第五章 9 お姫様
一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。
それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。
「な、なぁチーベル……俺に……いや、この身体にプリントスクリーン機能は付いてないのか?」
「は?」
眼前に広がる陵辱系エロゲ風味な光景に、ついついステータス画面を出して「回想フォト集」的な項目を探す俺。
「何を言ってらっしゃるのかまったくわかりませんが、エロゲでよくあるような『一度見たエロシーンを何度も閲覧できる』と言ったお楽しみサービス機能なんてものはありませんよ?」
……余す事無く分かってんじゃねーか。
だが! 言われて、ふと我に返る俺。
ただでさえ監禁され、野盗ロキシア共に陵辱を受けてきて、ただただ空ろな眼差しで生かされるだけの人形となっているに等しかった少女達。
そんな彼女等が、俺達魔物を目にした途端、恐怖に慄き、ただ哀れに怯えながら、静かに涙を流しているじゃないか。
斯様な光景を前に、やれプリントスクリーンだの、やれお楽しみ機能だのと興奮していた自分が恥ずかしい!
「……低俗なロキシアらしいゲスな趣味だ。反吐が出る」
ツングースカさんが吐き捨てた。
まったくだ! 師団長殿の言う通り、反吐が出る! ゲスな趣味だ!
俺は……俺は心に誓うぞ!
俺の目指すハーレムは、虜にされた奴隷のような、こんな悲しいモノにはすまい、と!
「それで、閣下。どうなさいますか? やはり皆、処分なさいますか」
ベミシュラオさんがお伺いを立てる。
なにやら上司に自分の書いたプレゼンの企画書を見せている部下のような、神妙な面持ちだ。
「……閣下?」
尋ねる声に、ツングースカさんは檻の仲の哀れな少女達を一瞥し、背を向けて小さく零した。
「……逃がしてやれ」
「……は?」
「聞こえなかったのか? 逃がしてやれと言ったんだ」
「よ、よろしいので?」
「ああ。ついでに食料庫と衣服の倉庫も開放してやれ。どうせあっても無くてもいいものだ」
ツングースカさんの指示に、一瞬ベミシュラオさんの顔がほころぶ。が、すぐさま神妙をまとい直し、一礼して述べた。
「はっ! 仰せのままに」
なんとなくだが……ツングースカさんが出会った時よりもっと丸くなっている……様な気がする。
おいおい、まだ行動を共にして一日二日じゃないか。早々性格や人格なんてものが判るかよ?
そう自分に言い聞かせるも、なんとなく彼女から漂う「空気」に、まったく否定が出来ないでいた。
「ほれ、お前達良かったな。逃げていいってさ」
ベミシュラオさんが手刀で鍵をぶち壊し、格子の扉を開く。が、怯えてなかなか出てこない少女達。
と、そこへアメリアスがつかつかと歩み寄り――
「出ろって言ってんでしょ! さっさとでなさいよ、このグズロキシア共が! 逃がしてやるって言ってんのに、気が変わっても知らないわよ!」
黒色のブーツが、思いっきり鉄格子をゲシッ! と蹴りつける!
が、それが効いたらしく、一人、また一人と恐る恐る檻から抜け出す全裸の少女達。
彼女達の顔にはまだ「助かった」と言う喜びの色は無いものの、その瞳には少しばかりの精気が再び灯っていた。
「ああ、奥の部屋に食料庫と衣服装庫があるから、さっさと持ち出してとっとと逃げてくれよ。でないと、あと二、三時間後には、ここもモンスターで溢れ返るからな」
ベミシュラオさんの言葉に、彼女達の足取りが速くなる。
中には涙を零して頭を下げる女の子もいるぞ。……なんだか世紀末救世主にでもなった気分だ。
「あ、あの……魔物様。わたくしは王家の姫君に仕える侍女にございます。ご好意ついでにお願いがございます……」
とある侍女を名乗る一人の少女が、ツングースカさんの背中に、おっかなびっくり声をかけた。
この娘さん勇気あんなぁ……そのおっぱいの見てくれ同様、きっと肝もでっかく座っているのだろう。
「のぼせ上がるな! 役に立たないモノを一斉に効率よく掃除できる方法をとったまでの事。好意ではない!」
「は、はい……ですが、これだけはお聞きくださいまし! そこの魔法のかかった扉の奥、秘密の部屋に、我がワダンダール国の姫君が虜となっております……どうか、どうかかのお方もお助けになってくださいまし!」
ツングースカさんの怒声にもめげずに、言うべき事を毅然として言い放つ少女。
その行為に、流石のツングースカさんも振り返り、少女を見やる。
「姫君……か。よし、わかった。助けてやろう! だが、あくまでそいつはこちらの交渉カードだ。勘違いするなよ?」
「あ、ありがとうございます!」
途端に堰を切ったように涙を流し、崩れ落ちる侍女ちゃん。余程気を張っていたのだろう。
「ですが……魔法のかかった扉っていってっも……扉なんてありませんが?」
「そこ」と侍女の人が指差した場所は、見るからに一面の壁だった。
アメリアスが用心深く近づき、コンコンと叩いてみたり、げしげしっとキックをかましてみたりしても、まったく「ただの壁」の反応しかない。
「それはヒロタロウなる首領専用の隠し扉です。入るのには、彼が持つ『鍵』が必要なのです!」
侍女ちゃんの言葉に、俺とアメリアスとチーベルが、三人そろって顔を見合わせた。
「「「あー、あの鍵!」」」
そう、ヒロタロウのドロップアイテム「装飾の美しい鍵」は、ここで使うのか!
「ホラ、チンタラしてないでさっさと出す!」
「う、うっせぇな。まったく、せっかちだなぁアニキは」
そしてズボンのポッケから鍵を取り出した途端、鍵に施された装飾がうねうねと生き物のように動き出した!
「うわ、なんだこれ?」
うねうねが収まった途端、鍵が虹色の輝きに包まれる。
そして、それに反応するかのように、壁に忽然と「扉」が現れた! なるほど、こいつが隠し扉って訳か? 面白い仕掛けだな、この鍵自体が「カギ」だったって事か。
「じゃ、じゃあ……入ってみます」
「ああ、油断するなよ?」
緊張に、慎重に、そっと扉を開け、中を窺い知る。
――とっ!
その縦八メートル横四メートル程度の部屋には、十八禁お断り的な光景が!
壁に鎖でつ上がれ磔状態にされた、全裸の少女と、数々の拷問器具!
そして覆面と黒皮のビキニパンツをナイスにキメた、ハゲで小太りのおっさん!
手にはムチと、モザイクがかかりそうな何か変な棒!
これはもうアレだな、「調教」って言う、俺の性癖からは超越した世界だわ。
超越しすぎて……エロさよりも、怒りがこみ上げてきたぜ!
「な何だお前ら! ここはヒロタロウ様専用のプライベートルームだぞ! ――って、お前ら魔物か!」
「正解!」
ご褒美にと、小汚い顔面に蹴りを入れてやった。
「ぎゃひぃっ!」と一鳴きして、壁まですっ飛ぶ小悪党。
そんな変態仮面へと歩み寄り、頭を踏みつけ、動きを封じる。
「そのヒロくん専用部屋で、テメーは何してんだよ?」
「わ、私はヒロタロウ様専属の世話係り兼、メス豚調教師だ! こんな事をしてただで済むと――」
「思ってるからやってんだ! だいたいだな、俺達魔物がそのヒロタロウ専用部屋に入ってきた時点で、あいつがどうなったかって事に気付け。あほ」
グリッ! と踏みつける足に力を入れる。こんなヤツに俺の相棒を使うのはもったいない。つーか、汚れる!
「くらえ、レベル20の脚力」
「ギャッ!」
「ぐしゃり」と音を立て、小汚いシミと化す変態オヤジ。
昔、子供の頃にじいちゃん家でスイカを間引くとき、ふんずけて遊んだ音と感触。そんな記憶が頭を過ぎった。
と、俺が小悪党と遊んでいる間に、磔の少女はベミシュラオさんにより救出されていた。
うぬう、いい所を持ってかれたなぁ……。
「ひ、姫様ぁ! どうか、どうか目を開いてくださいまし!」
ローズピンクの長くしなやかな髪の毛がはらりと零れ落ち、姫様とやらが頭を上げる。
空ろげな眼差しが、自分の身を案じる侍女ちゃんを見据え、ほんの少しの安堵を見せた。
「ああ、姫様ぁ! お気を確かにぃ!」
「おお、デオランス。よく無事で……」
「姫様ァ!」
全身に入るミミズ腫れの跡と、両腕両足に残る手枷足枷の跡。
その幼さの残る美しい顔には、幸いまだ傷は無い。だが、獣用の首輪は鎖で繋がれ、人としてのプライドは、散々に打ちのめされている事だろう。
なんて酷い仕打ちだ! こんな行為に興奮を求めていただなんて、ヒロタロウのやつ、もっと痛めつけてやればよかった!
俺には女性に痛いのとか血とかを求める神経がワカンネェ!
大体こんな悲惨な姿を見て、下半身のパーティー会場がレッツパーリィーする訳ないだろ……するわけ無いだろ……するわけ……
――どげしっ!!
「いってぇー! け、ケツがぁー!」
またもや、俺のでん部さんに衝撃! 犯人はいわずもがな――
「フン。何見入っちゃってんのよ、このエロボケ茶色が!」
「い、いやその……男の子だもんよ、仕方ねーだろアメリアス!」
「相手はロキシアでしょ? 神経疑うわ。マジきもちわるいヤツ」
なんか知らんがアメリアスのヤツ、めちゃくちゃ怒ってやがる。
それに――な、何スかツングースカさん! それにベミシュラオさんまでニヤニヤして!
そ、そんな事より仕事ですよ、仕事!
「ああ、そうだな。さて、ロキシアの姫様よ。貴様とその小娘は生かしてやる。が、少々我々のカードとなって働いてもらうぞ?」
「この者達に何をさせますので?」
ベミシュラオさんが尋ねる。
「ああ。ワダンダールに送り返し、ここの連中が地獄森で何を探していたのか――? その秘密を聞いて来い」
「はっ! その命、謹んでお受けいたします」
「だが、国王の返答如何によっては――その女を目の前で血祭りにあげてやれ。いいな?」
「ご命令のままに」
謹んで受けるベミシュラオさんの顔は、どこか安堵をはらんでいるようだ。
もしかして、姫様が……ロキシアの少女達が無事に(でもないけど)帰れるのが嬉しいと言った感じがする。まぁ、俺も嬉しいけどさ。
そうだ、このまま裸で返したとあっては、変な詮索を持たれて騒動の元になる。
そこで俺は、室内にあったベッドシーツを手に取り、二つに裂き――
「ほら、これをまとっていきなよ」
二人の全裸少女に手渡した。
「これは……お気遣い、痛み入ります」
姫様が体中の傷の痛みに耐えながら、ぎこちない一礼を見せる。
うわぁ。苦悶を堪えつつの笑顔って、なんか胸に来るものがあるよな! よし、俺もいつかはこんなお姫様を攫って、キャッキャウフフなハーレムを作ってやる!
そう考えた瞬間。
何故だか俺のケツに、再びどげしっ! と音を立てて重い衝撃が走った。
最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!