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第七章 14 ピンチ

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 テレポートで飛んできたパレーステナ村。

 思い描いた場所は、夕刻俺が一人芝居を披露した、あの村の広場だ。


 そこで俺が見た光景は……燃え盛る家々に、盗賊だか山賊だか十数名の武器を携えた者。

 そして、広場へと集められた村人達! ちくしょう、嫌な予感のうちの最悪のパターンだ。


 そしてよく見ると……爺様が一人、敵と思しき一番ゴツい野郎の足元に倒れていた!


 あれは――村長のじいちゃんじゃないか!


「そ、村長!」


 思わず叫ぶ俺! その声に、一斉に振り向く村人達と野盗の群れ。

 名前を確認するも、どいつもこいつも名前が浮かんでこない。って事は、皆、地元の盗賊団の皆さんか? 


「あっ! 魔物さんだ!」

「べろべろうるふさんが来てくださったぞ!」

「「「ベロベロのおっちゃーん!」」」

「おお、クソガキ共! みんな無事か?」


 村長のじいさんが、その声に反応して顔を上げた。よかった、まだ生きてるよ!


「お、おお……先ほどの魔物さん。来てくださったか」

「ああ、来てやったぜ? 村長、このゴミ共はなんだ? もしかしてダンジョンにいた殺盗団の残党か?」

「俺達をゴミ扱いとはいい度胸だ! このガキ……うっ! な、なんだ魔物か!?」


 どこで盗んできたのか知らないが、鎖帷子の鎧にミスマッチの鉄製の篭手。

 そして皮製のブーツという、いかにも野盗でございと言った大男が、俺を見て一瞬たじろいだ。

 が、すぐさま気を引き締め、俺と対峙する素振りを見せる。

 背中に背負った大振りの剣を引き抜き、両手で構えて威嚇する様は、今の俺にとっちゃあ、弱い犬が虚勢を張って吠えている様にしか見えないぜ。


「こ、この魔物野郎め! 何しにきやがった!」

「あぁ? なんだコラ。俺様の縄張りで悪さしてんじゃねぇよ!」


 ドラマでお馴染みのヤクザの人っぽい台詞で対応してみる。


「な、縄張りだと? 魔物風情が!」

「いいぜ? 遠慮しないでかかって来いよ。このグエネヴィーアがロキシアの血を啜りたがってんだ」


 チビたちの手前だ。出来得る限り、流血は避けたい。

 この脅しで去って行ってくれれば御の字なんだけどな。


「ボ、ボス。グエネヴィーアって言やぁ、例のアミューゼル寺院の……」

「ぐっ! そ、それじゃあこいつがあの『アミューゼルの惨劇』の魔物か」


 あれま、もうそんな通り名がついちゃってるのか? 俺も有名になったもんだ。


「なんだ、知ってるじゃねぇか? いかにも、俺がその魔物――ベオウルフだ!」


 そう言って、グエネヴィーアをシャキーンと抜き出し、ちょっとカッコ付けて構えてみる。

 決まった! 俺、超カッコイイ! チーベル見てくれたか? 俺の雄姿を!


「はい、そこそこかっこいいですよ!」


 なんかいちいち一言多いんだよな。


「で? どしてくれだよ。このオトシマエはよ?」

「あ……いや、アンタのシマだって知らなかったんだ。俺達は引き下がるよ」


 良かった。これで流血の事態にならず済みそうだ。

 んじゃ早速、燃えてる家々にシュネー・シュツルムかけて、消火活動を……。


 ――と、思った瞬間だ。


 なにやら軽いフラつきが俺を襲った。

 なんだ? 酒の酔いが今頃? いや、違うだろ。ワインをたった一口飲んだだけで、足に来るほどの酔いを見せるものなのか?

 それになんだろう、この睡魔と体全体のけだるさは。


 はっ! も、もしかして……マルりんが持ってきたあのワイン、何か一服盛ってやがったのか!


「ど、どうしたんですか、太一さん!」


 チーベルの声が空ろに響く。やべぇ、意識が飛びそうだ!


「ボ、ボス! なんか様子が変ですぜ?」

「お、おお。もしかして弱ってるんじゃねぇか? おい、誰か小突いてこい」


 かろうじて理解できた言葉に、気力を振り絞って対応を見せる。

 が、だめだ……体に力が入らない。


「こんの野郎! 脅かしやがって」

「おい、皆でかかれば倒せるんじゃないか?」

「やっちまえ!」


 弱みを見せた途端、その本性をむき出しにする雑魚連中。


 そんな奴らに――



「 が あ あ あ あ あ あ あ ッ !! 」



 と、腹の底から声を吐き出し、威嚇を見せる。

 襲い来る敵共が、一瞬戸惑い立ち止まった。


「ち、チーベル……子供達をどこか……安全な場所に……遠ざけろ」

「は、はい! でも……」

「いいから早く!」


 子供達のいるところまでスっ飛んで行くチーベル。いいぞ! 野盗共は俺に気を取られて、小さな俺の相棒へは関心を示してない様子だ。


「へへへ、いいぜ? かかってきなよ……」


 俺の消え入りそうな誘いを聞いたお調子者が、こんな奴なら倒せるぜ! とばかりに躍り掛かってきた。


 ――が、俺の間合いに入った途端、真っ二つになった。

 ヘろへろの力で剣を軽く横に薙いだだけだが、そいつの体は上と下とへ綺麗に分離。無様な断末魔をあげ、すぐに静かになった。

 流石はグエネヴィーアの切れ味だ!


 たぶん、最後の足掻きだけどさ。


「や、野郎! ほんとに弱ってんのか? オイッ! 今逃げたガキ共を人質に捕まえろ! その上で様子を見る」

「「「へいっ!」」」


 三人の男達がその命令に答え、見事なまでの悪役の手下ぶりを見せる!


「てんめぇ、なんて卑劣な事を!」


 とてつもない怒りが込み上がる。

 ツングースカさんが自我を無くして暴れ狂うほど……とまでは行かないが、まるでその怒りは、俺の眠りに就こうとしいる細胞の一つ一つに染み入り、「オイ起きろオラァ!」と言う一喝と激しいビンタをぶちかましてくれているようだ!


「子供達に、いや村人に指一本でも触れてみろ……四肢を引きちぎって臓物をぶちまけ、永遠の苦痛を与えてやる」


 じわり……じわりと目覚めていく俺の身体。

 意識はいまだ朦朧としているけれど……いや、これは朦朧としてるんじゃないな。

 何かが脳内に分泌されて、興奮状態にあるみたいだ。「ハイになる」ってのはこう言う事なのか? もしかして、これってマリアニ姉妹が言ってた「邪神に魂を奪われる」前兆なのかな?

 そうなると、大魔王様への忠誠が消えてなくなる――いや、それ以前に、俺が俺でなくなっちまう!



 ―― け れ ど !



 今はこの村の人達を救いたい! 邪神かなんだか知らないけれど、今一瞬だけ、 力 を 貸 し て く れ !



「 ウ オ ア ア ア ア ア ア ア ア ッ !! 」



 何かが漲って来た!

 誰かに体を奪われたような感覚。


 だが、意識ははっきりしている。ちゃんと「俺自身」だ。


 今すぐ飛んでいって、奴らをぶちのめせる気がする……何だろう、この根拠のない「できる」と言う自信は? 


 だが、内なる声が叫ぶんだ。「行け!」って。


「でりゃあ!」


 地面を蹴りつけ、体を空へと滑らせるイメージ。

 そしてそれは、イメージから現実へ変わった!


 素早く大きなジャンプで、一瞬のうちに子供達を人質にしようとしている奴らとの間合いを詰め、一太刀で切り捨てた。

 そして返す刀で、図体のデカいボスとやらに詰め寄り、そいつの顔面を鷲掴みにして叫んでやった!


「ローエン・ファルケ!」


 一瞬、小汚い花火が闇に咲いた後、野盗のボスは、膝から静かに崩れ落ちる。

 文字通りかしらを無くした残る数名の雑魚は、我先にと逃げ散り、深い闇の中へと消えていった。


 とりあえず一息つき、周囲を伺う。


「おい、みんな無事か! チーベル!」

「は、はい! 皆さん無事です」

「は、はは……そうか、よかった」


 安堵で地べたに座り込む。

 途端、疲れと気だるさが「ずん!」と押し寄せた。


「一時はどうなるかと思ったぜ……おっと、こうしちゃいらんねぇ! 消火活動だ」


 ケツに根っこが生えそうになるも、無理やり気力を奮い起こして立ち上がる。

 そして燃え盛る家々に、暴風雪の呪文を唱えた。


「シュネー・シュツルム! たのむ、こいつで消えてくれ」


 暴風に煽られて揺らめき踊る炎が、吹き荒れる氷の猛襲に、その勢いをだんだんと弱めていった。 しめた、こいつはいける!


「それ、わしらも水かけて火を消すべ!」


 そして弱まった炎に、村人達が井戸の水をかけ、火は瞬く間に鎮火へと向かっていった。

 これで一安心だ。が、心配事はまだまだたくさんある。


「村長、大丈夫か!」

「大丈夫ですよ……だい……じょう……ぶ」


 弱った声で言う。おもっくそ大丈夫じゃねぇ!


「おい! 薬とかないのか? 薬草とか! ポーションは?」

「そ、そんなものありませんじゃ……薬は高くて手が出んのじゃよ」

「あーもう、面倒な村だな! ちょっと待ってろ!」


 とりあえず思いついた事を行動に起こす。


「ワダンダール!」


 そう。王宮に飛んで、薬を山ほどギッってきてやる!

 あと、大地の事も問いたださなきゃ気がすまない。


 あの野郎! すやすや寝てたら、額に「肉」って書いてやっからな!


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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