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最終章 破 12 大ピンチ


「なんだか、邪神の奴。動きがおかしい」


 ふと俺は、自分の気付きを、言葉にして零した。


「おかしい? どういう事だ、サトウダイチ」


 オスカルドは、どうやらまだ気づいていないらしい。が、俺の一言で、ようやくソレに考えが至った様子だ。


「野郎、攻撃してこない」

「そういえば……俺等の攻撃に対し、ガードしか見せてないな」

「俺達には、自らの力での攻撃すらもったいない。なんて、そんな余裕は無いはずなんだが」

「あぁ。それに、俺も一つ気が付いたぜ」

「なんだ?」

「ツングースカ閣下の、ゲート完成の妨害工作。それにさえ、『邪魔立てするな!』の攻撃が無い」

「そうだ。今は何が無くとも、彼女の邪魔は致命的な要因。すぐにでも排除しなけりゃいけないハズ」


 言って。俺自身、邪神側やつらの何か薄ら寒い「謀」の匂いに、心が揺さぶられそうになる。


「ま、まさか……」

「なんだ、オスカルド」

「ツングースカ閣下の……あのゲートと思しき空間の裂け目……フェイク!?」


 オスカルドは、震えた声で、自らの考えを吐露した。

 途端! 邪神・ルシファーの口角が少し上がり、「にやり」という表情となった。


「ハハッ! 今更気付いても、もう遅いさ」


 ドライワイズと対戦中のウオルトが、ケラケラと笑いながら、俺達へと言い放つ。

 それは紛れもなく、罠である事の証明!


「む!? くおぁっ!!」


 その瞬間!

 ツングースカの身体に異変が生じたのか、苦悶の声を上げる!


「ツングースカ!」

「閣下ッ!」


 空間の裂け目に吸い込まれた両腕が、ゆっくりと、さらに深く飲み込まれ……やがて、


「クソッ! 身体が……ぐぅ……引きずり込まれるッ」


 身体そのものが、その裂け目へと飲み込まれてしまった!


「ツィンギー!」

「ツングースカちゃん!!」


 二人ともだちの慌てたような声が、空しくコダマする。

 やがて、空には暗雲が立ち込め、周囲は「なんだかすごく良くない予感」という状況に満たされていった。


「ハハハッ! ソイツはなぁ、ゲートウェイなんかじゃない。その空間こそ、ゲートウェイを生む原動力を吸収する装置だ!」

「な、なんだと?」

「これは、古の魔物が作った、異次元ホール発生装置でな。原動力は、ロキシアでも、神でもなく、『魔物』なのさ」


 ウオルトが、勝ち誇ったような口調で、その装置とやらの素性を語り始めた。


「魔物の、デカいパワーが原動力となって、この装置は作動する。が、そのためには、あの空間に、超強力な魔物を放り込まなけりゃならなくてね」

「だから、んな姑息な手段を?」

「あぁ、そうだ。あの、青い角持ちのパワーは計り知れん。そして、とびっきりのバカだ。あの女こそ、うってつけ」

「くっ。そこは認めざるを得ないわね」


 サキュバスのお姉さん、ソコは認めるんだ。


「いやいや。こちらとて、いろいろと予測不能の事態の連続・・でな。小細工に乗ってくれるかどうか心配だったが……そこはソレ、彼女は良い様に踊ってくれた」


 ウオルトとその仲間は、悪人面の高笑いで、俺達をあざ笑う。

 

 

 ――だ が !!



 そんな表情が、一瞬で凍り付いた!



「 ウ ガ ァ ッ !! 」



 それには、俺達も驚きの表情を隠し得なかった。


 何故なら――ツングースカが、野獣の咆哮と共に、空間を両腕で無理やり引き裂いて現れたからだ!


「ツングースカ!」

「閣下! なんと」

「ツィンギー……あきれたわ」

「ツングースカちゃん……あぁ、よかった!」


 上半身を、なんとか腕力のみを頼みに引っ張り出した状態。そんな彼女に、三頭団は闘いの手を止め、拍手と共に感嘆の言葉を送るのだった。


「あはは。流石はツングースカちゃんだ」

「俺は信じてたぜィ」

「さぁ、早く出ておいでよ!」

「だ、黙れアホウ共……そ……そう簡単に出来れば苦労はしない」

 

 一瞬で、誰もがツングースカの大ピンチは継続中だと気付かされた。


「これはこれは……このバカ女には、何度も驚かされる」

「この……クソ野郎……今すぐここから出て……貴様のその薄汚い横っ面をぶん殴ってやる」

「ハハハ! おもしろい。そら、やってみろ」


 そんな、あからさまな挑発という油断を見せるウオルト。が、「ドゴッ!」という衝撃音と共に、一瞬で消え去った!!

 代わりに、奴がいた場所に、シュウシュウと闘氣オーラを立て、赤銅色と化した修羅の形相の鬼が一匹。


「フゥ……フゥ……ツングースカちゃんの悪口はそこまでだッ!」


 動けない彼女の代わりに、ウオルトの横っ面を、とんでもない破壊力を伴う拳骨でぶん殴ったのだった!


「ツングースカちゃん!」

「お、おう……デブチン。よくやってくれたな」

「今、助けに行ってあげるから」

「アホ……そ、そんな事より……雑魚の始末をしろ」

「で、でもさ」


 そしてまた、ドライワイズはオロオロとした口調で、ツングースカに助けの手を差し伸べようとする。

 そんな、誰もが「そう思う前に行動しろよ」というツッコミを思い浮かべる中。ルシファーは、ツングースカへと右手をかざした。


 しかしながらそれは、少しでも戦いに身を置く者ならば、冷静に、落ち着いて観察すれば、すぐに分かる事だった。

 全くの闘氣も殺気も一切をまとわない、ただ、右手を上げただけ。という、ただのジェスチャーだ。

 けれど! 「テンパった小心者」にも拘らず、絶大な戦闘能力を持つ者にとって、そんな動き(フェイク・モーション)だけで、簡単に釣られてしまうのは、仕方のない事なのか!?


「あ、あぶない! ツングースカちゃん」


 デブの赤鬼は、まるで無防備にルシファーとツングースカとの間へとジャンプ! 

 彼女を守ろうとガード態勢をとり、自らの身体を盾にしたのだった。


「ア、アホデブチンが……釣られよって」


 もし、ルシファーが何らかの攻撃を仕掛けていれば、その身体を張った防御は、何らかの功績を生んだだろう。

 そして、彼自身も、防御態勢の恩恵により、思ったほどの被弾・ダメージを受ける事は無かっただろう。


 だが。思わぬ方向からの攻撃には? 防御を取っていない場所への攻撃には? 背後からの攻撃には?

 そうだ。彼を襲う刃は、そんな隙を狙い、後方から放たれたのだった!


「死ね、クソデブ!」

 

 今しがた、ドライワイズによりぶっ飛ばされたウオルトが、まるで何事も無かったかのように、全力のエネルギー弾の一撃を放つ!

 ソイツは一直線に、無防備なドライワイズの背後を狙い、仕留めようと襲い掛かり――


「閣下、危ない!」


 そんな危機の中を、朱色の影が割って入った!

 それは、オスカルド――


「ぐああああっ!」

「オ、オスカルド!」


 赤い貴公子は、自らの身を挺し、ウオルトの放った凶弾をその身体で食い止めた。


「オスカルドくん!」


 オスカルドは、ドライワイズの背後で、受けたエネルギー波を四散させ、ドサリと倒れる。

 吐血と、燻る臭いと、小さなうめき。

 オスカルドの命の火は、風前の灯火だ。


「うああああああああっ!」


 ドライワイズの絶叫が、周囲の空間をビリビリと響かせ、駆け抜けた。


 そう。

 俺達のピンチは、今、始まったばかりなんだ。


 そして。

 このピンチを挽回するには……やはり、ヒーローの登場に期待するしかないのか。


 

 太 一 ・・・・・・ き て く れ !




最後まで目を通していただき、誠にありがとうございました!


令和最初の投稿でございます。

そして、この話が「破」の最後です。

次回からは「急」が始まります。

本当は今週からの予定だったんですけどね。


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