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第五章 6 師団長殿の過去

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 グエネヴィーアの鞘を拾い上げ、先を進もうとした俺に、ベミシュラオさんが声をかけてきた。


「今気が付いたけど、それは神威武器だね?」

「あ、はい。アミューゼル寺院で手に入れました」

「ほう、やはりか……いやね、ついさっきあの剣の中で聞いたんだが、アミューゼル寺院が魔物の襲撃を受けたとの報告があってね。なんでも司祭や神官までもを片っ端から虐殺し、寺院が守る剣を奪って逃げたとか……それが君だったか」

「い、いやぁ。俺『たち』であるし、しかも漁夫の利でたまたま手に入っただけですから」


 今度は俺が頭を掻きつつ、事の真相を告げた。


「拾ったとはラッキーだったね。だが、ロキシア達はその剣を奪った魔物に、多大な懸賞金をかけるそうだよ?」

「うぐっ! すごくアンラッキー! お、俺って賞金首になるんすか!?」

「ははは、よかったなタイチ。これで貴様にも箔がつくじゃないか」


 そ、それは非常に困る! ただでさえ大地に目の敵にされてる上に、ほかの奴からも狙われちゃ、やりたいことをやる前にゲームーバーじゃないか。


「よ、よかったらベミシュラオさんにあげますよ、この剣」

「あいや。お気持ちはありがたいが、小生には荷が重過ぎる。せいぜい身体を鍛えて、敵の手からその剣を守ってくれたまえ」


 まさに人事! と言う口ぶりだ。


「何いってんのよ。襲ってくる敵を片っ端からブチ殺していけば、自然と鍛えられるでしょ? 暇な時は手伝ったげるわよ」

「お、おう……『あいつ』とまた会った時はよろしく頼む」


 大地のおっかない顔を思い描く。

 いくら幼馴染とはいえ、あいつのあんな顔見た事無い分、恐ろしさは倍増だ。


「そう言えば……ワダンダールに出向いた時、純白の神威武器に身を包んだ女剣士を見かけましてね――」


 その言葉に、ツングースカさんが立ち止まり、反応を見せる。


「ほう、そいつはクリシュナ傭兵団のエンゲル・ヴァイスと言う通り名を持つのではないか? 詳しい話を知っていれば聞きたいな」

「よくご存知で。なんでも、昨日から行方を眩ませたと言う報告がありまして……まぁ剣の中で耳にした話ですから、これ以上は伺い知る事は出来ませんでしたが」

「ふむ、そうか……ならばいいさ」


 一瞬、何事か考えを巡らせるツングースカさん。

 まるでそれは、旧知の友を気遣うような、そんな感じがした。


「ともあれ、先に進もう。でないとホストが痺れを切らせて、パーティー会場から去ってしまうかも知れん」

「「「はいっ!」」」


 怖いもの無しに、ぐんぐんと進むツングースカさん。

 その後を、壁に掛けてあったたいまつを手に取り、先を照らしつつ歩く。


 と、程なくしてベミシュラオさんが、正面を指して言う。


「ああ、幹部の部屋はすぐそこです……それ、その奥の扉です。閣下、お気をつけて」


 ベミシュラオさんのお陰で、まったく迷わずここまで来れたけど……なんだか探索らしい探索は無かったなぁ。

 それはそれで良い事だろうけど……なんだか攻略本を手に、ダンジョン探索を行っている気分だよな。


「そうか、いよいよご対面だな。貴様ら、先方に粗相の無いようにな」


 まるで晩餐会に呼ばれたゲストを気取って、ツングースカさんの温和な声が皆に注意を促す。


 そして先頭を歩く師団長殿が、ボスの間への行く手を阻んでいる半円型の扉をあけ――――ずに、いきなりさっき見せた真紅の衝撃波を、扉めがけてぶち込んだ!!


 言った先から、自らが放つ度肝を抜く粗相!

 轟音と熱風、粉微塵になり飛んでくるドアの破片! 辺りは砂埃と煙が立ちこめ、もう何がなにやら……。


「嬉しさのあまり、ノックに些か力が入りすぎた。生きているか? 人形でばかり遊ぶ変態ヒキコモリ野郎」


 そう言いながら、ずんずんと中に入っていく。うわぁ、警戒も何もあったもんじゃねぇな。


「騒々しいな。魔族と言うヤツはマナーも知らんのか?」


 俺達も煙の向こうへと躍り出る。

 周囲を見渡すと、中はかなり広いホールになっていた。

 正面にはツングースカさんの攻撃で開いたでっかい穴が口を開いており、その横で、おそらくは東洋系と言った面貌の男が一人。マントをまとって待ち構えていた。


「バケモノの分際で、ワシの部屋をめちゃくちゃにしよって。その立派な角を売り払った程度では、弁償代にもならんぞ?」

「貴様がレネオ殺盗団の幹部の一人か? 我はウラジオストの魔蒼の民、大魔王軍近衛師団長ツングースカだ」

「ほっ! モンスターが一丁前に名乗り上げか? 悪いが、お前ら如きに名乗る名など無いのでな」

「いやなにかまわんさ、どうせ貴様はじき死ぬ身だからな」


 毎度ながらの言葉の応酬。

 が、相手はあまり心に余裕が無いらしく、早々に戦う準備へと掛かった!


「減らず口はそれまで。まずはこいつと手合わせ願おうか!」


 指をパチリッと鳴らす敵。

 すると、真上から何か大きな物体が振ってきた。


「フン、またぞろ人形ゴッコか? 芸の無い」


 そいつはツングースカさんよりも一回りほど大きな体躯の「骸骨」をモチーフとした機械人形だった。

 ボロのマントをまとい、カシャカシャと音を立てながら表情無くこちらを見据える。

 まるで俺達を品定めでもしているかのようだ。


「さあやれ、カシャドクロよ。その小生意気な角娘のご自慢をもいでやるのだ」

「ゲスが! 我が同胞を皆殺しにした上、全ての角をもぎ取って行った、その蛮行では飽き足らんか」


 ツングースカさんの言葉に、敵のおっさんは何か気が付いたと言う表情になった。

 そして、俺達の憎悪を誘う一言を放つ。


「ああ、思い出したぞ? 我々を来客と勘違いし、もてなそうとまでしていた、あの間抜けな青いモンスターの一族か? あれらの角は良い値で売れたぞ?」


 その瞬間、ツングースカさんの表情が、憤怒を通り越して無表情となった。

 それは感情を持たないロボットといった、冷徹で深層心理に訴えかける恐怖を放っている。


「な、なんて事を言いやがんだ、あのおっさんは! ツングースカさん、大丈夫かな?」

「魔蒼の民ってのは元来温厚な種族で、ロキシアとも親しい間柄だったんだ。それは閣下も例に漏れずそのクチでね。でもあの日以来、この数十年で閣下は変わられたよ……復讐の業火に身を焼かれてね。『大丈夫か?』と言う心配は、むしろあのロキシアにかけてやったほうがいい」


 忍びないと言わんばかりの表情で、淡々と語るベミシュラオさん。


「きっとあの『ヒロタロウ』と呼ばれているロキシア、後悔どころじゃすまない結果が待ってるぞ」

「ヒロタロウ? それって……」

「ああ、ヤツの名前さ。異国の名前ってのは変わってるなぁ。君もそうなのか?」

「あ、はあ……まぁそんな感じで……っ!」


 言われてはっと気付く。


「レベル120 ヒロタロウ」


 敵の頭上に名前とレベルが浮かぶ。ヤツは天主の代行者だ!


「ツングースカさん! そいつは天主の代行者です! かなり手ごわいですよ、気をつけて」


 彼女に向かって叫んでは見たものの、まったく反応が無い。聞こえないのか?


「無駄だね。今の閣下には、何も聞こえないし、何も見えてない。ただ、ロキシアを殺す事にのみ、全神経を集中しているんだ」

「それって、かなりブチ切れてるって事ですか?」

「う~ん、ブチキレの最上級のさらにその上の名称がなんて言うのか知らないが、あるとすれば多分、その二個ぐらい上だろう」


 そこまで怒りのボルテージが上がっているってのは、俺なんかが想像も出来ない世界を経験して来た故の事なんだろう。


「知っているかね、タイチ君。『ベイデゲンの絶望』の経緯を」

「い、いえ……知りません」


 ベミシュラオさんが神妙に語りだした。


「あの日、小生と閣下は二人でペイデゲン地方の割と大きな地方国へ、とある部隊を全滅させられた報復行動のために出向いていたんだよ」

「知っているわ。たしかペイデゲンに古くからある城下町よね。あの日以来、師団長殿はあまり笑わなくなった……」


 アメリアスが口を挟む。


「その通り。街はすぐ占拠できたんですがね、当時の閣下は普段温厚で、ロキシアに対しても広く温情を以って接していたんですよ」


 ああ、なんか判る気がする。

 普段俺に接してくれているような感じで、ロキシア達にも情を掛けていたんだろうな。


「で、国王やその軍隊、さらには街の者にも、『大魔王様に忠誠を誓うなら命は助けてやる』と言う約束で、慈悲を見せたのだけれど――折悪く、伝令妖精が飛んできて、『その事』を伝えたんですよ……閣下の故郷が、ガーニンバルの旗印を持つロキシアの一党に襲われ、皆殺しにされた、と。それを聞いた時の閣下は……丁度今の様な感じで佇んでおられてね」

「ま、まさか……その後」

「ああ、全てのロキシアに憎悪を抱かれて……軍隊は言うに及ばず、国王も王妃も、果ては街に暮らす市民までもを片っ端から手にかけられたのさ。凄惨の一語に尽きたよ。泣き叫ぶ子供にも容赦なかった程だ」


 俺は息を呑んだ。


「そ、それは当然の結果だわ……師団長殿は正当な事を成されたまでよ。ロキシア共だって、当然の報いを受けたに過ぎないわ」


 強がった意見を口にするアメリアスだが、複雑そうな表情からは、決して本意とは思えない何かが伝わってくるようだ。



「オマエハ……コロス」



 ツングースカさんが一言ポツリと零した。

 虫の音のような涼やかな声とは裏腹に、その言葉には怨讐が凝縮されていた。


「今だやれい! カシャドクロよ!」


 敵ボス、ヒロタロウの号令一過、骸骨の人形が両腰に装備していた剣を抜き、二刀流の構えでツングースカさんに襲い掛かった!


「…………」


 モノを言わぬまま、敵の両腕をがっしと掴み、攻撃を防ぐツングースカさん。

 だが次の瞬間、信じられない光景が、俺の目に飛び込んできた!


「……うぐっ!」


 両腕が使えず、がら空きとなったツングースカさんの腹部に、骸骨人形の不意の一撃が入る!


 そこには、二本の手にしっかりと握られている切れ味鋭そうな短刀が、非情に突き刺さっているのが見て取れた!


 なんてこった……あいつ、腕が四本もあったなんて……なんてインチキ! 


最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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