第七章 7 お風呂にて 3
一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。
それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。
「風呂に入って来い」と言うアメリアスの言いつけ通り、ベイノール邸庭園内にある使用人専用の風呂へとやってきた。
どうやら俺達が一番風呂らしい。なにせまだ夕飯前の時間帯だもんな。
なんでも一応温泉だと言う話で、その効能は、高血圧、動脈硬化、運動麻痺、筋・関節痛、打撲、切り傷、冷え症、更年期障害などなど、戦いが終わった後のヴァンパイアさん達にとっては、非常にありがたいものとなっているそうな。
「うぃ~……やっぱお風呂はいいですね、やな事を忘れられますよ」
「でもそのやな事が、風呂で起こりそうな予感をひしひしと感じるんだが……」
そう。この世界の風呂には、あまりいいイメージがないような気がするんだよな……まぁ、風呂場でばったり! なイベントなんてそうそう起こるワケない――
「あねさま……おもしろい子がいる」
「あら、ほんと。一番乗りを取られちゃったわね」
突然、聞き覚えのある二人の声。
湯気の向こうをふと見ると、二人の美少女が、あられもない姿でやってくるのが見えた。
って、いきなり風呂場でばったりイベント開始じゃないスか!
テレビで映すと即打ち切りになってしまう部分はタオルで隠れてはいるものの、胸元は完っ全に無防備都市宣言状態!
しかも、姉のマリィと比べて、妹のアニィは割りとちっぱいなんだな? と双方のふくらみを比較できるほどまじまじと見入ってしまったからさあ大変!
一瞬俺の頭を、殺されるか、もしくは抹殺されるかと言う、どう転んでも絶望しかない二者択一が駆け巡った!
「あ、マリィさんとアニィさんじゃないですか。お先にいただいてます~」
チーベルが二人の殺戮マシーンに挨拶を送る。バカ、これから俺が死ぬか殺されるかって時に、暢気な挨拶にもほどがあるぞ!
「タイチ様、チーベル様、お湯加減はいかがですか?」
「ちょうどいいですよー!」
おいチーベル! 何楽しげな会話して……む? 俺に裸を見られて怒っていない。
こ、これは……あ、そうだ! ここは混浴風呂だっけか!
って事は、普段から裸を見られなれていると言う、ヌーディストビーチチックなパラダイスじゃないですか!
「タイチ様、チーベル様。先ほどはお館様への施術、ありがとうございました」
湯船に入る前にマリィが一言、俺とチーベルへ添える。
「いえ、あまりお役には……」
謙遜してか、多くは言わないチーベル。その気遣い、俺にもかけてくれ。
「では、失礼して……あいたた、少々傷にしみますわね」
「……ぴりぴりする」
見ると、この二人もあちこち擦り傷、きり傷、打撲跡など、結構なダメージを受けている様子だ。 そう言えばアメリアスもあちこち怪我してたよな……そんなに激戦だったのか。
「二人がそんな怪我するって事は、それほど手ごわかったのかい? 例の敵」
「申し訳ございません、その件は極秘扱いにて、我々権限の無い者の口からは……」
どうやら緘口令が敷かれているようだ。
どうやら、ここの人達ってベイノール卿やアメリアスに絶対服従なんだな。なんだかアニキにタメ口叩いてる俺、不敬罪で私刑にされちまうんじゃないのか?
「ああ、いいよいいよ。軽い気持ちで尋ねてしまって、こちらこそすまない」
笑顔で会釈するマリィ。
普段は社交的なんだよな……でも、アメリアスやベイノール家の事となると、自分の友人知人でも躊躇い無く排除するんだろう。
一方のアニィの方はと言うと、ホント無口で……ん? なんだろう、さっきからじっと俺の方ばかり見ているぞ?
「ア、アニィ……何? 俺の顔になんかついてるかい?」
ぷるぷると無表情のまま首を振って、意思だけは見せる。
「面白い子……また面白い事して」
「これ、失礼よアニィ。ちゃんとタイチ様とお呼びしなきゃ」
「いや、いいよ。『おもしろい子』でさ」
茶色とかう○こ色とか呼ばれるのに比べたら、よっぽどましだよな。
「うふふ、でも珍しいわね。アニィが誰かを気に入るなんて」
「そ、そうなんだ」
ぺこり、と無表情のまま頭を下げるアニィ。気に入られてんのか……俺。
「先日はあまりの事に笑ってしまって、申し訳ありませんでした。ですが、そう……私達が心から笑ったのはいつ以来だったかしら? あの日、村がロキシア共の襲撃を受けてからずっと……」
あ、なんだかマリィが遠い目をして語りだした。横にいるアニィも一緒になって、無表情ながら回想に浸っているぞ。
「村が襲われたんだ……いつの話だ?」
「あれはまだ私が、今の大魔王様くらいの年頃でした」
「そ、そんな幼い頃に?」
「我々のちちさま、ははさまもそのとき、アンデット・キラーと渾名される聖職者の手に掛かり……その時に駆けつけてくださったお館様に助けて頂いて、以来ずっとロキシアを殺す事のみに執念を燃やした結果、高い戦闘力を見につけるに至り……今ではお嬢様の身の回りのお世話や就寝中の警護を任せて頂いていますの」
うーん、いい話なのか酷い話なのか、ぬるま湯の生活を送ってきて平和ボケしている俺の頭じゃ分からんな。
「で、そのアンデット・キラーとかいう奴は?」
「はい、お館様が八つ裂きにしてくださいました。さしものアンデット・キラーも、手も足も出ませんでした」
うへぇ、おっかねぇな。しかしながら、やっぱ強いんだなアメリアスのとーちゃん。
「タイチ様のご両親様は?」
「うん、俺? 天涯孤独の一人もんさ」
元の世界にはちゃんと両親共に健在だけど。
「まぁ、それは……私達と同じなのですか?」
「いや……よくわかんないけど、気が付いた時から一人だし」
三日ほど前だけど。
「タイチ様はお寂しくはないのですか?」
「いんやぁ、だって俺にはチーベルもいるし、寂しいと思ったことはないさ」
ウゼェ! と思ったことはあるけどな。
「お強いのですね? タイチ様は」
「まぁ、君達だってご両親がいなくて寂しいだろ? 寂しい想いとかしてるのは俺だけじゃないもんな」
「私にはあねさまがいるから……」
そう言って、マリィに寄り添うアニィ。なんだか微笑ましいな。兄弟とか持ってない俺からすると、なんだか羨ましく思えるよ。
ま、今の俺にはツングースカさんと言う姉さんと、アメリアスってアニキがいるか。
「さて、と……あまり長湯は危険だな。そろそろ――」
昨日の事を思い出し、湯あたりする前に出ようと立ち上がった……そのとき!
「どたどたどんがらがっしゃん!」と言うおもしろ効果音を背負った美少女が、湯気を掻き分け現れた!
って、そいつは――アメリアス!?
「お、お嬢様! なぜこのような場所に!」
驚きつつアメリアスに対し、直立の姿勢をとるガーディアンズ姉妹。
「え、え、え、ええと。忘れてたわ。今の時間、マリィとアニィが一番風呂に入るのよね」
「な、なんだアメリアス、どうした慌てて?」
「あ、慌ててなんかいないわよ! ……そ、それより私がちゃんと見張ってなきゃ、我が妹分である二人に、茶色の変質者が手を出す危険があるでしょ……だから私も入るわ!」
バスタオルを体に巻き、慌てた様子で登場してきたアメリアス!
なんだろう。女の子って裸姿もいいけど、バスタオル一枚ってシチュに、全裸には無いまた違ったエロスを感じてしまう。
「いやいや、アメリアスさん。俺のどこをどう見りゃ、この二人に手を出せると思えるんだ? 自分で言ってて情けないが、手ェ出した瞬間、コンマ二秒くらいで瞬殺される自信があるぞ!」
「そ、それはそうかもしれないけれ――ヒィッ!」
そう言いつつ、俺へと視線を向けたアメリアス……が、何故か一瞬で固まっちまった。
しかも恐ろしいものでも見たかのような表情で、引きつってやがる。一体どうしたってんだ?
「太一さん、レディーの前で失礼ですよ?」
「んあ? 何だチーベル。失礼って――だぁぁあ! こ、これは俺の失礼が第二形態に変化して臨戦態勢!」
ワケのわからない言葉を口走りつつ、慌てて湯船に浸かろうとするも、時すでに遅し!
俺の顔面には、ケロリン風呂桶がめっこし! と、めり込んでいた。
「 こ こ こ こ の ド 変 態 茶 色 が ぁ ぁ ぁ ぁ ! 」
俺、悪い事したのか? 健全な男子の責務を果たしただけだよな?
「まったく、目が腐るわ! とっととタオルでかくして湯船に浸かりなさい、このエロ茶色!」
「い、いや……もうあがりますから」
「あ、あがる?」
「ああ。ちゃんと前も隠すし、出ていいだろ?」
が、ギラリとしたアニキの厳しい目が俺を射抜く!
「なに? せっかくこの私が来てやったってのに、同席はしないっての?」
「へ? 何言ってんだ――」
「いい、風呂ってのは……その……は、は、は、ハダカの付き合いなのよ! スキンシップを取るためには一番いい場所なの!」
どっかで聞いたような言葉だな。俺みたいな変態エロ茶色と入浴なんて御免だろうに。
「この私が! 一緒に入ってやろうと言ってんの! 黙って湯船に浸かんなさい!」
はは~ん、さてはツングースカさんのお風呂パーティーの真似事だな? ここは大きな自分を見せようって腹か。
「だがな、アメリアス。俺はもう湯あたり寸前だ。つか、顔面に風呂桶の襲撃を受けて鼻血出てん――」
「うっさい! マリィ、アニィ、やれ!」
その言葉と共に、マリィとアニィが俺の横につき、両腕を捕らえて、湯船に沈めにかかってきた!
いやその……両腕になんかやわらかいものがあたってますけど! って言ってる場合じゃない! んな事されたら、二日連続湯あたり確定! もしくは良くて鼻血超流出!
「わ、わかった! 逃げないし、ちゃんとタオルで前を隠すし、アメリアスやマリィアニィの体に発情したりしない! だから自由にさせてくれ!」
「ふん、まぁそこまで言うんなら仕方ないわね……もういいわ、二人とも」
と、釈放してもらったその瞬間。
ラッキースケベの神様が俺に「出番だGO!」と囁いた。
長湯のためかどうかは分からないが、一瞬フラリと湯船に倒れこみそうになるアニィ。
「アニィ! ど、どうしたの!」
その姿を見て、アメリアスが慌てて駆け寄ってきた。
途端! 彼女の身体を覆っていたバスタオルが、締め付けていた胸元の弾力に負け、はらりとはだけて湯船へと舞い落ちたのだった!
「きゃあ!」
焦りながらタオルを拾い上げ、その華奢でいて豊満な胸を誇る生白いボディーへと巻きつけた。
「……み、みた?」
アメリアスが真っ赤な顔で俺へと問う。
見たさ! 勿論見た! 何を? 決まってるじゃないか!
――地獄を。
最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!