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第四章 2 闇をまとう友人

一日一話書いて即出しのため、誤字脱字意味不明文章になりがちです。

それでもよろしければ、どうか生ぬるい目でご一読お願いいたします。


 数分後。

 背中が大きく開いたゴシック調のミニワンピに、黒いスパッツ。

 そしてシックなカジュアルブーツと言う動きやすそうなスタイルで、やる気満々のアメリアスがやって来た。


「さぁ、行くわよ! 昼間の屈辱を晴らすんだから」

「アメリアスさん……やっぱ中止にしませんか? もしくは延期ってことで」


 一応の低姿勢で、ご意見を伺う。

 けれど、帰ってきた返答はかくの通り――


「 バ カ 言 う ん じ ゃ な い わ よ ! 」


 怒号による一喝が、俺をシバキ倒す!


「いい、再戦がちょっと早すぎるとかで二の足を踏むのは問題外! 鉄は熱いうちに打つべきなのよ!」


 俺をズビシッ! と指差し、熱い説教をかますヴァンパイアのご令嬢。

 けど、何か勘違いしてねぇか?


「あ、あのさぁ……すっごい誤解しているようだけど……あの神を宿したロキシアと会えるかどうか、まだわかんないんだぜ?」

「はぁ? ちょっと待ってよ! ソレってどういう意味よ?」


 一人先走るアメリアスに、噛み砕いて説明をする必要があるな。ああもう、めんどくせぇ。


「あのさ、今から行くのは……その……あるロキシアに会いに行くんだよ」

「ロキシアに会いに行く? あのアホ神にリベンジ食らわせるんじゃなかったの?」

「誰がそんな事言ったよ?」

「でも微妙にハズレてたんでしょ? だったら概ね当たってるって事じゃないの!」


 豪快な屁理屈を捏ね出す同僚に、順序立てて説明しなきゃだな。

 でないと、行った先でベルーア見て、いきなりバトルって展開になりかねないぞ。


「いやまぁ、うまく行けば会えるかも、だ。それに……今から会うヤツに、危害は加えるなよ? 敵じゃないんだから」

「敵じゃない? ロキシアは皆、敵よ!」


 やはり思った通りの返答だった。

 この上、相手がベルーアだと――昼間戦ったヤツだと言えば、どうなる事やら。


「アメリアスさん、聞いてください。これから会いに行くロキシアは、昼間あなたと戦った女性――ベルーアと言うロキシアです」

「――っ! な、なんですって?」


 チーベルがいともあっさりとバラす!

 おい、話をややこしくすんじゃねーよ!


「いえ、ここは正直に言って信頼してもらった方がいいと思うんです」


 とは言うがな……。


「ちょ、ちょっとチーベル! なんでそんなヤツと――」

「彼女は、彼――ダイチと言う天主の代行者の情報を教えてくれる協力者なんです」

「天主の代行者って?」

「ああ。昼間のアイツみたいに、神の力を受けたロキシアの事を言うらしい」

「ふぅん。で、そのベルなんとかってヤツはその男となんかあったの? 仲間割れ? もしかして罠じゃないの? 信用できるわけ?」

「信用……できる」

「証拠でもあるの?」

「あー……それはだな」


 そりゃそうだ。証拠も無しに信用しろって方がおかしいよな。


「あります!」


 チーベルが突然声を荒げた。


「さっきのフリューゲル・ヤーデ、あれを我々にくれたのは、そのベルーアなんです!」

「ほ、本当なの? でも、なんであいつが?」

「か、彼女にはほんの少しだけ、ヴァンパイア族の血が混ざっているらしいんですよ。で、たまたま酒場で知り合ったダイチなる天主の代行者と共に行動をしていて……我々と出くわしたらしいのです」


 チーベルの口先八寸は今日も絶好調だな、毎度の事ながら関心するよ。 

 けど……気のせいかな?

 今のチーベルの口から出任せの「ヴァンパイア族の血が云々」って件で、アメリアスが一瞬ピクリと反応を見せたような気がするんだが。


「それで、天主の代行者として覚醒した彼に置いてけぼりにされていたところを、さっき我々が見つけて……悔しいから一緒にやつを倒さないかと話を持ちかけられたんです。ですよね、太一さん」

「あ、ああ……そうなんだ。だから、気に入らなければアメリアスは来なくたっていい。俺達だけで行く」


 と、上手い具合に別行動の選択肢の提示をする。俺もなんだかんだで小ずるくなってきたな。

 さぁアメリアス、「ならいいわ、行かない」を選択するんだ!


「ば、バカ言わないでよ! 昼間約束したでしょ? アイツを倒すのは私達二人だって。もちろん私も行くわよ!」


 変なところで律儀なヤツだなーおい……まぁいいか。


「わかった、いいんだな? じゃあ、あの女ロキシアを見ても襲い掛かったりすんなよ?」

「しないわよ……彼女にもヴァンパイア族の血が混ざってるんでしょ?」

「は、はい。そう言ってました」

「いいわ、今回はそう言う事にしといてあげる。でも……ちょっとでもおかしな言動があれば――わかってるわよね?」

「お、おう……その時は止めないさ」


 アメリアスが「結構!」とばかりに首を大きく縦に振り、頷く。

 あとは……ベルーアの出方次第だろう。





 心を奪われるような美しい満月が、広大な闇夜の草原を薄くやわらかく照らし出している。

 テレポートアウトした場所は寸分の狂いの無い、昼間降り立った場所なのだろう。

 すぐそばに、土饅頭に大きな石を置いただけの簡単な三つのお墓が見える。きっと昼間お亡くなりになった三匹のオーク鬼の墓なんだろう。

 そんな人っ子一人居ない薄気味の悪い場所で待つ事数分。

 俺達の前へ、誰かが「ヒュン」と言う音と共にテレポートアウトしてきた。

 

 無論それは――


「お、来たかベルーア!」

「すみません、おまたせしまし――ッ!」


 陳謝の言葉を述べようと俺達の方に視線を移したベルーアが、一瞬固まり、そして身構える。


「あー、心配ない。こいつは……アメリアスはお前には危害を加えない。な、そうだろ? アメリアス」

「…………」


 返事を返す事も無く、ただ腕組をしてぶっきらぼうな視線をベルーアに向けていた。


「お、おいおい……約束しただろアメリアス? ケンカは無しだぜ!」

「ふん、アナタ……本当に我がヴァンパイア族の血が混じっているの?」


 開口一番、突然の質問!

 ちょっとまてよオイ、まだこっちは「その事」についてベルーアと打ち合わせしてねぇんだぞ!  そんな事いきなり聞いたら、ウソだってのがバレるじゃねぇか――


「はい。ヴァンパイアの特徴が出るほど色濃くはありませんが、話では8分の1ほど魔族の……ヴァンパイアの血が流れています」


 淀みない口調での即答。

 あれ? チーベル、お前打ち合わせでもしたのか?


(いえ、おそらくは……この場の空気をいち早く察し、アメリアスさんに合わせたのでしょう。私ならきっとそうするでしょうから)


 俺の耳元で、渦中の人の分身が囁く。

 なるほど、嫌になるくらい納得したわ。


「そう……さぞかし先々代はご苦労なさったでしょうね?」

 

 アメリアスが伏し目がちに、抑えたトーンで語った。

 え、何? 信じきっちゃった? と言うか、すっげー同情してるし!


「はい、そう伝え聞いています……」


 お前もいけしゃあしゃあと合わせてんじゃねぇよ! なんだその真摯な表情は! そうやって何人騙してきた!? つか、俺にも何かまだ嘘ついて隠し事とかあるんじゃねぇのか?

 だがまぁ……双方共に敵意を見せないでいてくれるのはありがたい。


「さ、さぁ! そんなことよりもだ。ベルーア、大地の消息の情報とか知っているのか?」

「はい。酒場で周囲にいた客に尋ねてきました」

「で、何と?」

「確かな事は判りませんが……客らが言うには『アミューゼル寺院』と言う言葉が聞こえたらしいです」

「アミューゼル寺院? ああ、あの古の神を祭っているとか言う場所ね。我々で言う『忌み穢れた土地』よ」


 アメリアスが物知り顔で言う。


「先日、私と大地さんが訪れた時。そこには古の神の宝剣が祭られていて、丁度その祭事が執り行われていたんです」

「へぇ、それは本物なのか?」

「真偽は定かではありませんが……そこに訪れたとき、大地さんが小さな声で一言『ここにあったか』と零したのを覚えています」


 嫌な予感が一ダース単位で俺の元に届けられた。

 神様とその武器、おまけに大地の「ここにあったか」って言葉。

 うわー、その武器って大地の中の神様が使ってた武器で、ほぼ確定じゃねえのかよ?


「ふぅん、その武器とやらを持たれたら少々厄介ね。そうなる前に奪うなり壊すなりした方が良くなくって?」

「そ、そうだな……急がなきゃ」


 大地がその武器をゲットした場合に、どんな化学変化がおきるのか? 考えたくは無いけれど、こんな場合の定番「パワーアップする敵」しか浮かんでこねぇ!


「じゃあ早速行きましょう。では皆さん、私につかまってください」


 言われるがまま、俺もアメリアスも、そしてチーベルもが、ベルーアの肩へと手を置いた。


飛翔フルーク! アミューゼル寺院へ」


 俺達の姿は一瞬でかき消され、同時に、見ていた闇夜の平原と言う景色も視界から消えうせた。

 一瞬の後、見慣れない建物を囲う石造りの壁と、ご大層な木作りの門が俺達の目の前に現れた。  まぁ、逆に「そこへ俺達が現れた」と言うべきだろうな。


「へぇ、ここがそのなんとかって寺院か? しかしながら無用心だな。こんな夜遅くだってのに、門が開きっぱなしで、どうぞ誰でもウエルカムしてるじゃないか? こんなんじゃ泥棒や野党が堂々とお宝を持ち出し……て」


 言って、最悪の事態の想像が、皆の脳裏を走った!


「ま、さまか既に!」

「いそぎましょう! こちらです」


 ベルーアの案内の元、俺達は開かれた門から、石で組まれた楼閣の長い通路の中へと駆け込んだ。


「確か、この石造りの楼閣内を抜けた先に、中庭があるんです。そこの祭壇に、先ほどお話した剣が刺さっていて、この寺院の守護武器として祭られていたはずです!」


 壁に転々と掲げられているたいまつの明かりに沿って駆けると、やがて暗闇がぽっかりと口を開いているのが見えた。


 ――が! 

 そんな出口付近に、何かしら横たわるものを見つけ、立ち止まる。

 最悪の予想は――その瞬間、最悪の状況へと変わってしまった。


「どうやら……遅かったようですね」


 目の前に転がる、位の高そうな司祭服を着た遺体。

 そこから縷々としてあふれ出している鮮血は、まだ殺されて間もないという証拠だ。


「行こう、急げばまだ間に合うかも!」


 そう考えて駆け出た中庭の祭壇に、幾名かの人影。

 それらが月の淡い光に照らされて、俺の目に飛び込んできた。


 

 その光景を、俺は生涯忘れ去る事が出来ないだろう。



 至る所に転がる、寺院の僧や司祭達の、無残極まる亡骸。

 そして、三人のロキシア達が見守る中、屋外の石積みの祭壇に突き刺さっている「剣」を引き抜こうとする、返り血にまみれた大地の姿。


 祭壇の上。血まみれの手に、凍て付くような微笑みを浮かべながら月を背負い立つその姿――それは、ともすれば俺達魔族より、もっともっと悪魔染みた表情をしているようだった。



最後まで目を通していただいて、まことにありがとうございました!

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