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第七章 11 太一、村を襲撃す

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


「ヒマだねぇ」

「ヒマですねぇ」


 鬱蒼とした林の中に身を潜め、俺とチーベルはいつ来るか知れない敵へと、警戒の目を光らせていた。


「なぁ、ライトニウスさんとアニィがにらめっこしたらどっちが勝つと思う?」

「それは難しいですね……恐らくドローではないかと」


「…………」

「…………」


「そうだ、ベルガきゅんとセルバンデスさんに女装させたら、どっちがかわいいかな?」

「そうですね、かわいさならベルガさんでしょうけど、美しさならセルバンデスさんではないでしょうか」


「…………」

「…………」


「ヒマだねぇ」

「ヒマですねぇ」


 チーベルとの会話も早々となくなり、一人色々な事に思いをはせる俺。


 やはり大地は何か企んでいるんじゃないか?

 あいつが必要以上に優しくするときって、何か隠している可能性が高いんだよな。


 ツングースカさん達無事かなぁ。

 上手くやってるかな? まぁあの人達の事だ、俺なんかが心配するような次元の方々じゃないし、大丈夫だよな。


 エリオデッタ姫を今後どうすべきだろう?

 このままずっと、ツングースカさんの屋敷で暮らすのもあれだし……この一件が終わって、大地に裏が無いと判ったら、一度ワダンダールへ帰還させてあげるべきじゃないか?


 セフィーアの容態はどうかな?

 動けるようになったら、途端に暴れないかな? つか、姫を返すとなれば、その警護役に付いてくんないかな?


 マリアニ姉妹の言ってた邪神の話。

 なんか不安だよな……俺、ついカっとなってワダンダール城の通路で壁パンしたとき、とんでもない力が出たよな。あれってまさか……?


 そういえば裏切りの話もあるんだよな。

 でも、大魔王軍って思たほど一枚岩ではなさそうだし。

 トラのおっさんは「獅子座の剣」入手に燃えてる様子だしさ、レベトニーケさんはなにやら北の国に飛ばされた事を根に持ってるようだし。

 幽鬼のじーちゃんは半分ボケてるようだし……。

 まともなのはツングースカさん……いやぁ、あの人もまともかなぁ? ともあれ、ベイノール卿の出方次第って事か。


 そう言えば、べミシュラオさんの事も謎なんだよな。あの人、だいぶ前からこの世界にいるようだし……なぜそんな事が起こったんだ?

 

 などと思案をめぐらせているうち、やっとこさ、お日様が西に傾きつつある時間帯となった。


「はらへったなあ……」

「そうですね。その辺のキノコとか木の実とか食べられないでしょうか?」

「勘弁してくれ……なんでそんなサバイバル生活せにゃならんのだ?」

「そういえば飲み物も無いですね。知ってます? 喉が渇いたときは梅の実を思い浮かべればいいそうですよ。あと、舌先で犬歯を舐めるのもいいそうです」

「無駄知識ありがとよ。あ~あ、この辺にコンビニとかないかなぁ?」

「お金もってないじゃないですか?」

「そうだよなー……ってそこかよ?」


 そう言えば、俺ってお金持ってないよな?

 普通、敵倒したらお金とか入手できるはずだろうにさ。ドロップアイテムはあってもお金はもらえないのか?


「はい、なにせ大魔王軍からのお給金制ですからね。その辺のロキシア襲ってお金を奪ったとしてもですよ、そのお金で物を買おうなんてしたら『キャー! 魔物が出たー!』って、店員さん逃げちゃいますよ」

「ああ、そうなると品物とか盗み放題かもな……つか、最初っから襲う気満々で行くだろフツー」


 と、そんな事を考えて、ふと思い浮かんだ事がある。


「そうだ! 近所の村を襲って食料と若い娘さんを略奪しよう!」


 これなら食欲と性欲を同時に解消できる、我ながらグッドアイディアだ!

 でもなぁ……。


「そういうのはだめだよな、チーベル?」

「え、なんでです? 別にいいんじゃないでしょうか」


 お、なんだ? 思いもよらない返答だぞ!


「な、なんでって……やっぱそういった悪い事ってのは――」

「モンスターが人間・・に対し、悪い事するのは普通じゃないですか?」

「いや、でも……倫理的っつか、道徳的にマズイってーか……」

「うーん、魔物に倫理を求めるほど、ロキシア側も魔物には期待してないと思いますよ?」


 そうだ、そうだよ! 俺は魔物なんだ!

 そして今いるのは別の世界! 旅の恥は掻き捨てじゃないか!


「その言葉の用途は間違ってますが、まぁ大体そんな感じですね」

「そうか、わかった! いくぞ、チーベル! 近場の村を襲って住民ヒーヒーいわせたる!」

「はい、がんばってください! で、村ってどこにあるんです?」


 …………。

 俺のこの振り上げた拳は、一体どうすればいいのだろう。

 とりあえず「てへ♪」と自分の頭でもポカリと殴っとくか。


「仕方ありませんね。私が空高く飛んで、周囲を見渡してきます」

「おお! 流石はチーベルさんだ。その目の良さに期待してるぜ!」

「はい。でも、あまり期待はしないでくださいね?」


 そう一言残して、チーベルはパタパタと羽をはばたかせ、空高くへと舞い上がる。

 やがて、木々の枝葉にその姿を阻まれて、見えなくなってしまった。


 一人薄暗い林の中で、心細くチーベルを待つ事十数分ほど。

 静まり返った空気をかき乱すように、チーベルの声が聞こえた!


「ありました。ありましたよ、太一さーん!」

「な、何! あったか? 村だな? 村だよな!?」

「はい、なんか割と大きめな村がぽつんと――」


 舞い降りてくるチーベルが指差す方向。それは、このまま道なりにいけばいいと示唆しているようだ。


「で、距離はどのくらいだ?」

「はい、走って一時間くらいのところです」

「いよぅし、走るぞ! チーベル!」

「はい、がんばって!」

「おう、じゃあいってくる! ……って、お前は来ないのか?」

「ええまぁ、一応中身は天使ですし……共犯とかはまずいので」


 しれっとのたまう。

 だが、これはかえって好都合! もし俺が突然とんでもない性癖に目覚めたとしても、誰も知らない秘密にできるって事だよな!


「じゃ、じゃあここで留守番しててくれるか? そうだ、何かあった時のために、伝令妖精の指輪置いてくわ」

「あ、はい。じゃあ太一さんの『気』を覚えさせてください」


 そうだ、コイツに俺の気配は教えてなかったよな。


「伝令、『俺』の気配を覚えてくれ」


 指輪に向かって命令を発する。と、ややめんどくさそうに、妖精さんが現れた。やる気無いのか? コイツ。


「はいはい、覚えたで。ほなな」


 そして愛想無くまた指輪へと帰っていく。チッ、どうせならかわい子ちゃんの妖精が良かったよ。お金持ちになったら、めっちゃかわいい妖精が住んでる指輪買って、こんなガラクタは即突っ返してやるぜ!


「じゃあ、チーベル。ひとっ走り行ってくるわ!」

「あまり無茶はなさらないでくださいね!」


 現在、太陽は真上から西に傾きつつある時刻。

 元の世界と同じなら、おそらく午後の二時か三時ごろのはず。

 全力で走って、向こうで暴れて、エロエロ……もとい、いろいろとやって二時間ほど。

 そこから走って戻れば六時か、遅くとも七時には帰って来れる!

 よし、走ろう! 魔族の脚力なめんなよ!

 待ってろ、村娘達! ちょっとだけ痛い事するかもしれないけど、なぁに、すぐ済むって!


 ……多分だけどな。





「ゼェ……ゼェ……や、やっと着いた。へへ、中学校の頃の校内マラソン大会に比べると、なんて事無いじゃないか……」


 誰に言うともない強がりを零しつつ、俺は村のはずれの風車小屋の陰に隠れて、ターゲット達の動向を探ってみた。

 ワロケの林道からの一本道で、通行の要所でもあるはずのこの村は、ガキンチョ共が走り回っている以外、あまりにもにも活気が無いように見受けられた。

 それもそのはずだ。出歩いているのはじーさんばーさんや、あとは少々年配のご婦人と子供ばかりじゃないか? 男女共に若い衆が見えないのはなんでだろう……皆出稼ぎにでも行ってんのかな?

 どうする? 若い娘さんがいないんじゃ、こんな場所襲っても意味が無いしなぁ。


 ……と、そんな思いをめぐらせている俺の鼻へ、突然なにやらかぐわしい香りが!


「こ、この匂いは……焼き魚!」


 気付くと、なにやら広場っぽいところから、煙が上がっているのが確認できた。

 ちょっと待てよ、焼き魚だけじゃないぞ! おそらくはお肉系の焼ける香ばしい香りと音も漂ってくる!

 鼻から、耳から、そして目からも、これらが俺の腹ペコな胃袋を刺激して……い、いかん。しんぼうたまらん!


「う、うまそうだ……」


 気がつけば、俺は自分が魔族である事も忘れて、ご馳走の匂いのする広場へと足を運んでいたのだった。


 そんな俺の姿を見られたら……



「 ヒ 、 ヒ ィ ! ま 、 魔 物 だ ぁ ! 」



 当然、そうなるよな。



「 き ゃ あ あ あ あ ! 」



 突然村中に響く、絹を引き裂くような悲鳴。ふと我に返って周囲を見渡す俺。

 なんとも間の抜けた登場だ。

 うーん、もうちょっと気の利いた、かっこいい登場の仕方が良かったのにな。

 まぁいいか。出たとこ勝負だ!


「そ、そうとも! 我こそは……我こそはかのアミューゼル寺院を襲いし魔物、べオウルフ様だ!」

「べ、ベオウルフだと!? ……おい、誰か知っとるか?」

「い、いんや、しらん」

「アミューゼル寺院は知っとるけんどのォ……べろべろウルフは知らんわ」


 うーん……若干なめられてますね、俺。

 ならば!


「こ、これでも知らぬと申すか!」


 スラリ! っとグエネヴィーアを引き抜き、周囲のじーちゃんばーちゃんに突き付けるように構える。


「ひ、ひぇぇ! 魔物が怒っとる!」

「こ、こんなめでたき日に魔物の襲来とは……神様も酷な事をされるわい!」


 悲鳴が飛び交い、戦慄が駆け巡る! おお、なんだか魔物の襲来っぽくなってきたぞ?

 若い娘さんはいないけど、まずはここで村襲撃に慣れておこう。本番前の予行練習ってやつだな。


「ぐはははは! とにかく貴様ら、命が惜しくば食料をありったけ――うん?」


 そんな悪党の常套句に酔いしれている俺の足元に、なにやら違和感……と言うか、何かにしがみ付かれているような感触が……。


「な、なんだ? ――って、おい! こ、これは……あ、赤ちゃん?」


 なんてこった!

 俺の足元に、まだ歩くのがやっとって感じの赤子がしがみ付いていやがる!

 この子は一体? つか、いつの間に?


「お、おい! 何なんだこの赤ちゃんは!」


 とりあえず一度剣を鞘に仕舞い、足元の赤ん坊を抱っこする。


「お、おそろしや! 魔物が赤ん坊を食べる気だ!」

「ア、アホか! 誰が食うか!」


 そんな俺の声に驚き、赤ん坊がグズり出した。おいおい、ちょっと勘弁してくれよ。


「あ~ごめんごめん。わるかったでちゅ。こわくないでちゅよ~。べろべろばぁ~」


 変顔を作ったり、高いたか~いしたりと必死にあやす。と、どうやら俺の気持ちが伝わったのか、どうにかグズるのをやめてくれたようだ。


「きゃあ! ポレーフ、私の赤ちゃんが! おお神様ぁ!」


 背後から女性の声がした。

 振り返ると、そこにはまるで半狂乱と言った感じの女性の姿……どうやらこの赤ちゃんの母親らしい。


「おい、女! この子の母親か!」

「は、はい! 私が母親です! どうか、どうかその子をお放しください!」


 そして俺は、母親を名乗る女性へとツカツカっと歩み寄り、そっと抱っこしていた赤子を差し出した。


「ほれ!」

「――は?」

「赤ちゃん! お前の子なんだろ?」

「は、はい!」


 まるで毟り取るように赤ちゃんを奪う母親。気が付けば俺は、そんな彼女に説教をたれていた。


「いいか、女! 自分の子から目を離すな! 家の外にはどんな危険が待っているかわかんないんだぞ? 気をつけろ!」

「…………は……ははい! 申し訳ありませんでした」


 一瞬ポカーンと開いていた口から、感謝と謝罪のこもった返事が飛び出した。


「まったく。俺がもし血も涙も無い魔族だったらどーすんだ! 100パーその子は死んで……ん?」


 と、またしても俺の足に、なにやら「むんず」と掴まれているような感触が……しかも今度はいっぱい――って! さっきその辺走り回ってたガキンチョ達じゃねぇか!


「おっちゃん魔族? ねぇ、魔族?」

「かっこいいー! ねぇ、いっしょにあそぼー」


 ええい、寄るなクソガキ共!

 俺は超おっかねぇ魔物なんだぞ! お前らなんか、頭からからし酢味噌つけてバリバリ食っちまうんだぞ!


 って、だから手を引っ張るなぁ!


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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