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第九章 8 セフィーア復活

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 まるで子供みたいな殴り合いを続ける、アメリアスとキューメリー。

 それは毎度の事なのだと、誰も気にも留めず、各々が思い思いに酒を、もしくはジュースを酌み交わしつつ、テーブルの上のご馳走に舌鼓を打っている。


 いやぁ、緑のばーちゃんの作る料理はホンワカしていて田舎のご馳走を思い出すよ……おかげで食が進む進む。


「ふへぇ~……あ、あらしのかちらかんね」

「ばかいうなぁ~きゅ~めり~、あたしの勝利よ」


 ――どさりっ!


 二人とも同時に腰から崩れ落ち、カウントを取られている状態……エイト、ナイン、テンッ! カンカンカーン!

 ついにどうでもいい闘いは、二人とも酒にノックダウンされ引き分けとなった。

 つか、勝者はゴーンドラッティの十二年物だな。

 そして二人して、子供のような顔で互いの腕を枕に眠りこけた様子。

 なんか仲がいいんだか悪いんだか。


「キューメリーちゃんとアメリアスちゃんはね、ゴーンドラド士官学校からのライバルなんだって。なんだかツングースカさまとレベトニーケお姉さまみたいだよね!」


 アルテミアがスルメ(のようなもの)をかじりつつ言う。なるほどな、一瞬だが……ほんの一瞬だが、二人が俺を取り合ってケンカしちまったのかと錯覚してしまったじゃないか。

 まったく……我ながら青臭い、チェリー臭漂う妄想だよな?


「となると、お二人はこの先、あのような仲の良い関係になられるのでしょうね?」


 と、ベルーアが俺の側に立ち、ツングースカさんとレベトニーケさんを見て言う。


「私は……規律と格式を重んじる中で育った身なので、皆さんの友情や絆と言ったものがうらやましく感じます」

「はは……そうだろな」


 天使だから――ここにいる誰にも言えない、それ故の苦労もあったんだろう。


「ですから……先程の太一さんの言葉――すごく嬉しかったです」

「うん? 先程の言葉? あ、ああ」


 ……あの俺の中の『思い出したら死ぬ俺の暗黒語録集』の十二ページ目に書いてあるやつね。


「私は……このままロキシアから離れて、魔族勢へと加担しても良いかも? と思えてきました……」

「そ、それは……やっぱまずいんじゃないか? お前が――その――だって事がバレちまったらさ……」

「それはそうですが……でも、アメリアスさんが言ってくれたんです。良かったら太一さんともども、ベイノール家に住んだら? と」


 え? いつの間にか俺も住むことになってんのか?

 まぁそれは、宿無しの俺にとっちゃ有難い事だけれどさ。


「いやまぁ……でもさ、あいつの事だから、ていのいい食料にされちまうんじゃないか?」

「いえ、それは大丈夫でしょう。『君には普通のロキシアとは違う何かを感じる』と、ベイノール公爵が仰ってました。きっと、私の天使としての素性を、薄々感じているのかもしれません……つまりは、敵に回すより味方の方が良いだろう、と」


 う~ん、ベイノール卿ならさもありなんだ。

 全てを見抜いた上でのお付き合いか……マリアニ姉妹の事といい、余程日常にスリルを求めてらっしゃるのか、それともまれに見る寛大なお心の持ち主なのか。


「それにしても……あの二人、よく飲みますねー」


 アルテミアの頭に乗っかったチーベルが、ツングースカさんとレベトニーケさんを見て、ため息混じりに言う。


「それはアレだよーチーベル。お二方ともに、これが今生での酌み交わしになるかもしれないのを分かっていらっしゃるからだよ……」


 幼い顔のアルテミアが、やけに大人びた言葉で返す。

 そうだよ。明日になれば、二人の運命が大きく変わってしまうかもしれないんだ。


「ツングースカ師団長はよくて降格。わるくすれば地方へととばされるかも知れない……そしてレベトニーケお姉さまは――元部下のインキュバスが企てたとはいえ、魔族内クーデターをおこしてしまったせきにんで北方へととばされた経緯があるし……こんかいはもう……」


 涙目のアルテミア。魔族の仲間内でクーデターだなんて……そんな事があったのか。

 だから、その責任で魔族は左遷か……。


 でも!


「大丈夫だって、アルテミア。きっと……きっとベイノール卿が良きように弁護なさってくれるだろうし、大魔王様だって、寛大なご処置を賜るはずだ! なんてったって二人は大魔王軍の両翼なんだからさ、自ら翼をもぐような事はなさらないはずだぜ?」

「だといいんだけど……ふぇ~ん、おにいちゃぁ~ん! あたしどーしたらいいのぉ~?」


 アルテミアの感情の洪水が、堰を切って流れ出した。

 俺はただ、そのちっさい頭を撫で、やさしく言葉をかける以外手立てが思いつかないでいる。


「ああ、よしよし……ぜってー大丈夫だって! 俺が保障してやるから」

「ほ、ほんと?」

「おうよ! まぁ、こんな頼りないやつを信用しろってのは無理かもしんねぇけどさ、俺だって結構やるときはやるんだぜ?」


 何をどう「やる」のかなんて、これっぽっちも考えはないが……でも、何も言わないよりはマシだ。


「うん、しんじるよおにいちゃん!」

「おっし、いい子だ!」


 そう言って、頭をくしゃりと撫でてやる。泣きじゃくっていた小さな顔に、笑みが戻った。


 と、そんな俺の元へ、分割ミラルダがそそくさとやって来て――


「あんのぉタイチさま、姫がご用とかでぇ至急来て頂きたいとぉ……」

「ん、なんだろ?」

「なんでもぉ、女剣士が目覚められたとか」

「セ、セフィーアが! わかった、すぐ行こう」


 そして俺は、とるものもとりあえずカオス渦巻く酒宴会場を後にしたのだった。 





「姫さん、タイチさまをお連れしましたよー」


 ノックとともに、ミラルダが言う。すると中からは、姫の少し陽気な声が。


「どうぞおはいりください」 

「セフィーア気が付いたって……ってうわぁ! ちょ! ご、ごめんなさい!」


 思わず外に飛び出した俺!

 なんで? いや、白い騎士だよ! 純白の女騎士がいたんだ! 

 

「いやいやまてまて! そりゃあいるだろ、純白の女騎士さん……つまりはセフィーアが……でもすっごく軽装な……ビキニアーマーの純白の女騎士が……びきにあーまー? と、とにかく落ち着け、俺!」


 独り言が無意識に口をついた。

 それほど俺の衝撃は大きかったと言う事……そう、中には――白の下着姿もまぶしい、完全に元気になったセフィーアが立っていたんだ!

 

「入ってきてくださってかまいませんわよ?」


 セフィーアのおっとりした口調が俺を招き入れる。


「し、失礼しま……って服着ろよ! オイ!」


 そこにはまだ、レースも美しい純白の下着姿と言うセフィーアが、恥ずかしげもなく立っている。


「あらあら、ケガが治ったところを見せてあげませんと……と思って、下着姿で待っておりましたのに……少々目の毒でしたか?」

「毒すぎるわ! つか、毒過ぎて俺の一部が制御不能になっちまったじゃねぇかよ!」


 と、つい股間をもじもじさせてしまう俺。


「まぁ、セフィーアさんは女のわたくしから見てもお美しいですから……無理もありませんわね」


 クスッと笑って俺を見るエリオデッタ姫。

 なんだか悪戯っぽい笑みが俺に向けられているのを見るに、チーム「ロキシアーズ」にまんまとはめられたか?


「ほら、やはり言った通りのリアクションを起こされましたでしょ? タイチさまは真面目で優しい、信頼の置ける方なのですよ」

「そうですわねぇ……見た目によらず、なかなか可愛い方ですわ……」

「そ、それは俺がウブいと小ばかにしているのか? それとも……?」

「馬鹿になんかしてませんわ、生死の狭間をさまよっておりました私を、こうして救ってくれたのですもの……ただ、その真意が全く分からないだけ……」

「ですから言ってますでしょ? タイチ様にはそのようなお心はございませんの。かわいそうだから助ける、それがタイチ様ですわ」


 姫が優しいまなざしで俺を見ながら言う。

 た、確かにセフィーアを助けるに至った動機は――そんなモンは無い! ただ、捨てて置けなかった……それだけだ。

 ツングースカさんのライバルだから――それは後付けの言い訳に過ぎないし。


「申し訳ありませんわね、タイチ……そう、ベオウルフと呼んだほうがいいのかしら?」

「あぁ……どっちでもいいさ。だが、ロキシア達の前ではその――べオウルフで」

「そう。じゃあベオウルフ、改めて命を助けていただき、感謝いたしますわ」


 礼式に則ったと思われる、見事な一礼を見せるセフィーア。そこには、心の底からの感謝が込められていた。

 ……下着姿だけど。


「ときに、彼女は……あの蒼い肌の戦士は?」

「あ、ああ……今、仲間と酒を酌み交わしているよ」


 やはり一番気になるのはソコだろうな……俺の事なんかより、彼女の……ツングースカさんの真意が知りたいんだろう。


「今はまだ、会うべきじゃないよ。酒も入っているし、何より仲間の魔物達と飲んでいるんだ……」

「そう、じゃあまた日を改めたほうが良さそうですわね……一応はお礼を述べないと、再戦もできませんもの」

「ぶ、物騒な話はしばらく控えてろって! まだ病み上がりなんだからさ」


 慌ててセフィーアの闘争心を消しにかかる俺。今はいろいろとマズイ時期なんだよ。


「病み上がりと申しましても……もう完全に回復いたしましたわ。ほら、ご覧になっても分かるでしょう?」


 と、自らの身体をひけらかすように、くるりと回ってそのびゅーてほーなナイスバディーを披露する。

 ちくしょう。クラス一のスケベ職人の安藤が言ってた「ばっかだなぁ太一、全裸よりも着衣のほうがより興奮するもんだって!」との言葉が今、立証されたよ……ごめんな安藤、お前の意見は正しかったよ!


「セフィーアさん、いくらなんでも調子に乗りすぎです。少し恥じらいをお持ちなさい!」

「あらあら、これはごめんあそばせ……うふふ」


 姫が少しむっとして言う。そのせいで、俺の眼福タイムは終了してしまった……ちょっと残念。


「それは我が国の魔法薬ですもの、すぐ治って当然です」

「あ、ワダンダールからギッって来たのバレてた?」


 てへっと舌を出してお茶目に笑う。


「うふふ、実はラベルにそう書いてありましたからね……でも、我が国の魔法薬製造はワゴーン大陸随一です。故に、この手の強力な魔法薬はほとんど我が国製なのですよ」


 なるほどな。だから「薬」に精通していたのか。

 人を治す薬も、人を狂わせる薬にも……。


 でも姫は――自国の事をどこまで知っているんだろう?

 ただの薬作りがすごい国という認識なのかな?

 まぁ姫様だし、その程度なんだろうけど……。


「とりあえずベオウルフ、無理を聞いていただけるかしら?」

「な、なんだ?」


 デオランスに手渡された白いドレスに袖を通しつつ、セフィーアが俺に尋ねる。


「できれば私、お風呂に入りたいですわ……」

「風呂か……今はツングースカさん達酔い潰れている事だろうし、まぁ大丈夫じゃね?」


 一応確認のためにと、緑のばーちゃんに風呂の使用許可を求めに行こうとした、そのとき――耳を疑うような一言が、俺へとかけられたんだ!


「できれば、ベオウルフも一緒に入ってほしいんですけど――いかが?」


「「え、ええっ?」」


最後まで読んでいただいて、まことにありがとうございました!


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