はタイチだ! それ、ぐいっといけ」
ツングースカさんから受け取ったグラスを見つめ、ごくりと息を呑む。ああ、どうしようやっぱやめ――と、そのとき! 俺の心の中に、誰かが囁いた。
「……大丈夫、飲めるさ」
そう。アスタロス戦での時のような、俺の中で何かが語りかけてくる感じ。
意味不明に湧き上がる自信! もしかして俺の中の神が、アポルディアが目覚めたのか!
ならば、今一度力を貸してくれ、アポルディア!
「の、飲みまぁすっ!」
んぐ、んぐっ……っと、一気呵成に飲み干す!
「ぷっはーッ!」
「「「おお~!」」」
俺の一気飲みに、皆が驚嘆の表情を見せた!
流石は神! 憑依したアポルディアは――
「げろげろげぇー!」
「「「うわぁ、きったない!」」」
排水溝に駆け寄り、マーライオンよろしく、見事なまでのリバースを見せる俺。
『やはり無理だった……悪い』
アポルディア、お前も酒飲めねぇのかよ……じゃあなんで出てきたんだ?
「うげぇ~……す、すいません……やっぱ無理でした……」
半ケツをさらしつつ、七割死んだ状態でぷかぷかと水面に浮く情けない俺。そんな俺の頭を、ツングースカさんは優しく撫でてくれた。
「はははすまんすまん、無理をさせたようだな。だいじょうぶか? タイチ」
「うう~……な、なんとか」
そのやさしい手のぬくもりが、くらくらの頭に心地よかった。
「タイチよ……お前ががんばってくれたおかげで、皆が楽しいひとときを過ごせたんだ。感謝するぞ?」
「う……お、俺がなにかしましたかぁ?」
「そうだ、お前のおかげだ……なにもかもな」
「う~ん、そ、そうですかよかったですぅ……」
何を言われたのか、何を答えたのか、よくわからなかった。
けれど――今のこのひとときは、魔物もロキシアもなく、ただ風呂に入った「仲間達」が、楽しく過ごしているということは理解できた。
「私の気も、幾分晴れた。これで、思い残す事はないさ……」
ツングースカさんが小さく零す。
「な、何をおっしゃるんですかぁ~……縁起でもない事を言わないでくださいよぉ~」
「ははは、すまんすまん。どれ、またその頭を抱かせてくれ、貴様は抱き心地がよいのだ」
「はんむぐ! く、くるひいれふ……」
またもや、ツングースカさんのおっぱいホールドが炸裂した!
クラックラの頭に、レベトニーケさんが囃し立てる声や、アメリアス、姫、ベルーア、そしてキューメリーの悲鳴が聞こえたような気がする……。
ふと、思い出す。俺の初期の目標だった「美少女ハーレム製作」。
これはこれで、目標の半分程度は果たしたんじゃないかな? なんて考えが頭を巡る。
すごく楽しく、心休まる仲間達。こんな楽しい時間が、ずっと続けばいいんだけどなぁ……。
最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!