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第九章 9 お風呂にて4

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


「セ、セフィーアさん何を仰いますの!? 男の方とその……共にお風呂などと!」

「あら、姫様。私一人でこの見知らぬ館にて入浴をせよ、と仰られますの? もし蒼の戦士が急に現れたら……その場で戦いになりますわよ? その時には、このベオウルフに仲介役となっていただかなければならないでしょう?」


 まぁ、一応もっともな事を言うセフィーア。

 でも、そこにはなんだか……姫を挑発している気配があるような……俺の気のせいかな?


「で、ですが……」

「ならば、こういたしましょう。ここにいる皆で一緒に入るというのは?」

「わ、わたくしもですか!」


 ちょ、ちょいまてセフィーア!

 そんな嬉しすぎる……いやいや、仮にも一国の姫様をだな、そんな下賎な身の、しかも魔物の俺と一緒に風呂になんぞと……。


「あらあら、お風呂に貴賎の差はありませんわ。裸のお付き合いですものね」


 うっ、なんだか誰かさんと同じ様な言い方だ。

 流石はツングースカさんのライバルといったところか?


 そりゃあ、姫と一緒に入浴なんてこの上ない喜びだが……そんなの姫や侍女ちゃんが承諾するわけないだろ――


「わ、わかりました……一緒に参りましょう」

「ちょ、ひ、姫! あんた自分で何言ってるのかわかってんのか?」

「わ、わかっています! 皆さんと一緒にハダカのお付き合いを――」


 め、目が据わっている! これは覚悟と根性を据えた目だ!


「そうですか。うふふ、それでは参りましょう」


 こうしてうやむやのうちに……俺と姫、そしてセフィーアに侍女ちゃんの四人が、ツングースカ邸ご自慢のお風呂へと向かう事となった!





「……どうしてこうなった?」


 極度の緊張が俺を襲っている!

 これはアレだな、クラス一のスケベ職人安藤が言ってた「美少女のハーレムだぁ? ばっかだなぁ太一は。一度に数人の女の子を相手にすると、流石に緊張で立つものも立たなくなるんだぜ?」との言葉が今、立証されたよ……。

 安藤、君の意見は正しかった!

 今俺は――完っ全に萎縮してしまっている!


「あらあらどうしちゃったの? ベオウルフ。魔物男性の癖に、内なる魔性はどこいっちゃったのかしら」


 湯船の中。バスタオルで前を隠したセフィーアが、俺へと詰め寄る。

 俺はと言えば、やはりタオルで前を隠しつつ、湯あたり直前かのようなクラクラとした頭で、目のやりどころに困っている状況だ。

 姫様も侍女ちゃんも、タオルを体にガッチリ巻いて俺の視線をしっかりとガードしてるけれど……それがかえって恥ずかしさを生むんだよな。


 ふと見ると、姫の体の傷もまったく残っていない様子。きっと、あの魔法薬のおかげなんだろう……だが、心の傷は一生消えない。

 そんな時に、男のハダカなんて……辛い思い出がよみがえるだけだよな。

 きっと、見たくもないだろうさ。

 なのにさっきからセフィーアは、姫を挑発するかのような態度ばかりだ。コイツ、姫に敵意でもあるのか? もしそうなら――俺が守ってやらなきゃだな!


「姫、ベオウルフが怖いですか?」

「い、いえ……わたくしはタイチ様に恐れなど……命の恩人ですのに、何故恐れなど抱きましょう? わたくしはタイチ様にならどんな仕打ちをされてもお恨みいたしませんわ」


 姫がセフィーアに対し、キッとした眼光に威厳を湛えて言う。


「その割には……御御足が震えておられますわ?」

「な……何が仰りたいのです、セフィーアさん」


 と、エリオデッタ姫の眼光に負けず劣らずの力強い視線が、セフィーアから返される。


「姫の身体の傷は癒えました。しかしながら、心の傷はそう簡単に癒えぬもの……ですが、放って置けばその傷口は簡単に化膿し、生涯残る傷になりましょう。それでは、この先姫様のお心は、小さな躓きにすら、いとも簡単に潰えましょう」

「そ……それは……そうでしょうが」

「故に、荒療治が必要なのですわ……幸いにも、その役目に相応しい殿方も居られる事ですし……それでもまだ少し度が強いと仰られますの?」

「いえ……そんな……タイチ様は……」


 俺をチラリと見て、顔を赤らめるエリオデッタ姫。

 要するに、俺の粗末なモノを見て目を慣らせって事なのか………………おい、粗末とはどー言うこった!

 ――確かに、立派ではありませんが。


「ありがとう、セフィーアさん。あなたのお気遣い、大変うれしく思います」

「そう言って頂けると、私も一肌脱いだ甲斐がありますわ……ですが、早々に慣れていただかないと、ぐずぐずなさっておいででしたら……私がベオウルフを奪ってしまいますわよ?」


 な、何! 俺を奪う?

 ……奪う……命を……俺の命を奪う!

 やっぱこいつは天主の代行者だ、隙を見せたら殺られっちまう!


「そ、そんな! それは……だめですわ……」


 セフィーアの「ベオウルフをぶっ殺す!」という意味合いの言葉を聴いた姫が、俺を庇ってくれている! なんと優しい姫様だ。


「うふふ、ならお早く慣れてくださいまし。今後姫様にはその「ベオウルフの肌への慣れ」が必ず必要となりましょうから……」

「セフィーアさんったら……し、知りません!」


 う~ん、なんだかチンプンカンプンだ。

 けれど、姫様からオドオドビクビクとした表情が無くなったのは、なにわともあれセフィーアのおかげなのかもしれない。

 そしてこのまま順調に、心のケアがなされてくれれば……後はお城に戻るだけだよな……。


 ――と、一段落した途端!

 入浴場の入り口がガラリ! と開く音が。


「なんだタイチ、こんなところにいたのか!」

「はっ! こ、これはツングースカさん!」

「ぎゃー! な、なんでタイチがこんなとこにいるのよ! ここは女子会の場よ!」

「ひぃ! お、男がいる! しかも……は、ハダカ……!」


 なんともタイミング悪く、酔っ払い魔物軍団が、お風呂へとなだれ込んできた!

 アメリアスもキューメリーも、ギュミリーズも酔いが醒めた様子で、シャンとしている……って事は、なんだ? 男達の血の凍るような女子会でも始まるのか?


「なぁに、ボク。ロキシア達とお風呂でイイコトしようっての?」

「いいこと? お風呂でどんないいことするんですか? お姉さま」

「うふふ、それはねぇ……泡踊り――」

「お、お姉様! その手の情報はアルテミアにはまだ早すぎます!」

「あら、私はもっと早くに知ってたわよぉ~?」

「流石は淫乱女だな。長い付き合いの私でも、ちょっと引いたぞ……」


 ツングースカさんが、すっごく冷ややかな目でレベトニーケさんへと視線を送っている。

 つーか、お願いですから二人とも、前を隠してください! 目のやり場に困ります……つーか、アメリアスとキューメリーが俺の目を潰そうとしてきます!


「タイチさん、暫くはこうしていてくださいね」


 と、背後からベルーアの声。


 途端に俺の視界は真っ暗! 


 いつの間に俺の背後を取ってやがったのか、タオルで目隠しをされ、俺の眼福タイムは強制終了! まぁ、失明させられないだけ――いや、命があっただけでもめっけもんか……。


「おう、貴様は――もういいのか? 白の騎士よ」


 ツングースカさんの声がする。どうやらセフィーアの存在に気が付き、声をかけている様子が伺える。


「これは蒼の戦士さん。あなたのお陰で、こうして命を取り留めましたわ……そのことについて、まずはお礼を」

「フン、私ではない。我が部下が勝手にやった事、勘違いするな」


 なんだか妙な気配だ。まるで何か激しい火花が散っているような……。


「閣下! 何故このような場所にロキシアが?」


 これはレフトニアさんの声か。まぁ当然尋ねるわな。


「こいつらは我が軍の人質だ。たまたま先に風呂に入っていただけだ、気にするな」

「気にするなとは――ロキシア如きと共に風呂など!」

「こ、この匂い――あなた『貴人の血脈(ロイヤルブラッド)』ね!」


 アメリアスが姫の血の匂いを感じ取ったらしい。ま、まさか手を出すんじゃないだろうな?


「アメリーよ。そんなロキシアの血など、一滴残らず吸い取ってやれ!」

「そうね。貴人の血は聖人の血と同様、極上の血液……なかなかお目にかかれないレアものだし――」


 と、アメリアスの舌なめずりの音が聞こえる。おい、ちょっとやめ――


「ちょっと、やめなさい! アメリアス」

「な、何よ! キューメリー。邪魔する気?」


 突然聞こえた声に、俺の言葉は遮られた。なんだ? キューメリーが割って入ったようだが……まさかこいつも姫を狙って……?


「彼女は――私の友人よ。心に傷を持つ者同士のね」

「キューメリーさん……」


 なんだろう? 急に場がしん……としちゃったぞ? 睨み合いでも始まったのか?


 すると、突然!



「 貴 様 ら ! 神 聖 な 風 呂 で な に を や っ て い る の か ! 」



 ツングースカさんが吼えた!


「いいか、風呂はなぁ――風呂には貴賎の差や人種の差は一切ないのだ! 裸同士の付き合いに、敵も味方もないのだッ!」


 ど、どこかで聞いたような台詞だ……流石に好敵手同士だな。


「も、申し訳ございません閣下! 我輩、つい咄嗟の事に頭に血が昇ってしまい――」

「すいませんでした、師団長殿。あまりにもおいしそう――いえ、ロキシアの存在につい……」

「ツングースカ師団長、申し訳ございません……」


 三人が三様にツングースカさんへと詫びる。


「ツングースカ様、もうしわけありません。人質の身でありながら、勝手な振る舞い……皆様の気分を損ねました事、お詫びいたします……セフィーアさん、デオランス、失礼いたしましょう」


 エリオデッタ姫の丁寧かつ威厳に満ちた言葉が聞こえた。

 確かに、場違いの非礼はロキシア側にあるかもだ。


 けれど――


「申し訳ありません、俺が勝手に彼女達を風呂へと招いたんです!」


 ついついいつも(・・・)のスイッチが入り、「俺が全責任を負うぜ!」宣言をかましてしまう。


「彼女達、ロキシアの乙女らに非はありません! どうか罪があるなら俺を咎めて下さい!」


 だってそうだろ?

 姫やセフィーア、ましてや侍女ちゃんも、何も悪い事はないんだし。

 そもそも、彼女等をこの館へと連れてきたのは俺。そう、全部俺の責任だ!

 ツングースカさんの好意に甘えてた、俺の罪なんだ!


「アホ。私がいつ、こいつらに罪があると言った? まったく、早とちりにも程があるな貴様は……あと、壁に向かって力説しても、説得力に欠けるぞ?」


 えっ? 

 っと、一瞬だけ目隠しをはずす。

 言われた通り、目の前には立派な大理石の壁がヅゥンッ! と広がっていた。

 壁を相手に熱血台詞をかます俺。余程間抜けな光景だったんだろう……皆のクスクス笑う声が聞こえる……


「あ、あはは……目隠ししてたもんだから……つい」


 と、笑顔で振り返り、皆さんへと照れ笑いを見せ――た途端!



「 「 こ っ ち 見 ん な 、 こ の ド ス ケ ベ が ぁ !! 」 」


 

 と、アメリアス&キューメリーのダブルパンチを食らい、吹き飛ばされる俺。


 ……薄れ行く意識の中。

 この世界でのお風呂終わりはいつもこのパターンなんだな。

 と、あきらめの覚悟を決めたのだった。


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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