第九章 5 こんどうはるよし
一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。
それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。
パレーステナの村からテレポート。
一旦舞い降りたは、毎度の如くにベイノール邸前。
そろそろマジで、ツングースカさん邸の魔界語を教えてもらわにゃならんなぁ。
かなり強力だと医者のじーちゃんからお墨付きをもらった、バケツサイズの塗り薬を小脇に抱え、急いでツングースカ邸へと戻ろうとしたその時。
ベイノール邸の正門のところで、マリアニ姉妹を従えたアメリアスとばったり出会った。
きちんとした正装の身なりを見るに、どこかへお出かけの様子だ。
「あら? タイチじゃない。そんなに急いでどうしたの? ん、それ……何持ってるのよ」
「よう、アメリアス。こいつはロキシア用の強力塗り薬だ……飲むか?」
「 ア ホ か ッ ! 飲 む わ け な い で し ょ ! だいたいそれって、私達アンデッドには劇薬じゃない!」
「へぇ……良い事を聞いた」
「うっ……つ、ツマンナイ事考えたら、頭蓋骨抜き取って玄関先に飾るわよ!」
頭蓋骨抜き取るって……どこの狩猟宇宙人だよ。
「ところで――私達、いまから師団長殿のお宅へ行くんだけど――」
「へぇ、俺も今から向かうところだよ。で、なんでまた?」
「うん。今回の事での労を労いたいだとか……そんなの、任務として当然の事なのにね♪」
なんだか、お呼ばれした事を嬉しそうに語るアメリアス。
ツングースカさん邸へと直々のお呼ばれは、こいつにとって任務の成功よりも誇らしい事なんだろうな。
「でもさ、俺達任務に失敗してるじゃないか? なのに労うって……叱咤ぶちかまされるんじゃね?」
立ち止まり、「そ、それはあるかも」と、一瞬表情に暗雲を漂わせる。
「あはは、冗談だよ。んな事ある訳ないだろ?」
「そ、そうよね……伝令妖精の話振りには、怒気は感じられなかったもの……」
まったく。ツングースカさんが絡むと、流石のアニキもちょっとばかり冷静さを欠くらしい。
「でも、今はまだツングースカさん帰ってきてないぜ? もしかしてお昼過ぎるかもな」
「うん、直接はまだ行かないの。ちょっと街でお買い物してから行こうかと思ってさ」
へぇ、このゴーンドラドにも街とかあるのか。……つか、幽鬼達の襲撃受けて、店とかやってるのか?
「アナタ、ゴーンドラドの商人等のたくましさを知らないわね? 過去にゴーンドラドのパスニオール商人街で大火災があったんだけど……そこの商人達ったら、鎮火した直後から店出してたのよ。しかも売り物はほとんど黒こげなのに、それを『まだ使える! まだ食べられる!』とか『この煤まみれがロキシア達に災いをもたらすんだ!』とか言って売ってるんだから大したものよね」
もはや笑い話の域だな。大阪商人のあきんど魂がかすんで見えるよ。
「タイチさま、なにかご入用のものがあれば、ついでに買ってまいりますが?」
マリィが気を遣って俺に尋ねる。う~ん、誰かさんとは違って出来た子だ。
「そうね、マリィ。じゃあタイチ用に犬の首輪でも買ってきてあげましょうか? 我が屋敷の忠犬に相応しいのをね」
「だ、誰が忠犬だ!」
「あら失敬。犬じゃなく駄犬の間違いだった……ゴメンね、 だ け ん !」
「うぅ~ワンッ!」
ちくしょう、あんまり腹が立ったので吠えてやった。だが何故だろう……この「駄犬」と呼ばれる事への、そこはかとなく覚える至福感は……。
「……かわいいわんこ」
それを見たアニィが頬を染めて俺を見る。
まぁ、アニィになら犬として飼われてもいいかな? いろいろと優しそうだし。
「まぁ、あなたも誘ってあげたいけど、なんだか忙しそうだし……また今度連れてってあげるわ」
「あ、ああ……じゃあ後でまたツングースカ邸でな」
互いに手を振り、アメリアス達と別れる。
おっと、道草食ってる場合じゃないな! 早く戻ってこの薬をセフィーアに塗りたくってやんぜ。
まってろよ、セフィーア!
「ただいま戻りましたよ」
「あ、太一さんおかえりなさい」
「どこ行ってたんですかー?」
ベルーアとチーベルの分裂コンビが、俺を出迎えてくれた。
館内の補修作業は一通り終わっている様子。だがばーちゃんやミラルダ、そして姫様やサキュバスの人達はどこだ?
「サキュバスの方々は知りませんが……おばあさま達は、なんでもこのあと、ツングースカさんが慰労パーティーを開くとかで、買出しや食事の準備に追われています。体が分裂されても人手が足りないと笑ってらっしゃいましたよ?」
ベルーアがコロコロと笑いながら言う。
「ああ、さっきここへの道すがらアメリアスに出会ってさ、ツングースカさんからお呼ばれしてるって言ってたよ」
「アメリアスさん、一緒には来なかったんですか?」
「うん、なんでも買い物してからくるってさ。それはそうと……セフィーアのために薬を持ってきたんだ、早く施してやらなきゃな」
「薬……ですか?」
ベルーアが小首を傾げて言う。なにか奇妙な事でも言ったかな? 俺。
「その容器の銘柄からして、おそらくはロキシア製ですね……ロキシアの怪我人でも?」
「そっか、ベルーアは知らないんだっけか? ツングースカさんとタイマン勝負して引き分けになった天主の代行者がいてな――」
「それは知ってます、チーベルと記憶の共有をしてますので」
「あ、そうだっけか。でさ、ソイツ大怪我してて……見捨てるのもかわいそうなんで、思わず連れて来ちゃったんだよ」
「まぁ、それはまた大胆な事を――!」
口に手をあてがい、驚きを見せるベルーア。
そりゃそうだよな、あんな激闘をやらかしたライバルをつれてきて治療してるだなんてさ……普通はしないよな?
「でもさ、ツングースカさんに『引き分け』なんて不名誉な戦歴を残したままこの世を去られるのもどうかと思って……だから治療をして、一応は元気になってもらわないとな」
「そ、そうですか……クスッ……太一さんらしいですね」
「な、なんだよそれ?」
「アレですよ、太一さんらしい発想ですねって事です」
チーベルが横から言う。お前もそのとき一緒に居ただろうが。
「とにかく、早く治療して差し上げましょう? 太一さん」
「ああ、そだな。それに怪我が治ったらお願いしたい事もあるし」
「それは何です?」
「うん、ここにいるロキシアの姫様のさ、正式なボディーガードになってもらおうかなって」
「え? それじゃツングースカさんと勝負付けられないじゃないですか?」
「うん? うん…………えーと……はっ! そ、そうだ! 俺、おもっくそ矛盾してる!」
まったく……自分のしている事の矛盾点に、全く気が付かなかった。馬鹿な己が恥ずかしい。
みんなが調和よく暮らせるってのは、なかなか難しい事なんだなぁ。
そう考えて、慌てて頭を抱える俺。
だが、そんな俺が面白いのか、ベルーアがニコニコと笑顔で言う。
「やっぱり太一さんらしいですね……うふふ」
「いや、お恥ずかしい限りッス……」
「でも、嫌いじゃないですよ……そういうところ」
ベルーアが、なんだか熱い目で俺を見る。
熱い目? いやぁ、違うだろうなぁ。
それは「こいつバッカでぇ~!」と言うアホを見る目なんだろうさ、きっと……自分に都合よくものを考える癖は治さなきゃな。
いつかイタイ目みるかもだもんな。
「それはそうとです、太一さん」
「ん? なんだ、ベルーア」
「昨晩お話した『私が知りえた神々の事』なのですが……なにぶんベイノール様のお傍でしたので、言えずにいた事もあるんです」
「あ、ああ。だろうな……で、何か他にもあるのか?」
「はい。遥か古の神と邪神との戦いなのですが、そこに一人の英雄がいたらしく……その記載が『ニンゲン』となっていまして――」
「に、にんげんだって? ロキシアではなく?」
「はい、にんげん……と」
「も、もしかして、そいつには名前とか――?」
「はい、『コンドゥーハ・ルヨーシ』と言うニンゲンの英雄が、邪神との戦いに終止符を打ったとなされています」
「な、なんか変な名前だな……まぁいいや。で?」
「ですが、その英雄は……神々の大戦の後、遥か東の地『ブメリシュミル』にて、邪神の王ルシファーを封じる際に、その身を共に封印されたとあります。つまりは、その身を犠牲にして邪神を封じたと」
共に封印だって? じゃあルシファーは封印されてたって事か……。
「ベミオベメラッツォを覚えてらっしゃいますか? アスタロスの剣を守っていた、三つ首の大トカゲです」
「ああ、覚えてるさ。キモかったよな?」
「ブメリシュミルは、それら太古の凶獣が住まう土地……ロキシアも、魔物でもなかなか足を踏み入れられない場所です。もしかしたら、その場所で誰かがルシファーの封印を解いたのではないでしょうか? となると……かなり強い黒幕がいると言うことになりますね」
黒幕か……きっとオーリン一派が――おい、ちょっとまて! ってぇ事は何だ、そのコンドゥーハさんとか言う英雄の人も、封印から抜け出してるって事じゃないのか?
「そこです。そのコンドゥーハ・ルヨーシという名前……何かお気づきになりませんか?」
「はて……コンドゥーハ? コンドゥー……こんどぅー――こんどう!」
自分でも無理やりなボケだと思う。でも、近藤さんって、どこか身近でいたような気が……。
「そうです、近藤です。日本人、こんどうはるよし……名前はどうあれ、もしかしたら過去に神夢起現書記によって『神々の戦いの中で英雄となりたい』とか願った、先人ではないでしょうか?」
な、なんと! ボケたつもりがまさかのビンゴ! つーか、こんどうはるよしさんって、どこかで聞いたような名前だな?
「た、た、た、太一さん! それって……」
チーベルが血相を変えて言う。誰だよ、お前の知り合いか?
「何言ってるんです! その人、私達知ってるじゃないですか!」
「はて? こんどうはるよしさん……んまぁ、聞いたような事はあるんだが――あ……ああ…………あああっ!」
俺はその人の顔を思い浮かべて、愕然となった!
「な、何です? 太一さんもチーベルも、その人をご存知なんですか?」
「ああ、知り合いも知り合い。俺達の仲間だ!」
そう、その人――ベミシュラオさん。
俺が前にたまたま見た、彼のプレイヤー名だ!
最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!