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第六章 7 共同戦線

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


「あ、なんか変なやつが来ましたよ~? 大地さん」

「なんだ、誰かと思えばべオウルフじゃないか?」


 まるで友人にでもばったり出会ったような物言いの大地。いやま、友人なんだけどさ。


「ああっと、これは失礼……部屋を間違えました」

「そんなつれない事を言うなよ、ベオウルフ。まぁゆっくりしていきなって?」


 そう言って、大地が俺の肩に手をまわす。


「い、いや……僕、今から塾の時間だから遊べな――うぼぐぅっ!」

「タイ……ベオウルフさん!」


 鳩尾にキツイ一発をおみまいされた!

 チーベルの悲壮な叫びの中! 跪いて、くの字に身体が折れ、口からは放送禁止的なモノを流す俺。

 とりあえず、この嘔吐物にはモザイクをかけてくれ!


「俺の剣、大事に持っててくれてるんだな? 感謝するよ」

「い、いえいえ……どういたしましてだこのクソやろ――ぐえっ!」


 またもや腹部に激痛! 今度は左横っ腹にケリが入った模様!

 大地くん、君はそんな事する子じゃなかったはずですよ!!


「ふぅ。まぁ、このくらいで良いか。許してやる」

「え……な、何?」

「許してやるって言ったんだ」

「ゆ、許してもらうような悪い事した覚えはないぞ? それよりお前こそ、アミューゼルでの神官虐殺を悔いたらどうだ?」

「はいはい、『ごめんな、神官たち~』これで良いだろ?」


 空へと向かい、ふてぶてしく謝るポーズをとる。


「あ、ああ。きっと神官達、天国で謝罪ゲット! って大喜びしてるだろうよ」


 今までのこいつとは、うって変わった性格だ……こんなの、俺の知ってる大地じゃない。

 が、とりあえず、これ以上シバかれるのはゴメンだ。従順なフリしてよう。


「で、何を許してくれるのか、まだ聞いてないな?」

「ああ、お前が俺の剣を勝手に持ち去った件を、だ」

「そうか、心が広いんだな? ベミシュラオさんが言ってたぜ、お前は心がでっけぇって」


 もしくは半人前だって。


「あのモンスターはやっぱりお前の仲間か……女達から聞いたよ? 茶色の、剣を持ったスケベそうな目でじろじろ見てくるモンスターにも助けてもらったってな。ピンと来たよ、お前だって」


 うう、否定できない!


「で、この国の城下町で、娘達を救った勇者扱いされてたんだが――突然この王様にしょっ引かれてさ」

「それで、ここにいたのか」

「ああ、そしたらタイミング良く、なんかどこかの軍勢がこっちに向かってるって報が届いたじゃないか? 途端また勇者様扱いだ。ころころと扱いが変わって忙しいったらないよな」

「よ、良かったじゃないか? じゃあ俺はもうこの辺で……」


 と、そそくさと帰ろうとしたその俺の首根っこを、大地はむんずと掴んで留まらせる。


「人手が足りないんだ。ここに何しに来たかは知らないが、お前もその軍勢撃退を手伝え」

「はぁ? な、何で俺が!」

「お前はモンスターだろ? ニンゲン(・・・・)殺すのが仕事だろう! それにこの国を利用しようと飛んできたんだろ? 滅びてしまったら、もう利用も何もできないぜ?」


 ぐっ! 別に利用する訳じゃないんだが……言ってる事は正論だ

 大地の表情からは、嘘偽りのない、俺の知っている「いつものあいつ」な瞳の輝きが見て取れた。 長年付き合ってきた仲だから判る、この共同戦線の提案は、どうやら本気らしい。


「で、許してくれるってのは……勿論この剣を俺が所有し続ける事も含まれてるのかな?」

「ああ、かまわないさ」


 あ、こいつ嘘付きやがった。

 そう思ったが……意外や意外。大地の目は至って真面目だった。


「えらく気前が良いじゃないか? 何か良いことでもあったのか? わかった! 逃がしてきた女の子の中に、好みの子が居たんだな?」

「ブブー、不正解。その好みの娘の居場所を探して、これから会いに行くんだよ」

「はぁ? 何言って――!」


 ふと視線を移した先――髭の爺さんと側近のおっさんの顔色を見て、一発でピンと来た!

 二人とも表情だけで「やむなく言ってしもうた」と語っているじゃないか!


「す、すまぬ魔物殿。必ず救うてくださると申すのでな……」

「このじーさん説得するのには骨が折れたよ。助けてやる代わりに、なんで殺盗団そんなやつらに狙われてるのか教えろって聞いても、なかなか口を割らなかったんだぜ? けれど、アミューゼルでの事を話すと、その実力を判ってくれてさ」

「で、『あの事』言っちゃったってワケかよ?」

「や、奴等に渡すよりは、何ぼかマシじゃろう」


 にやりと笑う大地。なるほど、あのおっかねぇって噂の剣を手に入れたら、こんな古女房グエネヴィーアとはオサラバって事か? なんてヤツだ。


「まぁ、新しい武器を手に入れたら――だ。誤解するなよ?」

「そう簡単に探せるかねぇ?」

「さぁね。まぁ、一緒に探せなんて、そこまでは言わないさ。とりあえず、この国を守る。付き合ってくれ」

「ああ、それは了解した」


 そう返すと、三人はまるでピクニックにでも出かけるかのような表情で、広間を出ようとした。


「は~い、じゃあ殺盗団退治にしゅっぱーつ!」

「あーすまん、ちょっと王様に話がある。それが済んだらすぐに行く」

「逃げるつもり……はないよな?」

「ああ、誓って」


 その言葉から少し間を置き、大地がフンっと鼻で笑って退室していった。


「まったく、心落ち着く暇が無ぇな。王様」

「まったくじゃ……それはそうと、姫は! 姫は無事かの?」


 また王様が威厳をかなぐり捨て、ただの歳老いた「父親」の顔を見せる。


「ああ、無事も無事。メシ食って笑顔まで見せてくれたぜ?」

「おおお、そうか! そうか……」


 うんうんと頷き、姫の無事を喜ぶ老王。

 「娘の置かれている状況をもっと知りたいのだ、話してくれ」という、懇願にも似たまなざしを俺へと投げかけてきている……でも、悪いけどそいつは後回しにしてくれ。


「で、やつらにはどこまで話したんだ?」

「おお、そうじゃのう。我が国の城下町にて、レネオ殺盗団のダンジョンから娘達を救うて来たと吹きよったでな、城に呼んで事の経緯を聞こうと思った矢先、殺盗団襲来の一報じゃ。わしらも些か慌ててしもうてのぅ」

「で、殺盗団の事を話したのか?」

「うむ、それはもう強き奴等じゃと言うたら『それは面白い……条件次第では助けてやる』と申しおってな」

「で、勘のいい大地の事だ、王様や大臣の挙動から、何か裏があるとにらんだって訳か」

「そうじゃ。わしも渋ったのじゃが……そこでアミューゼル寺院での詳細を聞き、そなたではなくかの者が真の首謀者と判り……殺盗団よりかはなんぼかましじゃろう、とな」


 で、例のアスタロスが眠るって言う剣の話をしたって事か。ま、背に腹はかえられないよな。


「しかし殺盗団のやつらめ、そなたに言われた通り『魔物に姫を奪われた』と申したのだが……我が言をないがしろにし、果ては攻め入ってくるとは……なんとも非情な奴等じゃ!」

「『我が言』って、王様直接奴等に言ったのか?」

「いや……我が国におる奴等のスパイに使者となってもらい、事の経緯を伝えたのだ。だがやつらめ、なんとも素早い行動じゃ。使者を送ってすぐに攻めて来よった」


 なんだよそれ、早すぎるんじゃね?

 リアル系な戦国モノのや世界の戦史モノの漫画や小説では、知らせを聞いて軍団率いてやって来るのに、準備だけで半日はかかるって書いてあったぞ?

 まるでさも事が起こるのを察知していたかのような周到振りじゃない――おいおい! それって、まさか……。


「とりあえず、生きてたらまた来ますよ、王様」

「すまぬ、魔物どの」

「ベオウルフっす! あ、あと……姫様の事、あいつらには?」

「いや、言うておらん」


 その言葉を聞いて、少しほっとした。

 豹変した大地の事だ、もしかしたら姫様の事を何かに利用しないとも限らないからな。


 そして安堵の笑みを王様に見せた後。

 俺も広間を出て大地の後を追い、城門前へと急いだのだった。





 初めて目にする、ロキシア側の建築物。

 夜の帳が下りているせいもあって、どこと無く薄気味悪い。

 建物の窓ガラスからキャンドルやランタンの明かりが漏れ照らされている煉瓦作りの大通りを、大地達を追って駆ける。

 俺と王様の会話を盗み聞きしてるんじゃないかと思ったけど、そこまで陰湿な性格にはなっていないようだ。


「にしてもでっけぇなぁ、チーベル。この街ってどのくらいあるんだ?」

「はい、ワダンダール国の城郭都市は、約250ヘクタール。東京ドーム約五十三個に相当しますね」

「て事は、東京ドームが高奈御ひいらぎ文化ホールの四倍弱だから……えっと……」

「高奈御市よりは小さいですから、難しい事考えないで安心してください」


 たしなめられた。


「あ、ああ。でも城門までかなりあるんじゃね?」

「大丈夫ですよ、利便性を考えて作られているはずですから、城から城門まではそんなに――あ、ほら。見えてきました、あの三人です!」


 目のいいチーベルの言う通り、一区域ワンブロック先ほどにうっすらと見える大地ら三人の姿。


「はぁはぁ……遅れてすまない」

「あはは、おかしな魔物だなぁ。まるで仲間のような言い草だ」


 赤い甲冑を着こなす『ちいさくてかわいい』感じの少年が、俺の言葉に笑顔を見せる。あの本には出てこない少年だな……名前は確か――


「ベルガです。お見知りおきを、ベオウルフさん」

「あのねー、あたしマルりん! よろしくね!」

「あ、はい……ベオウルフっす、よろしく」


 魔物と代行者が肩並べて歩いている……なんだか滑稽な感じだ。


「なんだか静まり返ってるな?」

「ああ、急使が早馬で駆けたんだ。街中の奴等、おっかなびっくりで誰も外へなんて出ないさ」

「なるほど……」


 まるで嵐の前の静けさって感じだ。


「それはそうと……なぁ、お前なんで寺院なんかを襲ったんだ?」


 なんとなくいい感じに会話ができそうな空気に、つい、腫れ物に触るどころかグーパンチをかますような事を口にしてしまった。

 

「……」


 ギロリと俺を睨む大地。が、思いのほか、優しい口調で返してきた。


「お前の持っているそいつは――俺の所有物だ。預けたものを返せと言って、何が悪い?」

「そ、そりゃあ悪くないけどさ……」

「だろ? なのに奴等、自分達寺院側の所有物とでも言うように、俺達の事、相手にすらしなくってさ」

「そ、それでキレたのか?」

「ま、そう言う事」

「おまえら、おまえら同じ『人間』だろ! 何で相手殺してまで奪うんだよ! お前の名前に傷がつくじゃねぇか!」


 一瞬、大地の眦がピクリと動く。


「ベオウルフさん、もしあなたが同じ魔族に襲われたら――?」


 ショートボブの金髪をふわりと躍らせて振り向き、俺に問うベルガきゅん。


「そりゃあ、戦うけど」

「命を奪われそうな程に襲ってきたら?」

「いやまぁ……い、言わせるなよ」


 口ごもる俺に、大地が不快を露にして言う。


「奴等、俺の剣を賽銭集めの金儲けの道具くらいにしか考えていなかったんだ。証拠にと神憑かみつきの姿まで見せた途端、まるで奪われるのを阻止でもするかのように、一斉に襲い掛かってきたんだぜ? 奴等は魔物以下だ」


 大地の怒りはもっともだろう。殺すか、殺されるかとなりゃ、それは必然になるだろうさ。


「でも、そこまでして手に入れようとした剣を、なんでまた俺に預けたままなんだ?」


 納得いかなかった。そりゃ、この剣は返したくないさ。

 でも……力ずくで取り返す事くらいワケないだろうに。


「それはな……ヒ・ミ・ツ・だ。しばらくは貸しといてやるから、その剣でたーんとお前の責務を果たしてくれ」


 ふざけているのか、それともマジでなんか隠しているのか。おそらくは後者なんだろう。

 でも、貸してくれると言うのはありがたい。何かあったらあったでそのときだ、今は素直に甘えよう。


「つきましたー! ここからはお外でーす」


 マルりんがはしゃぐ様に言う。なんだかこの子も、いわくありげな蛇の彫り物が入った剣を所持しているなぁ。

 そう言えば、ベルガも真紅あかい鞘に黄金色の鍔と柄という煌びやかな一振りを所持している。あれも名のある神威武器なんだろうな。


「では、衛兵! 俺達がここを出たら、すぐ城門を閉め、城壁内を固めるよう伝達してくれ」

「は、はぁ……」


 いきなり見も知らぬ男に命令され、素っ頓狂な声で答える門番の人。


「『はぁ』じゃねぇ! 閉めろっつってんだ!」

「は、はい!」


 大地の一喝が、彼を心底震え上がらせたようだ。俺達が外へと出た直後、慌てたように城門が閉ざされてしまった。


「ほう、いるいる……でも数が少ないですね?」

「まぁ、野盗上がりの寄せあつめだろうからな」


 漆黒の向こうに幾つもの篝火が見える。

 仄かに見え隠れする人の影、それは敵意がむき出しにされた「武器」を携えている。

 どうやら話し合いに来た様子じゃなさそうだ。


 ともあれ、なし崩し的に組まれた俺と大地の共同戦線が、今その火蓋を切ろうとしている。

 でもこの人数だけで……大丈夫かな?


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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