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第七章 3 御前会議 前編

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。



 夜だか昼だかわかりゃしないゴーンドラドの中心街を、ガラガラとでっかい衣装ケースを押しつつ歩く間抜けがいる。

 そう、俺だ!


 この、人が三人ほど入れるようなデカさの衣装ケースにキャスターが付いてくれているのは嬉しいんだけど……如何せん石畳の道なもんだから、振動が激しくってとにかく押しづらいのなんの。

 でもまだ担いで歩くよりはましだよな。


「さぁ、もうちょっとでツングースカさんのお宅ですよ! がんばって」


 俺の肩にちょこんと座ったチーベルが、気休めの言葉をかける。

 つか、お前も手伝えよ……巨大化なり何なりの機能は付いてないのか? 


「残念ですが、私にそんな機能はありませんよ」

「んな事ぁ分かっとるわい」

「いきなり筋肉ムキムキのゴリマッチョになれる人とかいたら便利ですよね」

「ああ。でもハルクみたいなのがウホウホ来たら怖えぇよな」


 と、うだうだ言ってる間に、いつの間にかゴール地点。

 ツングースカさんのお屋敷に到着していた。


「おやおや、なんです? やけにおっきな箱ですねぇ」

「ばーちゃん。ロキシア達の服をもってきたんだ……彼女らの部屋まで運ぶから案内してくれないか?」


 そう言うと、ばーちゃんが心配そうに返してきた。


「でも階段を上がらなくてはいけないのですよ? 失礼ながら、タイチさんの力では、この大きな箱は持ち上がらないでしょうに? 」

「う、うん……そうだなぁ」

「なら、ここはこのばばにおまかせなさい」

「へ? な、なに言ってんだよばーちゃん」


 俺の頭に疑問符がいっぱい浮かび上がる。

 こんなちっこい体で、どうやって運ぶんだろ? まさか超能力で?


「まぁ見ておいでなさいな」


 途端、屋敷内からわらわらと幾人ものばーちゃんが現れ、集合し始めた。その数六人!

 ちょっと気持ち悪い。


「それではまいりましょうかね……合身!」


 その一言の後、俺の目の前で驚くべき光景が!

 五人のばーちゃんが、一人のばーちゃんへとみるみる吸収されていき、やがて一人の――そう、ツングースカさんよりも一回り大きなばーちゃんへと変化したのだった! しかも筋肉ムキムキだ! あれか、キングスライム的な合体か? それともハルク的な何かなのか? ばーちゃん大暴れの巻か?


「さて、こいつを運び込みましょうかね……それはそうとタイチさん、お仕事は?」


 呆気にとられていた俺へ、いつものばーちゃんとはちょっと違った野太い声が尋ねてきた。


「……う、うん。まだお城へ戻らなきゃいけないんだけど……」

「なら、これはばばが運んでおきますよ? お仕事にいってらしゃいな」

「あ、はい……」


 そう零すだけで、いっぱいいっぱいだった。

 そしてマッチョばーちゃんが、むんずと衣装ケースを抱きかかえると、いとも簡単に持ち上げ、ズシンズシン音を立てながら屋敷内へと歩いて行った。

 ただただボーゼンとその姿に見入る俺。


「いましたね、便利な人」


 チーベルが呟いた。


「ああ、なんかスゲェもん見ちまったな」


 もしまかり間違って、あのばーちゃん攻略ルートに足を踏み入れてしまったら……ゼッテー無理! 逃げらんない!





「はぁ、ただいま戻りました……」

「どうした? やけに疲れた表情だな」


 ツングースカさんの執務室へと戻った俺は、とりあえずさっきの度肝を抜かれたばーちゃんイベントの事を説明した。


「はははそうか、アレを見たか。あのばーさまはおっかないぞ? 子供のころ、悪戯をしてはよくあの完全体のばーさまに折檻されたっけな」

「なっ! ツングースカさんをも軽くあしらうとは!」

「グーリンの者は、物心付いてすぐに分裂を覚えさせられるんだそうだ。そのままだと、あまりにも凶暴になる恐れがあるらしくてな」


 うひゃあ、マジでおっかねぇ。つか、グーリン族の村の中って、同じ人がいっぱいでウザいだろうなぁ。しかも合体して一つになると凶暴化するって……メンドクセェ種族だ。


「おっと! それより大事な情報があるんですよ!」

「ほう、なんだ?」

「例のアスタロスの剣の話ですが……どうやらそれが眠る場所に行くためには、鍵となるアイテムが必要となるらしいのです」

「アイテムだと?」

「はい。ラッキーシードとほぼ同じ大きさの種子で、色は黄金色らしいです。それを、ブェロニーの地獄森のどこでもいいから植えてやるんだそうです。すると、一日で大木となって、それがアスタロスが眠る場所への入り口へと変化するという話です」

「ほう、それは信用できるのか?」

「昨日のロキシアのいう事ですから……でも、俺は信用できると思っています」


 大地の言う事だ、信用できるさ。


「そうか……貴様がそう言うのなら信じてみるとするか。で、その種子か? 今どこに?」

「ええ、それが輸送中にオーク鬼に襲われ、その種を奪われてしまったそうです」

「あの……太一さん?」

「場所はブェロニーの地獄森付近の草原らしく――」

「太一さんってば……」

「我らが配下のオーク鬼のいずれかが持ち去っているかと」


 と、急に何者かが俺の耳を引っ張って――って、チーベルか? なんだよ、今忙しい――。


「あのですね、さっきから気になっていたんですけど……オークと平原と種と言うキーワードに、何か心当たりがありませんか?」

「ん? はてな、なんだかそう言われてみれば、俺の心の忘れたい恐怖系の引き出しの中に、そんなキーワードがあるような……」

「ではそこに『大地さんとベルーアに初めて出会った場所』と言うキーワードを足してみてください。心当たりありませんか?」

「ん? んー……うん、……うっ!」


 皮のズボンのポケットに意識を集中すると、そこで微かに自己主張する、小さな固形物の存在があるのが分かる。

 俺は、そこに入っている小さな獣皮の小袋を取り出し、その心当たりを確認するため覗き込んでみた。

 

「あ、心当たり発見……って、これがそうだったのかよ!」


 俺は驚きの声を上げつつ、ツングースカさんに、その黄金色の種の所在を報告した。


「なんか……偶然ですが、ここにありました。そういえば一昨日、成り行きで助けたオークの皆さんに、これをもらったんでした……てっきりラッシーかと」

「ふっ……はははは! まったくお前と言うやつは、運だけはいいようだな」

「は、はぁ……」

「よし、これで御前会議でも主導権を握れるぞ。とにかくでかしたぞ、タイチよ!」


 ツングースカさんに喜んでもらえたのは嬉しいけど……大地にこの事なんて言おう。





 時刻はとうとう正午をまわってしまった。

 俺とツングースカさん、そこに仮眠を取っていたレフトニアさんとライトニウスさんも合流して、特別会議室へと案内された。

 学校の教室ほどの大きさの部屋の中央には、大きく長いテーブルと、その長方形の側面に二脚ずつ、合計四脚の格調高いデザインの椅子が置かれてあり、正面には大魔王様の玉座がでん! と置かれてあった。


 その四脚の椅子には、すでにレベトニーケさんや、おそらくレフトニアさんの親父さんであるワータイガーのいかついおっさん。そしてライトニウスさんと同じく、フードを目深に被った人の姿もあった。

 この、デミリッチなる幽鬼の人。

 ライトニウスさんと違う点と言えば、頭に冠を戴き、ライトニウスさんよりさらに不気味と言う事だろうか。


 そしてやはりと言うべきか……一つの席がまだ空いている。そう、ベイノール卿の姿がまだなんだ。

 アレからまだ音沙汰はないし、一体どうなっている事やら……。


「諸君、大魔王様のおなりである。粛々とお迎え致すよう」


 キンベルグさんの重厚な声が室内に響いた。

 着席していた三家の貴族達が、一斉に直立不動の姿勢を取る。もちろん俺達四人も背筋を伸ばしてきおつけ! 状態だ。


「大魔王様、御出座にございます」


 大魔王様専用の扉が開き、ちっこい姿が現れる。昨日噴水の縁でベソかきそうになってたお子ちゃまとは打って変わった、凛々しくも厳かな佇まいだ。


「皆の者、楽にせよ」


 畏怖さえ感じる静かな口調。ああ、紛うかた無くこのお方は大魔王様なんだな。

 小さいくせに、そう感じさせるに十分な迫力があるよ。


「ベイノール卿が未だみえぬようだが、どうなっておるのか?」


 大魔王様が、誰に問うでもなく尋ねる。


「はっ! 昨夜から懸命の捜索が行われておりますが……未だ一向に」


 ツングースカさんが畏まって発言する。と、


「まったくあのバカ者め! どこをほっつき歩いておることやら。帰ったら懲罰モノだぞ!」


 間髪入れずに、ワータイガーのおっさんがドラ声でがなり立てた。

 なんてオヤジだ、娘も血の気が多いと思ったら、オヤジは輪をかけて血の気が多いときてる。ヴァンパイアの皆さんが帰ってきたら、半分くらいあげればいいんだよ。


「何言ってるの~。あなたが一番心配してたじゃない? アップズーフ卿」


 と、そこへ、レベトニーケさんが茶々を入れる。


「バ、バカも休み休み言え! こ、こ、この淫乱魔女めが」

 

 なんだか図星を突かれて焦っている様子のアップズーフ卿。え、もしかしてゴツいトラ男の癖にツンデレ入ってる?


「我が父とベイノール卿は、幼い頃よりの竹馬の友でな。父は人一倍卿の身を案じておるのだ」


 目が点になっていた俺へ、レフトニアさんがこっそり耳打ちしてくれた。

 なんだ、熱いハートのオヤジさんじゃないか。


「控えぬか、アップズーフ。大魔王様の御前であるぞ!」

「おお、これはとんだ無礼を。申し訳ございませぬ大魔王様」


 キンベルグさんの一喝に、頭を深々と下げるアップズーフ卿。あれだな、根はいい人なんだろうな。


「にしても……ベイノール卿が居らぬとなれば、会議はできませぬな。本日は議題を変えて、ヴァンパイア部隊捜索の会議といたしましょうか……?」


 キンベルグさんが大魔王様へと伺いを立てた。そのとき――



「それには及びませぬわ、キンベルグ様!」


 いきなり会議室のドアをバンッ! と開き、颯爽と現れた一人の少女!

 そして俺は彼女の姿を見るなり、あまりの嬉しさに、無意識のうちに叫んでしまった!



「 ア 、 ア メ リ ア ス ! 無 事 だ っ た の か ! 」



最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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