第九章 6 三人の主人公
一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。
それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。
「もし……もしもだぜ? その『こんどう』さんって人が大昔の神様の戦いの主人公だったとして、だ。封印されたままになってて、ごく最近封印を解かれたとしよう。そうなるとだ、この物語に三人の主人公が存在することになっちまうって事にはなりはしないか?」
ふと思った事を、早口でベルーアにまくし立てる俺。
「はい。その懸念、十分考えられる事です」
「でもでも、それによってですね……どんな実害が起こってるんでしょうか?」
チーベルも、目いっぱいの心配顔で質問を投げかけてくる。
「そこだよな。以前俺が思った事なんだけど――神様と邪神との戦い、ここに第三者の思惑があるんじゃないかって考えてたんだ……俺や大地ではない、三人目の主人公が存在するんじゃないかってさ。まぁ、漠然とした考えではあったんだけれどな」
「そうですね。それが現実になったと言う事になりますね……これは一度、元の世界に戻って、私の上司たる力天使ヴァーチュース様へと報告し、そのご裁断を仰ぐのが一番いいかと思われます」
と、伏目がちに、思いつめた表情のベルーアが言う。
「ああ……それが一番いいかもしれない――で、そのヴァーチュースとか言う人にまた新しい本を出してもらって………………いや、いやいや! 待った、それはマズい!」
俺は咄嗟に「ある事」に気付き、慌ててその言葉を取り消した。
だって、考えても見ろよ……そうすっと、俺は改めてロキシア側に立つことになる。
それってつまり、ツングースカさんやレベトニーケさん達、ましてや大魔王様の「敵」になっちまうって事になるんだぜ?
そして――なんであれ、べミシュラオさんである「こんどうはるよし」が現実に戻ったとして、それはあの人にとって「いいこと」なのか?
長い間眠りについてるって事だろ?
元の世界にもどたっ途端、死んじまったりもう二度とこの世界には戻れなくなったりするんじゃないのか?
せめて記憶を取り戻して後、彼の判断に任せたほうがいいんじゃないか?
「それはそうですが……でも、太一さんと大地さんの仲も元に戻るかもしれませんよ? おそらくですが、私が主人公を間違えてしまったから、大地さんはあのような性格になってしまったのでしょうし……」
ベルーアが申し訳なさそうに言う。
「だがな、ベルーア……正直、んな事はどうだっていいんだ! それよりも、もっと大事なことがるんだよ……それは」
「そ、それは……?」
「それはさ――もし、お前が上司に報告したら――その責任を取らされて、お前がこの仕事から外される――いや、下手すりゃクビになるんじゃないのか?」
おそらくは……いや、きっとそうなるだろう。って事は、新しい案内人が来て、一からやり直しってことになるかもしれない。
「それは…………わ、私は別にかまいません!」
一瞬言葉を詰まらせて、それでも強気で意を決した様に言う。
――その決心や良し! だ。だがな……
「 お 前 が よ く て も 、 だ ! 俺 は ………… 俺 は 嫌 だ ぜ !! 」
と怒鳴る勢いで言ってやった。
「いいか、俺はな……アメリアスやツングースカさんがいて、そして大魔王様や他の皆が居て――そして何より――――ベルーアやチーベル、お前らが居てくれなきゃ、 俺 は 絶 対 に イ ヤ な ん だ ! 」
「で、ですが……」
「 ご ち ゃ ご ち ゃ 言 う な ! 俺達はずっと……いや、せめてこの件のカタがつくまで一緒の仲間だろ? なら、この物語の最後を、ちゃんと皆で迎えようぜ?」
「た……たいちさん……」
大地辺りが聞いたら「またそんな甘っちょろい事言ってんのか?」なんて言われそうな言葉……またしても俺は、心の中に芽生え始めた想いを、包み隠さず言葉にしてしまった。
だめだ、一度火がついたら止まらないこの中二暴走癖、なんとかならないのかよ? 俺!
けれど……この世界に、そしてそこで出会った魔物であれロキシアであれ全ての人に、俺は愛着を感じているんだ……それには嘘偽りはないさ。
だからさ、何の感情もなしに、ただ物語がバグったってだけで「はい、じゃリセットね」なんてできるワケねェって!
そう、こいつはゲームなんかじゃないんだからさ!
「なぁ、ベルーア。この件はもう少し様子を見ようぜ? 邪神が復活したからって、何もすぐさま世界が滅びる事は無いんだろ?」
「それは……そうですが」
「それにさ……敵が悪魔の頂点であるルシファーやアスタロスなんだぜ? なんだかワクワクしてこないか?」
「わ、ワクワク……ですか?」
「ああ、天使の血が騒いでこないか? 奴ら堕天の輩をぶっ飛ばしてやりてぇ! とかさ」
少し呆気に取られた顔で俺を見るベルーア。だがやがて、肩を震わせてクスクスと笑いを零し始めた。
「うふ、うふふふ……太一さんは思いもよらない事を仰いますね……楽しい、ですか。そう、モノは考えようですよね」
「ああ、そうだよ! 何事も仲良く楽しんで! かーちゃんの口癖だけどさ」
「お母様のお言葉……いいですね。すばらしいお言葉です」
「そう、何事も楽しまなければですよね」
チーベルがご陽気に言う。だがお前は少し緊張を持て!
「さぁ、それより何より……今はセフィーアの体を治す事が先決だ! 早速この薬ぶっかけて、元気いっぱいアンパンマンにしてやろうぜ?」
「はい、そうですね」
「太一さん、そこは元気いっぱいではなく元気百倍アンパンマンですよ、お間違えなく」
「だからお前はもうちょっと緊張感を持てと言ってるだろ!」
「な、なんですか! 人が折角訂正してあげているというのに――」
「誰ですか、廊下で騒いでいるのは! 重体の患者さんが寝ているんですよ!」
と、俺とチーベルの馬鹿みたいにギャーギャー騒ぐ口論に、侍女ちゃんことデオランスがドアから身を乗り出して一喝を見舞ってきた。
ほれみろ、お前のせいで叱られたじゃねーかよ!
つか、侍女ちゃん怒るとおっかねぇや。
「こ、これはタイチさま……申し訳ありません!」
「あ、いやいや。悪いのはこっちさ――それより、だ。薬持ってきたぜ? すっげぇ効くそうだから、早速体中に塗りたくってやろうよ」
「あ、はい。もう既に準備はできております……ではお入りくださいませ」
と、部屋の中に通されて――俺は心臓が喉元まで飛び上がるほどの衝撃に襲われた!
「ちょ! 侍女ちゃん……セフィーアが裸……! すっぽんぽんじゃねぇかよ!」
「はい、裸にしないと治療できませんので……なにか?」
何か? ってお前……魔物はロキシアの裸見たって興奮しないとでも思ってんのか? 俺はめちゃめちゃするぞ!
……と、言いたい所だが、よくよく見ると、興奮どころの話じゃない。
身体全体が痣だらけな上に、おそらく腕や足の骨が折れているんだろう……真っ赤に腫れ上がっている様子だ。知らない人が見たら、ダンプカーにケンカ売ったのか? とか言われそうだな。
「うわぁ、さぞかし辛かっただろうに……」
「恐ろしいほどの忍耐力です……とりあえず太一さん、あなたはお外でお待ちください」
「え? な、なんで?」
「ここからは女性だけで彼女の治療を行います」
「う~ん、まぁ……わかったよ」
ベルーアが俺をつまはじきにする。
ええ~、俺もお薬ぬりぬりしてやりたい~! と言う言葉をぐいと飲み込んで、仕方なく外で待機することに。
正直エロさよりも、早く良くなって欲しいと言う気持ちのほうが強い。
痛々しくて見ちゃいられないってのもあるしな。
ホント、女性が辛かったり痛々しかったりする「かわいそう」なのって苦手なんだよな、俺。
――自分にされるのは、何の問題もないんだけどさ……いろんな意味で。
最後まで目を通していただき、まことにありがとううございました!