第七章 2 鍵の種
一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。
それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。
前回の最後にて「ゴーンドラド!」と叫んだのは、正しくは「ワダンダール!」の間違いでした。
他にも多々間違いがございますが、どうか一つ広いお心にてご容赦のほどを……。
またまたやって来た、ワダンダール城内にある謁見の広間。
「国王、おはようございますよっと」
急に現れた俺に、いつもの如く驚きの表情を見せる周囲の面々。
と、見渡す限りでは、大地達がいない。
「あー……大地は?」
「うむ、今朝はまだ来てはおらん」
……あいつ、この国にご厄介になるってのに、いきなり重役出勤か?
「ま、魔物殿。して、今日は何用ですかな?」
少しおっかなびっくりと、側近の大臣の人が俺に尋ねる。一応味方だってのに、俺まだ恐れられてるよ。
まぁ仕方ないけど。
「あ、ああ。実は姫様の服をもらいに来たんだ……だって、魔物の国の衣装より、こっちの国の自分の服のほうがいいだろ?」
そう、いつまでもツングースカさんのぶかぶか衣装を着せたままじゃ、かわいそうだもんな。まぁあれはあれでかわいいけど。
「左様か、いや、気遣いかたじけない。これ、ロングワート。魔物――いや、ベオウルフ殿を姫の衣裳部屋へ案内いたせ」
「ははっ。ではこちらへ……」
国王の命で、側近のおっさん「ロングワート」が、ワダンダールの紋章の入った装飾美しい扉へと招き入れる。そこは王族用の居住区へと通じる通路なのだとか。
「ベオウルフ殿には、何かとご配慮いただき、感謝しております」
姫の部屋へと向かいつつ、ロングワートが俺へ感謝の言葉を送ってきた。
「いやいやなぁに、お互いの利益のためさ」
「そうは仰いますが、我々の知る限りの魔物とは一線を画すと申しますか、微に入り細を穿つ辺り、かなり殊勝な……あ、いや! お気を悪くされたならご勘弁を!」
「いいさ、よく言われるよ。変わった魔物だって」
まぁ中身は、あんた方ロキシアと同じなんだけどね。
「わたくしも当初は魔物という事で些か気を張っておりましたが……なかなかに心許せる御仁でありますな、ベオウルフ殿は」
笑いながらに言う。が、その後の俺の一言は、彼の表情を大いに凍り付かせる事になった。
「ならさ、心を許すついでに……姫を奴等に送った本当の訳を教えてくれよ?」
立ち止まり、狼狽える素振りを見せるロングワートのおっさん。
「な、何を仰られますやら……」
立派に整えられたカイゼル髭をせわしなくいじくり倒し、仕舞いには不恰好などじょう髭にしてしまうほど、動揺を露にしている。
「いやさ、薬の件もそうだし……まだまだ隠し事あるだろ? 白状したほうがいいぜ、悪いようにはしないから」
「い、いやそれはですな……」
「まぁいいさ、お前達がこっちに協力しないというのなら、こっちもそれ相応の態度を取らせてもらうまでだし?」
ぐぬぬ、と煮え切らない表情のおっさん。もう一押しかな?
「なんなら、あの大地とか言うロキシアの光と共に、この国を乗っ取ってもいいんだぜ?」
「そ、それだけはどうかご勘弁を! ひ、姫の件はお話します。ですから、どうか平に!」
どうやらトドメの一言が利いたようだ。なにが「心を許せる」だ? ちょっと脅したらすぐビビるあたり、俺の事まったく信用してないじゃないか。
「あーもう、冗談だよ。それより、頼むからさ……なんで姫や乙女達が奴等に送られたのか、そこのところ詳しく教えてくれ」
「や、やむを得ませんな……」
少しの間を取り、ロングワートは語りだした。
「実は最近、我が国はレカリオン薬のために、周辺諸国から狙われておりましてな……その対防衛役を買って出たのが、かの連中なのです。無論そのためには、上納金とその……」
「なっ! だからそれで姫を? お前ら何て奴等だよ」
「致し方の無い事、我々も苦渋の選択……小国の生き残る道でございました」
「同盟とか、他の国との共存とかで対処するってのは望めなかったのか?」
「はい……周辺国の各国共、漁夫の利を得ようと様子を伺うのみでして……」
「皆、薬の利権欲しさにか」
「左様にございます……」
なんだか嫌な世の中だ……こんな人間達の世界、一度滅んだほうがよさそうだな。
「ですが! 最初から手をこまねいていた訳ではございません。我が国の資金力に物を言わせ、ロキシアの光ら五名を雇い、一度は西方の国『ゲシュベール』と一戦交えておるのです。ですが……」
「皆、やられちゃった訳ね?」
「はっ、それも『ただ一人の男』によってでございます」
「……っ!」
なんだよ、最強の敵出現! って事?
「雇い入れた者達のいずれも、そう強いとは言い切れなかったことも事実。ですが、その者の強さたるや、まるで破壊神シヴァの如しであると言う……」
うわ……なんとも中二臭い……ええ、そうですよ。俺の趣味です。そのうち、日本の神様も出てくるんじゃないか? 貧乏神とか。
「そこでやむなく、一度は断った彼ら殺盗団へ防衛の任に当たってもらい、金を渡そうとしたところ……奴等足元を見てか、今度は姫らをも差し出せと申してきたのです。どうか、我等の立場も分かって頂きたい」
それって殺盗団のマッチポンプなんじゃねぇのか?
「怒る気はねぇさ……怒る気は……でもな――クソ殺盗団め!」
―― ド ゴ ッ !
気が付けば、壁パンかましていた俺。そこにはぽっかり開いた、大きな穴が。
感情の赴くままに放った一発は、とんでもない威力を秘めていた。
驚き慌てるロングワート。いや、俺も驚いてるよ。やっぱこれってレベルが上がっているせいかな?
「太一さん、やりすぎですよ?」
チーベルが「あ~あ」と首を振り、俺を諌めた。
「おっとやべぇ、穴あけちゃった! めんごめんご。王様には内緒な?」
言葉にならない返答を見せるどじょう髭のおっさんに、「やりすぎちゃった、てへぺろ☆」とばかりの愛嬌たっぷりの顔を見せる。
「はははは……そそそそそれでは衣装室へとご案内いいいいいたします」
冷静を装うも、引きつった笑いとかなりの動揺を見せつつ、再び俺への案内を開始する。なんだかかわいそうなくらいビビらせちゃったかな?
まぁ、姫様達が受けた恐怖や屈辱はこんなもんじゃないし、我慢してくれ。
小一時間ほどの後、でっけぇ衣装ケースにたくさんの衣装を詰め込んで、玉座の広間へとそれを運ばせる。とりあえず、王様へ帰る挨拶はしといたほうがいいだろう。敬意を払う事は大事だもんな。
「国王、これだけ持っていきますよ――げ、大地!」
そう、そこには大地他二名が、玉座前だというのに自分の部屋のように寛いでいた。
「あー! うるふちゃんだー! おっはよー」
「あれ、いらしてたんですか? お声をかけてくださればよかったのに」
「あ、あはは。おはよう……みんな」
マルりんとベルガが俺の姿を見て、声を上げる。なかなかにフレンドシップな挨拶だ。
けれど――問題は御大将のご機嫌だよな。
「丁度良かった、ベオウルフ。貴様に教えておいてやることがあってな」
ほっ。なんだか無茶な事は言いそうにないな。
「あ、ああ……何だ?」
「実は、あの剣――アスタロスの眠る地の話だが……俺達には、ちょっと無理ゲー臭くなってきた」
「何? どういうこった」
「昨日アスロドテス――こくまろ王子から聞いた事なんだがな、実はかの墓標への入り口を開く際に、鍵となるものが必要なのだとか」
「へぇ、それは?」
「ああ、なんでも植物の種子に似たものなのだとか。ラッシーを知っているか? 犬でも飲み物でもないぞ?」
「わ、分かってら。幸運のタネだろ?」
「そう、そいつとよく似た大きさ、形をしているそうなんだが、色はラッシーと違い、純金色って話だ。それが必須アイテムなんだが――」
「へぇ、そんなものが必要なんだ? チーベル、知ってるか?」
「いえ、残念ながら……」
そんなレアアイテムを使わなきゃ探せない武器って、RPGじゃ最後のほうにゲットできる、ロトの剣的なイベントじゃねぇのか? それだと、今どうこうできるもんじゃないかもな。
「なんでもその『種』を、地獄森の何処にでもいいから植えて一晩置くと、でかい樹木へと成長するそうだ」
「へぇ、たった一晩で?」
「ああ。で、その樹木が入り口となり、地下へと張り巡らされた根茎の中を辿っていけば、それが眠る場所へとたどり着けるそうだ」
「で、そいつの在り処が分からねぇ……と」
「ああ、そういう事だ。が大体は予想がつくんだが……これが如何せん、な」
「ってぇと?」
「一昨日の事だ。その種子を、こくまろ王子の仲間が遠方の地「ポルア」で見つけ、ブェロニーの地獄森へと輸送中に、森から程近い平原にて数多くのオーク鬼どもに襲われ、その種を奪われてしまったらしい」
「そ、それは確かに『無理ゲー』っぽいな。オークなんてごまんといるだろうに」
「で、お前達の配下のオークに、それを持った奴がいないか、調べてほしいんだ」
「し、調べろだって?」
な、何を仰っているんですか、大地さん!
俺達も狙っているその剣を、みすみすあなたの手に渡すような事ができましょうか?
「なに、ただとは言わんさ……お前が内緒でその情報を俺達に流してくれれば、その剣『グエネヴィーア』をお前にやろう。ただ教えるだけでいいんだ、あとは俺達が先に奪うか、お前達が先に奪うか、黙って見ていればいいだけの事……どうだ?」
うぐ…………それちょっと魅力。
「オークはお前等の配下だろ? 簡単な事じゃないか。俺達は独自に調べて、独自にやって来た。そういう事にしておけば問題ないさ」
「わ、分かった……とりあえずは一旦戻る。場所が割れたらまた来るよ」
「頼んだぜ? 相棒」
あ、相棒……大地の言葉に、少しぐらっと来た。
本来ならば敵同士のストーリー……でもどこをどう間違ったのか、俺達は今休戦状態にある。いや、協力体制といってもいい。
それは俺の親友である大地と、一緒にMMORPGの世界をプレイしている感覚だ。
俺がここに来て、願った望みの一つでもある。それはあの本が成し得た事かどうかは分かんないけど……俺にとっては――一番いい展開だ!
このまま魔族を裏切って、大地の仲間に……今誘われたら、断る勇気ないよ、俺。
「じゃ、じゃあ、俺は戻るぜ? 国王、もう悪い事して金儲けはするなよ? じゃ!」
そう言い残し、俺の体と衣装ケースは眩い光の結晶となって、天に溶けて消えたのだった。
最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!