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第六章 13 土下座

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


「なんだい、もう今日のお仕事は終わったんだ。素直に帰らせてくれよ?」


 死にかけていた仲間を殺すことが当然の事のように、至って平然と語るカオン。

 俺の中で更なる怒りがふつふつと沸き立ってきた。


「あいつは、お前の仲間じゃなかったのかと聞いてんだ!」

「うん、そうだけど?」

「じゃあ、なんで殺したんだ?」

「だからー、つれて帰るのがめんどくさかっ――」


「バキッ!」という音。気が付けば、俺は目の前の男をぶん殴っていた。

 もちろん、俺如きのパンチで何らかの被害を受けたーなんて素振りは全く無いけれど、非常に不愉快だ! と言う表情による無言の抗議は、すぐさま見せてきた。


「わかんないなぁ……君、魔物だろ?」

「あ、ああ! だからなんだ」

「君の敵を排除してやったんだぜ? 感謝されこそすれ、殴られる謂れは無いよ」

「そうじゃねぇ! あいつはお前の部下か何かだったんだろ! 仲間だろ! なんで助けなかった!?」

「使えなくなったから処分した、それだけだよ」

「てんめぇ!」


 もう一発殴ってやろう、そう拳を振り上げる。が、俺の腕は何かに阻まれ、制動がかけられた。

 振り返ると、ライトニウスさんが俺の腕を掴み、睨みを利かせていた。


「それは我が獲物……」

「で、ですがライトニウスさん――」

「弱者はすっこんでいろ……」

「うわっと!」


 と、そのまま俺の腕を引っ張り、無理やりこの場からの退場を余儀なくさせられてしまった。


「後日、雌雄を決しよう……」


 改めてカオンと対峙し、そう告げるライトニウスさん。


「ああ、いいとも。じゃあね!」


 そう言うと、カオンはテレポート魔法で何処かへと消え去ってしまった。


 ふと我に返って冷静になり、何故奴の言動、行動に腹が立ったのかと考えた。

 だがなんでだろう? 理由が見当たらない。

 ただ、瀕死の仲間を易々と殺すあの態度が、無性に許せなかったんだ。

 一体何故だろう……俺の中の「誰か」の感情に突き動かされたような感覚だ。なんだか釈然としない気がする。


「あんな簡単に逃がしてやっていいんですか?」


 俺はまるで、ツングースカさんへと不満をぶつけるように尋ねた。


「ああ、かまわんさ……奴は色々と使えそうであるし、どうせまた会う機会もあるだろう。それよりも今は、一刻も早くこの場の事態を収拾するのが先決だ。なにせまだヴァンパイア部隊が戻らんのだからな」

「そ、そういえばそうでした! 何か連絡はありましたか?」

「うむ、現場に到着した奴からの報告では、多数のロキシアの死体のみが見つかっただけで、本隊の姿は無かったそうだ」


 って事は、ヴァンパイア部隊の被害は無く、今は帰還途中にあるのかもしれないな。



 と、ほっとした途端、一番の懸念に気が付いた。

 …………大地のヤツ、このまますんなり行かせてくれるだろうか?


「じゃ、じゃあさっさと戻りましょう!」


 しれっと皆に帰り支度を即す。

 が――


「おいおい、ベオウルフ。何勝手に仕切ってるんだ? それに誰が帰っていいって言ったよ」


 神様が落ちた素の大地が、俺を呼び止める。あ、やっぱ誤魔化せなかったか……つか、もう円満に終わろうよ、大地。


「ところで奴は何者だ? 奴も殺盗団の一員か?」


 ツングースカさんが尋ねる。ああ、やっぱうやむやにしてこの場を去るわけにはいかないかー。

「ヤツは俺の同級生です」なんて言えないしなぁ……。


「あ、あいつは敵じゃありません――」

「貴様! ロキシアは敵であろうが!」


 俺の言葉のミスチョイスだ、レフトニアさんの怒号が飛んできたよ!


「えっとその……協力者です! よね? ベミシュラオさん」

「え? あ、ああ……まぁその……で、ありますかな?」


 また「こっちに振るかね?」と言う引きつった笑いを見せつつ、一応の同意を見せてくる。

 後は大地が無茶な事さえ言わなければ……。


「そうだな。今のところ俺達が『敵』と認識するのは、奴ら殺盗団とか抜かす集団であるし、このスポンサーにはまだ生きていてもらわなきゃ困る……目的は同じだ、『事が済むまで』休戦でも協力体制でもいい」


 さすがは大地だ、話が分かる。


「――が、今すぐ戦うと言うなら、それもいいぜ? お前達の好きなようにしろ」

「フン、ほざきよって! 今からその喉を引き裂いて、二度と喋れなくしてやろう!」


 ちょ、レフトニアさん好戦的にも程があるよ! 今後の事も考えて動いてくださいよ!


「まぁ待て、レフトニアよ。利害が一致していて、互いの利を高める協力をすると言っているんだ。今回はその話、乗ってみようじゃないか」

「いやしかし……わかりました、閣下の命に従いましょう」


 一礼して身を引くレフトニアさんに、師団長閣下が「悪いな」とばかりの笑顔で頷き返す。

 そしてツングースカさんは、王様へと向き直し、堂々と宣言を述べた。


「ではこれより我々大魔王軍は、我が名ツングースカ・レニングラードの下に、ワダンダールとの秘密裏の協力体制を確約しよう。ここにいる全ての者が証人だ」

「で、いいですよね? 王様~」


 マルりんの拍子抜けした声が、国王の意を尋ねる。


「う、うむ……」


 どうにも歯切れが悪い返事を返す国王にイライラしたのか、大地が言い放った!


「人に快楽と死を与える怪しげな薬の販売で、莫大な財を築いたんだ。今更魔物との密約で良心の呵責なんて言うなよ?」

「わ、わかった……認めよう」


 観念したように許可を下す。

 大地のやつ、知ってやがったのか……そう言えば、こくまろ王子にいろいろゲロさせたって言ってたな?

 もしかすると、殺盗団の事や、アスタロスの剣の情報も聞き出したのかも。


(師団長殿、どうかこの国の――いや、奴との交渉役には俺を使ってくださいませんか?)

「ん、なんだと?」


 流石はコソコソと言う言葉を知らないツングースカさんだ。小声でのヒソヒソ話なんでできたもんじゃない。


(あー、奴は色々と情報を掴んでいます。できうる限り聞き出してみます)

「……あまり趣味ではないな。が、許可しよう」

(あ、ありがとうございます)

「なんだ、ベオウルフ。内緒話か?」

「いや、俺をこの国との連絡係にと立候補したまでだ」

「連絡係か……まぁいいだろう、お前とは知らぬ仲でもないしな。何かしらの朗報があったら教えてくれよ? こちらからもアスロドテスから聞いた情報を提供してやろう……ただし等価交換だぜ?」


 やっぱ俺の声、聞こえていたのかな? なんつー地獄耳だ。

 でもそれを知り得て尚、情報の交換を求めるって所を見ると、肝心な事はまだ何も分かっていないんだな。


「長居は無用だ。引き返すとするか」

「はっ!」


 ベミシュラオさんが師団長閣下へと歩み寄り、俺達も従う。

 よかった。大地とツングースカさんとのバトルになれば、愛刀の無い大地に勝ち目は無く、今度こそゲームオーバーになっていただろうな。

 いつまで続くか分からない共闘関係だけど、しばらくは安心して大地に接触できそうだ。





 テレポートアウトで戻ってきた、グレイキャスル。


「それでは、小生はこれにて」

「ああ、すまなかった。当分は休暇をやる、好きなだけ酒に溺れていろ」


 俺達四人と一匹の笑い声に送られたベミシュラオさんが、バツが悪そうに頭を掻きつつ、街中の闇へと消えていった。


 とにかく、だ。やっとのことで、ツングースカさんの執務室へと戻って来れたよ。

 どっかと椅子に腰掛けるツングースカさんが、「貴様等もリラックスせよ」と一同へ声をかけてくれた。

 ライトニウスさんはと言えば、またフードを目深に被り直し、目だけをらんらんと輝かせている。おそらくいつもの彼女に戻ったのだろう。なんだか一息ついた気分だ。


「タイチよ」


 不意に、レフトニアさんが俺に声をかける。


「あ、はい」

「歯を食いしばれ!」

「は? え、と?」

「歯を食いしばれといっているんだ!」

「は、はい!」


 言われるがままに、奥歯を噛み締める。

 そして俺の左頬へと飛んできた、レフトニアさんの鉄拳制裁!


「ボクシッ!」と言う音が、俺の中に響いてきた。二、三歩後退る程の、微妙に痛いパンチだ。


「貴様、何故閣下の命令を守らん! どれだけ皆に迷惑をかけたか分かっているのか!」

「は……はい」

「 声 が 小 さ い ! 」

「 は い ッ ! 申 し 訳 あ り ま せ ん で し た ! 」


 殴られたほっぺたがじんじんする。殴られて当然な事をしたのだと、自分でも分かっている。

 そう、「あの時」に、状況説明をしに戻るべきだった。

 だが、言い訳はすまい。だって、「あの時」もっと怒られるであろう事を仕出かしていたのだから……。


「ツングースカさん……いえ、師団長閣下! 申 し 訳 あ り ま せ ん ! 」


 俺は膝を床に付き、指を三つ指にそろえて置き、深々と頭を垂れて、腹の底から謝罪の言葉を述べた。


「いや、もういいさ。二、三発ぶん殴ってやろうかと思ってはいたが、腹を刺されていたからな。その怪我の痛みを我が叱咤と思い、これからは気をつけよ」


 俺の見事すぎる土下座ゲザスタイルに、笑みを浮かべて許しの言葉をかけてくれるツングースカさん。

 でも、違うんです! 俺の謝罪はもちろんそれもありますが――もっと別のところにも言及しているんです!


 ――それは。


「白き天使、覚えていますか?」

「ん? 当然だ、忘れる訳あるまい? 貴様も知っていよう、あの胸躍る戦いを」

「は、はい……で、彼女の行方なのですが」

「……聞こう?」

「全身に受けた傷がもとで、生死の境を彷徨っています」

「傷? 私との戦いのか?」

「はい」

「だが……あの時ヤツはそんな素振りを見せなかったぞ?」

「ただ、ひたすらに我慢をしていた……そうです」


 まるであの時の激闘を思い起こすかのように、瞳を閉じるツングースカさん。


「そうか。で、今ヤツはどこに? やはりワダンダールか?」

「い……いえ。あの……」


 俺の怯えた表情としどろもどろな言葉に、何かを感じ取ったのだろうか。


「ま、まさか……貴様」

「はい……ツングースカさんのお屋敷に」



「 な 、 な ん だ と ぉ っ ! 」



 部屋中を震撼させる声! 机に置かれた燭台の蝋燭の火が消えそうなくらい揺らめいた。

 それはまるで、俺の命の火のようだった……ひぃ、ぶっ飛ばされる!


最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!

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