表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/461

第七章 16 三日ぶりのオッドアイ

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 とりあえず飛んできたベイノール家邸宅前。

 俺とチーベル、そしてなぜかやる気満々となった伝令妖精は、急いでその広い邸宅内へと駆け入ったのだった。

 とにかく誰かつかまえて、あの森の魔族名を教えてもらわなきゃ。事は一刻を争うからな!


「それはそうと、伝令妖精よ。お前の名前は何てぇんだ?」


 駆けながら、横を飛ぶ妖精へと聞いてみた。名無しじゃこの先、呼び辛いからな。


 が、返ってきた答えは意外なものだった。


「は? 俺に名前なんかあるワケないやろ」

「無い? それじゃ名前呼ぶとき困るだろ?」

「ハァ? 呼ばれる事無いのに、名前なんか要らんやんけ?」


 呼ばれる事がないって……雇い主とか仲間内とか、ご近所さんとの会話はしないのか?


「するかいな! ずっと指輪の中やのに」

「だけどさ、今後お前さんを呼ぶとき、『でんれいようせい~』ってのもなんか味気ないだろ? 何ならつけてやろうか」


 と、何気なく言ってみた。

 実際名前があったほうが呼びやすいし、(もしかしたら)親しみもわくかもしれないしな。


「お前、ホンマおっかしなヤツやのー? 俺なんかに名前くれるんか?」

「嫌か?」

「いや……いやいや! ホンマの事言うとめっちゃほしい!」


 なんだか凄く嬉しそうにはしゃぎながら言う。

 なんてーか、この手の妖精ってのは、すっごくぞんざいに扱われてんだろうな。


「な、なぁ! そしたら、俺に名前決めさせてくれへんか? じ、実は前々から決めてた名前があるんよ」

「へぇ、どんなだ?」

「お、おう、えっとな……あーせやけど……なんか恥ずかしいな……言うても笑わへん?」

「あ? ああ」


 なんだか、メンドクサイ奴だな。


「ぜ、絶対笑うなや!」

「しつこいな、絶対笑わねぇよ!」


 と、俺の一言にもじもじしつつも、伝令妖精は恥かしさを押して言う。


「ラ、ラインハルト・フォン・ローエングラム……とかどう――」

「却下だバカヤロウ!」


 食い気味で言ってやった。つか、笑うどころの問題じゃねぇだろ!


「な、なんでや! かっこええ名前やんけ!」

「名前負けしすぎだ! お前なんか食いだおれ太郎で十分だろ!」

「う~ん、まぁそれでええわ」

「……いいのかよ」


 と言うミニコントが終了すると共に、前方の部屋から出てくるセルバンデスさんを発見!


「セ、セルバンデスさん!」

「おや、これはタイチ様。いかがなされました?」


 食いだおれ太郎とは打って変わって、至って社交的な笑顔が出迎えてくれた。


「突然すいません! 魔族語で『ヴェロニーの地獄森』と言う言葉を教えてくれませんか?」

「ヴェロニーの地獄森? ああ、それなら『レダ・デ・ヘロクレッサ』ですよ」


 俺の突拍子の無い質問にも、慌てず騒がず、端的に答えを返してくれるセルバンデスさん、できた人だ。


「レダ・デ・ヘロクレッサですね、わかりました! ありがとう」


 礼を見せて踵を返そうとしたとき、今しがたセルバンデスさんが出てきた扉が再び開く音と、俺を呼び止める声がした……ベイノール卿だ!


「やはり君か、タイチくん。一体何事かね?」

「おっと、これはベイノール卿。夜分申し訳ございません」


 ……って言うのもおかしな話かな? 何せ夜中に活躍なされる方々だもんな。


「実はヴェロニーの地獄森へと行くために、魔族の言葉を尋ねに来た次第で……」

「ほう、それは奇遇だね。今さっき、かの森への捜索部隊を派遣したと聞いて止めに行こうとしたが、一足遅かったらしくてね……どうしたものかと思案していたところなのだよ」

「止めに? それはまたなぜです?」


 意外すぎる言葉に、一瞬頭が混乱するさまを覚えた。

 ツングースカさん達の任務を止めに行けば、大地や殺盗団の連中に例の剣を奪われてしまうじゃないですか?


「も、もしかして……剣を取りにいくと何かヤバイ事が?」

「そう、それこそが『奴等』の狙いなんだよ」

「やつら、ですか? それはいったい……」


 一瞬間をためて後、卿は言うのも憚ると言った口ぶりで、奴等の名を語った。


「我が軍団内にいる、邪神崇拝者共さぁ」


 俺に衝撃が走った! やはりいるんだ……裏切り者が!


「彼等は尻尾を出さない。何故なら、上手く身を隠し、他人の力を利用して事を成就させるからさぁ……わかるかね? この意味が」

「じゃ、じゃあ俺達は『利用されている』と!?」

「その通りだよぉタイチくん。我々どころか、例の殺盗団とやらもねぇ……まんまとしてやられたわけさぁ~」


 って事は、狙いは……眠っているアスタロスの復活か!


 アスタロス、もしくはアスタロトって言やぁ、悪魔ルシファーに次ぐ有名どころであり、高位悪魔の筆頭だもんな。

 ラノベや漫画に限らず、いろいろな作品でよく耳にする名前だ。そんな奴が眠ってるんだ、そりゃあ邪教の方々からすれば、復活させて「アスタロスが仲間に加わりました」イベントを目指すだろうさ。

 ちくしょう、元々の筋書きからどんどん話がずれていってるぞ?

 こいつは誰かの思惑なのか?

 ま、まさか大地の……?

 あいつが主人公になっちまった故に起こった、イレギュラーな出来事?

 それとも、あいつが望んだ展開か? なんだか知らねぇけど、メンドクサイ事しやがって!


「それで、今から止めに向かおうとしていたところなのだよ。で、どうかね? 君も」

「も、もちろんです! 行きます! つーか、俺も行くつもりでここに来たんですから」

「あははは、そうだったね……かの森で、アスタロスが眠る場所への入り口を探すのは至難の業だからねぇ。手分けして探すには、人が多いほどいいというものだよ」


 どうやらベイノール卿は、入り口のありかまでは知り得ない様子だ。


「そこでこの伝令妖精――食いだおれ太郎君ですよ! 彼にツングースカさんの気配が消えた地点まで案内してもらうんです。気配を追える伝令妖精ならではの術と言うヤツですよ」

「は、はは……どうも、食いだおれ太郎です。よろしゅうに」


 やたらと畏まって挨拶する太郎。

 一応、偉い人には礼を尽くすみたいだ……と言うか、ただ卑屈になってるんじゃないのか?


「ほう、なるほどーそれはいいアイディアだねぇ。我々には思いもよらない考えだよ」

「あはは、そうですか。では早速行きましょう――」

「まぁ、待ちたまえ」


 と、焦る俺に、ベイノール卿が待ったをかけた。


「もう一人、共に向かう心強い援軍がいるのだよ」


 そう前置きしてから、部屋の中から招き寄せた人物。俺はなんだか懐かしさにも似た感情に包まれ、思わず声を上げてしまった!


「ベ、ベルーア!」

「こんばんは、太一さん。やっと調べ物が終わったので、早速報告にあがりました」


 そこには三日ぶりに目にする白金の髪のオッドアイ少女、ベルーアがいたんだ。


「ほ、報告って?」

「はい、大地さんに取り憑いている『神の事』、そしてそれを調べているうちに浮かび上がってきた『ある事』についてです」


 一瞬、俺に戦慄が走った。アイツの体を乗っ取っている神様とやらの素性か。ぜひ聞いてみたいもんだ。


「ところで、『ある事』ってなんだ?」

「それは、向かいながら順を追っておいおいお話します。まずはヴェロニーの地獄森へ急がねば」

「あ、ああそうだな。じゃあどうやって向かおうか? この大人数じゃ……」

「なぁに、心配は要らんよ。私の呪文で連れて行ってあげようじゃないか」


 と、ベイノール卿が胸を張って言う。


「セルバンデス、お前も来なさい」

「はっ、御館様」


 畏まった一礼で、命に従う意を見せるセルバンデスさん。


「では、参るよ~。飛翔フルーク!」


 こうして俺達四人と二匹は、ベイノール卿のテレポート呪文により、ヴェロニーの地獄森へと飛び立った。


 どうか、事が嫌な方へと展開していませんように。

 そして――皆無事でいますように。


最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしよろしければクリックしてあげてください⇒ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ