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第七章 15 伝令妖精

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 静まり返った謁見の広間に、俺の声が響く!


「オイッ! 誰か居ねぇのか」


 慌しく扉を開け放ち、現れた衛兵達四人が、俺へと槍を向けて迫ってきた。


「貴様! 何者だ! ここを何処だ……っと! あ、あなたは魔物のベオウルフ様!」

「おう、いきなりすまないな。でも緊急の用事なんだ! 大急ぎで治療薬をしこたまかき集めてきてくれ」

「は? 治療薬……ですか?」

「ああ、なんでもいい! お前らの領内にある村に野盗が現れ、怪我人が出てんだ! 急いで持ってきてくれ。生き死にの瀬戸際の患者もいるぞ!」


 俺の慌てぶりを見た衛兵の隊長らしき人が、まだ若い衛兵二人へと指示を出す。


「おい、至急治療部屋へと行き、薬を持って参れ」

「すまないな、にーちゃんたち! 早くしてくれよ?」


 敬礼をして、即座に駆け出す若手二人。


「して、何処の村が襲われたと?」

「ああ、パレーステナ村だ! ただの野盗集団だとは思うが、一応念のために、警備の援軍を向かわせてはくれないか?」

「し、しかしながら……私にはそのような権限はございませんでして」


 そう言って頭を下げる隊長の人。と、そこへ不意に扉付近から聞き覚えのある声が――


「かまわん。至急二部隊ほどを送り、村の警護に当たらせよ」

「は、ははっ!」


 その声の主は、カイゼル髭も凛々しいロングワートのおっさんだった。


「ロングワートさん、すまない」

「敵襲ですとな? してその数は?」

「十数名ってとこだ。いやまぁ、全部おっ返したが……まだどこかに潜んでるかもしんねぇ」

「左様にございますか……いや、ご苦労様にございました」

「それはそうとロングワートさん。大地の野郎はどこに?」


 一瞬ピクリと反応を見せる。なんだ、何か隠してんな?


「言えよ、でないと俺の機嫌が悪くなるぜ?」

「い、致し方ございませんな……口止めされておりましたが――例の森へ、でございます」

「――の野郎!」


 簡単に口を割るロングワートさん。この人に内緒の話は出来ないな。

 

「すぐにでも飛んで行って、一言文句でも言ってやりたいぜ。が、今はそんな場合じゃねぇ!」


 地団太を踏む思いをぐっと堪えて、俺は指輪へと伝令の指示を出した。


「伝令! ツングースカさんへ」

「……う~ん、なんや、また仕事か?」


 妖精が眠そうに目をこすりつつ出てきた。バカヤロ、緊張感持てよ!


「重要な伝言だ! 大地らがそっちへ向かったと伝えてくれ!」

「お、おう。まかしとけ!」


 一瞬で表情を緊迫したものへと変え、一言残して伝令妖精は姿を消した。


「困りますな、ベオウルフ殿。ここは一応協力していただきませんと」

「あ、いや……俺もついさっきまで、大魔王軍うちの『アスタロスの剣捜索部隊』が動いたって知らなかったんだよ」


 苦し紛れの嘘。

 だが、一体どうやって大地はツングースカさん達の動きを察知したんだ?


「いやはや、流石は大地殿ですな。あなた様がこちらへと送られてきた時より、伝令妖精を買い漁り、草の者等に与え、かの森へと放ち、何かしら網にかかるのを待っておられましてな……些か値が張りましたが、『これも国のため、資金は惜しまずに』との国王陛下のご意思の甲斐ありまして、万事首尾よくまいりました」


 大地の野郎め。俺がこの城に遣わされて、近々何かあると気付いたか……流石はかしこい奴だ。


「って事は、最初っから俺はのけ者扱い――つか、敵なんて来ないのに、あんなところで延々待機なんかさせやがって!」

「申し訳ございません……ですが、あなた様には害が及ばぬようにと、我々の口添えで、あのような処置をとらせていただいたのです」


 ロングワートさんが言う。なんだ、俺は大魔王軍からもロキシア達からも気を使われていたのか? なんだか情けない話だな。


「どうか、平にご容赦を……」

「うぐぅ、仕方ねぇな」


 それ以上、何も言えずに口ごもる俺。

 と、その間を埋めてくれるように、伝令妖精が帰ってきた。


「すまん、ツングースカのねーちゃんの気配が途中で途切れてもうてて、分からんようになっとるわ」

「な、何! ま、まさか……何かあったとか」

「いやいや、そやないよ。何処か『気』を外に漏らさん場所に居るんやろな。途中でぷっつり途切れてたわ」


 って事は……そこが例の、アスタロスが眠る場所への入り口ってヤツなんだろう。


「どーすんねん? 伝令」

「仕方がない。もういいよ、おつかれさん」

「おう、ほなな」


 くっそ、大地が向かっている事を伝えられないのは痛いな。

 俺が直接行って、事情を説明するしかないか……しかし、あの広い森の、一体どこなんだ?

 そう思案に暮れていると、若手二人が医療品の品々をどっさりと入れた木箱を抱え、戻ってきた。


「お、すまない。んじゃあ、とりあえずこれ持って村へ飛ぶわ……事が一段落したら、また戻ってくる」

「かしこまりました。ではいってらっしゃいませ」


 カイゼル髭が、見事な礼を見せ、俺を見送る。


「パレーステナ!」


 デカい木箱に触れつつ、目的地を叫んで空へと舞う。とにかく大地の事を考えるのは後回しだ。まってろ村長!





「ただいま!」


 再び舞い降りたパレーステナ村。

 うっすらと漂う煙と、家屋の焼けた臭い。そしてチーベルの声が出迎えてくれた。


「あ、太一さん! どこにいってらっしゃったんです?」

「ああ、医薬品をもらいに城までな」


 そう言って木箱を指差した後、俺は大声で叫んだ。


「おーい! この中に医者はいるかァ!」

「ほいほい、ワシがこの村の医者じゃが」


 現れたのは……どこからどーみてもヤブ医者といった風貌の、うだつの上がらないじーちゃんだった。大丈夫かな?


「と、とにかく! 薬をいっぱい持ってきた。これ使って、村長を助けてくれ」

「ほいほい。おお! これはよい薬ばかりじゃな。村長に飲ませたら、ついでに十歳は若返るかもしれんわ」


 村の広場中央、焚き火の傍に寝かせてある村長のもとへ、いくつかの薬や包帯を持っていく医者のじーちゃん。

 村長を見ると、腹部に血が滲む布が巻かれてある。どうやら応急処置はなされているようだ……この医者のじーちゃんがやったのか?


「ほいほいその通り、わしじゃよ。これでも昔は遠征軍付の軍医でな、応急処置は慣れたもんじゃ」


 と言いつつ、衛生的にどうなんだ? と言う血まみれの布を取り去り、新しく綺麗な布へと取り替えた。

 慣れた手つきが、俺に安心感を与えてくれる。


「あやつらに抗議した村長が、いきなり刺されてな……じゃが、こんなもんではこの村長は死なんよ。昔からなかなかしぶとい奴じゃからな」


 笑いながらにテキパキと包帯を巻く医者のじーちゃん。


「お、お前さんに手当てをしてもらうのは……何十年ぶりかのう?」


 まるで懐かしむように、笑みを浮かべる村長のじーさま。

 そうか、この人も昔は遠征軍とか言うのに所属していたのか。


「ここにおる奴らは、そのほとんどがそうじゃ。この隊長さまに付きしたがってな。皆戦いに嫌気がさした、弱虫連中じゃ」

「じゃがな、魔物さんの戦いの話を聞いて、年甲斐もなく血が沸いてのぉ……で、このざまですわ」


 村長が照れ笑いで語る。とりあえず喋るな、安静にしてろって!


「ほいほい、とりあえず回復薬を傷口にたっぷり塗りこんだから、もう安心じゃ。他にも怪我した奴はおらんか? 今ならええ薬があるで、すぐ治るぞ」


 と、その言葉を聴いてピンときた! そうだ、その回復薬とやらをセフィーアに持ってってやろう。


 が、その前に……ツングースカさんに、大地の野郎が迫ってるって報告しなきゃな。


「医者のじーちゃん! その回復薬ってのはまだあるかい?」

「ほいほい、まだまだぎょーさんあるよ」

「そうか。後でまた来るから、そのとき重症患者への薬を持って行きたいんだ、見繕っといてくれよ?」

「ほいほい、ええぞ」


 笑顔で答えるじーちゃん。なんだよ、案外頼りになるじゃねぇか? 誰だ、ヤブ医者っていった奴は。


「で、太一さん。これからどちらへ?」


 チーベルが尋ねる。とりあえずブェロニーの地獄森へと行きたいのだが、それには二つばかり確認作業が要る。

 一つは「ブェロニーの地獄森」の魔族語だ。これを知らなきゃ飛んでけない。

 ロキシアの町や村なんかはそのまま通用するみたいだが、森や草原のような元々ある自然な場所名は、魔族語が必要らしい。

 そしてもう一つ。ツングースカさんの気が消えた場所へと案内してくれる「案内人」との交渉だ!


「伝令! おい、ちょっと出てきてくれ」


 そう。伝令妖精を呼び出し、コイツに道案内をしてもらう他、無いんだよな。


 ツングースカさんの気が、ぷっつりと途絶えたって場所にさ。


「……と言うワケだ。力を貸してくれ!」


 だが、妖精はまるで「コイツ正気か?」と言った顔で俺を見ている。


「お前、それ本気で言うてんのか?」

「い、嫌なのは分かってるさ! でもな――」


 きっと難航するであろう交渉に、真摯な態度で挑む。

 が、そんな俺の言葉を遮り、妖精は言う。


「いや、いやいや! 俺が言うてる『本気か?』ってのは、俺みたいな伝令しか出来へん妖精に、マジで力貸してくれって言うてんのか? って話よ」

「ああ、本気だ! つか、お前しか頼れる奴がいねぇんだよ、すまない、力を貸してくれ!」

「雇い主であるお前が――俺みたいなはすっぱな妖精に頭下げてるんやぞ? わかってんのか?」

「わかってるさ! だから一度だけでいい、お前の能力を俺に貸してくれないか?」


 頭を下げて懇願する。

 と、そんな俺に、伝令妖精は上ずった声で言った。


「ア、アホ! こ、こんな重要な役目仰せつかって断ったら、伝令妖精の男が廃るやろ! ま、まかさんかい!」


 どんっ! と胸を叩いて、大見得を切る。

 なんだコイツ、態度の悪い不良妖精だと思ってたけど、実は話せば判るいい奴じゃないか。


「……とりあえず、謝礼は三倍な。ここはゆずらへんよ?」


 前言撤回。やっぱ今の褒め言葉を返してくれ。 


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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