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第六章 3 お風呂場にて 2

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 まるで、それがさも当たり前かのように、男の、しかもエロスに興味持ちまくり世代の少年の前に、素っ裸で現れる美人上官!

 こんな優良軍隊、世界のどこを探しても無いぞ! いや、あってもちょっと困る!


 と、とにかく!

 何か会話をして気を落ち着けないと、俺のイゼルローン要塞がトールハンマー発射体制になってしまう!


「あ、あの……ツングースカさん。もう伝令のお仕事はよろしいのですか?」

「ああ、一区切り付いた。明日からは忙しくなるぞ? 覚悟しておけ」


 今でも十分忙しいです。

 てーか、入ったばかりのド新人に、そこまで期待をかけられても正直困ります。


「そう言えば、ばーさまから聞いたぞ? あの後、姫の落ち込んだ気持ちをいち早く感じ取り、励ましてやったそうじゃないか」

「い、いえ……励ますとかそんな」

「謙遜せんでもいい。ばーさまが、えらく貴様の事を気に入っていたぞ? さりげなく周囲に気を配る、珍しいタイプの魔族だとな」


 なんと! 俺の知らない間に、ばーちゃん攻略ルートを踏んでいたのか!

 そ、そのルートのエンディングだけは何としても避けたい。


「私も貴様のそんなところ、嫌いじゃない。何と言うか……我が弟を見ているようで、どこと無く心が安らぐ」


 ふと、遠い目で語りだす。


「弟さん……あの肖像画の方ですか?」

「ああ、そうだ。懐かしいな……昔はよくこうやって、弟と……シベリアスと風呂に入ったもんだ」

「お、弟さんとですか?」


 少し驚いた顔をした俺に、疑問符をつけたツングースカさんが尋ね返す。


「なんだ、家族と風呂に入るのがそんなに変か? 至って普通だと思うがな」

「はぁ、俺の常識の範疇外でしたもので……」


 そんな俺の戸惑いの意味に、からからと笑ってのけるツングースカさん。


「そうか、だがなタイチ。近しき者だからこそ、全てをさらけ出す事が必要だぞ? 互いの全てを教えあい、互いの全てを受け入れる。それが絆を深める上で最も大切な事……風呂はそれに最適な場所であるのだ。まぁ、これは我が一族だけの風習かもしれんがな」

「はぁ、そうですか……言われてみればそうですよね、なるほど」


 教えられて、なんとなく分かったような気がする。

 そう考えると、エロい目でしかツングースカさんを見ていなかった自分がちょっと恥かしい。

 ――けど、やっぱり健全な少年に、他人である女性の裸を見て興奮すんなって方が無理だよな。


「そうだ、お前も来るか? いつも月に1~2度、我が軍団の若いのを招いてホットタブでのパーティーを開き、親睦と絆を深めているのだ。楽しいぞ?」

「そ、それって裸で、ですか?」

「ああそうだ。当然皆、裸だ」


 うぅ、想像しただけで射出秒読み段階だ――――――鼻血が。


「おっと、しまった。男がいると、うちの若い連中が言う『ガールズトーク』なるものが出来ないか」

「ガ、ガールズトークですか? なんです、その胸のときめきを誘う、甘い響きの集会は」

「ああ。いろいろと男の事を教えてやっているんだ」

「……!」


 せ、性的に、だろうか……?


「例えば――ロキシアの気位の高い男に性的屈辱を与え、いたぶって殺す方法だとか……ロキシアの男を色香で騙し油断させ、失意のどん底に叩き落して殺す方法だとか、ロキシアの「男性」としての弱点を巧みに突く『官能美を追求した』殺害の仕方などだ。たまに、我が魔王軍の男連中の弱き点なども語るかな? まぁいろいろだ。皆、興味深々で聞き入ってるぞ?」


 俺の知っているガールズトークとなんか違う……。


「一度ベミシュラオを呼んだ事があってな、その時にドッペルゲンガーの最も屈辱を与える殺し方をレクチャーしたんだが……やつは早々に肝を冷やして逃げ出してな……ははは、あれも存外臆病な奴だ。以来、男は呼んでいないのだった。いや、呼んでも来ないと言った方が正しいか」


 そりゃそうでしょうよ。裸の女の子達を前にして、男を虐め殺す講義を聞かされる羽目になりゃ、誰だって逃げ出しますよ。

 でも、ドッペルゲンガーを屈辱的に殺す方法ですか……聞きたいやら聞きたくないやら。


「そう言えば、ベミシュラオさん。もうお酒は控えると言った早々に、お酒を呑みに行ってしまうとは……余程好きなんですね」


 魔物の女の子の内側話があまりにも衝撃的なため、話題をあの飄々としたドッペルゲンガーさんへと移す。


 が、ツングースカさんはフンと鼻を鳴らして、「そいつは違うな」と言う表情を見せた。


「あのアホウ、何が酒を呑みに行くだ……くだらんウソをつきよって」

「ウソ? 嘘なんですかあれ。じゃ、じゃあどこへ?」

「ん、決まっている。先のダンジョンで逃がしたロキシアの乙女達を、無事に送り届けに行ったんだろうよ」

「送り届けに、ですか? それってワダンダールまで?」

「ああそうだ。考えても見ろ――力無き女達が、丸腰でぞろぞろ野山を歩くんだ。道中にはモンスターや人攫い、野盗の残党だっているだろう……いや、普通のロキシアの男ってだけで、もう安心できん話だ」

「そ、それはそうですが……」


 まったくの盲点だった。ともすれば、俺達の住む世界……そう、バカみたいに安全な日本の常識で物事を考えていたようだ。

 そうだよ、ここは女性だけで歩くには危険すぎる。なんてったってこの世界、俺みたいな考えを持った連中がうようよいるんだもんな。


「武器庫を開放し、奴等にくれてやると言う選択もあったのだがな……そこまでしてやる謂れは無いし、なにより身柄を開放してやっただけでも、他の軍部連中からロキシアに甘いと評されよう。下手をすれば二心ありとの噂を招きかねん」

「そうですね。でもよく気が付かれましたよね? ベミシュラオさんの嘘」

「ああ。まだ20数年の主従関係おはいえ、生き死にを共にした仲だ。それくらいは判るさ……ヤツの他人への甘さ、まったく反吐が出る」


 と、そんな言葉を聴いて、俺の中に笑いがこみ上げてきた。


「なんだ? 何がおかしい」

「あ、いえ……これは失礼しました! ですが、その……ツングースカさんも、人の事言えないじゃありませんか?」

「ど、どう言う事だ? 私は情など無いぞ」


 どこと無く心当たりがあるのか、少し慌てる素振りで俺へと尋ねる。


「でも、虜の少女達を逃がしてやったじゃないですか?」

「あ、あれはただ、我々にとって有益な、しかも効率の良い選択肢を取っただけだ。か、勘違いするな」

「建前上のお話は分かりました。でもベミシュラオさんの嘘を見抜いていたにもかかわらず、あの人への自由行動を許可なさったじゃないですか?」

「ば、馬鹿言え! ヤツはここ暫く剣の中に封じられていたんだ。だから休暇をやったに過ぎない。それにだ、ヤツがどこで何をしようが、私の関知するところではない! それだけだ、他意は無い!」

「はぁ~そうですかぁ~、じゃあそう言う事にしておきます」


 ニヤケ顔で、冗談交じりの言葉を返す。その意を汲んでか、ツングースカさんもニヤケ顔で怒りつつ、俺へと迫ってきた。


「くぉらタイチ! 貴様、私を弄るつもりかぁ? そんな事は百万年早いぞ!」


 そう叫び、俺に左の腕でぎゅうぎゅうとヘッドロックを仕掛ける、全裸の美女上官!

 あ、ツングースカさんと肌が触れ合って……ああ、胸の辺りがむにゅんと柔らかく……あああっ! なんか一部突起物の感触が鼻先あたりに! ……ああああっ!! こ、これはゲーベルト族の若い男性の弱点を突く、見事な攻撃方法――もうやめて! 俺のライフはゼロよ!


「ぐ、ぐへぇ! す、すみませんツングースカさん……いえ、ツングースカ閣下! か、堪忍してください」


 が、ツングースカさんの攻撃は止まなかった。

 そして、次第に腕へと込められていた力が弱まり、いつしか俺の頭を優しく抱きすくめている感覚へと変わっていた。


「……あれ、ツングースカ……さん?」


 俺の問いかけのあと、彼女の右手が俺の頭へと優しく置かれ――慈しむ様に撫ではじめたのだった。


「……リアス」


 消え入りそうなか細い声。それがポツリと零れ聞こえた。


「タイチ……」

「は、はい」


 少し強張った声で返す。ツングースカさんの心情が俺の心に染み入り、そんな声を出させたのだと思う。


「すまない……このまましばらく……こうさせてくれ」

「……」


 言葉が出なかった。ただ一度、小さく頷くだけしかできないでいた。


「女々しいと笑うか?」

「いえ……」


 そんな思いは毛頭無いです。声に出してはっきりと伝える。


「なぁタイチ……恥のかきついでだ……一度だけ、もう一度だけでいい……私の事を『姉さん』と呼んでくれまいか……?」


 どう言おう? 大声で? いや、控えめに、はっきりと。けどなんか改めて言うには恥ずかしい。アホ、照れるな俺! 

 ほんの少しの間、あれこれと物凄いスピードで考えが巡る。

 けれど、結局俺は……いや、俺の考えなんかは一切用いず、ただ、心の赴くまま、感じたままに、言葉を紡ぎ出していた。


「姉さん……」


 途端に、左の腕の力が少しだけ強まる。

 そして、彼女の右手は俺の頭部から肩口へと移り、完全に正面から俺を抱きすくめる状態となった。

 顔に押し付けられたおっぱいで圧死する、そんな夢のような死に方も悪くない。

 そう覚悟を決めさせるに十分な弾力が、俺の眼前を塞いでいる。

 けれど不思議な事に、俺の心は至って平常心を保っていた。

 エロさなんて微塵も……ごめん、嘘ついた。ちょっとはあるけれど、だが興奮するほどじゃない。実に不思議な、初めての感覚だ。


 ――いや、ずっと以前に感じた事があるぞ?

 なんだろう……母親? かーちゃんが思い浮かぶ。


 そう、そうだ……こいつは恋愛とかじゃなく、慈母の愛とかそういった「家族の愛情」なんだろう。


「シベリアス……我が弟よ……」


 詰まるような言葉。肩の震え。そして俺の頬に落ちてきた、一滴の雫。


 絆が深いからこそ、失った時の絶望は計り知れないものがあるのだろう。バカな俺でも、流石にそう気付かされた。


 同時にそれは、最強を誇るツングースカさんの弱点じゃないのか……。

 その事に気付いたのは、どうか俺だけであって欲しい。


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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