表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/461

第四章 3 太一VS大地 2

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。

「なんてこった、ちくしょう……」


 思わず声が漏れた。

 当然その声は、そこにいる三人のロキシア達、そして今まさに剣を抜き取ろうとしている大地の耳にも届く。


「おやおや、誰かと思えば……昼間のガラクタ魔族か。もう再戦を申し込みに来たとはせわしないヤツだ」

 冷徹な笑いと共に言う。いやいや、誰もそんな事申し込みに来てませんって!


「……こいつは驚いた! ベルーアも一緒か?」


 そして、俺達の背後にいた元の仲間を見つけ、吐き捨てるように声をかける。


「俺に捨てられて魔族に鞍替えとは、なんとも節操の無いヤツだな」

「……何とでもご随意に」


 一瞬怯んだ様子のベルーアだったが、気丈に大地と向き合い、答える。

 そりゃあ怯みもするよ。

 なんたって、丸腰状態でもバケモノ染みた強さだってのに、そいつが専用の武器を持ったんだ。

 逃げ出したくならない方がおかしいって!


「あー……どうやらお取り込み中のようだな……仕方ない、また出直してくるよ」

「まぁそう言うな。これから我のパワーアップイベントが始まるのだ、ゆっくり見て行け……冥土の土産にな」


 言って、剣の柄にかけた大地の手に、力がこもる。

 ズズズ……と、金属と岩のこすれる音が鈍く響く。

 そして「フンッ!」と気合を込め、一気に引き抜いた!

 スラリと抜きでたそれは、錆も刃こぼれも、さらには刃に一点の曇りすら見受けられない。武器屋からの卸したてを思わせる輝きを放っていた。


「久しぶりだ、我が剣……『グエネヴィーア』よ! また共に暴れようぞ」


 例えるなら、「悪魔に取り付かれた魔族」とでも言おうか。おっかなさが二乗三乗された大地が、ご満悦な表情で愛刀との再会を楽しんでいる。


「へぇ、これみんなアナタ達でやっちゃったワケ? ここの僧兵も神官も、司祭に至っては悪魔さえも恐れをなすデビルバスターだと聞いていたんだけど……結構やるわね? どう、よかったら大魔王軍に鞍替えしない? 私が請け負うわ」


 何を言い出すのやら、アメリアスが突然の佐藤大地スカウト宣言! こら、こんな人仲間に入れるんじゃありませんよ!


「はははは! 面白い事を言う。そうだな、大魔王に成り代わって、この地を支配するというのも悪くない」

「成り代わって? それこそ面白い冗談よ。あなた如きが大魔王様に太刀打ちできると思ってるの? いえ、私にすら勝てないでしょうね」

「ほう、それは手厳しいな。では試しに我が配下の者達に、その実力を問うてみよ? 奴らに勝てれば、その後の話くらいは聞いてやる」


 ほら、もう話がややこしくなっちまったじゃねぇか。って、アメリアス! 既に臨戦態勢とってんじゃねぇよ!


「いいわよ、かかってらっしゃい! 何なら3人いっぺんでもいいくらいよ?」

「そうか。ベルガ、とめきち、その女の相手をしてやれ。マルりん、お前はあの後ろの外套をまとった金髪をやれ。油断するな、ヤツは手ごわいぞ」

「御意のままに!」

「了解!」

「はーい!」


 三者三様の受け答えをするロキシア達。

 「とめきち」や「マルりん」なんて名前なあたり、どうやらあの三人のロキシアも天主の代行者か……どれ、名前表示っと。

 ふぅん、赤を基調とした小粋な色の甲冑を着ているのが「レベル30 ベルガ」で、体躯がデカくて重量級の大斧を持ったヤツが「レベル29 とめきち」か。あと、比較的小さめの体に、さっき発した「はーい!」と言うかわいい女の子の声が「レベル25 マルりん」ね。

 

 そして……レベル29 さとうだいち、と。


 昼間からかなりレベルが上がっている、ずっとこいつらと一緒にモンスターを狩りまくってたんだな。

 しかしまぁこのチーム、ベルガってやつだけ名前が浮いてんなぁ。つーかお前ら、ちゃんとカッコいい名前付けろよな。

 ……人の事は言えないけど。


 などと考えている間に、三人が各人のターゲットを仕留めんと、ゆっくりとした歩調で歩き出した。

 それぞれがまるで「これから狩を楽しむ」といった、余裕を感じさせる動きだ。


 ――で、必然的に余っちゃう、俺と大地の二人なのだが……さあ、どうしよう。

 とりあえず最近のラノベの話でもしようか? あ、そうだ! 今週のSAO見たか? 俺はDVDに録画してまだ見てないん――


「貴様は我が相手をしてやる。感謝せよ、破格の扱いだぞ」

「うわーありがたくねー」


 現実逃避の俺を、無理やり現実へと引き戻す一言! そのショックに、思わず声が出たよ。


「眠りから目覚めた我が剣の、喉の渇きを潤す血を献上できる名誉だぞ。ありがたく拝領せよ!」


 大地の口元の笑みが消えた!

 途端、一瞬で祭壇の上から俺の元へと、飛ぶように間合いを詰めてきた!


「死ぬがいい!」

「ぬわっ!」


 俺の首の辺りを、煌く一本のラインが左から右へと走る!

 その一閃を、俺はバックステップで回避!!

 なんとかかんとか、ギリギリで事無きを得る。


「いいぞ、よくかわした。では次だ!」


 ……かわした? 違う、来ると判って咄嗟に「逃げた」んだ。

 勘違いすんなよな、大地。誰がお前みたいなおっかねぇのと戦うか!


 そんな逃げ腰の俺へと、今度は無数の剣の切っ先が飛んできた! やっべえ、どうにも避けきれそうに無い!


「痛て、いてて! ちょ、危ないって!」


 そんな命のやり取りに、間抜けな悲鳴が響く。

 避けきれない攻撃を前に、咄嗟とは言えまだそんな余裕ある言葉が出るその訳は――大地がギリギリ薄皮二、三枚を切り裂く程度の攻撃しかしてこないと言う、手加減を見せているに他ならない。

 どうやらコイツ、俺を嬲り殺す気だ!


「はっはっは、楽しいな。貴様をいたぶると、何故か胸が空く」

「ふ、ふざけんな! ローエン・ファルケ!」


 余計なおしゃべりのために出来た一瞬の隙。そこに燃え上がる鷹をぶち込んだ。

 ド ン ッ ! と激しい爆発音と共に、一瞬だけ周囲の景色が鮮明に浮き立つ。

 見事、大地の体に直撃を見舞った!

 が、結果はやはり――


「ほう、なかなか面白い事をする。蚊に……いや、オマケして蜂に刺された程度には痛かったぞ」


 どーせ効かないのは判ってんだ。

 でも、インターバルくらい取れるだろう。こっちゃあ身体中切り刻まれてズキズキ痛いんだよ。


「そうか、切り刻まれるのは嫌いか。ならこういうのはどうだ?」


 言い切るとほぼ同時に、瞬時に俺との間合いを縮める大地。

 左の腕がぬっと伸びてきて、俺の首元をムンズッ! と掴んだ。


「ゲッ! ゲホ! ぐあっ、苦し……」

「おう、いい声だ。そこいら辺の小鳥の囀りより心が和む」


 友人の断末魔の声にヒーリング効果を求めるってか。

 そんな下衆な趣味の奴にはお仕置きだ!


「ロ……ローエン・ファ――」


 苦しさを堪え、大地の顔面に右手を差し向け叫ぶ。

 ――が! そんな一瞬の動作にも、大地は容赦しなかった。


「阿呆が、囀っておればよいものを!」


 左腕が俺の首を絞め掴んだまま、大地は大きく振りかぶる。

 そして、まるでピッチャーが投げるボールのように、俺を寺院の壁へとブン投げた!


 ―― ド ゴ ォ ォ ォ ォ ン !


「ぐあああああッ!」


 石壁の崩れる音と、俺の悲鳴。

 壁を突き抜け、おそらくは楼閣の一室と思しき小部屋の中まで投げ飛ばされた!

 いててて……体が頑丈なのはありがたいが……もうギブ、動けねぇ。


「まだ生きているか、そのしぶとさ、気に入った」

「そ、そりゃどうも……」

「玩具は頑丈なほどいい。叩き壊し甲斐がある」


 大地、お前はそんな乱暴な子じゃなかっただろ? お母さんは悲しいよ。


「が、これ以上痛めつけるのは酷と言うもの……せめてもの慈悲だ、一思いに死なせてやる」


 右手に月明かりを帯びて、艶かしく輝く剣を持つ「恐怖」が、ゆらりと近づいてきた。

 何度目だ? 「もうダメだー!」と感じたのは。しかも今回のは飛びっきりの大物だ!

 大物過ぎて、もはや全体像すらわかんねぇくらいだ。

 

 だが――そんな漠然としすぎた恐怖の時ってのは、意外と目の前の実態が見えず、逆に冷静さを失わずにいられ場合がある。

 そうだ、きっと今が「そんな場合」なんだろう。

 俺は案外冷静に、ぶち込まれたこの室内を見渡した。

 何のため? 無論、逃げるための扉を探すためだ!

 ――が、いくら見渡しても、それらしきものは無い。いくら暗闇とは言え、扉と壁の識別程度は出来るんだ。


 が、それがまったく無い!


 三メートル四方の小部屋の三方向、共に壁、かべ、カベなんだ。

 因みに、さっき俺が突き破った壁にも、出入り口らしきものは無い。四角四面、天井や床まで、どこを見ても出口が無いんだ!


 一体何なんだよ? この部屋は!


「部屋そのものが石の棺とは、いい死に場所じゃないか」

「そ、そうだな……俺にはもったいないから、どうせなら外で死なせてくれよ?」

「生憎、我は気が短いのだ。ここで死ね」


 突き破られた壁の穴から、室内へと入ってきた大地。

 その右手に持たれた剣が、ゆくりと振り上げられた。


「トドメだ!」


 へたり込んだまま後ずさる俺。

 その時、俺の右手にコツンと何かが当たった。

 無意識のうちに視線がそれを捕らえ、一瞬だけ視界に納めた俺の判断は――「棒?」

 咄嗟にそいつを握り締め、上段から今まさに襲い来る鋭利な刃と対峙させるために、力の限りその「棒」を振り上げた。


「ガキィィィンッ!」と言う強烈な金属音。激しい火花が飛び散り、一瞬だけ室内を照らした。


「な、何ィ!」


 刹那に垣間見えた大地の、驚いた表情。


 そして、小さく制動のかかった俺の振り上げた「棒」が、勢いもそのままにさらに進み、微かにだが、奇妙な手ごたえを俺に伝えたのだった。


「ぐわぁっ!」


 次の瞬間、大地が声を上げた。

 俺は闇の中、ワケが判らず……ただ、左手に「握り心地の良い棒」を握り締め、呆然としているだけだった。


最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしよろしければクリックしてあげてください⇒ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ