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第九章 1 ツングースカ邸の危機

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 グレイキャッスル前へとテレポートアウトした俺達が見た光景。

 それは、ゴーンドラドの街中を闇雲に飛び交う下・中級幽鬼達と、そんな彼らを「敵」として迎え撃っている獣族、そしてヴァンパイア族の連合軍だった。


「やはり幽鬼らに秩序は無くなったか」


 ツングースカさんがやれやれと零す。


「これは師団長閣下! 申し訳ありません、閣下のお留守にデミ・リッチの若造めにしてやられました」


 そんな中。

 ツングースカさんへと現状の報告に駆け寄る、一人の魔族女性がいた。

 それは俺と同じくゲーベルトの女の子で、少し凛々しい顔つきに、銀色のウェービーロングの髪の毛がなかなか決まっている、おそらくは俺と同い年くらいの魔族少女だ。


「ギュミリーズ、留守を任せきりにしてすまんな」

「いえ。それよりも一刻もお早く、大魔王様の身辺警護にお付き下さいませ」

「うむ、わかった。タイチ、すまんがレベトニーケのヤツを、我が邸宅に運び入れてはくれまいか?」

「はいっ!」


 ツングースカさんから、レベトニーケさんを託された俺。

 抱きかかえると、見た目よりも軽い。

 

 もしかして、おっぱいの中にヘリウムでも詰まってんのかな?


「では、ツングースカさん――お気をつけて!」

「ははは、私より貴様の心配をしろ。『神の気配』が消えうせているぞ?」


 どうやらツングースカさんは、俺の事情をお見通しのようだ。


「すまんが、我が屋敷の事――頼んだぞ?」

「お任せください。何があっても死守いたします――行くぞ、チーベル! ベルーア!」

「「はい!」」


 二人の小気味よい返事が帰ってきた。と、そこへ俺達に待ったをかける声。 


「わ、私達も共に……よろしいでしょうか? 師団長殿」


 キューメリーが、申し訳なさそうに尋ねる。

 命を賭してでも守るべき大魔王様より、己の主人の方が心配なのだという、エゴイスティックな選択を許して戴きたい。と、そんな心情が伺える。


「まぁよかろう。二人でレヴィを死守してくれよ?」

「はいっ、ありがとうございます! アルテミア、いくわよ!」

「それでは師団長どの、ご武運を! ……あーん、キューメリーちゃん、まってよぅ~!」


 レベトニーケさんを抱き抱えて走る俺の後を、二人のサキュバスが付き従う。手が塞がっている俺にとっちゃ、ありがたい助っ人だ!





 途中幾度かスペクターに阻まれたが、その都度キューメリーのムチがしなり、アルテミアのポールアックスが縦横無尽に敵を裂いた。おかげで俺もレベトニーケさんも、全くの無傷でツングースカ邸へと辿り着く事が出来たのだった。


「ふぅ、やっと到着だ! 屋敷内に幽鬼は――」


 門をくぐり、入り口前の噴水周囲の芝生を見ると……そこには人の形のような、焼け焦げた後が。


「うっ、幽鬼が消滅した跡! って事は、もしかして内部に――ばーちゃん! 姫様! 侍女ちゃん! 無事かぁッ!」


 たまらずに駆け入る屋敷内。

 見れば、所々にぽっかり開いた穴と、これまた人の形に焼け焦げた跡が……これはきっと、ばーちゃんのブロウが炸裂した跡に違いない。


「ばーちゃん! いるか?」


 声を限りにに叫ぶ!

 その瞬間、さらに奥の方から、しゃがれたようなうめき声が――もしかしてばーちゃんか!

 俺は焦る心に「大丈夫!」と声をかけ、必死に落ち着きを取り戻そうとした。

 だがこの足は、落ち着きなんてものとは無縁に、ただひたすらうめき声の方向へと駆け走るのだった。


「ばーちゃん!」

「おやおや、これはタイチさん。大丈夫ですよ、ロキシアの姫達は無事です」


 そこには、ムキムキマッチョと化した緑のばーちゃんが、青い炎に包まれている幽鬼を踏みにじっている最中だった。

 低く、野性味あふれる声で返すばーちゃんに、思わず安堵の笑みが零れた。


「よかった……そ、それでなんだけど、また新たな負傷者なんだ……どこかで休ませてあげられないかな?」

「あれまぁ! レヴィ嬢ちゃんじゃないですか? まさか幽鬼ごときに……?」

「うん……幽鬼は幽鬼なんだけどさ――まぁ詳しい話は後だ、とにかくレベトニーケさんを!」

「はいはい、ではお二階へ参りましょうか」


 そう言って、ばーちゃんは俺達を二階へと案内してくれた。

 ウホウホマッチョでズシンズシン歩くその姿は、さっき俺と戦ったブエルトリクを思い出して、なんだか落ち着かない。


「さぁ、とりあえずこちらのお部屋に寝かせてあげましょう」


 そう言って部屋のドアを開け、俺達を中へと招き入れようとした緑のばーちゃんが、突然膝を折った!


「ば、ばーちゃん! キューメリー! すまないがレベトニーケさんを中へ!」

「キャーッ! よ、寄らないで」

「アホッ、何言ってんだ! ちゃんとお前達のお姉様を抱きかかえろ!」


 俺の叱咤に、顔を背けつつなんとかレベトニーケさんを抱きかかえるキューメリー。

 その際、俺と肌が触れ合う度に、う○こかバイキンにでも触れるような叫び声をあげたが、この際そんな事は無視だ!

 ちょっとヘコんだけど……。


「じゃあ、レベトニーケさんを中で休ませてくれ。んで、警護は任せたぞ!」

「う……うん、判ってる……」

「りょうかいですぅ~」


 それを聞いて安心だ。

 で、早速ばーちゃんに駆け寄り、足の具合を確認する。

 そこには、何かで殴られたような青黒いアザが!


「ばーちゃん、大丈夫か? おいチーベル、一回ぐらい回復は出来ないのか?」

「はい、一回くらいなら大丈夫です! 任せてください」

「あれあれ、こんなばーさまに気遣いは無用ですよ?」


 笑いながらに言う。

 と、そんなばーちゃんの治療の最中、俺達の背後に「ズシンッ!」と言う大きな音が響き渡り、廊下を激しい振動が伝ってきた。


「うっ――敵?」


 咄嗟に振り返る。

 と、そこには――――――緑色の巨体に、長い黒髪の三つ編みと言う、なんともアンバランスな出で立ちのバケモノが立っていたのだった!


「こんのぉ! バケモノさ、まだいやがったかぁ! オラのばっちゃから離れろやぁー!」


 ブ ン ッ ! っと振り抜かれた右腕。

 咄嗟の事に避ける間もなく、その拳は俺の左頬を直撃し――


「ば、バケモノはお前のほうんだらばっ!」 


 ヅ ッ ガ ー ン ッ ! と吹き飛ばされて、バタンQ……俺の体と意識はいとも容易く遥か彼方へと持っていかれたようだ――――――――。





「あんれま、お気付きになられましたかぁ」


 気が付くと、ベッドの中で寝ている俺。

 その横には、チーベルにベルーア、そして姫様と侍女ちゃんに、どうやら分割されている緑のばーちゃんがいる。


「いやぁ、まっことすまねかったですぅ……オラぁてっきり新手の敵かと思ってよぉ~」


 と、そんな激しく訛った少女が、俺を心配そうに見つめて言う。


「あ、ああ……えっと、誰?」


 緑がかった肌に、長い黒髪を三つ編みにしたメガネの少女。どこからどう見ても、ばーちゃんと同じグーリン族の女の子だ。

 そして俺の推理が正しければ……俺をぶん殴った三つ編みマッチョ!


「すまないねぇタイチさん。この子『ミラルダ』は私の孫でねぇ……嫌な予感がしたからって、急に田舎から出てきたんですよ。この子の虫の知らせは昔からよく当たるのでね……備えていたら案の定、敵の襲来ですよ」

「タイチさんすまねかったです。ばっちゃが魔物にレ○プされてっかと思ってよぉー。ゲーベルト若者×グーリンばっちゃなんて思いもよらねぇ組み合わせに、オラぁたまげて気が動転しちまっただよ」


 たまげたのはこっちだ。誰がそんな危険なフラグ踏むかアホ!

 つか、んなニッチなジャンル、誰得だよ!


「この馬鹿たれ! そんないかがわしい本ばっかり読んでるから、おかしな妄想で早とちりするんじゃ」

「いってぇ、ばっちゃごめんって!」


 緑のばーちゃんに小突かれるミラルダ……どんな本だよ、一度読ませてくれ。


「それにしても、ミラルダってスッゲーパワーだよな? 一撃で意識飛んじまったもん」

「ええ、危ないところでしたわ。チーベルさんの回復魔法がもうちょっと遅ければ、おそらく命を失っていたかと……」


 エリオデッタ姫が安堵の溜息と共に、俺の身が危険だった事を説明してくれた。

 と、ふと気が付くと――姫様が俺の左手をぎゅっと握り締めて……う、こ、これは……。


「こ、これは……申し訳ありません! わたくしったらつい――」


 慌てて握り締めていた手を離す。

 ぽかぽかしていた左手が、一気に肌寒くなった気がするよ。


「ああ、いや。姫が手を握り締めてくれていたから、きっと帰って来れたんだよ」

「そ、そんな……わたくしなんて……全てチーベルさんのおかげですわ」


 姫様が照れ笑いで俺に言う。

 今が戦いの最中だと言う事を忘れさせてくれる、癒し系の微笑だ。


 そう、そうだ! 今は戦いの最中じゃないか! 現状は? 状況はどうなってんだ?


「どうやら幽鬼どもを押し返すことに成功したようよ? ゲーベルトのボクが眠っているうちにね」


 入り口付近で声がする。

 見ると、そこにはレベトニーケさんが、キューメリーとアルテミアを従え立っていた!


「レベトニーケさん! もう大丈夫なんですか?」

「ええ、あなたの小さな相棒さんのおかげでね。で、私の指揮の元、待機していた魔族軍も戦いに加わり、幽鬼の連中を蹴散らしてやったわ。まぁ、ちょこーっと数が多くって手を焼いたけど」


 笑いながらに言う。

 数が多いってのは、なんだか穏やかな話じゃないよな。


「じゃ、報告もかねてツィンギーのところへ出頭してくるわ。じゃあね」

「あ、ちょっと待ってください! 俺も一緒に行きます」


 そう言ってベッドを飛び出す。なんだか体が軽く感じる……チーベルのおかげで、どうやら完全回復しているらしい。


「チーベルさんが半べそでオロオロしながら、必死になってイモリの黒焼きをお食べになり、あなたに回復魔法をかけてくださったんですよ? どうかお礼を仰ってあげてくださいな」

「そ、そうか……ありがとな、チーベル」

「い、いえ……そ、そんな事言って、姫様だってタイチさんの手を必死になって握ってらしたじゃないですか。どうか神よ、お救いくださいって」

「そ、それは……その程度しかできなかったので……」

「あはは、二人ともありがとう……な」


 うーん、俺の命を神様に救ってもらう? なんだか奇妙な話だな。


「とにかく、だ。俺も一緒についていきます……ツングースカさんに館は無事ですって伝えなきゃ」

「そう? じゃあオネエさんと一緒に行きましょう……ボ・ク」


 悩ましい微笑で俺を誘うアクションをとるレベトニーケさん。

 誘われるがままにフラフラと付いていく俺に、姫様が咳払いして一言。


「タイチ様。敵に惑わされる事無く、 く れ ぐ れ も 、 ご 無 事 で 」


 なんか、語気を強めて言う。


「うん? あー……うん……わ、わかってますよ?」

「うふふ、分かってらっしゃいませんね、タイチ様は」


 侍女ちゃんが小さく零して、クスクスと肩を揺らした。


 う~ん。俺、何か間違ってるのかな?


最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!

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