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第五章 3 ダンジョン

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 一瞬の輝きと共に降り立った場所。

 そこはブェロニーの地獄森から南に外れること数キロの位置にある、岩肌むき出す山岳地帯。

 驚く事に、ここからほんの少しの距離に、目指す洞窟の入り口が見えている。

 すごい、もう瞬間移動で迷わなくなったんですね? ツングースカさん。

 流石は我等が師団長閣下だ!


「あ、ああ……と、当然だ! 私の瞬間移動をなめるなよ」


 あ、なるほど。

 この取り繕いぶりを見るに、ブェロニーの地獄森を目指して、偶然ズレてここに飛んできちゃった訳か。

 まぁ気付かなかったふりしてあげよう……。


 とりあえず岩場の陰に隠れて、周囲の様子を伺ってみる。

 なにわともあれ、しんどい思いをせずにすみそうだ。

 ……いや、しんどい思いはこれからするんじゃないか?


 そう。岩の裂け目の洞穴ダンジョン入り口付近には、既に幾人もの山賊チックなロキシア共で溢れかえっている。


「はは、出迎えとは礼儀をわきまえたいい奴らじゃないか? 昨日私が放った物見のモンスター達を返り討ちにして、おそらくは本隊の襲撃があるだろうと待ち構えているのだろう」


 見るからに下っ端と言った趣ではあるけれど、油断は禁物だ!

 中には凄腕の奴もいるだろうし……そうだ、名前を確認して天主の代行者がいないかどうか調べてみるか。


「名前確認っと。……うーん、誰も名前が出てこない。って事は、あの一団は地元の野盗のおっさん連中て事だな」

「野盗だろうがなんだろうが、じき肉片に化す哀れなブタに変わりは無いさ」


 そう言うとやおら立ち上がり、闇色に渋く光るトレンチコートを脱ぎ、俺へと差し出した。


「さぁて、一暴れしてくるかな? タイチよ、またこれを持っていてくれ――」

「し、師団長殿! も、もしよろしければ……コート持ちの大任、この私目にお任せくださいませ!」


 上擦った声と、興奮気味な挙手でアピールするアメリアス。コート持つのがそんなに大任かね?  が、ここは一つ、アメリアスの肩を持ってやるか。


「ツングースカさん。もし良かったら、俺もお供をして戦いたいです! この武器の試し切りもまだですし……」


 言って、グエネヴィーアを見せる。

 その意気を買ってくれたのか、ツングースカさんは小さく頷き、答えた。


「ふむ、そうだな。よかろう! アメリアス部隊長」

「は、はいっ!」

「すまないがこいつを預かっていてはくれまいか? まぁ心配は無いと思うが……傷を付けるなよ?」

「は、はいっ! 命に代えましても!」


 神妙な面持ちで、ツングースカさんからコートを受け取る百合っ子ヴァンパイア。

 受け取った瞬間のその顔は、生涯忘れられないほどの犯罪スレスレのニヤケた緩み顔だ。

 ああ、カメラとかあれば写真撮るのにな。ずっとネタに出来るほどの失態顔だぞ、それ。


「さぁて、準備運動でもしてくるか。行くぞ、タイチ!」

「はい! 師団長殿。チーベルはアメリアスと一緒にいてくれ」

「わかりました! がんばってくださいね、閣下、太一さん!」


 のっしのっしと岩場を歩く漢の後ろを、グエネヴィーアを携え、いそいそと付いて行く。

 当然ダンジョンの入り口付近にいたロキシア達が、我々に気付く。


 だが、まるで知人の家に訪問でもするかのような振る舞いに、気後れしている様子だ。

 今が絶好のチャンス! ……と言いたいところだけれど、この人にとっちゃ、どんな状況もチャンスでしかないだろうな。


 ならば、ここは一つ――。


「師団長殿、先陣を賜りたいのですが……いかがでしょ?」

「やるか? いいぞ、よし暴れてこい!」


 にやりと笑い、俺の尻をぺちんと叩く。

 ツングースカさんに十二分以上の気合をもらい、新たな相棒をスラリと鞘から抜き出す。

 その一連の動作に、俺達が敵と言う事を再確認したロキシア勢。だがもう遅い!


「うりゃあああああああ!!」


 脱兎の如くに駆け、最初に目に付いた片目のやせっぽちをターゲットに定めて、袈裟懸けに剣を振り下ろし一刀両断にする。

 一声の悲鳴も無く、二つに分かれる片目のロキシア。その手ごたえは――まるでバターでも切るかのような、滑らかな感触だった。


「て、敵襲だぁぁぁぁ!」


 吹き出る血飛沫を身体に浴びながら、傍にいた仲間が今更ながらに叫ぶ。

 同時にそれは、男の末期の言葉となった。


 横一線に薙いだ刃が、首を一瞬の元に切り離す。

 その口には叫び声の代わりに、大量の血が溢れ返った。


「ひぃぃ!」


 怯え逃げ去ろうとするデブを背中から一突きにして伏せると、反射的に俺の目は、もう次の獲物を探していた。


「このバケモノめぇー!」


 少しなはれた場所から、おあつらえ向きにこちらへと駆け寄ってくる新たな獲物。

 だが、そんな雑魚の到来を待っているほど暇じゃない。


「ローエン・ファルケ!」


 右手を差し出し、駆け寄る男へと「こっちくんな!」の意味を込め、炎の鷹を放つ。

 激しい爆発音が響く中、炎の朱が弾け飛ぶ様は、派手な花火を連想させなかなかに美しい。


「え、援軍は何をしている! 早く呼んで来い!」


 叫ぶ隊長格と思しきおっさんの周囲に、ヤラレ役の方々が集まってきた。

 あ、そうだ! まだ使ってなかった魔法があったけか。


「猛襲のシュツルム・ボーゲン! 三連射」


 ええい、おまけだ! と、魔法の矢の大盤振る舞いを降らせる。


「うぎゃあああ!」

「ヒィィィィ!」


 ごめんな、雑魚の皆さん。だが、どう考えても一塊になったお前らが悪い!


「ほぉ、やるな! 粗方の敵を片付けたじゃないか。こまったな、これでは私の出る幕が無い」

「あ、あははは。いやぁ、きっとこの剣のおかげですよ?」

「ほう、名刀を手にして強くなった気分か?」

「えーまぁ、そんなところですかね?」


 照れ笑いでごまかす。

 そう言えば、元からここにいる魔族の方々は、神威武器のステータス上昇とかは判らないんだけっか?


「だが気をつけろよ? 武器に魅せられた者は、命まで吸い取られるぞ?」

「え、物騒な話ですね……気をつけます」


 実際、呪いの剣とかあってもおかしくない世界だもんな、気をつけよう。


「さぁて、残りのクズ共は四散したし、ダンジョン探索と洒落込もう――む?」


 言い終えず、何かの気配に気付くツングースカさん。


「なんだ、今頃増援か」


 見ると、ダンジョンの入り口から、ぞろぞろと湧き出すロキシア達。だが、今度はちょいと様子が違う。

 戦装備の鎧に剣。おまけに旗まで持ち出して……まるで軍隊じゃないか?


「ん~……総勢五十数名ってとこでしょうか。なんとも、あの程度の数で我々に勝てると思って……ツングースカさん?」


 何かに反応して固まるツングースカさん。

 その視線が指し示すもの……それは、剣に羽の生えた双頭の蛇が巻きついた紋章の旗印。

 それを、紅い瞳でわなわなと見つめているようだ。


「は、ははは……アーッ八八ハッハ!! いいぞ、いよいよ私にも運が向いてきたようだ!」


 急に意気揚々となる師団長殿。

 その表情は、偶然川原でエロ本を見つけた少年のように、笑顔と興奮に満ちていた!


「やっと見つけたぞ、双頭の翼蛇(ガーニンバル)の旗印! たかだかダンジョン製作の任と少々くさっていた所に、とんだめっけものだ!」

「ど、どうしたんですか? ツングースカさ……ひぇ!」


 恐怖を生み出す凍てつく笑み、そしてらんらんと紅く輝く瞳。

 最高の狂気をまとったツングースカさんがそこにいた!


「タイチ、離れていろ……一度火がつくと、もはや貴様と判別が出来んかもしれん……巻き込まれるぞ」

「は、はい! 喜んで下がってます!」


 すったかたーっとアメリアスやチーベルがいる場所まで後退する。命あってのものだねだ。


「ちょ、ちょっとアナタ! 何引っ込んでんのよ。師団長殿のお手伝いしなきゃダメでしょ?」

「む、無茶言うな! 俺まで殺されちまう」


 何も知らないアメリアスが――いや、こいつは絶対知ってて言ってるんだろう。


「な、ならお前が行けよ!」

「わ……私は師団長殿のコートを死守する役目を仰せつかってるのよ! 行ける訳無いでしょ?」

「アホ! んなもん俺が持っててやるわ!」

「何言ってんのよバカ茶色! あなたなんかに任せられるわけ無いでしょ!」

「あの、お二人方。そんな痴話喧嘩してる場合じゃないですよ? ほら、もうはじまっちゃいました」


 痴話喧嘩とは聞き捨てならないが、まったくもってそんな場合じゃない! 両手を緋色に染めたツングースカさんが、狂喜乱舞して、完全武装のロキシア達を血祭りにあげていた!


「アハハハハ! 胸がすく……最高にアッパーな気分だ!」


 次々に吹き出る血飛沫と、響く絶叫! まるでロキシアの形をした豆腐か何かかと思うほど、敵の身体はスパスパと切り裂かれ、飛び散り、転げ落ちている。

 片腕が無くなり許しを請うロキシアにも、非情の紅い一線が襲い掛かる! その様はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図だ。


「ああ……なんて勇壮なお姿……」


 隣にいるお姉さまLOVEな百合っ子が、うっとりとしながら、血の池地獄で暴れまわる「恐怖」を見つめてる。

 俺は正直、おっかなすぎて小便ちびりそうだよ。


「ぬるい! 温すぎるぞ貴様らァッ! それでもロキシア一の蛮勇を誇る、ガーニンバルの旗印の一団か!」


 なんか変なところにぶち切れてるな。敵が弱すぎるのがお気に召さないのか?

 と、そんなリクエストに答えるべく、ダンジョン入り口からのっそりと現れた巨躯。

 人の身体ほどある大刀を片手に持つ、スキンヘッドの大男だ!

 蓄えた顎鬚を撫で摩りながら、周囲を見渡し、そして吼えた!


「よくもやってくれたなあ、小娘! ――ほう、これは良い『角持ち』じゃないか!」


 その言葉に、柳眉を蹴立てるツングースカさん。


「なんだ、その角持ちって?」

「……あなたや師団長殿のような魔族の『角』を持つ者達へと用いる、一種の別称よ。ロキシアの中には、その角を集める奴がいるの」


 アメリアスが苛立ちを抑えつつ、俺に教えてくれた。


「な、なんでそんなものを?」


 それを聞いて、思わず角を手で隠しつつ、アメリアスに尋ねる。


「そりゃあ、ね。それだけ魔族を狩ったって言うロキシア達の強さの証でもあるし、工芸品としても奴らの間で高値で売り買いされているのよ……まったく、反吐が出るわ!」

「うわ……じゃあ、俺の角も狙われるのか?」

「フンッ! アナタのそのみみっちい角なんか、銅貨一枚の価値も無いわよ」


 銅貨ってのがどんな価値かは知らないけど……すっげーバカにされてるのはなんとなく判った。


「そんな事より、あの巨漢よ。あいつの腰の辺り……見て、まるでアクセサリーのように、さまざまな魔族の角が吊られているわ! なんて悪趣味!」

「と言う事は、その分強いと言うことなんでしょうね?」


 チーベルが不安げに言う。


「大丈夫よ、相手は誰だと思ってんの? 我が軍団最強の師団長閣下なのよ! あんな奴に負けるはず――」


 と、アメリアスが胸を張って師団長殿の強さを誇っている最中の事!

 巨漢に似合わないほどの高速の間合い詰めが、ツングースカさんを襲う。


「「は、早い!」」


 俺とアメリアスが、同時に叫ぶ!


「くたばれィ!」

「うぬっ!」


 左から振られた大きな太刀の刃を、ツングースカさんが右手の朱の輝きで受け止める!

 だが、力任せに振られたその一撃は、相手の巨躯と比べて圧倒的に細いラインである彼女の防御能力のキャパシティーを超えたようで――


「うわっ!」


 意図も容易く、その威力の前に屈する形となってしまった!


「し、師団長殿!」

「ツングースカさん!」


 怪我は無いようなものの、吹き飛ばされ、片膝を付いている!

 え、もしかして……これって激ヤバっすか?




最後まで目を通していただき、まことにありがとうございました!

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