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第七章 5 名医・チーベル

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 会議もつつがなく終了し、その後、ツングースカさんに呼ばれた俺とアメリアス。

 今は二人揃って、彼女の執務室にいる。


 因みに、あれから会議で決まった事は全部で四つだ。


 一つは、アスタロスの剣捜索の為の特殊任務部隊の人員選定。


 二つ目は作戦開始日時の決定。

 これはできるだけ早く、しかも内密に事を運ばなければならないため、明日の深夜、日付が変わった時点での出立となるそうだ。


 三つ目に決まった事は、予備兵力の選定だ。

 もし、前出の部隊のみでの作戦実行が困難となった場合に、すぐさま救援に向かう追加部隊なのだが――ここにも俺の席はなかった。

 俺的にはこのあたりが持ち場かな? と想像していたのだが――まさかの戦力外通知だったよ。


 そして四つ目。今回のヴァンパイア部隊の一件における調査委員会の設立だ。

 裏切り者の是非の内部調査と、事の顛末を明らかにする解明捜査の二面から、事実を浮き彫りにしていくとの事。

 ……まぁこの件に関しては、俺はまったくの対象外なので傍観するしかないらしい。


「それではツングースカさん、俺は何をすればよろしいのですか?」


 不満、とは言わないが、何もしない生殺し状態は些かケツの座りが悪い。

 やるべき事があるのなら、心の準備もあるし早々に教えていただきたいものだ。


「ああ、貴様にしかできない重要な役だ」

「と、申しますと?」

「ワダンダールに行き、かの代行者の動向を探れ」


 なんと! 大地のスパイをしろと仰るのか!


「そうだ。が、これは貴様のためも思っての事……タイチよ、先の『鍵の種』に関する情報、何と引き換えに手に入れた?」

「うぐ……そ、それはですね」

「おおかた、奴に種の在り処が分かったら連絡をくれとでも言われたのだろう?」

「な、なぜそれを!? あ、いえ……」


 な、なんだろう? 俺の心を読まれている? それとも千里眼で、現場を見ていたとか!


「こちらの交換するべき情報が無いのに、奴はそんな重大な事を打ち明けたんだ。裏があって当然だろう? となれば……さしあたって場所だけでいいから情報を流せとでも言われたんだろうと考えるさ」


 す、鋭い読みだ! こんな時のツングースカさんって、俄然頭が回るよな……その他の事はすごく大雑把なのに。


「ちょっとタイチ! アナタ、私達を裏切るつもりだったの? まさか、ヴァンパイア部隊の情報を売ったのあなたじゃないでしょうね!」


 アメリアスが興奮気味に詰め寄ってきた。


「ば、バカ言うなよ! 小心者の俺にそんな大それたことができるか! それに奴に喋る気なんて、全く無かったんだぜ?」


 全く無かった……それは少し誇張しているかもしれない。俺の心が揺れていたのは事実だし。

 でも、上手い事取り繕おうとは、一応考えていたんだよな……それが裏切りなら、あるいはそうなるかもしれないけど。


「それもそうね。よく考えたら、アナタみたいなアホに、簡単に機密を漏洩するような輩は居ないでしょうし……そうですわよね、師団長閣下」

「あ、ああ……そうだな」


 そう言えば昨日の昼、俺に「ヴァンパイア部隊が夜間急襲を仕掛ける任に就く」と言う軍部の機密作戦を教えてくれた、大雑把な人がいたなぁ……。


「コホン、そ、それはともかくだ……貴様は何も知らない振りをして、ワダンダールに居ろ。日時を遅らせて作戦開始を伝えるので、そのときにでも場所を教えてやるといい。そうすれば、奴等からの信頼を損なう事無く、我々もアスタロスの剣を手中に収められるだろ?」

「そ、そうですか……でもなんでそこまで俺と奴らの信頼関係を壊さないように配慮してくださるんですか?」


 俺はてっきり、奴らとの約束なんてブッチしてしまえ! と言われるに決まってると思ってた。そこのところをちょいと疑問に思って、ツングースカさんに尋ねてみると――。


「奴らはまだ利用価値がありそうだ。それに……姫の事もある、一応はパイプがあったほうがいいだろう」


 恐らくメインは後者か……。


「わかりました。では明日にでもワダンダールへと向かいます」

「そうだな、そうしてくれ」


 とりあえず、俺の本日のお仕事はこれにて終了と相成った訳だが……アメリアスに「ちょっと用があるからあとで一緒に来て」と言われているんだよな。

 どうせヴァンパイア部隊救護とかメンドクセェ事させようって腹だろうけど、まぁ一宿一飯の恩義に報いるため、ここはアメリアスに従う事にしよう。


「で、続いてはアメリアス部隊長にだが……私にだけは本当のことを教えてくれまいか?」


 何かを感じ取っていたのか、ツングースカさんがアメリアスの瞳を覗き込むように尋ねる。


「そ、それは……」


 言い辛そうなアニキに気を使い、俺は退席を申し出た。


 けれど、アメリアスの返答は意外なものだった。


「あなたは居ていいわ。どのみち教えるつもりだったし」

「ほう、こいつに教えて私には教えてくれぬのか? 一応上官である身としては、ちょっと残念だな」

「いえ、違うんです! ……その、父の事で少し」

「ベイノール卿がなにか? ……まさか!」

「いえ、生きてはおります。が、危うい状態で……既に屋敷へと運ばれております」


 なんと! あのテンション高いおっさんが、危篤状態とは!


「どどどどーすんだよ! それって普通に回復魔法で何とかならないのか? そ、そうだ、医者は! 薬は! シャーマンは!」

「あなたが動揺してどーすんのよ! それでね、チーベルに回復魔法をかけてもらおうと思ってさ……」

「わ、私ですか!」


 な、なるほど! でも、なんでチーベルなんだ? 専門医とか居るだろうに。


「そこから父の容態が、裏切りの一派にバレるでしょ? ただでさえ警戒してるってのに。それができないから、チーベルにお願いを……あなた、以前私に回復魔法かけてくれたでしょ?」

「は、はい! おやすい御用です……ですが、初歩魔法なので回復は少しずつになりますよ?」

「うん、わかってる。とりあえず山を越せればそれでいいわ」


 心配の色を隠しきれずに、アメリアスの目にうっすらと涙が浮かぶ。王宮に戻ってきてからずっと、自分を偽ってきたんだろう。

 見えない敵に悟られないよう。そして皆に――大魔王様に心配をかけまいとするために。


「そうとなればこうしてはおれんな。タイチ、チーベル、早速ベイノール邸へ向かい、卿をお救いしろ!」

「「はっ!」」


 チーベルと二人並んで、師団長殿に敬礼を見せる。


「アメリアス、私も後からそちらに向かう。その時に――事の詳しい経緯を教えてくれ」

「かしこまりました。では、師団長殿! 二人をお借りします。……それと、今の事は――」

「心配するな、誰にも言いやせん」


 そして貴族の格式高い一礼を見せたアメリアスが、俺とチーベルをむんずと掴み、テレポートの言葉を叫んだ。


「ゴーンドラド・デ・ベイノールパレス!」





 しん、と静まり返ったベイノール邸。

 その門前に現れた俺達を、セルバンデスさんが迎えてくれた。


「おかえりなさいませ、お嬢様」

「セル、父上の容態は?」

「はっ! ……未だ如何ともし難く」


 神妙な顔つきで返すセルバンデスさん、が、アメリアスはチーベルを指差して言った。


「そう……でももう大丈夫、超一流の名医を連れてきたわ。これで山は乗り切れるでしょう」


 超一流の名医と言うよりは闇医者と言うべきだな。


「それは心強い、ささ、事は一刻を争います。お急ぎくださいませ!」


 セルバンデスさんの案内の下、俺達は早速ベイノール卿の元へと急いだ。


「お父様、ただいま戻りました!」


 が、返事が無い。

 見ると、返事どころか身動きすらできなさそうな傷を負ったアメリアスパパが、ベッドに横たわっているじゃないか!


「こ、これは酷い……特にお腹への一撃を受けただろうこの傷、刺されてるじゃないすか!」


 俺もカオンに刺された時、こんな感じだったから判るよ。


「そうよ。でも普通の剣では私達ヴァンパイアは死なない。傷もすぐ塞がるの。私の体中の傷もそうだけど……魔法や特殊な武器での攻撃だけは、『傷』として残ってしまうのよ」

「って事は――代行者が!」


 アメリアスは少しの間の後、何も言わずに、ただ黙って一度頷いた。


「では早速、回復魔法を!」


 チーベルの見せ場がやってきた。

 魔物にだけ効く、初歩クラスの回復魔法。

 一応限られた魔族しか使えないと言う、めったにお目にかかれない魔法らしい。


 本来なら、その道のプロを呼んで全回復を図るところなのだろうが……余程信頼が置ける医者であっても、『医療機関が極秘裏に動く』と言う事になれば、今度の黒幕は必ずそこを察知するだろう。となると、ベイノール卿重体と言う機密漏洩の懸念は否めない。

 それ故、今回はきっと誰にもノーマークであるはずのチーベルに、白羽の矢が立ったと言う訳なんだよな。


「う~ん……おっぱいもいいけど、やっぱ美少女の血のおかわりちょうだい……おやぁ こ、ここはどこだ?」

「お、お父様! お気付きになられましたか! 私です、アメリアスですわ!」


 どんな夢を見ていたかはさておき、どうやらチーベルの回復魔法が、傷口を塞ぎ、意識を戻すまでにアメパパを回復させたようだ。


「と、とりあえず私の気力が続く限り、回復魔法をかけてみました。これ以上は一度休んで気力を回復させる必要があります……あ、因みにですが、私もイモリの黒焼きはご勘弁ください」

「ありがとう、チーベル! 分かったわ、続きは明日にでもお願いできるかしら?」

「はい! 任せてください」


 へろへろになったチーベルが、それでも空元気に返事を返す。大活躍じゃないか、チーベル。


「本当にね。ありがとう、チーベル!」

「いえいえ、そんな」

「あなたのご主人様は何の役にも立たないってのにね」

「……うっせぇ」


 そして夢現だった卿が、意識をはっきりとさせ、事の次第を把握。チーベルへと感謝の言葉を送った。


「いやぁチーベルくん、君は命の恩人だよ~。このご恩、生涯をかけて返させていただくからねぇ~!」


 なんか……徐々にだが、俺の存在ってのが薄れていく気がしてならないのは気のせいだろうか?


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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